2024年全日本フィギュアスケート選手権の現地観戦振り返り、今日は競技3日目です。
今週日曜日1/12にBSフジで放送された「フィギュアスケートTV」では、グリーンルームやバックヤードでの選手たちが映し出され、嬉しさと切なさを感じました。
アイスダンス⇒ペア⇒女子と、それぞれのフリーを時系列で振り返っていきます。
観戦直後のフレッシュな感想覚え書きはこちら。
結局こちらを踏襲したタイトルにしてしまいました。でも今思い返しても本当にそう。
せつない瞬間はいくつかあったけれど、全体としての満足感は極めて高い1日でした。
アイスダンスフリー
最大の注目は「うたまさ(吉田唄菜/森田真沙也組)」&「あずしん(田中梓沙/西山真瑚組)」の対決。
RDでは6点近い差がついてしまいましたが、フリーは1.48点差でした。フリー演技中ずっと可憐に演じていた田中梓沙さんが、終わった瞬間すかさず男前なガッツポーズ決めてたのが楽しかったです(笑)。
今大会はうたまさがRD・FDともに1位での優勝です。攻めるスケーティングにキレがありましたからね~世界選手権でフリー進めるといいなと期待しています。
第93回全日本フィギュアスケート選手権大会
— 公益財団法人日本スケート連盟 Japan Skating Federation (@skatingjapan) December 22, 2024
アイスダンス競技が終了しました#吉田唄菜 / #森田真沙也 組🥇#田中梓沙 / #西山真瑚 組🥈#佐々木彩乃 / #池田喜充 組🥉
競技結果はこちらhttps://t.co/g4D00qnnGd
アイスダンス競技は12/25の深夜25:15〜フジテレビ地上波にて放送予定#全日本フィギュア pic.twitter.com/fruhhgDcjk
この二組が切磋琢磨しつつ成長していく姿をリアルタイムで見守れるのは本当に楽しいです。四大陸選手権でどこまで実力を発揮できて、国際ジャッジからどう評価されるかが次の楽しみ。
あやみつ(佐々木彩乃/池田喜充組)がクラウドファンディングで掲げていた目標通り3位に入れたのもよかったです。艶がフリー「Pride and Prejudice」、私結構好きです。23歳&25歳はアイスダンス界ではまだ若手。末永く続けられる環境が整ってほしいです。
ペアフリー
ペアフリーは当初からちょっとした波乱続きでした。
みゆスティン組のプチ波乱
第一滑走だった「みゆスティン」こと柚木心結(ゆのき・みゆ)/トリスティン・テイラー組が、アクセルラッソーリフトに入れず抜けてしまいました。SPでは「組んだばかりなのに、さすが経験者同志!」と驚いていただけにビックリ。
ほんのちょっとのタイミングの食い違いなのでしょうけど、演技後も悔しさ一杯の様子。来年の全日本でこの悔しさを晴らしてほしいって思いました。
後日知ったのですが柚木心結選手は3週間前にトリプルツイスト練習中に肋骨を骨折、痛みをこらえながらの演技だったと。ダブルツイストだったのは組んで間もないからだと思ってました。全然気づかなかったです
※下記のリンクは有料記事
さえルカ組の大波乱
一番の波乱だったのは二番滑走の「さえルカ」こと清水咲衣 /本田ルーカス剛史組。
得意な3連ジャンプで清水咲衣選手が転倒したのですが、その後の様子がおかしく、そのまま演技中断。どうも彼女の肩が外れてしまったようで、続行も危ぶまれる空気に。
「いやここまで来て棄権は辛すぎるでしょ!?でも無理は禁物だろうし…」と、演技再開に至るまでは本当にやきもきしました。
「私が演技の中断トラブルを見たのは去年のカナダナショナル男子シングル以来。演技の中断ってマイナス5点で合ってたっけ?」と頭の中がぐるぐる。(5点減点で正解です)
再開後の演技は、単独トリプルフリップがダブルになったものの、肩に負担のかかりそうなリフトやデススパイラルは大過なく終了。無事大会を終えることができてホッとしました。
ゆなすみ組&りくりゅう組
ここでハラハラし過ぎてしまったのか、次のゆなすみ(長岡柚奈/森口澄士組)とりくりゅう(三浦璃来/木原龍一組)は珍しく落ち着いて演技を見られました。
ペアだと普通はスロージャンプの時などに超ドキドキするんですけど、演技中断中の「大丈夫か!?」というハラハラに比べればずっとマシな感じで…
相対的にハラハラ度が薄くなったという(苦笑)
おかげで二組のすごいスピード&迫力のリフトを心置きなく堪能できました!
りくりゅうのフリーは、グランプリファイナルのフィニッシュのように「お別れエンド」ではなく、「元さやエンド(?)」に戻っていて、ちょっと嬉しかったです(笑)。
りくりゅうは今回トリプルトゥループが不調?で、得点稼ぎどころの3連が抜けちゃった痛手はありましたが、総合力の差で余裕の優勝。来年若手ペア達がどこまで食い下がれるようになっているか、今から楽しみです。
全員同門なだけあって、表彰式の最中もその前後も皆ワイワイ楽しそうで微笑ましかったです(笑)。
最後に今日youtube公式に上げられた全日本カップル競技まとめ動画を載せておきます。日曜日のBSフジ「フィギュアスケートTV!」で放送されたものと同内容です。
女子フリー 第1~2グループ
さて、ここからは胃がキリキリしてくる女子シングルフリーです。
「全日本最後の演技」に賭けるスケーターもいれば、世界ジュニアやワールドなどの代表や来年の強化選手入りを目指してしのぎを削る23名(三原舞依選手は怪我で棄権)が登場します。
中井亜美選手
SPでミスが相次ぎ、まさかの21位スタートとなった中井亜美選手。彼女はまさに「崖っぷち」の状況でした。
昨季は怪我の影響で全日本も世界ジュニアの出場も逃すという悔しいシーズン後半。今季はジュニアグランプリファイナルで銅メダルを獲得したものの、世界ジュニア出場2枠目になりそうなのは、同大会銀メダルの和田薫子選手。彼女はなんとしても全日本で上位に入り、残る1枠を確保したいところ。
しかし「SP21位から這い上がるのはさすがの彼女も厳しいかも?」ーと思っていたら…トリプルアクセル2本決めちゃいましたよ!2本目3A単独はqついちゃったけど、一見クリーンで。
単独ルッツやループの着氷が乱れちゃったのは少し勿体なかったですが、後半3Lz~3S、3Fー3Tなど高得点要素はしっかり決めてきました。
このスポ根ドラマのような熱い構成をやり遂げられたら、「うおおおおお」って気分になりますよ!
櫛田育良選手など、甲乙つけがたい演技をしたジュニア選手はいたのですが、最終的には中井亜美選手が世界ジュニア代表3枠目をつかみ取りました。
大場雅選手・白岩優奈選手
で、その後出てきたのが大場雅選手です。ジュニアのしびれる挑戦を見たあと、ベテランのいぶし銀の演技とは何とも凄いコントラスト。
大場雅選手も全日本に辿り着けなかった年はありました。引退を事前に明言してくれる選手ばかりではないし、ここ数年の全日本では彼女が演技する時は毎回「これが最後かも」との覚悟はして、演技を目に焼き付けるようにしています。
下記の記事を読むと、彼女自身も毎回覚悟をして試合に臨んでいる様子。「フリー進めるかどうかわからないからお気に入りのフリー衣装を着て公式練習に出てた」ってエピソードは何とも愛おしいです。
白岩優奈選手は、事前に今季での引退表明していた選手のひとりでした。
2季の休養を経て2023年全日本に出場を果たし、今年も全日本出場を果たしました。休養後にもとに戻すのは本当に大変だったろうと思います。
これがラスト全日本と知って見守る演技というのは、ドキドキします。サルコウの転倒があったとはいえ、全体としていい演技で締めくくることができて安堵。大勢の観客がスタオベで見送りました。
第3グループ
第3グループからは代表争いが更に本格化。最終的には195点出した選手ですら10位以内に入れないーというスゴイ展開となりました。
山下真瑚選手・渡辺倫果選手・和田薫子選手
一番滑走は山下真瑚選手。
冒頭ルッツートゥのセカンドに「q」はついちゃいましたが、全ジャンプをイイ感じで着氷。昨年の全日本はフリーで回転不足を多数取られてしまいましたが、今年は「取らせるか!」という気迫を感じました。
キス&クライでの山田満知子コーチの喜びっぷりがはじけてて楽しかった。フリー4位、総合6位で来季の強化指定枠と今季後半の国際大会(チャレンジカップ)派遣を勝ち取りました!
続いては渡辺倫果選手。
冒頭トリプルアクセルがパシッと入ったのにはしびれましたね。トリプルアクセル入れずともトップレベルで戦える選手ですが、全日本上位を目指すには必要。何より冒頭にトリプルアクセルが決まるとがプログラムが一層締まります。
後半のルッツが乱れてからその後は苦しそうに見えたけど、「最後まで滑り切る!」って気迫が半端なかった。肋骨にひびが入ってたとは思えない演技でした。フリー6位総合7位です。
続く和田薫子選手は世界ジュニアほぼ確定だろうと思っていたので、観る側の緊張は少し緩みました。相変わらず逆回転スピン逆回転であることにうっかり気づかなくなるぐらい凄かったです。
吉田陽菜選手・三宅咲綺選手・住吉りをん選手
そこからの3人は緊張で息が詰まりそうでした。
吉田陽菜選手は冒頭のトリプルアクセルが惜しくもステップアウト。アクセルに「q」はつくだろうなとは思いましたが、後半のルッツートウと単独ルッツ全部に「q」がついてしまい、点が伸び切らず。
…といっても彼女は総合で195.27出してるんですよ!?なのに11位。
今季GPS優勝&GPF表彰台なのに四大陸にすら出られないなんて。今季はアジア大会やミラノプレ大会があったのは幸いでしたが。
三宅咲綺選手は国際大会出場経験がなく、チャンピオンシップ大会の代表候補にこそ名を連ねていませんが、遜色ない実力がある選手。上位に入って強化指定選手入り&国際大会派遣を狙いたい。
「神戸組」に入ったこと&「滑走屋」に出たことが転機となったようですが、20歳過ぎから再浮上する選手が最近多いのは嬉しい限り。
3Tー3Tの迫力は現地で見るとすさまじかったです。小ミスはありましたが、フリー9位&総合合9位。強化指定入りを確実にしました。
来季はプログラムにトリプルアクセルも投入していくとのこと。国際大会派遣してもらって、海外ファンが「こんな子がまだ日本にいたのか!?」って驚くだろう様子が既に楽しみです。
第4グループ最終滑走は、住吉りをん選手。
彼女には「全日本が鬼門」というイメージがついてしまっているので、私の緊張もMAX。一方で今季の彼女のフリーの落ち着いた演技振りから「フリー結構行けるかも?」という期待もありました。なのでサルコウでの転倒は残念でしたね。
#全日本選手権 女子FS#住吉りをん
— 明スポ フィギュア担当 (@meisupo_figure) December 22, 2024
FS127.95
総合197.53#やっぱり明治がナンバーワン #や明N1 #フィギュアスケート #figureskating #明治 #meiji #全日本 #全日本フィギュア #RionSumiyoshi pic.twitter.com/aeiNcePt60
でもその後は転倒の影響を全く感じさせない演技。後半のジャンプでアンダーローテーションを複数取られたのが響きフリー11位となりましたが、キス&クライでの表情には笑顔もありました。総合得点は197.53と総合8位。
彼女も腰痛が悪化していた中での苦しい演技だったようです。200点前後を安定して出せるのに子所は四大陸選手権にもまだ派遣経験がありません。勿体ないお化けが出そう…
第4グループ
青木祐奈選手
青木祐奈選手のフリーの演技については、私この日一番心に残った演技として先日あれこれ書いたので手短に。
「心を強く打つ演技」は完璧演技とは限りません。選手の想いや気迫が伝わって来るのが「刺さる演技」。この日の青木祐奈選手のフリーはまさにそれでした。
先日の「フィギュアスケートTV」で、グリーンルームで彼女の演技を見守っている山下真珊瑚選手、渡辺倫果選手、住吉りをん選手の様子が放送されました。下記の動画が、その女子シングル振り返り特集です。
ダブルアクセル~トリプルフリップの3連が入った瞬間。リカバリーを狙ったルッツ転倒直後に飛んだあのラストジャンプを見た瞬間の彼女たちのリアクションは最高でした。
「あぁそうだよね、そうなるよね!私も客席で変な声出たもん!」って思いましたよ。
青木祐奈選手が最後に降りたフリップーループはファーストにもセカンドにも「<」(アンダーローテーション)がつきました。でも、私にとってはこの大会で見た最も美しく心に残るジャンプでした。
松生理乃選手
かき乱された感情が収まらない中、松生理乃選手がもう演技を開始しようとしていました。あの曲が流れてくると「いいから、落ち着きなさい」となだめられているかのようでしたね(苦笑)。
松生理乃選手も全日本最終グループの空気感に呑まれやしないかと少し心配はしていたのですが、曲調のせいもあるのか緊張感は伝わってこず。むしろサルコウがダブルに抜けた時に驚いたぐらいでした。
松生理乃選手自身はフィンランド大会と同様、最後のサルコウがダブルになったことを悔しく思っていたようです。でもキス&クライの山田満知子コーチは門下生全員がいい演技だったことに大喜び。笑顔一杯のキス&クライが凄く微笑ましかったです。
ワールドで彼女の演技も観たかったけど、四大陸初出場を果たせてよかった!
樋口新葉選手
続いて樋口新葉選手の登場。
登場した瞬間からベテランらしい風格が漂っていて、最終グループの空気に呑まれるどころか、会場を制圧するぐらいの気迫を感じましたね。でも、SPの時足がつって痛そうにしていた様子を見ていたので心配は若干ありました。祈りつつ演技開始を見守りました。
この日私がいたアリーナS席の真ん前でサルコウがダブルに抜けたんですが、なんか「抜けた感」が薄くて。「今抜けた…よね?幻?」ってな感じで現実味が感じられず(苦笑)。
本人がキス&クライで残念そうにしていたので「やっぱりあれはダブルだったんだな」とようやく自信を持てたぐらい、流れに溶け込んだダブルサルコウでした。(本人もキス&クライで「綺麗なジャンプだったと自虐的に言ってましたw)
暫定1位。表彰台に届くかどうかは後続次第ですが、これで世界選手権の三枠目は樋口選手になったと確信しましたよ。
残る3人は、代表がほぼ確定している人たちばかり。
「これでやっと胃がキリキリする時間が終わる!」
ーとこの時は思いました。
千葉百音選手
千葉百音選手はグランプリファイナル銀メダルで、ワールド代表はほぼ当確。多少ミスがあっても運命が大きく変わることはありません。
と言いつつ、彼女は大きなミスはしないような気がしていたので、前半のサルコウで転倒したのにはすごく驚きました。後半のジャンプもタイト気味で、少し焦りも感じられる仕上がりに。
「多少ミスがあっても気楽に見られる」と思ったのは大間違いだと悟りました。
確かに彼女の成績が多少ふるわずとも代表争いには影響しないでしょう。でも、実力ある選手が思わぬミスの結果キス&クライで暗い表情をしているのを見るのはきついですね。
彼女が表彰台を逃し、バックヤードで涙にくれる姿を後日見て複雑な気持ちになりました。
四大陸&ワールドでは笑顔で大会を終えられるようにと祈るばかりです。
島田麻央選手
続いては世界ジュニア代表が確定している島田麻央選手。
全日本優勝を勝ち取るには技術点を荒稼ぎ=ノーミスで行く必要があります。しかし6分間練習を見る限り4回転がうまくハマっていなかったので、過度な期待はせず、純粋に彼女の演技を愛でることに集中しました。
アクセルは「q」取られるかもな~と思いましたが、ガッツリ「<」(アンダーローテーション)を取られて点数が伸びず。4回転は転倒に終わりました。それでも後半の高難度コンビをまとめ切るパワーが毎度あるのは凄いと思います。何より後半のスピンの加点超えぐい(笑)。
彼女はシニアと一緒に戦う全日本で3年連続表彰台に上がっています。これだけの実力がある選手が来季もまだシニアに出られないのは正直不満ですね。
年齢制限については大昔から色々思っていることがあり、あれこれ言い出すと長くなるので今回は割愛しますが、私はこれだけのスピンができる選手をワールドや五輪で見られないことを純粋に残念に思います。
坂本花織選手
島田麻央選手の点数が伸び切らなかったため、余程のことが起きない限り坂本花織選手の優勝は固い状況になりました。彼女ならもし何かあっても最低限まとめきれる力を持っていますしね。
ロシアのミラノ五輪復帰が決まったことで(かなり条件が厳しいのであれを「復帰」と表現していいかは疑問ですが)、トリプルアクセルや四回転を持たない坂本選手が無双している現状をあれこれ批判的する人をちらほら見かけるようになりました。
そういう人には漏れなく「あんたは現地であの幅とスピード見たことあんのか!」と問い詰めたくなります(苦笑)
今回の6分間練習なんて、たまたま3連ジャンプを跳ぶ位置&タイミングが他の選手と同じになったんですが、超とんでもない幅&スピードで跳んだもんだから変な声出ましたわ。あの迫力がテレビでは伝わりにくいのが本当もったいない。
「伊藤みどり選手時代から高難度ジャンプを『それさえあれば勝てる必殺技』みたいに表現してきたマスコミの罪はでかい」と思いながら批判を眺めています。高難度ジャンプだけが見どころ&武器の競技じゃないんだから、メディアの人たちにはもっとちゃんと競技の魅力を説明してほしいです…
…とはいえ、今の採点ルールだとジャンプが大きな比重を占めるのも事実。
トリプルフリップの着氷が乱れてからの後半ジャンプは若干怪しくて、「これはアンダーローテーション取りまくるジャッジだったら僅差になるかも…?」とちょっとだけドキドキしました。
全然僅差じゃなかったですが(笑)
無理に3Tつけにいってたらやばかったかもしれませんが、そこはベテランの判断力で、無事全日本4連覇。ワールドは万全の状態でアンバー・グレン選手との対決を見たいです。
最後に
3日目の全選手振り返り動画も記録のため載せておきます。
MOIは一部しか視聴できていないので、2024全日本フィギュア振り返りはこれにて終了。
今日アップされた男子の動画(日曜の「フィギュアスケートTV!」で放送されたもの)も先日の男子フリー振り返り動画に付け加えておきました。