政治的なことへの言及は極力避けたいと思っていたのですが…
さすがに今回の「Fantasy on Ice(ファンタジー・オン・アイス)」(以下FaOIと略)にロシアスケーター参加が追加発表された件は看過しがたいーというか、「政治的な問題だけじゃない」と思ったので、現時点で感じていることを綴ってみました。
※4/17 18時20分
ファンタジーオンアイスの略称をFOIと誤表記していたのに気づいたので修正しました
FOIだとフレンズオンアイスじゃないですか…失礼いたしました
※4/17 22時10分
ロシア軍によるウクライナのスケートリンク爆撃に関する情報を追記
ロシアスケーター2名のFaOI出演が追加発表
昨日、2025FaOI公演出演者にアリョーナ・ザギトワさんとアンナ・シェルバコワさんが追加されることが発表されました。FaOIチケットは既に販売開始されています。

私はロシアのスケーターを日本のアイスショーに招へいすることが現在可能である以上、プロモーターがロシアスケーターを招へいしてショーを開催すること自体は自由だと思っています。
だからロシアスケーターが出演することに対して眉をひそめはしても、公の場所で批判しようとは思わなかったでしょう。私は「そのショーには行かない」という選択をするだけ。
ただ、現在の状況でロシアスケーターが出演するショーを観るかどうかは観客個人の政治的信条に関わる選択です。チケット販売前に観客に対して明らかにしておくべきだと思います。
既にチケットを購入されていて「こんなことなら買わなかったのに」と思われた方は消費者センター等に相談して、返金を求めていいほどの不誠実な販売の仕方だと思います。
チケット販売後の出演者追加発表を当然とする商習慣に元凶が
アイスショー業界の「出演者発表を小出しにしながらチケット販売していく方法」、私は以前から不快に感じていました。
「誰が出ているか」は高いショー料金を払う際の大きな判断材料です。主要な出演メンバーが確定していない段階では行くかどうか判断しがたいのに、出演者が全員決まる頃まで待っていたらいい席は埋まってしまっている。
「いい席で観たければバクチに出るしかない」という状況を平然と観客に強要し続けてるのはおかしいーとずっと思ってきました。バクチをしたくないと買い控えし、鑑賞を諦めたショーはいくつもあります。
今もロシア拠点を続けるロシア人スケーターに対しては、拒否反応を示す層が相当数いると予想されます。別クラブ&女子シングル以外のカテゴリの選手を呼んだとしても物議をかもしただろうに、よりによってドーピング問題で世界を揺るがしたエテリコーチ門下生を呼ぶとは…。あまりにも時期尚早な判断ではないでしょうか。
というか3年前、ウクライナのアイスダンスカップル・ナザニキことオレクサンドラ・ナザロワ/マキシム・ニキーチン組をアンサンブルスケーターとして招聘していたショーなのに、余りにも節操が無さ過ぎだと感じます。
また発表のタイミングが最悪です。ロシアがウクライナのリンクを攻撃し破壊した日です。
※ウクライナスケーターのInstagramストーリーへのリンクなので、一定時間が経つと被害報告は表示されなくなります
<4/17 22時追記>
上記のインストそろそろ見られなくなるので、ヘルソンのスケートリンク爆撃を伝える別投稿を埋め込んでおきます。2023年1月にもウクライナ東部のスケートリンクがロシア軍のミサイルで破壊されていますが、その時とは別の場所のリンクです。下記投稿の3枚目の画像で紹介されていますが、ヘルソンのリンクはキリロ・マルサック選手のホームリンクでした。
国内外からの猛烈な批判
案の定国内外で炎上しています。特にフィギュアスケートファンからの反発は国内外ともに強い。
何より、世間一般人とフィギュアスケートファンとではロシアのスケーターに対する感覚が大きく違います。
戦争だけが理由ではありません。何度も繰り返されてきたドーピング騒動が、「ワリエワ選手一人に押し付けられたままで掘り下げた調査や処分が未だ行われてない」という印象が強いのも大きいです。
勿論フィギュアスケートファンの中にはロシア人スケーターを今も熱心に応援し続けてる方もいます。批判しているフィギュアスケートファンも、ロシアスケーター自身を悪く思っている人はさほどいないように思います。
ロシア国内にはプーチン氏や政権支持を表明しているスケーターもいますが、彼らも色々難しい立場に立たされているのだろうと思うので、私は彼らを声高に批判しようとは思いません。
しかし、色々な問題が解決されたとは到底言えない段階でショーに出演させる決断をしたことは「炎上」して当然だと思います。
他出演者への影響への懸念
私は今年のFaOIは東京まで遠征したいと思えなかったのでチケットは購入していません。
ただ、新しくカップルを組んだローレンス・フルニエ・ボードリー/ギヨーム・シゼロン組の出演が発表されたときはちょっと食指をそそられました。「スケオタへの引きが強そうな出演者」の抜擢に「目のつけどころがいいな」とすら思っていました。
しかし現時点でまさかロシアのスケーターを呼ぶとは思ってもいなかったです。チケット買った人の多くは「寝耳に水」だったでしょう。
今はただ、出演スケーターたちへの影響が心配です。私が好きなスケーターが多数出ていますから。

出演者たちは全員でショーを作り上げていくわけですから、ロシアスケーター2名を遠ざけることなく協力しあい、一緒に記念撮影等をする機会があるでしょう。もしそのような写真がSNS等に出たら…他出演者も激しいバッシング対象になる恐れが高いと案じています。
「性加害疑惑」が報道されたニコライ・ソーレンセン選手(当時)と一緒に撮影した写真を上げたスケーターがバッシングされまくっていたのを思い出しますが、あれ以上に厳しいバッシングをくらいそうに思います…

親ロシア勢力の「政治利用」への懸念
彼女たちの演技を見たいというファンもいるでしょうし、他の出演者の演技を観たくてFaOIに足を運ぶ方もいるでしょう。ロシアスケーターを招いてショーをすること&そのショーを楽しむことを否定するつもりは全くありません。
でも、いつものアイスショーのように演技前後にロシア国旗を掲げようものなら、その時の写真や映像が親ロシア勢に「日本がロシア勢復帰を歓迎している証拠」として政治利用されるのではないかと心配です。
本来は観客が何を掲げようとその人の自由ではありますが…。逆にウクライナ国旗を出す人が出る可能性もあるし、国旗掲げるの禁止にしたほうがいいんじゃないかとすら思うほどです。
五輪シーズンのロシアの立場は不透明
確かに来年のオリンピック予選大会にロシアのスケーターの出場は許可されました。
しかし実際にオリンピック出場をするには過去の政治活動等に関わる条件が課されていますし、ISU(国際スケート連盟)も結論を出していませんし、五輪出場が本当に実現するのかは不透明な状況です。
ロシア軍が関与する大手クラブ所属のスケーターは軒並み出場NGになる可能性もあれば、ロシア政権との関係性が濃いスケーターが出場できる可能性もあります。

そして、ミラノ五輪でロシア選手が活躍したとしても、それだけではフィギュアスケートファン内に残った「ロシアスケーターへの複雑な感情」はすぐに消え去るようなものではないと思います。
国の政策は個人ではどうしようもないのに、突如試合に出ることができなくなったロシアスケーターに対しては本当に気の毒だと思っています。ロシア在住で練習をしている他国籍スケーターとの待遇差を見て複雑な気持ちになることも多いです。
でも、その一方で、これだけ警告を繰り返されてきたのにドーピング違反を繰り返したロシアのスポーツマンシップに対する不信感は根強い。
なので今の心情はめちゃくちゃ複雑です。チケット買っていて「どうしよう」と悩んでいる方には心より同情します。