GPSフランス大会まとめ後編/マリニン圧勝、アダム復調! 三浦佳生選手ら日本男子の思わぬ苦闘

GPSフランス大会の大会ロゴ

2025年のフィギュアスケートグランプリシリーズ(GPS)第1戦フランス大会(フランスグランプリ/フランス杯)、今回は「男子シングル」について振り返ります。

パーソナルベストスコア(PB)が次々に更新され、ハイレベルな五輪代表争いが展開されている女子シングルとは打って変わって、男子シングルの代表争いは当初思ってもみなかった展開で始まりました。

目次

女子&ペアでの高揚感から一転した最終日

男子シングルはショートプログラム(SP)までは高揚感を持って見ていられたのですが、フリーでは正直滅入りました。

競技最終日はアイスダンスFDも複雑な気持ちにさせられる展開でしたし、連続してこれか…という気持ちに。いい演技はありましたが、その分高低差が大きかったというか。

「今大会は日本男子表彰台は厳しいかもな」と内心思ってはいました。

しかしSP3・4位で思いのほか順調な滑り出しだっただけに、壷井達也選手総合7位はともかく三浦佳生選手フリー大乱調の末の総合10位、ランキングポイントすらつかず―という結果は衝撃でした。

壷井達也選手の4回転2種投入への挑戦は?

今季の壷井達也選手は4回転2種投入に挑戦し続けています。SPはコンビネーションジャンプのセカンドがダブルになったとはいえ、4回転2種がようやくはまり、良い兆しに見えていました。

それだけにフリーの冒頭4回転2連続転倒のショックは結構大きかったですね。3本目の4回転サルコウは着氷してコンビネーションにはしましたが、4回転3本とも回転不足がついてしまいました。(「q」2つと「<」1つ)

ただ彼は4回転が乱れても、他のジャンプをクリーンに下りてこられるのは強みだと思います。

4回転が一つもクリーンに決まらずスピンやステップでかなりレベルを取りこぼしているにもかかわらず、4回転以外のジャンプで点を稼いでフリー9位。合計232.78で総合7位には残り、ランキングポイントも得られました。

次のGPS試合は、第5戦のスケートアメリカ。フリーでトリプルルッツでロングエッジ(国際大会では初)を取られてしまったのが少し気がかりなので、次回はそこも含めジャンプを決められたらいいですね。

三浦佳生選手 復調への期待からの大乱調

復調を感じさせたSPは3位

今季前半の低調が心配されていた三浦佳生選手。「今季は長い目で試合を見ていこう」と覚悟していたら、SPは3位。存在感を世界にアピールすることができました。

特にSP冒頭の4回転サルコウー3回転トゥループにはGOE(出来ばえ点)満点の5をつけたジャッジがいたほどで、3.74ものGOEを獲得。彼のジャンプは決まれば高い評価が出ることを示しました。

しかしトリプルアクセル着氷が乱れ「q」判定(軽微な回転不足)、後半の4回転トゥループは「<」の回転不足判定で87.25と万全とはいえない状態。

フリーは「まさか」の展開へ

SPの調子からいってGPS初戦フリー本番をまとめきれるとまでは思えず、「表彰台は厳しいかもしれないけれどメダル争いに残れたらいいな」と思ってフリーを見始めました。

冒頭の4回転ループが抜けてしまうのも、次の4回転トゥループが乱れてしまったところまでは想定内でした。

しかし次の4回転サルコウも抜け、トリプルアクセルで転倒。演技後半に入った時点での暫定技術点は20点台。そして後半4回転トゥループも転倒してREPEAT判定になり点は2点台しか入らず…122.32はフリー最下位。

ここまでの大崩れになるとは想像していなかったのでショックでした

プログラムが「ラストサムライ」なだけあって、死を覚悟したうえで敵と戦い、討ち死にして行く若者を見るようで…
後半はただただ辛かったです

「魅力的な転倒」も今回ばかりは…

誤解を呼ぶ表現かもしれませんが…私は三浦佳生選手のジャンプ転倒自体は好きなんですよ。

彼はものすごいスピード感で転倒してすぐに立ち上がることが多いじゃないですか?あれはあれで豪快で見ていて痛快で。

もちろん成功したジャンプはスピード感に溢れていてもっと痛快なので、全ジャンプの成功を願っています。失点はイヤだけれど、彼の「魅力がある転倒」を見るのはイヤではないーという意味です。
(壁に激突するような怖い転倒は別です)

そんな私にも、今回は彼の焦燥感と自分への失望感が伝わってきて、転倒を見るのが辛くなってしまいました。

闘争心を完全に失うことなく、最後まで力を尽くした姿は彼らしく、心打たれましたが…

過去の仏大会の記憶から思うこと

比較される高橋・宇野両選手の「遭難」

彼のフリー演技直後に私が思い出したのは、同じフランス大会での高橋大輔さんと宇野昌磨さんの「大遭難」演技です。

2004年の高橋大輔選手「冬山大遭難」(フランスのエリック・ボンパール杯)は、SP64.16で3位発進、フリー71.54で最下位、総合11位と今回の三浦佳生選手の状況とよく似ています。

宇野昌磨選手の2019フランス大会はSP79.05で4位発進、フリーは4転倒で79.05で9位で総合8位。(当時は転倒でも点数が比較的残るルールでしたから、今のルールならもっと下位だったかも)

あの時キス&クライに独りだった彼(コーチ帯同なしだった)に送られたSHOMAコールに心打たれて涙を流したのは記憶に強く残っています。

ただ、このどちらも五輪シーズンではありませんでした。(高橋大輔選手はトリノ五輪前年、宇野選手は平昌五輪翌年)そのぶん、「何故よりによって今季こんなことに」という焦りは本人にもファンにも強いのではないかと思います。

前を向いてもがく、今の彼の想い

今季序盤は古傷の痛みから追い込んだ練習ができない状態でしたが、そこから少しずつ状態上向いている印象はありました。それが、ここで大きく逆戻りしてしまった感が残念ながらあります。

それも、来たのとは違う方向への逆戻り。練習でジャンプは跳べているのに本番でうまくはまらない。本人にも原因が良くわからないという。

そんな中でもメディアの取材にこたえ、SNSで今の心境と声援を送ってくれた観客に感謝のメッセージまで出す彼は立派だと思います。

有料記事ですが、演技後の心境を詳しく語っているので貼っておきます。

この試合を懐かしく振り返られる日が来ますように…

私は高橋大輔選手の「大遭難」は、彼がシングル現役時代に大舞台で活躍するたびに繰り返し見ていました。「この時の彼がいろいろ克服してここまで来たんだな」という想いになれて、より成長&成功を喜べたんですよね。

今回の三浦佳生選手の演技も、いつかそういう気持ちで見返せる日が来るように
と願います。

次はGPS第3戦のカナダ大会。帰国したと思ったらまたすぐに出発です。次は今の実力を出せる試合にもっていけますように。

イリヤ・マリニン選手(米国)

一時は怪我で棄権も検討

イリヤ・マリニン選手は結果だけを見たら絶好調にしか見えないのですが、実は怪我を抱えていたようです。

SP後のインタビューでは軽い怪我だと言っただけで詳細は明かしていませんが、GPS棄権すら考えたと。

出力を落としつつも圧勝

その状態でSP4回転フリップ、トリプルアクセル、4回転ルッツートリプルトゥループの構成ですからね。後半に4回転ルッツコンビネーション入れるのに不安をあまり感じさせないのはすごい。

フリーも4回転5本投入してきました。本当に怪我?と疑う人が出てきてもおかしくないぐらいのジャンプ構成(笑)。

でも、本来の構成がとんでもないので多少落としても凄く見えるだけ。珍しくスピンやステップのレベルを落としまくっているのは怪我の影響じゃないかと思います。

ということはトータル321.00点というすごい点ですが、まだまだ点が延ばしまくれるという…いや恐ろしいですね(苦笑)。

派手に攻めてきた新衣装

そういえば新衣装は今季二つとも派手路線で来ました。

フリーはアレクセイ・ウルマノフ選手を思い出させるふんわり袖のダークバージョン。甘さとクールさのバランスがいい感じです。

懐かしくなって、アレクセイ・ウルマノフ選手のリレハンメル五輪画像をググったら、私の記憶よりもはるかにど派手でしたw 
あれと比べたらマリニン選手の衣装は超シンプルデザインですわ!

ウルマノフ選手、よくあんなデコラティブな衣装で演技してたな…

アダム・シャオ・イム・ファ選手(フランス)

話題を呼んだ例の衣装で登場

初戦時に話題を呼んだアダム・シャオ・イム・ファ選手のSP衣装は、見慣れてきたら「まぁこれもアリか」と思えるようになってきました。初見のときはかなり衝撃でしたけどね。いや~「慣れ」って怖い(笑)。

五輪で活躍して一般の目に触れたら話題になりそうですよね。インパクトは結構すごいですから。

SP不調⇒フリーでは…が1年ぶりに

しかしSPは冒頭の4回転ルッツで派手に転倒するなどして84.87で5位スタート。彼にしては低い点数という印象ですが、今季序盤試合フリーの荒れっぷりを思うと結構まとめたと思いました。

なので「フリーもそこそこまとめてきて、ギリ表彰台に乗るかな?」と思ってたら…フリーの4回転ルッツめちゃくちゃ綺麗に入りまして

他のジャンプも安定感が戻っており、1日で一体何の変化があったんだ?と驚く展開に。

「今日は確変アダムバージョンになりそう」と悟ってからは、演技を堪能しました。

あの衣装チェンジの演出だけは何度見ても理解しがたいですけどね

画面で見てもミケランジェロの絵画「アダムの創造」の手が出てきたのがよくわからずでした
衣装チェンジした後に出て来る「手」に気づく会場の観客はごくわずかでは…?

4回転4本がクリーンに入り(コンビネーションの後半ジャンプは若干乱れましたが)、196.08点とSBを大幅更新し総合2位。終盤のスピンで基礎点を取りこぼしていなければ200点を超えていたでしょう。

昨シーズンは一度もフリー200点を超えられなかったことを思うと、2023-24シーズン中盤の「安定して強いアダム」復活を期待させられるフリーでした。

ただ、SPで追い込まれる⇒フリーは神モードはそろそろやめてほしいです(笑)。

その他の印象的だった選手たち

ニカ・エガーゼ選手(ジョージア)

今季好調なニカ・エガーゼ選手は銀メダルかな?と予想していたのですが、確変アダムに抜かれて3位となりました。

私、彼はGPSメダル1つくらい持っているものと思っていたのですが、なんとこれがGPS初メダルでした!

調べてみたら、この2シーズンのGPS大会4つは全て4位。ミハル・ブレジナ選手(チェコ)も驚くほどの4位力だったのですね!そりゃ一つはGPSメダル持ってるような錯覚を起こすはずです。

なお、3週連続での試合はさすがに大変だったようで「3試合連続出場を決めたのは人生最悪の決断」と愚痴っていました(笑)。

その他

ルーカス・ブリッチギー選手(スイス)リュック・エコノミド選手(フランス)のプログラムはSPフリーどちらも私は気に入りました。シーズン後半に完成形を是非見たいです!

フランソワ・ピトー選手(フランス)
のフリーは今回うまくいき、4回転のない構成ながら総合5位に入りました!こういうタイプの選手が上位に躍進するのもいいですね。

「なぜこれをミラノ五輪最終予選で…」という気持ちは一瞬よぎっちゃいましたけど、手にしかけていたフランス五輪枠を最後の最後で逃してしまうというあの残念な経験をしたからこそ今大会の結果に繋がったのかもしれません。

GPS第2戦中国大会は10/24(金)から競技開始です

次はどんな展開が待っているか、楽しみです!

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