ハンガリーにて開催中だった2025世界ジュニアフィギュアスケート選手権、男子は中田璃士選手が優勝、女子は島田麻央選手が優勝と華々しい結果でした。今回私は各カテゴリの一部しか配信視聴していないものの、見ごたえのある試合でした。
でもね~いい試合だったからこそ、この二人の優勝者が来年もまだジュニア居残りなのかと思うと今一つ複雑な想いはぬぐい切れません。「世界ジュニア三連覇」って見出しが踊ってるの見る気持ちが逆にどよ~んとします。
男子と女子いっぺんに鑑賞記録まとめようかと思ってたんですが、男子フリー語りが思いのほか長くなってしまったので、今日のところは男子のみまとめてます。
女子はあれこれ書き出したら採点や年齢制限の話題にも踏み込んじゃいそうで長くなりそうですし、また明日以降に改めます。
自爆大会の恐れは実現せず
男子SPの後、私はちょいと不吉な予測まじりの展望を書いていました。

ジュニア男子でSPが神大会だとフリーが自爆大会になるっていう定説もあるらしいのですが、そうならないことを願います。
…自爆大会にならなくて本当によかったー!!!
神大会とまでは行きませんでしたが、後半グループではミスを引きずることなく演技し続けた選手たちが多数観られた好試合でした。
4回転2本どころか3本入れて来る選手たちまでいて、「ジュニア男子もここまで来たか」と思いましたね。でも複数回入れてきた選手は誰一人ジャンプノーミスではまとめられなかったあたりがジュニアだな…って感じではありました(苦笑)。
印象に残った演技
アンソニー・パラディ選手
私が楽しみにしていたアンソニー・パラディ選手。やはりトリプルアクセル挑んできました!
残念ながらアンダーローテーション判定でステップアウト。後半のフリップにもアンダーローテーションがついたり、最後のトリプルフリップがダブルになるなどジャンプミスがいくつか出てしまいました。
Anthony Paradis 🇨🇦 122.21 / 190.58
— Golden Skate (@goldenskate) February 28, 2025
“Actually, I’m sadder right now than I thought I would be letting this program go. It really meant a lot to me, and it will always have a special place in my heart. I’ve had some great memories with it.
It was a success today that I went for… pic.twitter.com/ohS5PKyo7A
でもプログラムの世界観は崩れなかったですね。シニアGPSに出て「PCSで戦える選手」になってほしいなぁ。シニアで戦うにはトリプルアクセル or 4回転1種は必要です。来季はトリプルアクセルを試合で降りられるよう願掛けしたいです。
2枠復活を目指していたアメリカ勢
あわやSP落ちだったアメリカのパトリック・ブラックウェル選手はフリー12位、総合で13位まで順位を上げました。でもさすがに来季ジュニアワールドのアメリカ3枠には届かず。3枠に戻す道は険しいです。
私はアクロバティック系の彼よりもジェイコブ・サンチェス選手の演技の方が好きです。全く同じ曲(イチオサロ)を滑る中村俊介選手の直後の滑走順になってしまったのは気の毒でしたが、着氷姿勢が美しい彼の演技を惚れ惚れと眺めました。
Jacob Sanchez placed just off the podium in fourth on the third day of the ISU World Junior Figure Skating Championships 2025 in Debrecen, Hungary.
— U.S. Figure Skating (@USFigureSkating) February 28, 2025
Day 3 recap ⬇️
「こりゃノーミス行きそう」と思ってたら、まさかのルッツ3連ジャンプのファーストが抜けてしまってビックリ。グランプリファイナル同様、表彰台に乗るものだとばかり思ってました…
高橋星名選手&中村俊介選手
高橋星名選手は冒頭のトリプルルッツートリプルトゥループのファーストがシングルに。中村俊介選手も冒頭の4回転トゥループで転倒と、日本男子は全員冒頭ジャンプで大きくミスが出てしまいました。
でもその後の気持ちの切り替えっぷりがみんな見事でしたね。ジャンプミスをきっかけに一気に崩れてしまった試合の記憶が全員にあっただけに、成長を感じながら後半の演技を見ていました。総合では中村俊介選手6位、高橋星名選手9位となりました。
オールラウンダーたちが活躍する男子ジュニア観戦の楽しみ
ジュニア男子は4回転ジャンプ挑戦してくる選手は結構いるものの、プログラム全体をまとめられる選手は激レア。
4回転得意な選手だと1本で手堅く行かず2本目3本目に挑戦して派手に転倒したりすっぽ抜けたり。4回転決まったー!と思っても、その後の3回転がすっぽ抜けちゃったりね。そしてこの手の選手はスピンステップが今一つな場合が多い。
なのでジュニア男子では、3回転アクセルまでの構成で着実にスピンステップ全てクリーンにまとめられるオールラウンダーが上位に来がち。

漫画&アニメ「メダリスト」で言う、派手な「いちご」で勝負する「いちごショートケーキ作戦」じゃなくて、ベースの生地&あんこの質を重視した「たい焼き作戦」派が勝る場合が多いんですよ。
ちなみに私はジュニアではオールラウンダーが活躍する展開が好きです。高難度ジャンプ先行型で、後でスピンステップ磨くパターンもあっていいと思うけれど、私が見てて楽しいのはオールラウンダーの演技ですしね。高難度ジャンプならシニアの試合で一杯見られますし。
なので、4回転なしのオールラウンダー系であるアダム・ハガラ選手が今年もいい演技をしたのは嬉しかったです。
Two time Junior World medalist Adam Hagara 🇸🇰 153.04 / 233.93 👏🏻👏🏻👏🏻
— Golden Skate (@goldenskate) February 28, 2025
“I am so happy! I don’t know how I did it, but I did it. I can’t breathe right now anymore.
It was definitely hard. My illness comes and goes, but I could definitely feel it during the skate, I just tried not… pic.twitter.com/VOUBUyBjHE
今回は4位と表彰台を逃したけれど、ジェイコブ・サンチェス選手(今季ジュニアグランプリファイナル優勝者)もルッツ抜け以外はいい演技でしたしね。二人とも着氷姿勢や所作が綺麗で見ごたえありました。

でも、オールラウンダーでならした選手たちがシニアでどうなるかって、本当全然予測できないでんですよね…
2022JGPF銀だったルーカス・ブルサード選手はシニア以降後4回転入り構成に苦戦&度重なる怪我に苦しんでます。
一方、同大会で同じく4回転なしで金メダルを獲ったニコライ・メモラ選手は、怪我もありつつも今ガンガン多種4回転跳んでる現状見ると、「ホンマわからんわ…」ってなります。
中田璃士選手 VS ソ・ミンギュ選手
今回金メダル争いをした中田璃士選手と韓国のソ・ミンギュ選手は、どちらも成長を見守るのが本当に楽しい選手です。
去年の世界ジュニア王者のソ・ミンギュ選手も現時点では4回転なしのオールラウンダータイプ。
中田璃士選手は4回転ジャンプ先行派ですが、オールラウンダーに近づきつつある…というかSPでPCS1位取れたからもはやジュニアではオールラウンダーと言ってもいいかな?
2024世界ジュニアでの対決
二人の昨年の対決は興味深かったです。
ジャンプは3回転アクセルまでだが、スケーティング技術&完成度が高いソ・ミンギュ選手 VS フリー4回転1本構成をクリーンに決める確率が高い中田璃士選手の争い。
結果は演技構成をクリーンに仕上げたソ・ミンギュ選手に軍配が上がりました。中田璃士選手は4回転トゥループのステップアウトが無ければ…という印象でした。
今季の対決はいかに?
中田璃士選手のフリー「パイレーツ・オブ・カリビアン」、昨年末から4回転2本構成に挑戦しています。全日本はループ&トゥループでしたが今回はトゥループ2本。
1本目であわや転倒というレベルで着氷が乱れた時点では、昨年のジュニアグランプリファイナル(JGPF)を思い出してヒヤッとしました。
あの時は普段ほとんどミスのない4回転トゥループでの乱れに動揺し、アクセルとループで抜け&フリップやスピンも乱れまくり、演技後キス&クライで涙にくれることに。

私はあの演技中、明らかに動転していた彼の姿が一瞬脳裏に浮かびましたよ
しかし、次の4回転トゥループー3回転トゥループのコンビネーションを綺麗に決めたのを見て、「もうあの時の彼を超えてきたんだな」と思いました。
その後は自信に満ちた滑りで確実に技を決めて行っているように見えました。最後のスピンだけレベルは落としたものの演技をまとめて終了!4回転のミスはあったけれど抜けでも転倒でもないし、1本は美しいコンビネーションを決めている。
これならソ・ミンギュ選手が素晴らしい演技を披露したとしても構成要素の基礎点差からいっても逃げ切れるかなと思いました。
ソ・ミンギュ選手の「雨に唄えば」は彼のなめらかな滑りに合ったプログラム。
しかしトリプルアクセル2本目が転倒となってしまったのは、他が見事だっただけに勿体なかった。ノーミスでも中田璃士選手には届かなかったのではないかと思いますが、私としては完ぺきな演技での金メダル争いを見たかったですね。
🇯🇵✨ Rio Nakata soars to gold! The Japanese skater delivers under pressure and jumps to the top of the podium at #WorldJFigure! 🥇🔥
— ISU Figure Skating (@ISU_Figure) February 28, 2025
Minkyu Seo skates with elegance and precision to claim the silver medal, while Adam Hagara fights his way onto the podium, jumping from 5th to 3rd… pic.twitter.com/Dtn8MP3qoq
細かなまで行き届いた演技で、フリーのPCSは78.62点と1位。中田璃士選手のPCSは2位の77.56、SPに比べると後半は少し荒くなってましたから納得の採点です。
2年連続で世界ジュニア男子のメダル3人のメンバーは変わらず、1位と2位が入れ替わった結果。来年はアダム・ハガラ選手が抜けますが、中田選手&ミンギュ選手は来年もジュニア残留です。
The men’s medalists at the 2025 Junior World Championships:
— Golden Skate (@goldenskate) February 28, 2025
🥇 Rio Nakata 🇯🇵 162.95 / 248.99
🥈 Minkyu Seo 🇰🇷 154.77 / 241.45
🥉 Adam Hagara 🇸🇰 153.04 / 233.93 #FigureSkating #JWorldsFigure pic.twitter.com/mQbm9ls3Zx
来年の世界ジュニアではどうなる?
来季のミンギュ選手と中田選手との世界ジュニアでの闘いがどうなるかは興味深いですね。
ミンギュ選手も来季は4回転を入れたいとインタビューで答えていました。来年の世界ジュニアでは中田選手が4回転2本構成をクリーンに決められるかどうか?ひょっとして4回転2種2本or3本に挑戦してきたりして…?…とか想像するのは楽しいです。
本来世界ジュニアの王者は通常次シーズンにシニアに上がるのが常であり、「連覇」することはそうそうありません。年齢制限の引き上げにより「連覇」の文字がメディアに踊っていることには非常に複雑な想いを感じます。
しかし中田璃士選手は、昨年ジュニアグランプリで金メダルを逃した際(といっても銅メダル獲ってるんですが)、「ジュニアグランプリファイナル連覇の夢がついえたので、次は世界ジュニア連覇を目標にする」と公言していました。

なので、来年の世界ジュニアに楽しみが増えたと思うようにします
五輪代表争いの一角に彼が入って来るとそれはそれで面白かっただろうなと思うと残念ではあるんですけどね