今回は2025ハルビン冬季アジア大会(アジア冬季競技大会)、アイスダンスFDとペアフリーについてです。女子シングル&男子シングルフリーはまた改めて振り返ります。
アイスダンスでは「うたまさ」金メダル、「あずしん」銅メダル。ペアでは「ゆなすみ」銅メダル、「さえルカ」が四大陸ミニマムクリアとおめでたいこと続き。
後半には、衝撃的?だった北朝鮮ペアのフリー使用曲について、ちょっと多めに書いてます。調べたら色んな意外なことが出てきちゃいまして…
先日の投稿で「見どころ」だと私が思っていた部分のおさらいもしていきます。

競技2日目のアーカイブ動画等の資料
アイスダンスFDとペアフリーはこちらでアーカイブ視聴が可能です。

動画は8時間超ありますが、アイスダンスは動画尺の4時間半あたりから、ペアは6時間あたりから始まります。
採点表は下記に格納されています。Judges Details per Skater というタイトルです。滑走順(Start List)等もここに入っています。
アイスダンスFD
笑顔満載の演技で気になっていたRD6位のインドネシアカップル(4:35:10あたり~)。FDも民族色豊かに攻めて来るかと思いきや、FDは超王道の「シェルブールの雨傘」でした。
今回の大会は全カテゴリ両方とも民族色たっぷりってのは見なかったような気がします。
中国勢対決の行方
RD2位(REN Junfei /XING Jianing組)と4位(XIAO Zixi/HE Linghao組)との中国勢対決はRD2位組に軍配が上がりました。
🥈🇨🇳Ren Junfei & Xing Jianing scored a total of 171.25 points (RD: 64.29 FD: 106.96) to secure China's 1st #figureskating medal in the ice dance at Harbin #AsianWinterGames
— CGTN Sports Scene (@CGTNSportsScene) February 13, 2025
🎙️Ren:
"We've already shown our best level. I believe that we'll skate better in the future."#Harbin2025 pic.twitter.com/9djqoOqA4k
RD2位の組(5:15:33あたり~)はリンクインしてきたときの空気で既に場を支配してた感がありました。ワールド代表はほぼ当確かな…?ワールドのミニマムスコアをクリアできたのは2位組だけ。4位組(4:52:30あたり~)は2.94点足りず、四大陸に挑戦持ち越しです。
日本勢の活躍
「あずしん」こと田中梓沙/西山真瑚組(5:07:27あたり~)と「うたまさ」こと吉田唄菜/森田真沙也組(5:24:20あたり~)の演技はどちらも堪能できました。2組もメダルを獲得し、うち一つは金メダルとあればメディアでもしっかり報道されるのでアイスダンスが少し注目されて嬉しいです。


私はアイスダンスのレベル判定基準がよくわからず、暫定スコア表示をチラチラ見つつ「おーエッジ深いっ!」「リフトかっけー!」とお気楽に見ています。なのでリンクから上がって来る際、森田真沙也選手が「超悔しい!最後のロッカーのところ…」と悔しがっているのを見て、ようやく悔しいミスがあったことに気づきます。

サーキュラーステップの最後の方、リンク壁脇で一瞬少しだけつんのめったところですかね?足元映ってないからよくわかんないけど。
演技終盤で「たぶんこれなら行けるな…」と思い始めた頃だったので余り気にとめておりませんでした。
伊藤みどりさん現役時代からアイスダンス見るのは大好きなんですけど、度重なるルール変更についていくことを諦めてもう何十年。シングル競技のルール改訂についていくだけで精いっぱいなので、永遠にライトファンを卒業できません(苦笑)。
ペアフリー
怪我との闘いもあった日本勢
ペア日本勢は二組とも捻挫などの怪我を抱えていて本調子ではないまま大会を迎えました。まぁ怪我が一番多い印象があるペア競技だと、本調子で臨める機会はそうそうないのかもですが。
そんな中で「ゆなすみ」こと長岡柚奈/森口澄士組(6:47:06~あたり)は2位に僅差の銅メダル。惜しかった~滑りいいんだからもうちょっとPCSちょうだいよ!って思いました。
さえルカこと清水咲衣 /本田ルーカス剛史組(6:06:30~あたり)は、今季四大陸のミニマムスコアをクリア!
来季の四大陸のミニマムスコアが上がる可能性はありますが、これで来季のチャンピオンシップ大会に出られる確率が上がりました。まだペアを組んで2年目、シニアの大会出場は全日本を含んで2回目だということを考えれば凄いことです。
過去のアジア大会で日本ペアが表彰台に上ったのは今大会が初めて。
つまり、全カテゴリで表彰台は史上初。純粋にめでたいです。
フィリピンペアのミニマムスコア獲得はならず
下記の投稿で見どころの一つに挙げていたフィリピンペアのミニマム挑戦ですが…6.40足りず、次の挑戦は四大陸選手権に持ち越されました。まぁ四大陸の見どころが増えたと思うことにします。

北朝鮮ペア 「あの曲なのに、あの曲じゃない」の謎
これはあの曲では?
北朝鮮ペア(RYOM Tae Ok/HAN Kum Chol組 6:38:32~あたり)はSPみたいな北朝鮮風味?の音楽で来るのかと思ったら、意外にも超定番曲のメロディーが流れてきました。
ISUのバイオグラフィーを見るとKim Hyok Chol作曲の「Flocks of Wild Geese」という曲です。しかし、ところどころが違うものの、誰がどう聴いても「Rain, In Your Black Eyes」なのです。
(ペアだと中国スイ/ハン組のプロで有名、最近だと鍵山優真選手が昨季フリーに使用した定番曲)

そしてこの作曲家の名前で検索すると…対米外交に関わっていて粛清(処刑)されたという噂が立っている外交官が出てきます。
…どういうこと?と、頭が「?」マークだらけに。
北朝鮮では外国の曲を聞いたり流したりすることが厳しく禁止されています。もともと国家保安法で外国の文化持込は禁止されていたところ、2020年12月に「反動的思想文化排撃法」が制定。韓国・アメリカ・日本などの外国の音楽等は厳禁、違反者には極刑もありえるとのこと。
以下は北朝鮮事情をよく知らない一般人の勝手な憶測です。
彼らはフィギュアスケート定番曲の「Rain, In Your Black Eyes」をフリーに使いたかった。しかしお国の決まり上「海外の曲(作曲者はイタリア人)」を使用することは許されない。なので微妙に変えた曲を作ってもらい、「よく似てる“別の曲”で滑る」ーという建前を作ろうと考えた。
ただし北朝鮮では音楽活動全般が厳しく統制されており、個人が独自に作曲・演奏することは事実上困難。そこで政府側と交渉した末に外交官の名義で「彼が作曲した国産曲」扱いにしたのでしょうか?
北朝鮮は国家プロジェクトの一環としてミラノ五輪にフィギュアスケート選手の派遣を考えているように見受けられるので、おそらく選曲の過程から政府レベルで調整済みなんじゃないかと…いやそう思ってないと怖い。
でも、たまたま外交官と同姓同名の無名作曲家が「無断借用」した曲を使っただけという可能性もあります。(外国の音楽を大っぴらに聴けないがゆえ、「無断借用」音楽が横行しているそうです)

公の場所で彼らに無邪気に
「これ、“Rain, in Your Black Eyes”ですよね?」
って話しかけたりしたら彼らの立場マズくなるんだろうな…
シーズン前半のフリー曲とかなり違う!?
「何でスケオタの間でこのフリー曲が今まで話題になってなかったんだろう?」と不思議になった私。今季彼らが出場したロンバルディア杯&ネーベルホルン杯のフリー演技動画を探して視聴しました。
※Taeok RYOM Kumchol HAN や RYOM Tae Ok で検索したら出てきました
そしたらね…曲がほぼ別モノ。SP同様北朝鮮ミュージック風味がめちゃくちゃ濃い。同じ曲の違う部分を使っているのかもしれないけど、「Rain, In Your Black Eyes」風味ゼロなんですよ!
単純に曲を変更したのかもしれないと思って、ISUバイオグラフィーの履歴調べたけれど、昨秋からフリー曲情報は変更なしでした。

ひょっとして、ミラノ五輪までここから1年かけて「Rain, In Your Black Eyes」成分を徐々に濃くしていく長期計画なのか?とすら穿ってしまいます。
曲の違和感を抜きにすれば、彼らの演技自体は良かったです。ゆなすみ&ウズベキスタンペア(GEYNISH Ekaterina/CHIGIREV Dmitriy組 6:56:03~あたり)にもミスが複数出たため、最もミスを抑えることができた北朝鮮ペアの演技がフリー1位。
ウズベキスタンペアはSPのリードが生きて金メダル、北朝鮮ペアはSP2位のゆなすみを0.53上回り銀メダルを獲得しました。
ウズベキスタン、北朝鮮、日本の国旗が並ぶ激レア表彰式
ウズベキスタンの国歌、たぶん初めて聴きました。ウズベキスタン・北朝鮮・日本の旗が上がるフィギュアスケートの表彰式はそうそうないでしょう。
ゆなすみは体調万全で臨めていたら金メダルの可能性も充分あっただけに、ちょっと悔しそうでしたね。でもシニアの大きな国際大会で初の表彰台は本当にめでたい!彼らのキャリアはまだまだこれからなので、これからどんどん表彰台に乗って行ってほしいです。

日本人選手のメダルのかけ方は三組三様
すんごい細かいことなんですが、表彰台に乗った3組の日本選手のメダルのかけ方が3組3様で楽しかったです。意識してやってるわけじゃないんだろうけど、各組ごとにメダルの紐を掛けるとこが違うんですよ。
ゆなすみ:上着の襟とフードの間に紐を回す派
あずしん:上着フードの後ろに紐を回す派
うたまさ:上着の内側の首元に紐を掛ける派
田中梓沙さんが、マスコット人形を貰った直後に人形がどれだけ開脚できるかを試すかのように開いてるのもちょっと面白かったです。無意識にやってるのかなw
配信動画が長く残っていると、表彰式をのんびり楽しめるのが嬉しいです。周回なかったのは残念ですけど。(翌日の表彰式では周回してましたが、引きでしか映ってません)
第9回アジア冬季競技大会
— 公益財団法人日本スケート連盟 Japan Skating Federation (@skatingjapan) February 13, 2025
ペア #長岡柚奈 / #森口澄士 組🥉
アイスダンス #吉田唄菜 / #森田真沙也 組🥇 #田中梓沙 / #西山真瑚 組🥉
その他詳しい結果はこちら
応援ありがとうございましたhttps://t.co/B5KLeNnod1#フィギュアスケート #FigureSkating #AWG2025 pic.twitter.com/v5T8GGGqGy
おめでとうございます!
2017年男子シングルの表彰式本当にかわいかったからもう一度見てこようかなぁ。動画はいつまで残してくれるんでしょうね。
ちなみに今回2位になった北朝鮮ペア、男性は別選手ですが2017アジア大会で銅メダルを獲っています。この後平昌五輪に出て話題となり、その後の四大陸で銅メダルを獲得。8年前のリョム・テオク選手を今見ると凄く幼く見えます。
下記の投稿に、フリーの動画に北朝鮮ペアが出て来る時間情報&平昌五輪時のBBC記事を追記しておきました。(当時のコーチがブルーノ・マルコットさんだと書かれていてビックリ!)
