ボストンで現地観戦した2025世界フィギュアスケート選手権、今回はペアの振り返りです。SP&フリーをまとめて記録してます。
現地滞在中に感想をある程度は書き残せているので、観戦直後に書ききれなかったことやワールド終了後に調べて知った新情報&来季の展望などを中心にまとめました。
競技終了後、実は骨折していたことが判明したダニエル(ダニー)・オシェイ選手(米国)の最近のインスタ情報があまりにも強烈だったので、彼のエピソード分量かなり多め(笑)。
最後の項目はりくりゅうの公式動画&私が現地で撮影した写真を残しています。
サブリンクでのペア練習風景
女子SP振り返りの時にもご紹介しましたが、米国スケート連盟のYoutube公式チャンネルで、プラクティスリンク(サブリンク)でのペア&女子の公式練習動画が視聴できます。(男子とアイスダンスのサブリンク動画にはジオブロックがかかっているのに、ペアと女子は設定をしそびれているのか日本からも視聴できます)
約1分と短いですが主要選手は一通り映っていて、プロの撮影&編集でかっこいい映像です。りくりゅうはもちろんのこと、ゆなすみも複数回映っています!
ペア SP&フリーを振り返る
ボストン滞在中にしたためた本番リンクでの公式練習とSP&フリーについての現地でのフレッシュな鑑賞記録はこちら。

2025世界フィギュアスケート選手権ペアSP採点表
2025世界フィギュアスケート選手権ペアフリー採点表
「ゆなすみ」こと長岡柚奈/森口澄士組
ゆなすみ&りくりゅうの二組に演技については滞在中にあらかた書き残せているので、ゆなすみの来季の展望を中心に記します。りくりゅうの来季への期待は国別対抗戦の時に少し語ってますしね。
世界フィギュアスケート選手権初出場の長岡柚奈/森口澄士組は、残念ながらフリー進出を果たすことができず、ミラノ五輪出場枠を確定できませんでした。

彼らがミラノ五輪に出場するチャンスをつかむには、9月に北京で開催されるミラノ五輪オリンピック最終予選大会で上位に入る必要があります。
世界フィギュアスケート選手権大会後のISUの発表によると、ペアのは15枠が確定、残り3枠を予選大会で争います。(国籍問題や怪我等で枠を返上する国が今後出る可能性はありますが)ロシア・中国・アメリカ・日本・北朝鮮・ウクライナ・フランスあたりのペアが候補でしょうか。
北京五輪銅メダルのアナスタシア・ミーシナ&アレクサンドル・ガリャモフ組(ロシア)の五輪出場をISUやIOCが認めると、残り枠は実質「2」です。ウクライナ侵攻開始時にプーチン氏を支持する行動をしたことがどう取られるかが鍵。
金メダルを争える実力のロシアペアが揃った試合を見たい気持ちはありますが、現在の状況下では出場が決まっても決まらなくても複雑な気分になりそうです。9月の予選大会本当ドキドキしそう…
何年かあとに「こんな時もあったね」と思い返せるように、SP演技公式動画埋め込んでおきます。
ミスが目立つ演技になってしまいましたが、リフトは6.92点と、エリー・カム/ダニエル・オシェイ組の6.99点に続く全組中2位の評価、何とりくりゅうのリフト点数(6.78点)をも上回ったのは実に凄いことで、本当「期待の若手」だと思います。
アリサ・エフィモア/ミーシャ・ミトロファノフ組(米国)
ボストン入りした初日、私は町中にある世界フィギュアスケート選手権の広告に使われているペア選手がこのアリサ・エフィモア/ミーシャ・ミトロファノフ組の二人であることに気づきました。

なんで去年の世界王者のディアナ・ステラート=デデュク/マキシム・デシャン組(隣国カナダ)やアメリカ1番手のエリー・カム/ダニエル・オシェイ組じゃないんだろう?ーって素朴に不思議で。
(直近の全米選手権1位ではありますが、スコアやランキングなど総合的には“2番手”と認識してたので)
すぐに理由はわかりました。私はアリサ・エフィモア選手が元ロシアの選手で、ドイツ男子と何年か組んだ後、今は米国男子と組んで米国代表として出ていること&国籍の問題でオリンピックには出るのは厳しそうなことぐらいしかすぐには思い出せなかったんですけど、そういえば彼らの本拠地はボストンでした。
しかも、今年1月末に起きた米国の航空機事故でコーチ&生徒に犠牲者が出たボストンスケーティングクラブ所属。追悼ショー「Legacy on Ice」でもジミー・マー選手やマキシム・ナウモフ選手と一緒に出ていましたね。

※「Legacy on Ice」の配信動画、また見られるようになっていますので見逃した方は今からでも視聴できます
会場では、「大変な数か月を過ごした彼らには是非とも頑張ってほしい」という米国観客の熱が感じられました。SPは9位スタートでしたが、フリーはうまくまとめ切ることができたので会場はもう大盛り上がり。

演技後半からは会場のボルテージが凄く、観客は熱狂のあまり演技終わる前にスタンディングオベーションし始めまして。

私もいい演技だと思って見ていましたが、周囲の余りの熱気の強さと自分の中の熱気との違いに戸惑いが強く、席を立ちあがる瞬間を見失ってしまいました。点が出るまで大勢が立ちっぱなしだったので遅れて立つこともできたんですけどね。
この時スタオベし損ねてしまったのを、今はちょっと後悔しています。
彼らは国別対抗戦に来てくれたけれど、フリーではあの時の演技のようにはいかずで、「あれはそう度々訪れない貴重な瞬間だったんだから、あの時スタオベしときゃよかったな」と思いました。「推しは推せるときに推せ」じゃないけど「スタオベはスタオベできるときにしとけ」です。
サラ・コンティ/ニッコロ・マチー組(イタリア)
コンマチ組ことサラ・コンティ/ニッコロ・マチー組は、モントリオールワールドの時と比べると別人のように思えました。
今季SPのカルメン、好きだったな~。こういうオーソドックスクラシックプロが今は逆に新鮮です。

私は彼らの2022さいたまワールドフリーの「ニューシネマパラダイス」が強烈な記憶として残っていまして。熱心に応援していたペアでもなかったのに何故か気持ちをガッツリ持っていかれてしまい、演技終了後に弾け飛ぶようにスタオベしたのを覚えています。会場を包んだあの空気感は圧倒的で、今も忘れられない演技です。そんな演技がミラノ五輪でできるといいなと思います。

そして、是非ミラノ五輪エキシビションであの男女逆転プロを一般人にも見てほしいです(笑)
ミネルヴァ・ファビアン・ハーゼ/ニキータ・ボロディン組(ドイツ)
今年のグランプリファイナルでりくりゅうを抑えて優勝し、下馬評でもワールド金の予想が多かったハゼボロ組ことミネルヴァ・ファビアン・ハーゼ/ニキータ・ボロディン組。

フリーは見事にまとめてきて、「いや~金メダルのハードル随分上げてきたな~」と思わせられました。これまで彼らは「高難度技を淡々と着実に入れて来るタイプ」という印象で、私の中では今一つ彼らには強い思い入れは育っていなかったのですが、演技終了直後の二人の姿を見て少し心境が変わりました。
「あーやったー!!!」ってな感じで大の字に氷上に寝そべるミネルヴァ選手は強烈で。

今まで数々のスケーターの大の字姿を見て来たけれど、今までで一番ダイナミックな気が(苦笑)。
「そういう感じのキャラだったのか」とわかった今後は、二人に人間味を見出しながら演技を見られそうです(笑)。
エリー・カム/ダニエル・オシェイ組 大会直前の怪我は骨折!
さて、ここからは私が結構好きなエリー・カム/ダニエル・オシェイ組(米国)のエピソードを掘り下げます。
今季の彼らは苦手なスロージャンプが安定してきていたのですが、ワールドでは決めきれませんでした。私はダニエル・オシェイさんが発するハッピーオーラが好きで応援してたのでちょっと残念…。
彼らはフリー演技後のインタビューで、「オシェイ選手が大会直前に怪我してしまった」と話していたので、「全然そんな風には見えなかったのに、そんなことがあったのか。良く踏ん張れたな」と思っていました。
Ellie Kam / Danny O’Shea 🇺🇸 126.77 / 195.38
— Golden Skate (@goldenskate) March 28, 2025
Danny: “We are very happy with what we accomplished this week, together alongside Alisa and Misha. We secured the three spots for Worlds next year and the third potential Olympic spot. It means a lot to us. The past week has been… pic.twitter.com/oNd9QS9DpP
で、ワールドの次の週の投稿を見てビックリ。
え、入院して手術受けてる?

2枚目に掲載されてるレントゲン写真を見ると…「あ、足の甲の骨が完璧にパキッと折れてるやん…!」
何と、オシェイさんはボストンに向け出発する2日前に骨折してたんですと。
彼は後日の投稿で一連の顛末を写真15枚に文章を載せてガッツリ紹介しています。
起きたことは全然笑いごとじゃないのに終始ユーモアに満ちてて、オシェイさんのポジティブさがステキすぎる。
最初は骨折してるとは思いもせず、痛み止め飲んで済ませて1日休養した翌日にはフリーの通し練習(ひぃぃ!)。その直後にボストンに移動。
移動時の空港ではおとなしく車いすを使ったようですが、ホテルのロビーでは痛くないふりをして歩いて見せたそう。でも周囲には足を引きずってるのがバレバレだったらしいーとセルフツッコミを入れています(苦笑)。
足も腫れてただろうにどうやってフィギュアスケート靴を履くことができたんでしょうか。そんな状態でもSPはほぼクリーンな演技でSP5位。フリーもミスが複数出ながらも後半立て直して、総合7位。

アリサ・エフィモア/ミーシャ・ミトロファノフ組が健闘して総合6位だったので順位の合計13、アメリカはペア3枠確保をギリギリのところで実現しました。
試合終了後、彼がボストンで急遽診察してもらったのはなんと小児科病院!

どういう経緯で小児科に行くことになったのかは謎ですが、「あの風貌の彼が子ども達で溢れる小児科で診察を受けていたのか」と思うとちょっと微笑ましいですね(笑)
そこで初めてレントゲン撮影を行って骨折が判明、帰宅して数日で地元の病院で手術となった次第。
インスタ5枚目に手術後のレントゲン写真を載せてるんですが、金属プレートらしきものが骨にグサグサ刺さってるかのように折れた骨を固定した状態で埋まってまして。見てるだけで痛い…。
彼は今もまだ右足を地面につくことが許可されていないようですが、上半身の筋トレ励んだり片足立ちトレーニングしたり、プールで歩行訓練したりと、リハビリの様子をインスタに投稿し続けています。
ーそしてここでも応援の投稿をする、足の手術経験者のドノヴァン・カリーヨ選手!(ルナ・ヘンドリックス選手の手術後も激励の投稿してました)
「五輪シーズン直前に何てこった…」と焦る気持ちは心の中にあるかもしれませんが、超ポジティブにリハビリの日々を投稿してるオシェイさんが面白すぎて、私最近の投稿全部チェックしちゃいました。そして、「そういう人間性が滑りに出て来るからこそ、私彼らの滑り好きなんだろうな」って思いました。
航空機事故犠牲者の追悼式典&製氷タイムのトークショー
ペアSPの日に行われた、競技以外のイベントについても記録しておきます。
ペアSP前に実施された米国航空機事故犠牲者の追悼式典
競技初日、ペアSP開始前の時間帯に米国航空機墜落事故の犠牲者を追悼する式典が行われました。
関係者の挨拶や聖歌隊の合唱が行われたほか、モニターには犠牲になったフィギュアスケート関係者たちの写真や映像が流されました。ニュースなどで目にしていた映像ではありましたが、これほどまでに輝いていた命が失われてしまった事実の重さを痛感しました。

競技中は選手の氏名や国名、インスタアカウントなどを華やかに表示していた場内デジタルサイネージ。式典中は寒色に統一され、犠牲者の名前が映し出されていました。

米国のフィギュアスケート関係者も多く訪れていたでしょうし、犠牲者を直接知る人達も多く会場にいたことでしょう。米国のフィギュアスケート界にとって大きな打撃だったことを実感する式典でした。


整氷中のトークショーにペアの元世界王者登場
会場の司会は往年の名選手のアシュリー・ワグナーさん&ベンジャミン・アゴストさんらが務めていましたが、各カテゴリごとに、整氷中の時間帯に短いトークイベントを会場観客向けにやっていました。
女子SPのときは、宇野昌磨さんが登場。(下記記事の前半で写真入りで取り上げてます)

ペアSPの整氷時間帯は、アメリカの元世界王者・アレクサ・クニエリム & ブランドン・フレイジャー組(2022年モンペリエワールド金メダル)が登場!

2023さいたまワールド銀メダル獲得後、その年の国別対抗戦で素晴らしい演技でパーソナルベストスコアを更新し引退。北京五輪まで続けるかな?と思ってたのですが、どうもアレクサさんが不妊治療に専念したかったようで。アレクサさんの夫は、前パートナーのクリス・クニエリムさん。二人は3月中旬に体外受精で男子を授かったことを発表したばかり。
トークコーナーでも「そうなのよ~男の子が生まれるのよ~♪」と、アシュリー・ワグナーさんと盛り上がってましたね。アシュリーさんの娘さんも1歳半で会場に連れてきていた模様で、時々娘さんの話をしていました。
りくりゅうの演技動画と現地撮影写真
2025ボストンワールドペア競技の話題は、二度目の優勝を果たしたりくりゅう抜きでは終われません。
あの演技を見返す時用に公式の演技動画と私が会場で撮影した写真をここに残しておきます。
ちなみにりくりゅうの観客へのメッセージは、シンプルに「THANK YOU FOR YOUR SUPPORT」でした。(全選手ともメッセージは一種類のみ)



