今回は、ミラノ・コルティナ冬季オリンピック2026(ミラノ五輪)のフィギュアスケート・エキシビションで、男子シングル金メダリストのミハイル・シャイドロフ選手が演じていた「カンフー・パンダ」のプログラム、そしてこの演技が初披露されたアイスショー「THE ICE(ザ・アイス)2024」について語ります。
エキシビション全体の振り返りについてはこちらをどうぞ

ミハイル・シャイドロフ選手がミラノ五輪で「カンフー・パンダ」を披露
「カンフー・パンダ」は今季ではなく昨季のエキシビションプログラム
ミハイル・シャイドロフ選手がミラノ五輪エキシビションで演じた「カンフー・パンダ」は、昨シーズン(2024-25)のプログラム。今季の彼は、エキシビションではエレクトロ要素を持つ、カザフスタン現代ポップソングの「The Storm」を使っていました。
でもフィギュアスケートファンの多くは、五輪エキシビションにはこちらのプログラムを求めていた気がします。ちゃんとこの着ぐるみ、ミラノに持ってきていたんですね。
終盤滑走で最大の武器となった「パンダの着ぐるみ」
彼は五輪メダル候補者ではありましたが、金メダル獲得は「まさか」の事態でした。
金メダリストになったがゆえ、エキシビションでは坂本花織選手の現役時代総集編のような情感溢れるプロ⇒イリヤ・マリニン選手の葛藤や苦しみを情熱的に表現したプロ⇒「フルシゼ」ことロランス・フルニエ・ボードリー/ギヨーム・シゼロン組の圧巻のプロという3連続の後という、なかなか凄い登場順でした。

ある意味、あのパンダの着ぐるみが彼を守ってくれて本当に良かったと思います
ミラノ五輪バージョン「カンフー・パンダ」の豪華さ
ミハイル・シャイドロフ選手は、2025ボストンワールド(世界フィギュアスケート選手権)で銀メダルを獲得。その時のエキシビションでは、ゲーム『モータルコンバット』のキャラに扮装したルカ・ベルラワ選手(ジョージアのペア選手)が途中から出て来て、ペアの大技をシャイドロフ選手と組んで披露しました。

上記のボストンワールドエキシビションの振り返り記事では「ミハイル・シャイドロフ選手の『カンフー・パンダ』最終形?」という小見出しをつけていたのですが…その進化系がミラノ五輪で見られるとは!
予想通りにルカ・ベルラワ選手は出てきたのですが、一人ではありません。一緒に映画「デッドプール」主人公の赤い戦闘服姿の男性も登場。その瞬間、私は「ニカ・エガーゼ選手はこのためだけに出て来てくれたのか!」と驚きました。(推測ですが、彼は本当の“友情出演”だったのかもしれません)


ニカ・エガーゼ選手のエキシビションプログラムを見たことのあるフィギュアスケートファンなら、覆面をしていてもあれが誰だかはすぐ分かったんじゃないかと思います
五輪仕様?演出が少し上品に
ちなみにいつもなら、「カンフー・パンダ」が「敵」をおならでやっつけるシーンがあるんですが、今回は「かめはめ波攻撃」みたいなアクションに変更していました。
さすがに五輪でアレは下品だから、自粛したのだと思われますw
最後にはジャッキー・チェンさんがリンクサイドに登場!
最後には、アニメ映画「カンフー・パンダ」で主役の声を吹き替えている俳優ジャッキー・チェンさんが登場、両手にパンダのぬいぐるみを持ってミハイル・シャイドロフ選手を称えて迎え入れるという演出まで。
ここまで用意されているとは、彼は最初から「エキシビションを賑やかにしてくれるコミカルプログラム要員」として最初からエキシビション出演が約束されていたのか?と勘繰ってしまいました。
でも、報道によるとそのような事実はなかったようです。
たまたまこの日会場にジャッキー・チェンさんがいらして、ミハイル・シャイドロフ選手が「カンフー・パンダを演じるので見ていってください!」と直接お願いしてこういう演出をやることになったーーと、カザフスタンの地元メディア「インフォーム」が報じているそうです。(詳細は下記記事)

最後、ジャッキー・チェンさんがシャイドロフ選手にパンダのぬいぐるみを渡すものだとばかり思っていたのですが、結局渡さずじまい。

「渡さんのか~い!」ってちょっぴり思いました(笑)

「カンフー・パンダ」初披露時の衝撃(「THE ICE 2024」リハ公開)
おそらく、「カンフー・パンダ」プログラムを世界で初めて見た一般観客は、「THE ICE 2024」のリハーサル公開に参加した数百名だと思います。私はその一人でした。
かなりの衝撃だったので当日夜に書いた記事に是非とも書きたかったんですが、「これ、ネタバレしちゃまずいよね…」と断念。「シャイドロフくんの個プロはなかなか冒険してるが彼のファンはどう感じるのか気になる(笑)」としか書けませんでした。

リハーサルでは、グループナンバーの練習や、各スケーター達がショーで披露する個人プログラム(多くは2024-25シーズンの新ショートプログラム)をやっていました。なので、観客の多くは「新プログラムを見られる興奮」に盛り上がっていました。
しかし彼は、そこに巨大なパンダの着ぐるみ姿で登場したんです。

「これ、わざわざカザフスタンから持ってきたん…?」というのがまず第一の衝撃
当時の彼の世界選手権最高成績は14位。グランプリシリーズで3位表彰台に乗っていたので「注目の若手枠」の選手でした。当時はクールなハンサム少年のイメージで、こういうコミカルプログラムをやるようなキャラには全然見えませんでした。そのため、正直戸惑いの方が大きかったのを覚えています(笑)。
リハーサル公開での演技では、アレクサンドル・セレフコ選手(エストニア)とニカ・エガーゼ選手(ジョージア)が「敵役」として登場しました。でも、彼らは二人とも練習着姿だったこともあり戦うアクションをしていても「一体何が始まったんだろう?じゃれてるの?」という感じで、観客の受け具合は正直言いまして微妙でした。
皆、拍手はしていて暖かい雰囲気ではあったんですが、私と同様、「戸惑い」の方が大きかった印象です。
愛知公演では披露せず、東京公演でようやく初披露
しかし、愛知公演では彼はこのプログラムを一度も披露しなかったんです。ミラノ五輪でも使用した「DUNE 砂の惑星」のショートプログラムを全公演で演じました。
なので私は、「リハで見たアレは一体何だったんだろう…まさか本番ではやらないつもりなんだろうか?あんなかさばるものをわざわざ空輸してきてやらないなんてことありえるのだろうか?」と心配になりかけていました。
インスタにあげられた下記のおふざけ動画でも、着ぐるみに入った人が宇野昌磨さんだと誤解されてしまっていたし、「このままあのプロが日の目を見なかったら不憫だな」「リハーサル公開で私達の反応が微妙だったからやるの辞めちゃったのかな」とまで思い始めていました。
「カンフー・パンダ」プロの正式初披露は「THE ICE 2024」東京公演
しかし、「THE ICE 2024」の最終公演地となる東京公演(会場は千葉・ららアリーナ東京ベイ)にて、ついにこのプログラムを演じました。これが日本での初披露となります。
私は「これは記録しておかねば」と妙な義務感に駆られて撮影しました。(「THE ICE 2024」には、全編観客撮影OKの回がありました)素人撮影で画質音質ともに今一つですが、当時の雰囲気は味わえるかと思います。
このときはダブルトゥループを跳んでいた記憶がありますが、色んなところで披露していく間にトリプルトゥループに変化。今回のミラノ五輪でも、着ぐるみ姿のままトリプルトゥループを決めていました。
でも、ひょっとして私が最初に見たのもダブルじゃなくてトリプルだったのかもしれません。(パンダが巨大過ぎて正直回転がよく見分けられませんw)
「THE ICE 2024」をミラノ五輪後に見返すとかなりの豪華メンバー?
この時の「THE ICE 2024」は、海外の男子シングル選手を数多く呼んだ回。
一般的な知名度ではまだまだだったミハイル・シャイドロフ選手やニカ・エガーゼ選手、アレクサンドル・セレフコ選手が参加していました。
引退を表明したばかりの宇野昌磨さん、イリヤ・マリニン選手、チャ・ジュンファン選手が三枚看板で、更にデニス・ヴァシリエフス選手、ケヴィン・エイモズ選手、三浦佳生選手という顔ぶれでした。

※アイスダンスからはマディソン・チョック/エヴァン・ベイツ組(米国)とガブリエラ・パパダキス/ギヨーム・シゼロン組(フランス)、ペアからはエミリー・チャン/スペンサー・アキラ・ハウ組(米国)も参加。宮原知子さんと米国のアイスダンサー、ジャン=リュック・ベイカーさんもナビゲーター役として登場。
今思うと贅沢な顔ぶれですね。
それぞれの個人プログラムだけではなく、グループでの演技動画や、氷上で彼らがチームを組んでコミカルなゲームを楽しんでいる様子が観客に多数撮影されていて、動画サイトやSNSを探せば今も視聴可能です。
私が撮影した写真や映像などを載せた当時の鑑賞記も、参考に置いておきます。当時の空気感、ショーの内容がある程度伝わるかと思います。


「今の現役男子シングル選手の空気感」には「THE ICE」の影響あり?
THE ICEは2025年は開催がありませんでしたが、今後どうなるでしょうか?
ミラノ五輪を機に、あのショーを今懐かしく思い返しています。
2023年はネイサン・チェンさんやアダム・シャオ・イム・ファ選手も参加していましたし、一時は「世界のトップクラス選手の夏合宿」の様相を呈していました。
ミラノ五輪でのインタビューでイリヤ・マリニン選手が「メッチャツカレタ」と発言して世間の話題を呼んでいましたが、どうやら三浦佳生選手が教えたようです。親しくなったのはTHE ICEでの共演がきっかけです。

ミラノ五輪でミハイル・シャイドロフ選手のエキシビションにニカ・エガーゼ選手が「友情出演」したり、イリヤ・マリニン選手があのフリー演技後にミハイル・シャイドロフ選手にハグしにいったりしたことは、アイスショー「THE ICE」で共に長く過ごしていたことも大きいんじゃないかと個人的には思っています。
ミハイル・シャイドロフ選手の「カンフー・パンダ」プロの話題を掘り下げていったら、「THE ICE」が現役男子選手に果たした役割まで話が拡大してしまいましたね。
ライバル同士が互いをピリピリとライバル視する時代も、あれはあれで一興がありましたが、時代はすっかり変わったなと思うミラノ五輪でした。

