2024グランプリファイナル(GPF/GPFinal/GPF2024)、試合2日目のペアフリー&男子SPの記録を中心にまとめました。後半にジュニア男子SPとジュニア女子フリーの記録もあります。
アイスダンスは今回割愛。試合内容の情報だけ仕入れて「おおお」となってしまって配信映像をすぐに見るのにためらいが…色々落ち着いたらゆっくり見るつもりです。女子フリーと男子フリーについてはそれぞれ改めてまたゆっくり。
今大会は本当にテクニカル厳しかったですよね…
試合自体は面白かったですけれど、現状の採点システムに対して色々考えさせられる大会でした。
ペアフリー(シニア)
前半グループ
先日の「グランプリファイナルの私なりの見どころ」を書いた投稿では、次のように書いていました。
サラ・コンティ/ニッコロ・マチー組の演技にはいぶし銀の風格を、エリー・カム/ダニエル・オシェイ組にはスロージャンプが全部決まることをそれぞれ期待しています。
サラ・コンティ/ニッコロ・マチー組、ニッコロ選手が調子今一つ?と思ったら風邪ひいてたらしいです。総合4位、若手のメテルキナ・ベルラワ/ルカ・ベルラワ組にはあと一歩届きませんでした。
Sara Conti / Niccolo Macii 🇮🇹 129.57 / 200.06
— Golden Skate (@goldenskate) December 6, 2024
Sara: “Today was not our best, not the best program we can do. But it’s okay, these mistakes can happen. We had a problem with the first element and it’s not easy then to skate the rest of the program.”
Niccolo: “My percentage for… pic.twitter.com/JoPzO9EIkF
エリー・カム/ダニエル・オシェイ組はスロージャンプ、フリーでは2本とも着氷しました!
飛距離控えめなスローだったけど、スロージャンプには違いない。
Ellie Kam / Danny O‘Shea 🇺🇸 129.35 / 198.26
— Golden Skate (@goldenskate) December 6, 2024
Danny: “We feel really happy. Today a lot of the harder things worked out.”
Ellie: “It was the first time for us with the three jump combination, it was a little shaky but we got through.
Also I got my first flower crown, that’s the… pic.twitter.com/uk526eh50u
上に投げる(ツイスト)は上手いのに横に投げるのはそんなに勝手が違うものなのか…本当この組はスロージャンプさえ克服できればなと思います。彼らは難しい入りをすることで加点が取れる工夫をしてはいますが、私はやっぱり飛距離のあるスロージャンプが好みです。
後半登場のりくりゅうは?
「りくりゅう」こと三浦璃来/木原龍一組の「Adios」は、残念ながら三連ジャンプもスロージャンプも今一つ決まらず。フリー3位で総合2位に終わりました。
その後登場したSP1位のハセボロことミネルバ・ファビエンヌ・ハゼ/ニキータ・ボロディン組。ミス少なくレベルを揃えて来れるところが強みの彼ら、今回も3連ジャンプで回転不足があった程度で後は加点多くまとめてきました。
タスクを次々と処理していくような印象を少し感じてしまうのですが、ここまでまとめてこられたら文句なしの優勝ですね。
去年GPFで初優勝した時は、ニキータ・ボロディン選手の母国ロシア関係者からだいぶネチネチ言われてましたが、今年も言われてるのかな?
ミラノ五輪に彼らが出場するためには、ニキータ・ボロディン選手がドイツ国籍が取得できるかどうかが鍵。
ドイツの国籍取得条件は今年緩和されていますが、彼らの世代はドイツ語取得が必要条件のままのようです。ボロディン選手ってどこまでドイツ語マスターできてるんでしょう?最低3年の居住歴が必要なので認められるとしたら本当ギリギリの時期ですよね。
りくりゅうの現在地
ペア王国ロシアの選手が北京五輪以降国際試合に参加できなくなり、本来ならトップへの階段を少しずつ上がるはずだったりくりゅうはいきなりトップに駆け上がることになりました。
一度トップに立ってしまうと、例え彼ら自身が成長していても順位が一つ落ちるだけで物足りなく思われてしまいがち。昨季ワールドも今回も銀メダルってすごい成績残してるのに、贅沢過ぎますよね。
ジョージアの組など、ロシアのペア技術の系譜を継ぐ組が五輪前までに力をつけてくるだろうというのは予期されていたこと。二人は押しも押されぬ元世界王者だけれど、ロシア選手を追いかける側でもあったことを忘れずに応援したいです。
ちなみにメーガンコーチの談話によると「三浦璃来選手は練習では全部もっと綺麗に下りてるから、試合の時のメンタル調整部分の問題」らしいです。昨季は木原龍一選手の怪我で試合数が少なかったことも影響してるのかな?このあたりは徐々に解決していけるといいですね。
男子SP(シニア)
シニア男子のSPは男子シングルらしい、ちょっぴり荒れた展開となりました。
ミハイル・シャイドロフ選手
アダム・シャオ・イム・ファ選手の欠場により繰り上がり出場となったミハイル・シャイドロフ選手。
(フランスの連盟ってろくでもない印象が強いから、アダム・シャオ・イム・ファ選手は無理して出場させられるんじゃないかと危惧してたけど、ちゃんと休ませてもらえてよかった)
今季大流行の「デューン 砂の惑星」のサントラに合わせた演技。
彼は4回転ルッツなどの高難度ジャンプをバンバン跳んではくるものの、「回転不足やエッジエラー取られやすくて加点を稼げないイメージ」の選手でしたが、今回はジャンプでの加点を多く得られました。
冒頭の4回転ルッツー3回転トゥループは飛距離もランディング姿勢もなかなかの美しさで、加点も1.97としっかりついていました。危なげなく決めた後半の4回転トゥループなんて2.58も加点ついてましたしね。
…しかしスピンのレベル1はいただけない(苦笑)。ジャンプ構成的には100点前後出せてもおかしくないのにスピンステップのレベル取りこぼし多すぎなのとPCS評価が低めなこともあって91.26にとどまりました。でもSP3位!
もともと観客へのアピール能力はある方で勝負強いメンタルの持ち主だし、今後ジャンプ以外の部分が伸びてきたら更に手ごわい選手に育つかもしれませんね。今は「ジャンプ最優先」な印象ですが、PCS向上のための取り組みを真面目にやり始めてくんないかなぁ?
ダニエル・グラッスル選手
ダニエル・グラッスル選手はSPのプログラム変えてきました。
私は前回のプロよりはこっちの方が好みなので、今季後半はこれで行ってくれることを望みます。
今回は4回転ルッツ、4回転ループの2本を投入してきました。ケヴィン・エイモズ選手ほどの高PCSを持たない彼がこのメンバーの中で表彰台を目指そうと思えば2本投入が必要との判断でしょう。
しかしループは明らかに回転足りず「<」の回転不足判定。冒頭のルッツトゥのコンビもファーストが「<」でセカンド「q」の回転不足判定となり81.76と点数は伸びませんでした。
「この試合、回転不足取る時はがっちり取るよ!」と宣言されたような感じでしたね。ここからフリーにかけて、回転不足の取り締まり度合いはなかなかエグかったです。
ケヴィン・エイモズ選手
ケヴィン・エイモズ選手が生まれ育った町・グルノーブルでのグランプリファイナル。
思い入れが強すぎたのかジャンプでは精彩を欠き、4回転トゥループはダウングレード、トリプルアクセルは「<」の回転不足でそれぞれ2転倒。トリプルルッツーダブルトゥループのコンビネーションを何とか下りたものの、ジャンプでの失点が響き68.82。100点超を出したことがある彼からしたらかなり低い点に終わりました。
しかし演技自体は点数から受けるほどそこまで悪い印象ではなく。ジャンプ以外の部分では「ケヴィン・エイモズ選手のスタイル」を保っていました。
そしてミスが続いた後の観客の応援も暖かかった。ホームタウンでの演技ということが逆にプレッシャーになるのでは?と危惧していた部分もあったのですが、いい面もあったんじゃないでしょうか。
今季の彼の演技&演技後のインタビューを見続けてきて「今の彼は多少ミスが続いたとしても以前のような大遭難はせず、最後まで演技をやり遂げられる」と信じられるようになってきました。
後は鬼門のユーロですね…そこさえ超えられればワールドは大丈夫な気がします。
佐藤駿選手
地元スターのケヴィン・エイモズ選手に大喝采が送られた直後に登場した佐藤駿選手。感情がわかりやすく表に出にくいタイプの彼が、演技開始前はかなり緊張した表情だったのでこちらもちょっと不安になりました。
とはいえ、冒頭の4回転ルッツ転倒には驚きましたよ。
今季4回転ルッツ凄く好調なだけに、ミスが出るなら他の部分かと思っていたので。ちょっと固さが残ってはいましたが、その後は全要素をまとめて行きました。
情感が更に増した「佐藤駿版ラベンダー決定版」を今季中に見たいと願っているのですが、今回は叶わず。
まぁこっちもジャンプミスがあると技術点の確保が気になっちゃって演技に没入しづらかったーってのがあるかもしれません。冒頭の四回転ルッツにエッジのアテンション「!」&「<」の回転不足認定がついたこと&PCSが伸びきらなかったことから、86.28点、SP4位発進となりました。
鍵山優真選手
鍵山優真選手の今季SP「サウンド・オブ・サイレンス」はシーズン半ばだというのに既に「鉄板」のイメージ。102~105点ぐらいは常に出せるイメージを勝手に持っていました。まさか冒頭の4回転サルコウで転倒するとは思ってもみなかったです。
スピードがある着氷だからこそ、着氷時のわずかなバランスの違いで滑ってしまったような転倒に見えました。
それでも冒頭のサルコウ以外は綺麗にまとめていたように思ったので、93.49という点数にはちょっと驚きました。サルコウの転倒以外はきっちり演じていたように思うのに何でそこまで下がるんだろう?って。
この疑問は、イリヤ・マリニン選手の採点表と見比べた後、更に募りました。
イリヤ・マリニン選手
イリヤ・マリニン選手、衣装変更はフリーだけかと思っていたらSPでも変えてきました。
私は「変えるんならSP衣装変えた方がいいんじゃ?フードがフェイクプリントされてるのはちょっと…」と内心思っていたので、変更歓迎です。
一見オールインワンのようだけど上下セパレートなんですよね。上半身はジャージ着ててボトムスだけが見えていた6分間練習時には「個性あっていい感じ?」と思っていたので、個人的な好みを言うと、上下お揃いにしないでほしいと思います。トップスでもボトムスでもいいから一度違うのと合わせてくれないかな(身勝手w)。
ちなみに演技後のインタビューによると、「灰色部分は抑制、青の部分は自由を表している」とのことでした。
SP「Running」は全身から彼らしさがアピールされている感があって、「ハマりプロをうまく選んだな」と見る度感心している私。滑りを美しく印象的に魅せる振り付けも多く取り入れられていて、「スケーティングの荒さが目立っていた以前の彼はどこに?」ぐらいの変化が感じられます。
やはりSPには4回転アクセルは入れてきませんでしたが、それでも前半に4回転フリップ&トリプルアクセルを単独で、後半に4回転ルッツートリプルトゥループのコンビーという超高難度構成。
しかし後半のルッツの「q」やスピンステップでのレベルの取りこぼしが地味に響いて105.43。構成難度の割には得点は伸び切りませんでした。NHK杯のSPで鍵山選手は105.70出してますから、彼がSP1位を獲れた可能性も充分あったと言えます。
(もしその結果なら、マリニン選手のフリー構成もだいぶ変わってたかも…)
The top 3 men following the short program:
— Golden Skate (@goldenskate) December 6, 2024
1. Ilia Malinin 🇺🇸 105.43
2. Yuma Kagiyama 🇯🇵 93.49
3. Mikhail Shaidorov 🇰🇿 91.26#GPFigure #GPFinal #FigureSkating pic.twitter.com/HYTePbk9Xx
とはいえ今回の鍵山選手はサルコウの転倒があったので実際の1位&2位の得点差は12点以上。
高難度ジャンプ多数に挑戦する男子シングルのトップレベル選手たちのフリーでは、二十点差位までなら逆転がありえますが、挑む相手がマリニン選手となるとかなり厳しい。
SP終了時点で優勝が確定してしまったかのようで、勝敗の行方を追う楽しみがちょっと薄れちゃった感ありましたね
PCS評価に対する私の違和感
ここからは面白かった試合にちょっと水を差すようなことを長々と書きます。
それはマリニン選手と鍵山選手のPCSについて私が感じた違和感についてです。興味ない方は次の項目まで飛ばしてください。
マリニン選手のPCSは3項目とも9点台で46.36、鍵山選手は3項目とも8点台で44.07でした。
鍵山選手にはジャンプ転倒という大きなミスがあったからPCS自体が下がるのは納得します。
でもね、Skating Skillsの項目がマリニン選手は9.04、鍵山選手8.93なんですよ…
9点台半ば近くを出せる鍵山選手のSkatingSkills評価を転倒一つでそこまで下げるの?
SkatingSkillsって「技術点で評価しきれないスケート技術」を評価するもんじゃなかったの?と
「転倒など演技の流れを中断する大きなミス(シリアスエラー)が1つ出た場合はPCSの上限を9.5とし、2つ出た場合は8.75を上限にする」という採点ルールがあります。私は「何度も転倒した演技にまで満点近いPCSをつける人がいるのはどうか」と思っていたので、このルール導入自体は歓迎しています。
でも、鍵山選手の大きなミスはサルコウの転倒一つ。PCS各項目の上限が9.5になるのは納得できても、3項目ともを8点台に下げるほどの滑りになっていたとは思えないのです。
転倒があったらPresentation(曲の解釈や表現等)がガッツリ下がるのは当然。でも、彼は即立ち上がって演技に戻っています。他の部分の振付に影響があったようには思えないのにComposition(演技構成やつなぎ等)をここまで下げるの?
ましてやSkaingSkillsがマリニン選手を下回る点にまで下がるのは納得がいきづらいです。
実は私、2024モントリオールワールドの宇野昌磨選手のPCSについても同じ疑問を持っていました。彼も今回の鍵山選手同様、転倒1で全項目8点台になってましたから。
「この演技内容ならPCS(演技構成点)は下がって当然だとは思うけど、マイナス幅大き過ぎない?TES(技術点)との二重減点されてるみたいじゃない?」って。
マリニン選手にPCS3項目のうち2項目で10点満点つけてるジャッジがいたのにも疑問でした。
マリニン選手の滑りはここ数年で上達しているけれど、さすがに10点満点のレベルじゃないでしょ…?って。
(この「10点」は、「一番上と一番下の点数をカットして計算する仕組み」により実際の点数には直接反映されてはいないものの、海外のフィギュアスケート掲示板でもかなり問題視されていました)
PCS評価が高くなかった選手は、能力を向上させたら点数がぐっと上がる場合がある。でもPCS評価がもともと高かった選手はどんなに滑りを向上させたところで1~2点増えるか増えないか。そしてその高PCSも1転倒で結構下がってしまう。
本当納得いかんわー全然割に合わんわー!って思います
ま、愚痴はこのへんにしといて…この後はジュニアの方のグランプリファイナルのことを記録しておきます。
男子SP(ジュニア)
高橋星名選手
高橋星名選手は冒頭トリプルアクセルが乱れ、次のコンボが入らずーと厳しいスタートに動揺したのか、次のスピンまでレベル1に。SPでは実力を発揮できず、悔しい6位スタートとなりました。
でもジュニア男子が大きな試合で実力を発揮できる方がレアとはいえます。他に期待されていた選手たちもミスが多発しました。
中田璃士選手
中田璃士選手はSPのコンビネーションジャンプの構成が弱いため、真ん中位の順位で終えてフリーで巻き返しーという想定でいたと思われます。なのにミス最小限でまとめ切った選手が少なかったせいで想定外?の首位スタートになりました。
ISU公式配信の実況で、お父様とのキス&クライで「兄弟みたい」って言われていたのにちょっと受けましたw お父さん日本人から見ても若々しいもんなぁ。
女子フリー(ジュニア)
ジュニア女子のSPは全員がオールグリーンの演技というなかなか神がかった展開でしたが、さすがにフリーではそうはいきませんでした。
中井亜美選手
SP3位だった中井亜美選手。
トリプルアクセルートリプルトゥループを降りるも、ファーストは「<」の回転不足、セカンドは「q」がついてしまい点数を伸ばせずじまい。ひるむことなく2本目のトリプルアクセルに挑む勇気を見せましたが、残念ながらダブルに。
でもその後はしっかりまとめてフリー4位、総合3位で銅メダル獲得です。
和田薫子選手
SP2位だった和田薫子選手。
後半回転不足を複数取られましたが、うまくまとめてフリーも2位で銀メダル!
島田麻央選手
ジュニアグランプリファイナル三連覇がかかっていた島田麻央選手。
トリプルアクセルが回転不足で乱れ、4回転トゥループでは転倒。どちらか一つは決めている印象だった彼女が大技両方でミスが出るだけでも珍しいことだったのに、後半のトリプルループでも転倒。
それでももともとの基礎点の高さ&ジャンプ以外の要素のレベルが高いので総合点は199.46。優勝で三連覇となりましたが、本人は悔しさしかない様子。
でも表彰式の時には明るい表情を見せてくれれよかったです。
2022トリノのジュニアグランプリファイナルの3人娘も可愛かったし、2023北京の3人娘もかわいかったし、今年もかわいい。そしてその三大会全てに出場してきた中井亜美選手&島田麻央選手どちらも凄いなと思います。
中井亜美選手、ジュニアグランプリの順位を5位⇒4位⇒3位って毎年一つずつ順位上げてきたところが四大陸選手権で5位⇒4位⇒3位⇒2位⇒1位と毎年順位を上げていった宇野昌磨選手を思い出させます(笑)。
中井亜美選手は来年からシニア年齢になれるのでジュニアグランプリファイナルは卒業でしょうけれどね。