2024グランプリシリーズアメリカ大会・男子フリーはナマで見るのは諦めて今朝アーカイブ視聴しました。
うっすら内容を知って覚悟のうえで見たかったんですが、程よく内容を知る良い手段がなく(苦笑)。結局何も情報を入れないまま疑似ナマ視聴に。それでも「これはもう終わったことなんだ」とわかったうえで見る方が精神衛生上よかったですね。
アイスダンスFDとエキシビションはつまみ食いしかしていないので言及してません。男子フリーの情報のみ私の感想もまぜつつまとめております。
2024GPSアメリカ大会(スケートアメリカ)リザルトページ
男子フリー前半グループ 気になる選手たちの…な展開
前半はなかなか見るのがきつい展開。前半グループの選手にミスが相次ぐのは予想通りといえばそうなんですが、そんな中でも予想外の展開はありまして。
ルーカス・ブルサード選手
ルーカス・ブルサード選手はフリーは敢えて4回転どころかトリプルアクセルも入っていない、驚きの低難度構成。どうも演技後の取材によると、前日のSPでの激しい転倒による影響で構成を下げたそうな。にもかかわらず観客の喝采を受けたことに驚くとともに感動したとのこと。
Lucas Broussard 🇺🇸 141.26 / 206.57
— Golden Skate (@goldenskate) October 20, 2024
says he is surprised how well he got through the program and how much support he got from the crowd considering he skated without a quad or a 3A. “That made me quite emotional.”
He took these jumps out following his hard fall on his quad… pic.twitter.com/sr0Tkbei1b
フリーの衣装を着たイザボー・レヴィト選手と並んでほしくなるテイストの衣装 今どきの米男子には珍しい
オールグリーンにはなったし所作は美しいから見惚れはしたけれど、同じ大会に4回転1種で多種4回転を持つ世界のトップクラスと渡り合えているケヴィン・エイモズ選手やデニス・ヴァシリエフス選手がいると、「シニアに上がったばかりの若い選手たちはまだまだな…」というのがわかっちゃいますね。
今の彼はこの構成がギリギリだったんだなというのがわかりました。長い目で見守りたいです。
ドノヴァン・カリーヨ選手
他選手もミスが相次いだ中、5番滑走で登場したドノバン・カリーヨ選手。
Donovan Carrillo 🇲🇽 128.32 / 195.80
— Golden Skate (@goldenskate) October 20, 2024
“It was not the performance that I hoped for but I enjoyed the skate, the response by the audience was amazing so I feel good overall. At the first Sal I was a bit tense so it slipped. But I tried to take a break and refocus after that and I… pic.twitter.com/Ly8fjIT7dv
しかし冒頭の4回転サルコウ踏切りで滑ってしまって跳びあがれず、まさかの0点。その後もタイトな着氷が続き、後半のルッツコンビネーションはダブルダブルに。とはいえ技術的ミスが多いなか彼らしい空気感で演技はまとめました。
これで彼のGPSは終了ですが、上記のインタビューによると次の大会は来月中旬にドルトムントで開催されるNRWトロフィーだそうです。メキシコは代表争いが事実上ないから、四大陸やワールドで見られるのも楽しみにしています。
吉岡希選手
前半グループ最終滑走は吉岡希選手。彼は着実にジャンプを着氷できるのが強みだと思っていたのに、2本目の4Tがダブルに抜けたり3連ジャンプの3つめがダブルになったり…という乱調に少し驚きました。終始硬い印象での演技で、最後のスピンも乱れてしまって点が伸ばせず総合スコア215.92。
もっと実力があるのに…という残念な想いは残りますが、ワールドスタンディング用のポイントを稼げるギリギリの8位に残れたのは幸いでした。
#フィギュアスケート GPシリーズの #スケートアメリカ
— 毎日新聞写真部 (@mainichiphoto) October 20, 2024
フリーを終え #吉岡希 選手は8位となりました#スケアメ#男子フリー の写真特集⛸️https://t.co/QQi8JFfG8h
撮影@Kenji_Ikaiphoto pic.twitter.com/PyDU9Twc7f
彼はGPS1戦しか出場機会がないので、ここでいいシーズンベストスコアを残しておきたかったですね。もっといろんな大会で経験積んでほしい選手なのですが、日本の選手層厚過ぎるからな…。全日本での彼への応援に力が入りそうです。
シャンペリーチームは5・6位フィニッシュ
島田高志郎選手
後半グループ第一滑走で登場した島田高志郎選手。気合の入った感じの表情でスタートしたのですが…ドノバン・カリーヨ選手と全く同じような形で4回転サルコウの踏切りで滑ってしまい0点に。
去年の全日本を思い出しちゃいました…。
「あの時みたいにひどい転倒にならなかっただけマシ」と気持ちを切り替えようとしましたが、後の4回転トゥループ、トリプルフリップでも転倒になってしまい、呆然。
1抜け2転倒という大きなミスが続いた中で「死の舞踏」を表現するのはきつかったと思いますが、島田選手はそれでもあの世界観を演じ切ろうとしていました。
#フィギュアスケート GPシリーズの #スケートアメリカ
— 毎日新聞写真部 (@mainichiphoto) October 20, 2024
フリーを終え #島田高志郎 選手が6位となりました#スケアメ
男子フリーの写真特集⛸️https://t.co/7Ida8hNMYi
撮影@Kenji_Ikaiphoto pic.twitter.com/SpRO6SB2Om
総合スコア219.68点。彼も来季のためにもっと高いシーズンベストを初戦から残しておきたかったところ。
でも今回215~219点の団子状態になった3人の中で最上位となり、6位につけられたのはちょっとラッキーだったかも。6位と8位では得られるランキングポイントは60もの差があります。251.47点(去年のスケアメやスケカナなら表彰台のスコア)という5位のヴァシリエフス選手と大差ないランキングポイントが入ったのは幸運だったとは思います。
次のフランス大会では大きなミスに見舞われないで、このプログラムを見たいです。
デニス・ヴァシリエフス選手
デニス・ヴァシリエフス選手は島田高志郎選手と連続での滑走。ステファン・ランビエールコーチは島田選手のキス&クライにいたため、送り出しはステファンコーチではありませんでした。
デニス・ヴァシリエフス選手は「演技前は高志郎くんの演技を見ていた」と演技後のインタビューで語っていました。「彼と練習をして一緒に試合に出るのがとても好きだ」とも。
Deniss Vasiljevs 🇱🇻 166.37 / 251.47
— Golden Skate (@goldenskate) October 20, 2024
“I feel good! I felt a bit hesitant about the quad, that is the only regret I have. The rest was really good. It felt free during the skate.”
“I feel the most excitement at events when skating together with Koshiro. It’s a pleasure to skate… pic.twitter.com/WYJufTfDEN
フリー演目は「ラ・バヤデール」。フィギュアスケートで何度か使われている曲なので設定&ストーリーだけは把握している私。元のバレエ上演を観たことないくせに、「忙しい人のために4分に舞台を詰め込みました感」を感じます(笑)。
冒頭の4回転サルコウは素人目にもわかる回転不足でしたが、転倒せずにすみました。昨季のワールドでもそうですがこの冒頭の4回転への挑戦で転倒しないのは彼の演技の世界観を守る上では大きいと思います。
その後のジャンプは体幹が安定していて回転不足とは無縁でものすごい加点が並ぶスコア。ステップだけレベル3になっちゃいましたが、他はオールレベル4!
総合得点251.47って聞いて「ひょっとして表彰台もありうる?」って期待しちゃいました。
この後の滑走者は「読めない人」だらけだったので十分ありうるなって。
読めない人たちがこぞっていい演技をしたので結果は5位でしたけどね。
後半グループ 会場を吞み込んだケヴィン・エイモズ選手
デニス・ヴァシリエフス選手の高得点に喜んでいたら…次はケヴィン・エイモズ選手ではないですか!アーカイブで見ているから「もうとっくに終わっている過去のできごと」なのに私の中の緊張感が俄然高まりました。
先日の大会(マスターズ)のフリーでとんでもないことになって、私が「彼の演技がスケアメで見たいのかどうかわからない」と心配していたのは以前も書いた通り。マスターズではSPはうまくいってましたからね。フリーへの不安はどうしてもある。
6分間練習のときも、曲がかかる直前も緊張にこわばっている表情に見えて不安MAX。(って彼と彼のコーチ陣の不安とは比べ物にはならないでしょうけれど)
演技開始!
冒頭4回転トゥループー2回転トゥループはおそらく構成通りでしょう、SPの時よりきれいに入りました。そしてその次の単独4回転トゥループも綺麗に着氷!
「こ、これは調子のいい時の方のケヴィンが約1年ぶりに来るターン?」と思いつつ、見守り続けます。気になるのはジャンプのみなのですが、一つ一つビックリするぐらい着実に決まっていく。
「これ、2023さいたまワールドフリーより良いんじゃないの…?」
あの時は後半には疲れが見えてジャンプは何とかギリギリ決まる感じで、「それはそれで闘い疲れたグラディエーターみたいでいっか」って思いながら見ていた。でも今回のケヴィンは何か全てを超越したところにいて、全ジャンプに余裕がある!
ラストのジャンプを降りた瞬間から彼が感情を爆発させ、その後のスピン2回+コリオシークエンスに全てをぶつけるのを震えながら見ました。
#フィギュアスケート GPシリーズの #スケートアメリカ
— 毎日新聞写真部 (@mainichiphoto) October 20, 2024
写真はフリーの演技で感情を露わにする #ケビン・エイモズ 選手。男子2位となりました#スケアメ#男子フリー の写真特集https://t.co/f1idoQjrU8
撮影@Kenji_Ikaiphoto pic.twitter.com/OKIIyas9Sc
演技終了後
演技終了後に感極まるケヴィン。そして相変わらずキス&クライでは怖くて両コーチの手を握り締める。得点が発表される直前の時足元が震えていました。
そしてアナウンスされたのは、パーソナルベストスコアを超える190.84! 4回転1種だけで総得点 282.88って、凄すぎる。
2023さいたまワールドの時、キス&クライから飛び出してキャーキャー走り回ったのはシルヴィア・フォンタナコーチでしたが、今日はケヴィン・エイモズ選手だけが飛び出しました。
まだ今季始まったばかりだけど、これ「私が今季一番好きなキス&クライ大賞」取るかも(笑)
予期できなかった展開
去年12月のグランプリファイナル以降、どん底だったケヴィン・エイモズ選手。練習ではできているはずのことが試合では全然できなくなってしまうことの繰り返し。出る大会出る大会で大遭難のうえワールド欠場。
その後ようやく回復しつつあるかと思っていたら先日の大会のフリー大遭難…。どれだけ今日のフリーに臨むのが恐ろしかっただろうと。その恐怖に挑み打ち勝った彼の気持ちを思うと泣けてきます。
フィギュアスケート専門記者ジャッキー・ウォンさんの事前予想では、ケヴィン・エイモズ選手の予想順位は全選手中最下位の12位でした。でも彼は予想が外れたことを喜んでいるでしょう。
マスターズのスコアとスケアメのスコアを並べると、同じ人のスコアとは思えない。
先月の大会でフリー84.33点だった人が、3週間後に190点超える演技をするなんて想像できないです。
正直なところ「GPS初戦で神演技券使っちゃってよかったのか?」とか不安もちょっとあります。でも、今日のところは彼が壁を超えることができたことをただ喜びたいと思います。
それに演技後のインタビューによると「今日はつなぎを大分省いた」らしいので、本当の神演技はこれからあるのかもしれませんしね。「ただ呼吸をして、自分らしくいようとした」という彼の振り返りコメントが心に沁みます。
Kevin Aymoz 🇫🇷 PB 190.84 / 282.88 wins the silber 🥈 and wins the free skate 👏🏻 What a comeback!
— Golden Skate (@goldenskate) October 20, 2024
“I am proud and I don’t know how I did it today. I have no words, I am so, so happy. I don’t know how I did it. I mean I know I worked hard, so hard. I was just trying to breath and… pic.twitter.com/lJuvai6IcT
SP上位3名の演技
ニカ・エガーゼ選手
ケヴィン・エイモズ選手の演技で会場がもう騒然としちゃってましてね…次に滑るのはニカ・エガーゼ選手。ISU公式配信のテッドさんも「この雰囲気の中で滑るのは大変だ」って言われていました。
そこでいきなり4Lz跳んできたからビックリしましたよ!転倒に終わったとはいえ、4回転3種に挑戦するなんて知らなかった!そのうえ4回転4本目跳びに行ってビックリ。しかも4Sー3Tと4Sクリーンに下りちゃうし。これまで4S持ちスケーターがことごとくミスってたのに、何で君はそんなに決まるのだ!?
高PCSが望めるような滑りではないけれど、これは4Lz降りたらワールドメダル争いにも食い込んでくるかもなって恐ろしくなりましたね。今回はルッツの失敗が響いてケヴィン・エイモズ選手を上回ることはできずでした。
Nika Egdaze 🇬🇪 PB 167.82 / PB 261.71
— Golden Skate (@goldenskate) October 20, 2024
“Last season I would have let the program slip after the initial mistake at the 4Lz. But I am happy that today I pulled myself together and showed the program well afterwards. I can see some progress and I am happy about that.”
“It was a… pic.twitter.com/EEtdDd9sVm
演技後のインタビューで、ニカ・エガーゼ選手は「最後の5人は全員日本のショー『THE ICE』のメンバーで色々話せてよかった」「いい空気感の流れていた試合だった」と話しています。
私SPの時に同じこと書いたけど、やっぱ当人たちもそう思ってたか!ってちょっと嬉しくなりました(笑)
三浦佳生選手
太ももの痛みと闘う試合になってしまった三浦佳生選手。冒頭は4回転ループではなく、トリプルアクセルからの3連にしてきました。今の状態では挑戦よりも4回転2種3本構成に抑えて表彰台を確保しに来るのが賢明でしょう。
しかし冒頭の3連の飛距離のとんでもないこと!かっ跳び系ジャンプ大好物なので本当に気持ちがいい。しかし次の4回転サルコウは入るスピードは凄かったけれど、ヒヤリとする着氷に。
本人が演技終了後に「これは今日の4回転サルコウの直後の私ですw」って報道陣の前で再現しています(相変わらず受け答えが面白い。毎日新聞の有料記事どれもこれも楽しかったですw)
🥉Kao Miura 🇯🇵 179.13 / 278.67
— Golden Skate (@goldenskate) October 20, 2024
pose: this is me after my quad Salchow today.
“Today’s men’s event was really wonderful. I am happy I did everything I could today. But I think the star of today is Kevin.
“The story is from a very famous movie. It’s about a happy couple, the… pic.twitter.com/sNrxv2vlcg
その後の4回転トゥループは配信画面が途切れてジャンプの出来まではわからずじまい。心配していた後半4ー3も入り、いい方の予想が当たって演技をまとめ切りました。あの軸でよく降りられますよね。絶好調な時よりもやっぱり怪我一つあるぐらいの方がうまく行きがちっていうのは過去にも多くの選手が実証してきた通り。
演技終了直後に「セーフ」のポーズを決めたあたり、去年の宇野昌磨選手の全日本フリーを思い出しました(笑)
彼の「シェルブールの雨傘」は相変わらず雨の中を「うおおおお」と叫びつつ爆走してる感じ。結婚を約束した恋人に裏切られる「せつなさ」は多少出てきたように感じますが、それよりも「怒り」の方を強く感じるんですよね(苦笑)。でもそういう世界感も個性があっていいのでは。
4Tに「q」、トリプルアクセルに「<」がつき、スピンステップのレベルとりこぼしなどもあって得点は179.13と伸び切らずケヴィン・エイモズ選手の総合得点を上回ることはできませんでした。
でも公式練習初日にまともに戦えるかどうかすら心配されていた状態だったのに表彰台に乗るという最低限の目標を達成したのには底力を感じましたね。
イリヤ・マリニン選手
そしてイリヤ・マリニン選手の登場。どれもこれも難しい入りで4回転フリップ、トリプルアクセル、4回転ルッツと決めて行ったときはこのまんま絶好調のまま進むのかな?と思ったら4回転ループがダブルに抜けました。(ループでたまにあるすっぽ抜け大転倒とかじゃなくてよかった)その後もトリプルルッツで乱れたり。
ま、シーズン初戦ですもんね。
ジャンプのミスこそありましたが、フリップ・ルッツ含む4回転4種4本降りてるし(1個qつきましたが)、3Aへのシーケンスジャンプ後半で跳んだりと異次元構成なのでそれでも190.43点。得点発表の時フリー1位じゃないことに思わず驚くマリニン選手が新鮮でした。
まぁそりゃ「初戦からあの点数出せる選手が前にいたのか?」って驚くのは無理もないでしょう。
フリー1位は僅差でケヴィン・エイモズ選手でした。
マリニン選手はどうしてもクワドゴッドの面ばかりが注目されがちですが、フリーのテーマのヴァンパイアを表現しようとする心意気は感じるし、衣装は凝ってるしジャンプ以外の面での創意工夫が感じられるのは好感度高いです。
首や襟元に赤いビジューで血を表現してるあたり、カナダのジュニア男子アンソニー・パラディ選手の昨季~今季のフリー衣装を思い出しちゃいますが(パラディ選手は手に赤い塗料まではつけてないが)、マリニン選手によく似あった衣装だと感心します。
ただSPのシャツ、フードを背中にプリントしちゃうのはちょっと…そこまでしてフード風にしないとあかんの?と思いました(苦笑)
ってな感じのどうでもいいツッコミをようやく入れられるようになったのがちょっと嬉しい(笑)。SP終了時点では三浦佳生選手とエイモズ選手が心配過ぎてそういうの書き込める気持ちになれなかったからなぁ(苦笑)。
マリニン選手はすぐにカナダに移動して週末はスケートカナダです。毎週末試合がある6週間がついに始まったなーって感じです。