NHK杯 予想通りだったけど、予想の範疇を超えた男子フリー/変曲選手権優勝はあのメダリスト

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NHK杯の公式サイトはhttps://nhk-trophy2024.jp/index.html

グランプリシリーズ日本大会ことNHK杯、女子シングルは下馬評通り日本女子1~3位フィニッシュとなりました。りくりゅうペアはペアスピンのミスなど小ミスがつもり、ジョージア(というか事実上ロシア)のメチョルキワ/ベラルワ組に次ぐ2位となりました。SPが僅差だったので1位は獲れないかもな~まぁファイナルにさえ進めればいいだろうしーと思っていたのでこれも予想通り。

しかし男子フリーの展開は予想通りでありながら、予想の範疇を超えた部分がありましたそれは三浦佳生選手

今日は男子フリーだけまとめてます。「変曲選手権」としての記録も残しておきたいので長いです。必要に応じて目次から読みたい項目に飛んでくださいませ。

グランプリシリーズ日本大会(NHK杯)リザルト

目次

三浦佳生選手に抱いていた、フリー前の複雑な心境

私、実は内心三浦佳生選手に対して「今年のグランプリファイナルは逃してほしい」と思っていました。

彼のことだからファイナルに選ばれたら、どんなに足の状態が悪くても棄権せず、肝心の全日本選手権でボロボロになりかねないなと。もしその後も長く引きずりかねない程状態を悪化させたりしたら絶対嫌だし。

そのためには「複数ミスありつつも3~4位あたりに収まって、惜しい所でファイナルを逃してくれるといい」と勝手なことを考えていました。何よりSPのような奇跡がフリーでも起きる可能性は低いだろうと思ってたのでかなりの確率でそうなるだろうと。

しかし実際に起きたのは私の予想をはるかに超えた大波乱でした。

前半グループ+2名の振り返り

自爆続きだったフランス大会に比べると、かなり見ごたえのある試合でしたので、滑走順に少しずつ振り返ってみます。イム・ジュホン選手だけ感想なくてすみません(昨年の大阪関空でのJGPSでナマの演技見てるはずなんだけど記憶がない…)。

前半のアメリカ勢 樋渡知樹選手&ジェイソン・ブラウン選手

樋渡知樹選手は冒頭の4-3のアンダーローテーションこそ取られはしましたけどノーミス!シニア以降でフリーノーミス初めて見たかも!?拠点を木下アカデミーに移したのが合ってたんですかね。SPフリー揃えて来るなんて、アメリカ代表3枠目あたりに滑り込める可能性出てきたかも?

ジェイソン・ブラウン選手は今回もトリプルアクセルが不調のままでした。1本目はダブルになり、次のコンビは冒頭がシングルアクセルになってコンビにもならず。怪我とかあるのかな?

しかしそれ以外は終始美しい演技でした。後半のジャンプは全部回転厳しそうだったけれど…どうなんでしょう。このままだったら全米ではトルガシェフ選手や樋渡知樹選手などに勝てないかもしれません。

アップライトからシット姿勢への変化スピン美しかった。3連のファーストジャンプの後に足上げ入れたりとか非凡な滑りです。私は完成版の「鏡の中の鏡」を披露できそうなら、彼がワールド代表に選ばれてほしいと思っています。なんか全米見るの怖いな。彼はかなりの決意をもって今季に臨んででますけどね。

トリプルアクセル一本も入らず、後半のコンビネーショングサグサに回転不足くらいまくっててGPSフリー6位に入れる底力ってやっぱりすごいと思うのです…

ユーロ勢連続登場  変曲選手権の王者はダニエル・グラッスル選手

ジャブの4人

マーク・ゴロドニツキー選手はいかにもユーロ圏っぽい変曲フリー。3A~2Aの最初がダブったからといって2A~3Aはさすがに無謀だろと思いましたw。彼は古風な滑りの選手ですが、この唐突な編集の曲でもマッテオ・リッツオ選手だったら強引に滑りこなしちゃうんだろうなぁと思いながら見てました。

リッツオ選手には引退前に王道クラシックプロで一度滑って頂きたいです。五輪シーズンの来季どちらかのプロは王道系をぜひ…
ってあまり願いは叶わなそうだけどw

ガブリエレ・フランジパーニ選手の曲は「変」さは感じないですが、現代曲に合わせるには何ともレトロな滑りの選手。

以前はアダム・シャオ・イム・ファ選手が荒ぶるジャンプ軸を制御できるようになれるとは思えなかったので、「彼もある日覚醒したりするのだろうか?」とうっすら期待してはいるのですが、今日も制御できぬままでした。グラッスル&リッツオ両選手が戻ってきた今、イタリア代表勝ち取るのは厳しいかな。

ウラディーミル・リトヴィンツェフ選手は「くるみ割り人形」の映画のサントラ繋ぎまくった変曲プロ。彼、曲のバージョンこそ違いますが過去2回も「くるみ割り人形」の楽曲でフリーやってるんですね。何でそんなに「くるみ割り人形」ばっかりやりたがるのか誰か聞いて欲しいw 

序盤のジャンプミスが続くも後は持ち直しましたが、淡々とした滑りで得点は伸びず。

写真はSPのものです。フリーのが出てきたら差し替えます

マッテオ・リッツオ選手はユーロな曲編集多いけれど、「変曲」と思ったことはありません。

SPで転倒した4回転ループ、回転は足りなかったけど着氷してきました。トリプルアクセルまでの3回転ジャンプは完全に取り戻せてて、ジャンプ全部入ってからは会場煽りまくりで楽しかったw 久々に退場するときのニースライディング見られて嬉しかったです。他の4回転を五輪シーズンまでに戻せることを願っています。

変曲選手権優勝はダニエル・グラッスル選手

ダニエル・グラッスル選手は白Tシャツのような衣装で登場。曲はミュージカル「Billy Elliot」から。「なるほどBilly役としてバレエレッスン衣装のイメージなのか?にしてもそれはちょっとどうなんだ…」と思いつつスタート。4回転ルッツ・ループ・サルコウが立て続けに入りました。

「でもジャンプは決まってるけど…跳んでばっかな印象だな」…と思ってたら、ついに噂の変曲来ましたよ!

なんじゃこりゃ…

さすがにスケオタの間で「酷すぎる編曲=変曲」と話題になってただけある。私が聞いた中でも過去イチクラスの変曲でした。

Billy Elliotのストーリーからいって「下町育ちの男の子がバレエにあこがれ、最後は男性版『白鳥の湖』を踊る有名バレエダンサーになる」ーという流れを表現してるのでしょう。台詞もちょこちょこ入ります。

しかし曲編集のぶっつなぎ感が余りにも酷い。私はストーリーを知ってるのに、演技からストーリーが伝わってこない。唐突にチャイコフスキーの「白鳥の湖」がクライマックス部分からスタートするにあたっては吹いちゃいましたよ。クライマックスのはずなのに。

コレオや曲編集次第ではもっとイイ感じのプロになる可能性もありそうなのに。私が愛せる系統の変曲プロではなかったです…

今回は回転不足もあまりとられることなく、ルッツループサルコウ3本とも減点なく入ったため2位になりましたが…彼もっとかっこいいプロ滑ってたじゃないですか?イメージが堕ちた後の復活シーズンに何でコレで表彰台…って頭を抱えました。

昨年の出場停止の理由だった「ドーピング検査複数回スルーの件」について何の説明もないままの復帰に私がモヤモヤしたままのせいもあるかもしれないけど…

こんな変曲プロでいい成績取られましても正直あまり歓迎できませぬ

王道曲でのお口直し?タイム

変曲さんざん聞かされた後だと、アンドリュー・トルガシェフ選手がフィギュアスケートプログラムの王道クラシック曲「シェヘラザード」で滑るのを見ると心が洗われるようでした(苦笑)。

連戦の中よく頑張った!演技終盤でこんな嬉しそうなトルガシェフ選手を見たの初めてかもw 最後本当にスピード落ちなくて滑りが気持ちよかった!彼の回転不足判定はちょっと厳しすぎるように思いました。

壷井達也選手の今季フリー「道化師」はサマーカップの時も近畿選手権のときも凄く「ハマっている感」があったので、この日の演技もうまく行くんじゃないかという予感はしていました。

去年のNHK杯はさんざんな結果でGPS枠いったん失う羽目になったから、その悔しさもいい形に左右したのではないかと思います。コリオシークエンスも最後のスピンもめちゃくちゃ笑顔で、「道化師の世界観的にそれでいいのかw」とは思ったけど、まぁ嬉しそうな選手を見るのは観戦の醍醐味なのでいいことにします(苦笑)。

GPS初メダルおめでとう!

三浦佳生選手の大波乱と死闘

壮絶な演技の流れ

3人連続でほぼノーミス演技が続き、この「いい流れの空気」が三浦佳生選手にどういう影響を与えるだろう?と思いつつ、演技スタート。

冒頭の4回転ループを変更してトリプルアクセルからのコンビにするんだなーというのはすぐに理解できました。でも、そのトリプルアクセルで着氷が乱れてコンビがつけられないとは思いもしなかったです。構成を抑えた時の冒頭トリプルアクセルコンボは鉄板のイメージだっただけに…

そして次の4回転サルコウもトリプルに抜け、観客が焦り始めた矢先に跳んだ4回転トゥループは回転不足気味?で転倒。その後もアクセルがダブルに抜け、後半に挑んだ4回転トゥループは軸がぶれ転倒でコンビつけるどころではない。目の前で壮絶な自爆をしていく彼を前になすすべもありませんでした。

でもそこから一転、3A~2A~2Aを決め、最後に3回転フリップー3回転ループを降りたのにはしびれました。試合を投げることなく、「最後までギリギリ攻めて点数を少しでももぎ取ろう」という強い意志が胸に迫りましたね。(2A3回目だから最後の2Aはノーカンっていうのは置いといて)

最後の二つのコンビネーションが効いて240点台にギリギリ乗せました。GPSフランス大会なら島田高志郎選手を上回る2位のスコアではあります。

下記の記事、試合後の囲み取材内容が無料でじっくり読めます

「何度も見返したくなる大自爆演技」とは

たいていのスケーターは転倒が続くと体力と気力が失われていくのが一目瞭然になります。なのに気迫を失わず、最後まで表現し続けるスケーターの演技は、「大自爆」と言われても見返したくなる何かがあります。三浦佳生選手の昨夜の演技にはそんな演技になりうる予感をおぼえました。

宇野昌磨選手だと2018ミラノワールドフリー、2019GPSフランス大会フリーがそれですね。試合直後は見返したい気分にはなれないけど、その後復調してその演技が「過去」のものになってからは、「あれはあれで見ごたえがある」となり、繰り返し視聴してしまいます。

昌磨さんのミラノワールドフリーなんて、ぶっちゃけ平昌五輪フリーより視聴回数多いと思うw

ま、気迫どころか完全に心が折れたまま滑り続ける高橋大輔選手の2004年GPSフランス大会(エリック・ボンパール杯)フリーも結構見返しましたけどね(苦笑) 

あれはあれで、「あんな演技をしていたのに色々克服して…いや~本当に立派になったなぁ…」と思えて感慨深いんですよね。本人に知られたら「やめてー」って言われそうだけど(苦笑)

鍵山優真選手の貫禄の演技

最終滑走で登場した鍵山優真選手、今日は4回転フリップを入れた4回転3種4本構成。

6分間練習で珍しくジャンプがちょっと乱れ気味?という印象はあったのですが、モントリオールワールドで決めた美しい4回転フリップが記憶に強く残っていたので大丈夫だろうと思っていたら…回転が足りず転倒で驚きました。

次の4回転サルコウはさすがに決まり、そこからは比較的安心して見られましたね。久々に彼のセカンドループが見られて嬉しかったです。イリヤ・マリニン選手と競い合っていくにはセカンドループ不可欠だと思うので戻ってきてよかった!

スケーティングのいい彼のステップはさすがに魅せます。フラメンコの動作を取り入れた動きには「ほぉ~うまいわ~さすがだ!」ってめちゃくちゃ関心させられてため息が出ます。

でも、どこか微妙に物足りない感が残るのは否めません。私がフラメンコにわかりやすい「艶」を求めてしまうせいで、彼が解釈するフラメンコの個性を許容できてないだけかも?ナマで見ると印象がまた変わりそうなのでフィンランド大会ナマ観戦をすごく楽しみにしています。

見ごたえのあった試合

女子シングルの回転認定は厳しめだなと思ったのですが、男子は「少し緩め?」と思いました。「あれヤバいかも」と思ったジャンプで何も取られてないのが結構ありましたし。(女子は逆に「え、これも取られたんだ」ってのが複数)

しょせん素人の感覚なんで偉そうなことは言えませんが、それでも大会ごとのジャッジの差として納得のいく範疇だったように思います。

今年のジャッジスコア見ていると去年のNHK杯後ジャッジスコアを見返した時の腹立たしさが蘇ってきちゃうんですよね…なのでじっくり見るのはほどほどにしました(苦笑)。本当、去年のあれは一体何だったんだろう…。

他のカテゴリについてはエキシビション見てから軽くまとめることにします。

エキシビションの宇野昌磨さんトークコーナー、「NHK杯の想い出を語る」ってなってまして、「また気持ちがざわざわするんじゃないか」とちょっと不安もありますが、広島NHK杯のオリーブ冠の表彰台映像をたっぷり出してくれたらそんな思いは吹っ飛びそうなので期待しています(笑)

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