<23:30追記>GPS中国大会まとめ中編/スイハン復帰と、3連覇王者チョックベイツの新プロ披露 キス&クライのミサイル騒動も

GPS中国大会のロゴ

2025年グランプリシリーズ(GPS)第2戦・中国大会(中国杯/カップ・オブ・チャイナ、COC2025)のまとめ中編です。今回はペアとアイスダンスを振り返ります。

エキシビションやその他の話題も一緒に投稿しようと思ってたんですが、だいぶ毛色が違うので別記事に分けることにしました。

<10/27 23:30>
アイスダンスのキス&クライでの「ミサイル」騒動に関するAP通信とThe Gardianの報道記事情報を追記しました

2025 GPS中国大会リザルト

東日本選手権・ペア予選会の競技経過や演技動画を合間にチェックしながらの視聴でした。

昨夜遅くまで試合していましたが、これにて東日本の全日本進出メンバーが確定しました。本記事中では触れませんが、東日本選手権のリザルトも貼っておきます。

2025 東日本選手権・ペア予選会リザルト

目次

ペア

今回も、試合前にピックアップしていた「私なりの見どころ」を軸に競技結果&演技内容を振り返っていきます。

北京五輪金メダリスト「スイハン」復帰演技

3年半ぶりの演技の仕上がりは?

ペアで最も注目されていたのは、「スイハン」ことスイ・ウェンジン/ハン・ツォン組(中国)の3年半ぶりの演技

力強いスロージャンプは健在で惚れ惚れとしましたが、リフトにはかつてのスムーズさが見られませんでした。「指定リフトの既定要素を満たしていないのでは?」と海外の専門家複数からジャッジへの指摘があったほど。

ハン・ツォン選手は北京五輪から1年半後、腰の治療&リハビリを経た末に「競技復帰は厳しい」と引退宣言をしました。それから約2年が経ちましたが、以前のようなリフトは厳しいのかもしれません。二人の魅力だったスピード感も、後半は感じられずでした。

しかし、彼らは演技後の取材で「フリーの通し練習は3回しかできていなかった」と話していました。短期間の練習でここまで戻したこと自体、ものすごいことなのでしょう。

元の実力が半端ないだけに、ここから4か月ほどでどこまで調子を上げていけるのか、全く予測がつきません。

演技を見ても複雑な気持ちは拭いきれず

私は2021年の大阪グランプリファイナルで彼らを見るのをものすごく楽しみにしていました。母国での五輪を控えた彼らの演技をナマで見たかった。だから新型コロナを理由にした直前の大会中止は悲しくて仕方なかったです。そんな彼らが再結成すると聞いた時、高揚感はありました

ただ、ここ1~2年のハン・ツォン選手は引退後の生活を満喫しているようにしか見えませんでした。スイ・ウェンジン選手は一時別の中国男子選手とペア選手登録をしていましたしね。

下記の記事でもハン・ツォン選手が「競技会に復帰しなければならないという知らせを受けた」と語っています。

素直に応援しきれなかった気持ちを変えるほどのパワーを今回の彼らに感じられなかったタイミングで、このインタビュー。(試合後のインタビュー有料記事でも同様の発言をしていました)

ーおかげで私は、中国大会を経て更に複雑な心境になりました。先入観は抜きにして、演技だけで判断しようと思ってはいるのですが…NHK杯でナマで見たらまた気持ちが変わるかな?と期待しています。

中国若手ペアは「スイハン」と7.51点差で4位!

中国からもう一組出場した若手ペア「ジャンファン」ことジャン・ジアシュアン/ファン・イーハン組。(今回初めて日本語表記してみました。呼び名は「ジャンファン」で定着しそうですね)

シニアのGPS初試合でしたが、「スイハン」に次ぐ総合4位と大健闘。その点差は7.51。

スピンには若さが感じられましたがスピード感もあり、ツイズル・スロージャンプの安定っぷりを見る限り「『スイハン』との差は大きくない」と思いました。

「スイハン」がかつて得意としていた4回転ツイストができるのも彼らの強みです。

有望な若手ペアがせっかく五輪年にシニアデビューしたというのに…という想いもまた、「スイハン」復帰を素直に応援しきれない要因のひとつになっています。

今後、「スイハン」が凄い演技を見せてくれたら、モヤモヤは吹き飛ぶかもしれませんけどね。

五輪金メダリストを迎え撃つ「コンマチ」と「メテベル」

私は「スイハン」の演技からいって、「コンマチ」「メテベル」は大崩れしない限り上回るだろうと思っていました。

2位確定時に溢れた「コンマチ」の感情

だから、「コンマチ」ことサラ・コンティ/ニッコロ・マチー組(イタリア)の得点が「スイハン」を上回ったことは当然と受け止めました。

しかし、彼らのリアクションは異なりました。特にサラ・コンティ選手は感極まっていた様子。

ナマで見ていたときは「レジェンドを超えたことへの喜び」かと思っていたのですが、フリー演技後のインタビューを読む限り、「地元の五輪金メダリストの滑走直後」という点に相当のプレッシャーを感じていたようです。

配信画面からはわからない、独特の空気感があったのでしょうね…度を越したリンク内投げ込みはやはり規制してほしいと個人的には思います。

貫禄を増した「メテベル」

「メテベル」ことアナスタシア・メテルキナ/ルカ・ベルラワ組(ジョージア)は貫禄の優勝でした。

9月の木下グループ杯で初めて今季SP「ボレロ」を見た時、「これはいい五輪プロになるのでは」との予感を抱きましたが、今回その思いを強くしました。

彼らはエレメンツを揃え技術点で稼ぐタイプの組ですが、今季はPCSも上がって五輪表彰台争いに食い込んできそうです。

彼らにはもはや「貫禄」を感じ始めていたので、フリーでアナスタシア・メテルキナ選手が転倒したのは少し驚きました。私は、彼らにミスが出る度に「そういや彼らはこの間までジュニアにいたペアだったな」って思い出すんですよね。

エキシビションでの存在感が大きめだから、ずっと前からいるような錯覚がありまして(苦笑)

2023年の北京グランプリファイナルではジュニアとして出場していたのを現地で見ましたが、「ジュニアにシニアが混じってる」かのような違和感が当時から凄かったです。

昨季も世界選手権の前に世界ジュニアに出てましたもんね。年齢規定上問題ないんですが、違和感凄すぎでした。

アイスダンス

「チョックベイツ」の五輪シーズンプロ初披露

「チョックベイツ」ことマディソン・チョック/エヴァン・ベイツ組(米国)は、今季の新プログラムを初披露。

特にFDのフラメンコ+闘牛の「黒く塗れ!」のスパニッシュバージョンは、なかなか思い切った取り合わせの挑戦でした。

闘牛の赤い布を彷彿とさせる腰布の取り回しがうまくいくかどうか、ドキドキしながら見てしまいました

ツイズルでレベルを落としたりなどもあり、FDの点数は123.81。彼らはGPS初戦は120点台でスタートし、振付もじわじわと改良してレベルアップしていくのが常なので、今後に期待です。

「フルシゼ」ことロランス・フルニエ・ボードリー/ギヨーム・シゼロン組(フランス)もますます上げていきそうですけどね。彼らに金メダルをさらわれる可能性はありますが、「チョックベイツ」が五輪表彰台候補であることはゆるぎなさそうです。

※埋め込みが表示されない場合はリロードまたはこちら

アメリカ3番手争い 「グリパー」VS「ジンコレ」は…

私がもう一つの楽しみとしてあげていた、「グリパー」ことキャロライン・グリーン/マイケル・パーソンズ組 VS 「ジンコレ」ことエミリア・ジンガス/ヴァディム・コレスニク組の、アメリカ3番手争い対決

RDで「グリパー」のマイケル・パーソンズ選手がツイズル中にバランスを崩して転倒、大きく出遅れた時点で今大会での決着はついてしまいました。

しかも、この時に腰を痛めてしまったらしく、FDは演技直前、名前をコールされた後に棄権。ギリギリまで出られるかどうかを探っていたのでしょう。「グリパー」は次戦のNHK杯で存在感を見せる必要がありますが、2週間後でどこまで持って行けるか、不安が残ります。

一方、「ジンコレ」は「チョックベイツ」と5.98点差に迫る2位と見事な結果をおさめました。

※埋め込みが表示されない場合はリロードまたはこちら

ちなみにエミリア・ジンガス選手はアンバー・グレン選手の予備のフリー衣装(CS大会で着用していたもの)を着てエキシビションに出ていました。エキシビション用の衣装を持ってきていなかったのか、それともトラブルで衣装が無かったのか、どちらかはわかりません。

衣装の予備を持って来る選手もいるんですね。
ロストバゲージ対策?
気分で変えるのか?
と細かいことが気になります。

「ワンリウ」復帰と「RENXING組」(中国)のキスクラ騒動

中国組最上位は「ワンリウ」

今大会は中国から3組のアイスダンスカップルが出場しましたが、10組中8~10位を占めました。

最上位は、色々あった末に復帰してきた中国のベテラン・「ワンリウ」ことシーユエ・ワン/シンユゥ・リウ組。得点は165.71。やはり彼らが五輪に行く可能性が高そうです。

REN/XING組のキスクラでの「騒動」

私は153.17点で9位だったJunfei RENJianing XING組の演技の方が好みだったのですが…彼らは別の点で大きな注目を浴びることになってしまいました。

その原因は、キス&クライで彼らが抱えていた、中国最新の大陸間弾道ミサイル「東風(DF-61)」を模した布製クッションです。

ISUのYouTube公式チャンネルのライブ配信動画より引用(日本からの視聴不可)

(リプレイ映像が終わった後にはこれを持っていたので、リンクから拾ったのか誰かから受け取ったのかは不明ですが、地元観客からのプレゼントと推測されます)

DF-61は、中国が今年9月の軍事パレードで大々的に宣伝した最新兵器核弾頭搭載可能でアメリカの首都ワシントンDCも射程圏内とあって、世界各国に大きな脅威として受け止められています。

中国国内では「我が国のカッコいい最新兵器」としてこういう製品が売られているのでしょう。それを呑気に国際大会のリンクに投げ込んでしまうファンがいたのは避けられないことかもしれません。

しかし、これを手にし、キス&クライに持ち込んで画面に映したままにしてしまうのはまずいでしょう。彼らに政治的主張をしたいという意志があったとは全く思いませんが、国際的な感覚では「政治的行動」とみなされても仕方ありません。

案の定「彼らを出場停止にしろ」「ISUはこのような行動に対する声明を出すべき」という動きが出ています。

彼らの演技は世界観があって好きなので、「なんて迂闊なことを…」と残念に思います。

こんなことではなく、演技で話題になってほしかったのに。

<10/27 23:30追記>

AP通信などが早速記事にしていました。ISU(国際スケート連盟)がこの件に関して調査を行うとのことです。

The Guardianの記事には動画まで掲載されています…ISUが今度どういう行動をとるのかは注目されそうですね。今季の四大陸選手権は中国開催なので中国の連盟に対する何らかの指導もありそうです。

その他の組

フランスの代表2枠目争い

フランスの代表争いは、「ロパブリ」ことエフゲニア・ロパレワ/ジョフレー・ブリソー組が196.60点で3位。五輪代表2枠目争いは順当に彼らがリードしました。さすがに徐々に調子あげてきますね。

「ロイテオ」ことロイシャ・デムージョ/テオ・ル=メルシェ組は184.20点で6位。まだ食い下がりたいところです。

「スマディク」は今季も評価上昇中

「スマディク」ことオリヴィア・スマート/ティム・ディーク組(スペイン)のFD「Dune2」は評価が高く、FDは3位、総合で4位。

ミラノ五輪後はトップクラスが多数引退しそう(「フルシゼ」は残りそう?)なので、来季はワールドメダル候補に駆け上がりそうです。

「イムクアン」の衣装変更に思ったこと

そういえば、ハンナ・イム / イェ・クアン組(韓国)のFDの衣装が木下グループ杯で見た時から変わっていました。

前は確か紺色で、なんとな~く海軍将校っぽいイメージを勝手に抱いていました。何の曲を使うのか知らなかったので、演技前は「愛と青春の旅立ち」でもやるのか?と思ったくらい。カーキ色で装飾が少なく、一気に“東アジアの一兵卒”のような印象に(苦笑)。

でも、彼らが思い描いている世界観に近いのはこちらなのでしょうね。私の先入観を消さないといけなさそうです。今大会は185.79で5位でした。

男女シングルの振り返りはこちら

エキシビションと、中国大会に関するその他の話題については「後編」にてとりあげます

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