GPSフィンランド大会 女子&ペア&アイスダンス振り返りとGPF出場者まとめ

2025GPSフィンランド大会の大会ロゴ画像

2025年グランプリシリーズ(GPシリーズ)最終戦・GPSフィンランド大会(フィンランディア杯2025/フィンランディア2025)は、女子シングルの千葉百音選手が安定した演技を披露し、見事名古屋グランプリファイナル(GPF)進出を決めました。

一方、SP後棄権する選手が出たり、判定の厳しさが話題になったり、ペア・アイスダンスでも見どころと波乱が入り混じる一日。

今回は、競技2日目の女子シングル・ペア・アイスダンスのポイントをまとめて振り返り、各カテゴリのGPF進出者情報を整理しました。

男子シングルの振り返り&GPF出場者まとめはこちらからどうぞ。

2025GPSフィンランド大会リザルト
※出場者リスト・スケジュール・採点結果などの一覧です 

目次

女子シングルフリー

女子シングルで起きた波乱は、残念なものも嬉しいものもありました。

曲かけトラブルや体調不良などが重なり、SP11位発進となったルナ・ヘンドリックス選手(ベルギー)はフリーを棄権しています。

住吉りをん選手

GPF出場がかかっていた住吉りをん選手でしたが、SPステップ中の不慮の転倒が響き、厳しい試合となりました。

フリーは今までとジャンプ構成を変え、冒頭に4回転トゥループを持ってきました。しかし回転不足での着氷をこらえきれずに転倒(「<」のアンダーローテーション判定)。

ISU実況には「(4回転トゥループは)公式練習で調子がよくなかったから抜いてくるかと思ったが…」と言われていました。目標をチャンピオンシップ大会への出場にとどめるのであれば、4回転トゥループを抜く選択肢はあったでしょう。しかしグランプリファイナル(GPF)進出&ミラノ五輪代表を目指すのであれば、4回転トゥループを投入する選択は理解できます。

その後トリプルサルコウとトリプルルッツでの転倒がありました。珍しくスピンでのレベル取りこぼしも二つあったので、昨日の転倒が心身ともに影響していたのかもしれません。演技中は表現を諦めていないのが伝わってきたのが逆にせつなかったです。

今大会は残念な結果となってしまいましたが、全日本では会心の演技が観たいです。

松生理乃選手

実力はあるものの、演技が不安定なイメージがあった松生理乃選手が、SPフリー両方を揃えてきました。フリーでも3つのジャンプに「q」がついたのでジャンプでの得点は伸び悩みましたが、フリー131.95は3位総合でも3位に入り、銅メダルを獲得!

ISU公式配信の実況者(マーク・ハンレッティ氏)が「SPの彼女のPCSが全体の6位だったこと」について苦言めいた疑問を呈していました。そしてその発言について「よく言った!」と共感している海外フィギュアスケートファンも多数。私も同感です。

見事なアウトエッジでカーブを描く動きは「リノ・マツイケ」と命名され、他の選手も取り入れようとしています。でも彼女ほどうまく出来る人はいないでしょう。そのあたりがもっと点数に反映されればいいのになと思います。

「q」を大量に出す今大会のジャッジ

今大会のジャッジはやたらと「q」を連発していました。ブレイディ・テネル選手(米国)のフリーは7個も「q」がついていました…私が過去に見た中では最多記録かも?

2025GPSフィンランド大会女子フリー採点表

本来「q」は、「回転不足が疑われるが、映像では回転不足とははっきり断定できない」という状況に出すものです。それをこんなに連発するというのは、「怪しいと目をつけた選手の怪しげなジャンプには全部つけとけ」というかのようにすら見えます。

ブレイディ・テネル選手が「q」の嵐をくらったことが松生理乃選手の銅メダルに繋がった感すらあるだけに、気持ちのよいものではありません。

優勝争い ~千葉百音選手 VS アンバー・グレン選手~

千葉百音選手

千葉百音選手は恐ろしいくらい安定していますね。

もちろん各試合ごとにちょっと微妙に堪えるジャンプなどはあるのですが、大ミスをしない安定感がとんでもないです。今回はフリー「ロミオとジュリエット」の演技終了後に見せた男前なガッツポーズが印象的でした。

下記の記事にはガッツポーズシーンの連写写真まで載っています(笑)

ISU公式配信実況が「さっきまであんなに繊細な演技をしていたというのに演技直後にこれってw」と大受けしていました。彼女があれだけリンクの上で高揚感をあらわにしたのは珍しいと感じます。

これまでの彼女のジュリエットは「結婚したいと親族を真面目に説得して回るジュリエット」だとか「軟弱ロミオに愛想尽かしてさっさと自立しそうなジュリエット」だとか色々言われていました。以前よりはジュリエットらしさが見えてきた気はします。

でも、あの演技直後のパワフルな様子を見ると、来季はタンゴとかカルメンとか、これまでとは違う「パワフルな女性」のプログラムに挑戦して欲しいと思いました

繊細・可憐系よりハマりそうな予感。

アンバー・グレン選手(米国)

歯の根管治療手術明けで体調今一つ―と言っていたアンバー・グレン選手。そのわりに、SPもフリーもトリプルアクセルはしっかり決めて来るところはさすが。完ぺきな着氷とまではいきませんでしたが、この成功率は本当に凄いですね。

ただ、トリプルルッツのコンビネーションがダブルに抜けてしまい、抜けてしまったコンビネーションジャンプのリカバリーを実施できなかったのが響きました。

ベテランの年齢だとあまりオーバーペースになってもよくないですし、昨年はGPF女王も獲得済みですから、ここからは五輪に向けてじっくり調子を上げて行ければいいなと思います。

アンバー・グレン選手がボストンワールドで表彰台に上がれなかったのが、私は凄く残念でした。彼女はルナ・ヘンドリックス選手(ベルギー)と同様、ミラノ五輪でメダルを手にしてほしいと願う選手の一人です。
(願っている選手を全員表彰台に載せると表彰台が足りなくなるのですけどねw)

女子のGPF出場者まとめ

女子のGPF出場者は、千葉百音選手、坂本花織選手、アンバー・グレン選手、アリサ・リウ選手(米国)、中井亜美選手、渡辺倫果選手。米国勢が2名に増えましたが、日米決戦には変わりありません。

補欠は、イザボー・レヴィト選手
(米国)、アナスタシヤ・グバノワ選手(ジョージア)、ブレイディ・テネル選手の順です。

イザボー・レヴィト選手は総スコアは高かったのに、順位点ポイントで決まるGPF選定基準では7番目になってしまいました。大会運が悪すぎましたね。

GPF出場する米国女子2名はミラノ五輪代表もほぼ当確でしょうし、GPFにはそこまで全力では来ず、全米選手権を見据えた戦い方をしそうです。なので、GPFに全力を賭けて来そうなのは日本勢のみかもしれません。

出場者の中で総合点数が一番少ない渡辺倫果選手は、GPFの場で他の日本女子を上回る成績を出すことがミラノ五輪代表を掴むための重要な条件となりそうです。気合が入りまくった演技が見られそう。

日本女子にとっては、「GPF」というよりも「プレ全日本選手権」といった様相で、日本女子にとってはヒリヒリした闘いになりそうです。

ペアフリー

続いては、ペアです。

「ゆなすみ」

SP5位発進ながら上位勢との点差は2点台だったため、表彰台の可能性も期待されていた「ゆなすみ」こと長岡柚奈/森口澄士(すみただ)組。

しかしフリーではスロージャンプ2本ともにミスが出てしまったこともあり、総合4位に終わりました。いやそれでも2大会連続4位ってスゴイですけどね!

スロージャンプの転倒&着氷乱れ、3連続ジャンプのファーストでのお手付き、レベルのとりこぼしが2つあったにもかかわらず、125.59も出せているのは凄いと思いました。リフトの加点&PCSでSS(スケーティングスキル)に8点が出ているのは大きいです。

「ジャンプ&レベルが揃う日が来たら、どんなすごい得点が出ちゃうんだろう?」とワクワクさせる点でした

GPS表彰台&記者会見に出るゆなすみを見るのは、お預け。でも私は彼らの成長をじっくり楽しみながら見守りたいと思っているので残念さは全然なく、今後への期待感がますます募った試合になりました。

下記の記事、購読者限定公開(有料)なのですが、二人のリフトへの意欲的な取り組み具合がよくわかってとても面白かったので、おすすめです!こういう努力の末に今のリフトがあるのですね。

アメリカ勢の争い ~「エリダニ」 VS 「エフィミト」~

「エフィミト」ことアリサ・エフィモア/ミーシャ・ミトロファノフ組のフリーは、スピード感もあってすごくよかったです。ボストンワールドでの神演技で出した135.59というパーソナルベストスコア(PB)に後わずかに迫る135.30をたたき出しました。

こんないい演技されちゃったら、「エリダニ」ことエリー・カム/ダニエル・オシェイ組は崩れちゃうんじゃないか?と心配したのですが、彼らもまとめてきました。

3連続ジャンプが入らなかったのは手痛いミスでしたが、その後のスロージャンプが2本とも入ったのが大きかったです。(彼らがスロージャンプ両方とも加点付きで終えられるなんて!)「エフィミト」には及びませんでしたが、128.85を出してGPS2試合連続の銅メダルを獲得しました。

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「エリダニ」がGPF進出するための条件は、2位以上でした。2位で「パブスピ」ことハンガリーのマリア・パブロワ/アレクセイ・スヴィアチェンコ組とのスコア勝負

その2位を「エフィミト」にさらわれて3位となったので、アメリカのペア勢は仲良く?GPF補欠の2位&3位となりました。

「ハゼボロ」(ドイツ)が貫禄の優勝

SPではまさかのデススパイラルノーカウントというミスをしてしまった、ワールド銀メダリストの「ハゼボロ」ことミネルヴァ・ファビアン・ハーゼ/ニキータ・ボロディン組(ドイツ)。

フリーはサイドバイサイドジャンプのトリプルサルコウで転倒がありましたが、他はまとめて総合206.88と、かろうじて「エフィミト」の205.49をかわしました。余裕で優勝かと思っていたのに、かなりギリギリの結果に。

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ペアのGPF出場者まとめ

ペアのGPF出場は、「りくりゅう」こと三浦璃来/木原龍一組、「コンマチ」ことサラ・コンティ/ニッコロ・マチー組(イタリア)、「ハゼボロ」(ドイツ)、「メテベル」ことことアナスタシア・メテルキナ/ルカ・ベルラワ組(ジョージア)、「ステデシ」ことディアナ・ステラート=デデュク/マキシム・デシャン組(カナダ)、「パブスピ」(ハンガリー)で確定。何と全組、国が違います!

そして、補欠は「スイハン」
(中国)、「エリダニ」、「エフィミト」の順です。

ハゼボロはミラノ五輪でりくりゅうの最大のライバルになるか?と思っていたのですが、今季は「メテベル」などに比べると何だか動きが重そうな気がしますね。去年は各エレメンツが凄く安定していた印象だったのに、ミスも多めだしどうしたんだろう?という感じ。伝えられていない怪我でもあるのかなとも思ったりします。

ナマで見ると実際のところどのペアに一番勢いがあるのか?GPFで演技を見比べるのを楽しみにしています。

アイスダンスFD

アイスダンスRD終了後、スケアメに引き続きステップのレベル認定がかなり厳しいことが話題になりました。

競技初日の振り返り記事でも、その点について触れています。

「パイポー」(カナダ)

上記記事で紹介した、「パイポー」ことパイパー・ギレス/ポール・ポワリエ組(カナダ)のパイパー・ギレス選手の取材時のコメント。どうもアイスダンスファンの間でもかなり支持されていたようで、演技後に彼女が感謝のコメントを出していました。

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採点競技をしている現役アスリートが、ジャッジへの違和感を口にするのはとてつもなく勇気がいることだと思います。ベテランだから言えたことかもしれません。「自分の発言を支持してくれるファンが大勢いたことが、こうした発言をする勇気を選手に与えてくれる」と語っていました。

ミラノ五輪プログラムに過去プログラムを持って来るなら、一般にも受けやすそうな「嵐が丘」の方がいいんじゃないかと思っていましたが、この大会での「Vincent(ヴァン・ゴッホに関する曲)」には過去の「Vincent」を超えて来る可能性を感じました。

「フルシゼ」(フランス)

フルシゼの映画「ザ・ホエール」の音楽を題材にした、哲学的&内省的なFDの世界観には今回も圧倒されました。これをGPFで見られるのかと思うとワクワクします。

「パパシゼ」時代のガブリエラ・パパダキス選手は、人外の美術工芸品のような美しさがありましたが、ロランス・フルニエ選手には人間の生々しいもろさが見える気がします。どちらも違った良さがあるので比べられるようなものではないのですが、このプロには徐々に「フルシゼ」らしさが出てきているように思います。

彼らの演技の感想を読みたいのに、海外掲示板で今大会のアイスダンスの話題を探ると、厳しい採点のことや、過去のスキャンダルに端を発した叩きあいで場外乱闘っぽくなっていて、純粋なプログラム談義が少なくて残念でした。

会場を盛り上げた「ピリハラ」こと折原裕香/ユホ・ピリネン組、オーソドックス路線ではない「ロミオとジュリエット」でGPF出場を決めた「ジンコレ」ことエミリア・ジンガス/ヴァディム・コレスニク組、ぐっと点数を上げてきたシブタニ兄妹の話などもしたいところですが、ちょっとその気力が奪われてしまいました。

アイスダンスのGPF出場者まとめ

アイスダンスのGPF出場組は、「チョックベイツ(or チョクベイ)」ことマディソン・チョック/エヴァン・ベイツ組(米国)、「フルシゼ」(フランス)、「フィアギブ(or ライラルイス)」ことライラ・フィアー/ルイス・ギブソン組(英国)、「パイポー」ことパイパー・ギレス/ポール・ポワリエ組(カナダ)、「アリサウ」ことアリソン・リード/サウリウス・アンブルレヴィチウス組(リトアニア)、「ジンコレ」ことエミリア・ジンガス/ヴァディム・コレスニク組(米国)に確定。

補欠は「ラジョラガ」
ことマージョリー・ラジョイ/ザカリー・ラガ組(カナダ)、「ギニャファブ(or シャルマル)」ことシャルレーヌ・ギニャール/マルコ・ファブリ組(イタリア)、「ロパブリ」ことエフゲニア・ロパレワ/ジョフレー・ブリソー組(フランス)の順です。

五輪前のGPFでは、アイスダンスの「格付け」が変動し、そのまま五輪に持ち込まれることがあります。なのでGPFでの結果は重要。

でも、ここ2試合のGPSでのジャッジ傾向を見ていると、GPFも渋い認定になって予想外の結果になる組が出てくるかも?私は既に戦々恐々としています。

甘過ぎる採点もどうかとは思いますが、ファンとジャッジと選手との感覚が乖離した結果にはならないでほしいなと願っています

GPFの展望・見どころなどは、大会が近づいてきたらまた改めてまとめたいと思います。
その前に「Ice Brave2」山梨公演控えてますからね!

2025GPSフィンランド大会の大会ロゴ画像

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