ボストン滞在記<番外編4>「宇野昌磨選手」がいない世界選手権で感じた喜び VS 複雑な想い

フジテレビ放送席でヘッドセットを着用した状態でリンクを見つめる宇野昌磨さん

ボストンにて現地観戦した2025世界フィギュアスケート選手権の振り返り、時系列でいくと女子SP⇒ペア…ときたら次は男子SPです。

ですが男子シングルを振り返る前に、「“宇野昌磨選手”がいない世界フィギュアスケート選手権」にt対して私が抱いた想いを整理しておきたいと思います。現役選手たちが主役である試合の鑑賞記録に、昌磨さん絡みの記述が多くを占めるのは避けたいし。

と言っても複雑な感情に襲われたのは男子フリーの時だけで、楽しいこと続きだったボストンワールド。前半と後半のテンションが激しく違いました(苦笑)。

よろしければボストン滞在中の私の気持ちのアップダウンにお付合いください

目次

「宇野昌磨選手」がいないシニアワールドは9年ぶり

宇野昌磨選手はジュニア4回(2012~15年)を含めると、計12回の世界選手権に出場し続けてきました。(新型コロナによる休止年を1回含む)

昌磨さんのシニアワールド初出場は2016年のボストン大会。シニアデビューシーズンのグランプリファイナルでいきなり銅メダルを獲得、メダルを候補の一角として臨んだ試合でした。

SP4位発進するもフリー後半の4回転トゥループで転倒。総合7位入賞で決して悪くはない演技だったのに、キス&クライではらはらと涙をこぼしていた姿は今も鮮明に思い出せます。

彼はそれ以降に開催されたワールド全てに出場し、全ての大会でメダル争いをしてきました。
「宇野昌磨選手」がいない世界フィギュアスケート選手権は実に9年ぶり

選手の引退は五輪直後orその翌年に集中しがち。五輪まであと2年を切った段階、それも「五輪でまだメダル狙えそう」と思われている状態での引退はかなり珍しいので、「不在感」もひときわ強く感じられます。

(そういう引退って私が今思い出せるのって他はジェフリー・バトルさんぐらいかな…怪我を理由に五輪代表争い期間中に引退する選手は稀にいますが)

寂しさをほぼ感じなかった大会前半 ーその理由とは

あのボストンで宇野昌磨選手の演技をもう一度見たい」という想いが強かった私。「引退しているかもしれないけど…」と思いつつもボストンワールドのチケットを取りました。(通し券の販売時期は引退発表前の秋だった)

だから私がボストンに行ったら、彼が試合に出ていないことを寂しく思うだろうーと覚悟していました

ーしかし、全然そんなことはなく(笑)

競技最終日前までは、寂しさを感じることがほぼありませんでした

寂しさを感じなかった理由はたくさんあります。

到着前後:次々に流れる「Ice Brave」情報

まずは、渡航直前に開催が発表されたアイスショー「Ice Brave」の情報が次々に降ってきたこと。記者会見にインスタライブ、チケット販売開始…いろんな情報が次々に流れてきましたからね。

ボストン入り前のミュージカル三昧@ニューヨークが楽しかったこともあって、ボストン入り前後は一切寂しさを感じずでした。

競技前日:公式練習見学中の昌磨さんを発見できた喜び

ボストンの会場で男子公式練習を見学中の昌磨さんを見つけた時も、「彼が練習に参加していない寂しさ」よりも「彼を発見できた喜び」が勝りました

だってね~公式練習の時、私の座ってたところからの眺めの写真がコレなんですよ。
小さい赤丸の中に、実は昌磨さんが座っています。

対岸の観客席の客は肉眼では豆粒状態でしか見えない

「昌磨さんはフジの仕事で見学に来てるはず」と当初はリンクサイドやメディア関係者が集まるあたりを探してたのですが、ふと対岸のスタンド席を見やったときに「…?アレはひょっとして…」ーと目に留まり、双眼鏡を出して確認したんです。

レンズの向こうに昌磨さんが見えた時は自分でもビックリ!

まさか一般観客席にしれっと座ってるとは!」という驚きと「私の眼力、凄くない!?」という自画自賛の気持ちとが一気に溢れました(苦笑)。

観客席で資料を見て考える宇野昌磨さん
双眼鏡で見るとこんな感じ 日本から持参した双眼鏡を使ったのはこの時だけでした(苦笑)

あそこにSHOMAがいるよ~~~!」って叫びそうになる気持ちをグッと抑えました(苦笑)

ファンの勘って、おそろしいですねw

そっから後はリンクの練習見たり観客席の昌磨さんを双眼鏡で覗いたりで寂しさ感じる暇は全くなし(笑)。曲かけ練習が終わった時点で「そうだ記念写真を撮っておかなきゃ!」って慌ててデジカメ構えたけど、遠すぎてブレてしまい全然まともに撮れずw 

観客席から練習を見学するスーツ姿の宇野昌磨さん
撮影には距離が遠すぎたw

「MIZUNOの練習着を着てリンクにいる姿」ではなく、「スーツ姿で観客席に座っている」ことを寂しく思う気持ちは、あるにはありました。

前のグループの練習では去年と同様ステファン・ランビエールコーチはリンクサイドにいて、デニス・ヴァシリエフス選手が曲かけをしていたのに、なぜ今年のリンクには彼がいないのか…と。

でもこの環境下で彼を見つけられた高揚感は、その寂しさを吹き飛ばしてしまいました(笑)

現地での投稿を読み返してみても、明らかに寂しさよりも楽しさが勝ってます

初日:会場インタビュー等で昌磨さん登場

翌日は翌日で、女子SPの整氷時間帯のインタビューに昌磨さんが登場しましたしね。

観客席のあちこちから「SHOMA」「SHOMAじゃないか!」って嬉しそうな声が一杯聞こえてきました。それが何だか嬉しくて、この日も寂しさは全く感じず。男子の試合もなかったですしね。

二日目:「神席」がもたらす高揚感&幸福感

競技二日目の男子SPは、「神席」っぷりにただただ舞い上がる一日でした。

「神席」からどんな光景が見えていたか、舞い上がりっぷりの詳細は下記の投稿にて

三日目:アイスダンス&女子の展開に夢中

三日目もアイスダンスの波乱&女子フリーの熱戦で男子シングルのことは脳裏に浮かばず。

ここまで楽しいこと尽くめで来たので、「このまま寂しい想いをあまり感じることなくボストン滞在を終えるのかな」と思っていました。

「神席」の高揚感を凌駕した、競技最終日男子フリー時の「寂しさ」

今季は宇野昌磨さんが現役時代に使っていたプログラム曲で滑るスケーターが各カテゴリにかなりいて、会場に曲が流れるたびに懐かしさは感じていました。

でもしんみりする気持ちには意外とならなかったんですよね~

昌磨さんシニア2年目のSP「ラベンダーの咲く庭で」を佐藤駿選手がSPで滑った時も応援の気持ちが勝っていて寂しい気持ちは全然出てこずでした。

曲の開始時とトリプルアクセルのところは一瞬脳裏に昌磨さんがよぎるけど、それ以外は佐藤選手の演技に集中してました

チャ・ジュンファン選手のフリー「ロコ」もそう

半年の間に彼らの演技を何度も見て、「佐藤駿選手のラベンダー」「チャ・ジュンファン選手のロコ」というイメージが自分の中で馴染んできていたこともあります。

ジェイソン・ブラウン選手のフリー

ただ、ジェイソン・ブラウン選手のフリー「鏡の中の鏡」は別でした

この曲は、宇野昌磨さん現役ラストシーズンのフリー後半に使用していた、とても静かで美しいピアノ曲です。

グランプリシリーズや全米選手権などで演技を見ましたが、いずれもジェイソン・ブラウン選手の調子が今一つ。「トリプルアクセルが決まらないようだけど、ワールド大丈夫なんだろうか…」との心配が先に立ちました。

しかし彼は、ワールドにしっかり調子を合わせてきました。あの印象的な旋律が繰り返される中、滑らかなで美しい所作で観客を引き込みます。

フジ放送席と演技中のジェイソン・ブラウン選手

あの賑やかなボストンの観客が静まり返り、彼の動きをじっと見つめている。

2023年NHK杯大阪会場で流れていた、あの素晴らしい空気感に近いものが、ボストンの会場にもありました。

NHK杯の会場を支配した「空気感」がいかに凄かったかについては下記で熱く語っています

静かに見つめていた観客も、後半に入ると次第にジャンプ着氷時の拍手が大きくなっていきます。

そして、彼が最後のスピンに入ってから起きた拍手は大きくなり、止まらなくなりました。スピンが終わる前に観客が立ち上がり始め、TDガーデンは満場の喝采に。もちろん私もスタオベ

こんなに素晴らしい演技を見せて貰っていたというのに…

私の中には悲しい気持ちがじわじわと押し寄せてきていました

ああ、昨春のモントリオールワールドでは宇野昌磨さんにこんな満場の喝采を味わってほしかった

何で彼は今すぐ近くの放送席に座っているんだろう、彼は今、この喝采をどう受け止めているんだろうーと

大喝采を受け、感極まった様子のジェイソン・ブラウン選手

今冷静に考えると、「昌磨さんならば“自分が使った曲だから云々”は抜きにして、ニュートラルな気持ちで演技を見ていたんじゃなかろうか」と思います。

でも、あの曲とあの演技に揺さぶられた心理状態では、どうしても去年のモントリオールワールドのフリー直後に感じた感情が蘇ってきてしまって

モントリオールワールドの昌磨さんのSP演技後は場内スタオベの嵐でした。でも平日日中でしたから、こんな満員じゃなかったんですよね…

ボストンの女子&男子フリーでは約1万8千席ある会場がスタンド最上段まで埋まっていました。「あぁ昌磨さん現役最後の演技は、こんな満員の会場で拍手喝采を浴びてほしかったな…」って。

「大阪NHK杯でのフリー演技中の会場の空気感とボストンの会場の大喝采の詰め合わせ」を、時を遡ってあの時の昌磨さんにプレゼントできるものならしたいーとすら思いました

100%の気持ちで喝采を贈れず、ジェイソン・ブラウン選手には申し訳なかったなと思っています。それぐらい動揺させられた演技だったとはいえますが、できることなら彼の演技のことだけ考えて拍手したかったな。

鍵山優真選手の表彰式で巡った複雑な想い

男子フリーの日、複雑な想いを感じた時間がもう一度ありました。それは表彰式。

鍵山優真選手のフリー演技は、多くの観客が予想もしていなかった展開になりました。

演技開始時の鍵山優真選手 私は多少のミスは覚悟していたけれど、全日本を超える演技が見られるか?と期待していました

フリー暫定9位(最終10位)が表示された瞬間は台落ちを覚悟しましたが、総合順位は「2」。「この順位で表彰台に残れるの?」とその時は驚きつつもホッとしました。(後で採点表を見て納得)

一方、当の鍵山選手は3枠確保できたのを確認した時に安堵の表情は見せたものの、顔面蒼白。メダル確定を喜べるような心境ではないのが明らかでした。

しかしその後の表彰式では、鍵山選手は気持ちを切り替えて観客に笑顔を見せてくれました。悔しさの残る演技だったかもしれないけれど3位に残れたことはすばらしいことだし、こうして笑顔を見せて貰えると嬉しく、観客も気持ちを切り替えることができます。

国旗をまとう男子メダリスト3名がリンクに整列している

でも、表彰式を見ていると、次第に私の中に昨年のモントリオールワールドの記憶が蘇ってきましてね。メダリストの顔ぶれはシャイドロフ選手以外は去年と同じだし…。

去年の昌磨さんはフリー6位だったけど、フリーで高得点をたたき出したアダム・シャオ・イム・ファ選手の総合点に届かず表彰台に残ることができませんでした

「あの時、昌磨さんが今回の鍵山選手のように表彰台に残れてメダルセレモニーで姿を見ることができていたら」「現役最後の試合でウィニングラップしてる彼の笑顔を目に焼き付けておきたかったなぁ」…なんて今さら考えてもしょうがない「たられば」が次々に蘇ってきました。

「おめでたい場なのに沈んでしまってはいかんいかん!」
ーと私も気持ちを切り替えてメダリスト達に拍手を送りました。

その後は表彰式も、翌日のエキシビションも感傷に襲われることなく楽しむことができました。

現役最後のフリー演技後に笑顔を見せてくれた昌磨さんに改めて感謝

今思うと、昌磨さんがフリー直後に見せてくれた笑顔での挨拶こそが「現役最後のセレモニー」でしたね。

2023年のGPS大会中のインタビュー記事(下記の英語記事)で、ステファン・ランビエールコーチは「このフリープログラムはSHOMAの観客へのFinal Bow(最後の別れのお辞儀)なんだ」って答えていました。

モントリオールワールドのフリープログラムも、あの最後の挨拶も、全てが「Final Bow」でした。


でもあの時の私は、彼が競技からの引退を決意しているとは考えたくなくて、必死で「あの笑顔の意味」を自分の都合のいいように解釈しようとしていました。

今なら「あの時、演技後に笑顔を見せてくれて、笑顔で私達観客に挨拶してくれて本当にありがとう」と言えます

もし彼があの時、あの笑顔を見せてくれていなかったら…私が彼の引退を受け入れるのはもっと辛かったような気がします。

9年ぶりの「宇野昌磨選手がいないシニアワールド」。「宇野昌磨選手」ファンの私はやはり「楽しい」だけでは終われませんでした。

彼は今後さまざまな分野で活躍していくだろうし(昨日も篝火(スマブラの国内最大級のオフ大会)観戦にいってたしねw)、しんみりした気持ちでこの記事を終えるのは本意ではありません。

なので、最高だったエキシビションのCome Togetherの公式動画埋めて終わることにします。

「Ice Brave」ではまず確実にやるだろうと思われるプロなので、どんな風に料理されたニューバージョンを見られるかを今から楽しみにしておきます!

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