深夜にこの情報が入ってきたら寝付けなくなってしまったので、夜中につらつら書いてしまうことにしました。
5月9日に開催されるISU理事会でミラノ五輪のスケート競技に出場が許可される「ロシア・ベラルーシのAIN(中立アスリート)」が決定するらしいという情報は流れていました。
しかし会議は終わっても一向に発表されず、「個人名は発表しないらしい」という噂も耳にして。もう北京で開催される五輪最終予選大会のエントリーが発表されるまではわからないままなのかなーと思い始めてました。
しかし、ISUがミラノ五輪に出場を許可した「中立アスリート」を発表したので、ざっと情報をまとめます。
※5/14 10:20 修正
ステブキの正式名称を書くべきところ、誤ってシニカツの正式名称をコピペしていたので修正しました
深夜に書くと頭がボケていていけません…
※5/14 正午 末尾に「補足情報」の項目を加筆
ISUが2026ミラノ五輪での「AIN(中立アスリート)」を発表
ISU発表資料 ISU Communication No.2708

3. 個人中立アスリート(AIN)
ISU 理事会は、ISU 競技大会に参加できるとみなされた AIN 選手およびサポート要員の最終リストを正式に承認した。ISU は、資格を有する要員を各加盟国に通知した。
対象となる AIN 選手のリストは以下の通り:
フィギュアスケート部門
アデリア・ペトロシアン(RUS)
アリーナ・ゴルバチョワ(RUS)
ピョートル・グメンニク(RUS)
ウラディスラフ・ディキジ (RUS)
ヴァシル・バラフースキー(BLR)
ヴィクトリヤ・プラスコンナヤ(BLR)
ヤウヘニ・プザナウ(BLR)
ヴィクトリア・サフォノワ(BLR)
ビクトリア・サフォノワ(BLR)
ナスタシア・シダレンカ(BLR)
ウラジスラウ・シツィク(BLR)
ロシアの「AIN(中立アスリート)」は、男女シングル2名ずつのみ。
確定ではありませんが、おそらく記載順からいって女子はアデリア・ペトロシアン選手がAINで、アリーナ・ゴルバチョワ選手が補欠、男子はピョートル・グメンニク選手がAINで、ウラディスラフ・ディキジ 選手が補欠かと思われます。
このどちらか1名だけが五輪最終予選大会に出場が許可され、その大会での成績次第で五輪出場の権利を勝ち取れます。
つまり、「ミーガリ」ことアナスタシア・ミーシナ/アレクサンドル・ガリャモフ組(北京五輪銅)と、「ステブキ」ことアレクサンドラ・ステパノワ/イワン・ブキン組(北京五輪6位)は、ミラノ五輪に出場できません
もともとこの二組はロシアのウクライナ侵攻直後の言動からいって「中立」とみなされない可能性が高いと予想されていました。
それでもロシアのスケート連盟は実力トップとされるこの二組で申請をしたので、この結果は覚悟の上だったのではないかと思います。
この決定をロシアのスケート連盟は受け入れるのか?
2024年開催のパリ五輪の時は、ロシア柔道連盟が出場許可が下りた「中立アスリート」が一部だったことに対する抗議として、柔道選手全員の出場を拒否する決定を下しました。

ロシアのスケート連盟の反応は現時点でははっきりわかっていませんが、会議が行われた日から時間が置いてからの発表になっているので、受け入れる方向なのかな?と私は推測しています。
なお今回の五輪では、ロシアとベラルーシは団体競技にはもともと参加できないという発表でしたので、今回の決定がフィギュアスケートの団体戦に影響することはありません。
ちなみに、「中立アスリート」は五輪中にメディアの取材を受けないことが条件とされています。
金メダルを獲ったとしても、ミックスゾーンや会見での取材はなしです。パリ五輪でも同様の対応がとられ、参加した中立アスリートの中で銀メダルを獲得した選手が一人だけいましたが、取材に対しては「答えられない」と回答したのみとなっています。

この決定について思うこと
パリ五輪で出場を認められた「中立アスリート」が少なかったことから、私はミーガリとステブキの出場は難しいのではないかと思っていました。政治的な言動を表立ってしていない若手選手だけになりそうーという私の予想が当たったわけですが…この決定がいざ出るとやはり複雑な想いになります。
五輪の残り枠争いでは日本に有利に
先日書いた投稿でも、ゆなすみこと長岡柚奈/森口澄士組のミラノ五輪出場の可能性について書いている項目で、「現在の状況下では(ロシア選手の)出場が決まっても決まらなくても複雑な気分になりそう」と書いていました。

日本のペア二組目(ゆなすみ)&アイスダンスはミラノ五輪個人戦への出場が確定しておらず、五輪最終予選で上位に入る必要があります。
五輪出場枠の残りはペアは3、アイスダンスは4。前大会メダリストのミーガリとステブキが出場するとなると事実上の残り枠はペア2、アイスダンスは3になります。彼らの出場が認められなかったことは日本のカップル競技の五輪出場においては有利に働きます。
ロシア組との勝負を見たかった気持ちも
とはいえ、「よりハイレベルな争いを見たかった」という気持ちもあります。
北京五輪では実力的には完全に「格上」だったミーガリに、今のりくりゅうはどこまで近づいているのか、あるいはもう追い越しているのか確認したかったなーと。ミーガリの今の演技はロシア国内大会の映像などで見ることができますが、同じ試合で同じ国際審判にジャッジされないことには今の実力差はわかりませんし。

りくりゅうは、ロシア選手が試合から消えたことでいきなりトップにのぼり詰めました。北京五輪後の3年間でワールド金メダル2つ、銀メダル1つという輝かしい成績は嬉しかった。
でも、できるものなら三浦璃来/木原龍一組がロシアペアに徐々に近づき、追い抜いていく過程をゆっくり見守りたかったなーという想いが私にはあります。
でも…
でも、現在の政治状況下ではミーガリとステブキの出場が許可されないのは理解できます。ステブキが今国際大会に出たら、どのあたりに食い込むのかも興味深かったですけど、それを知ることなく終わりそうですね。
まぁアイスダンスはシブタニ兄妹の復帰やフルシゼ結成などがあるので、複雑な感情がより強く感じられるのはペアの方ですかね…ゆなすみに五輪枠掴んでほしい気持ちと、ロシアペアとの真っ向勝負が見たかった気持ちとが相反してます。
冬季五輪ではロシアのアスリートがメダルを獲る機会がパリ五輪より増えるでしょう。どんな空気感になるのでしょうか?
中立アスリートたちも分け隔てなく応援するつもりですが、フィギュアスケート競技についてはドーピング関連の対応についてモヤモヤが残ったままなので、複雑な気持ちにはなりそうです。
追記:捕足情報
ペア&アイスダンスの五輪最終予選「補欠」について
男女シングルは、五輪最終予選に出場予定の選手とその補欠の選手がそれぞれ認められたのに、ペアとアイスダンスはゼロ。ペアとアイスダンスにも補欠として挙げていた組がいたはずです。
正確な情報源は発見できていませんが、ロシアのスケート連盟はペアでは「ボイコズ」ことアレクサンドラ・ボイコワ/ドミトリー・コズロフスキー組を、アイスダンスではヴァシリサ・カガノフスカヤ/マキシム・ネクラーソフ組を補欠として提出していたもようです。
ミーガリやステブキが「中立ではない」と判断されたなら、「補欠」として挙げられた組を「中立アスリート」として出場を認めてもいいのでは?とも思う向きもあるかと思います。
しかし、ISUが昨日公表した別の資料(下記)によると、申請された選手が「中立資格なし」と判断された場合、自動的に「補欠」選手も失格とみなされたようです。「交代は負傷の場合のみ認められており、資格がないことを理由に認められるわけではないため」ーだそうです。
この条件は事前にも明らかにされていたので、「ウクライナ侵攻支持の言動をしていたガリャモフ選手やブキン選手が中立と認められるはずはないのだから、ロシアのスケート連盟は彼らを正代表として申請すべきではない。他の組に出場チャンスを与えるべき」とという意見もスケオタの間では出ていました。でも、ロシアは彼らを正代表のまま申請しました。
ボイコズはメダルを狙える実力があり、ミーガリほど政権寄りではなかったので気の毒な気がします。若手のナタリア・ハビブリナ/イリヤ・クニャジュク組を代表にしておけば出られた可能性も高かっただろうに…とも思います。現政権支持を汚点扱いされたくがない故か、このような申請をしてしまうのがロシアの現状ということでしょう。

ちなみにchatGPTは「カップル競技」は個人で出場する競技と異なり、「チーム・団体」の色彩が濃くなるから審査基準がより厳しくなったと思われますーという見解を出してきました。そういう観点もひょっとしてありうるかもしれません。
海外ではエテリ門下のペトロシアン選手の出場に対する異論多し
海外の掲示板の反応もざっと見ましたが、女子シングルでアデリア・ペトロシアン選手が「中立アスリート」と認められたことに対する異論が噴出していました。
ISU発表資料 ISU Communication No.2708では、「中立アスリート」として認定される条件のひとつとして、「選手とサポートスタッフは、アンチ・ドーピング規則違反により資格停止処分を受けている者といかなる形でも関係を持っていないこと」を求めています。なのに、なぜカミラ・ワリエワ選手を指導していたエテリ・トゥトベリーゼコーチ門下の彼女に出場資格が認められるのかーと。
ドーピング関連で資格停止処分中のカミラ・ワリエワ選手は北京五輪中にドーピング疑いが発覚した時点でエテリ・トゥトベリーゼコーチの手を離れたことになっているので、現在は「関係性がない」扱いになったのでしょう。しかし、15歳だったワリエワ選手とその家族だけでドーピングを行ったとは信じがたいのに、コーチ陣営の調査または処罰が公表されていない現状には私も納得できていません。
エテリ・トゥトベリーゼコーチ門下生が五輪出場を決めた場合は、今後も議論が活発になりそうです。