ミラノ五輪フィギュア ペアSP終了|ゆなすみフリー進出ならず りくりゅう5位からの逆転条件

フィギュアスケート靴の写真、コーヒーカップなどが置かれた机の上にノートとペンが広げられている写真

ミラノ・コルティナ冬季オリンピック(ミラノ五輪)2026、フィギュアスケートペア競技ショートプログラム(SP)が終了しました。

ペアSP全体で見れば好演技の多い、素晴らしい試合でした。

しかし、日本の2組を含む、私が応援していた組の多くに思わぬミスが出ました。

「ゆなすみ」こと長岡柚奈/森口澄士組がフリー進出を逃したり、「りくりゅう」がフリー最終グループに残れなかったりという事態は完全に想定外。男子シングルフリーに続く、「まさか」の展開で連続パンチを食らった感じで、かなりメンタルを削られています。

今日のところは、SPを見て動揺した私の感情ベースで綴り、最後にフリーの展望をまとめています。

ペアSP結果(五輪公式版)
上記ページ下部に演技予定時刻(現地時刻)も記載した「スタートリスト」PDFリンクが掲載されています
ミラノ五輪2026フィギュアスケート競技リザルト(ISU版)

目次

第1~第2グループ

前半グループから好演技が続々

第1~第2グループは、驚くくらい好演技が続きました

ペア競技の前半グループはジャンプなどにミスが出てしまう組がある程度いるのに、転倒などの大きなミスが出ません。

6組滑った中で大きく目立ったミスは、北京五輪金メダリストの「スイハン」ことスイ・ウェンジン/ハン・ツォン組(中国)に、二人が同時に跳ぶ「サイド・バイ・サイド(SBS)ジャンプ」でステップアウトがあった程度。彼らはそのミスをものともせず、70点台を出しました。

「フリー進出」のボーダーラインが大きく上昇

2025世界フィギュアスケート選手権(ボストンワールド)も好演技のペアが多かった印象でしたが、それでもフリー進出が可能な点数ライン(「SP落ちライン」)は55点台でした。

なのに、昨季のワールドで50点台だったコヴァレフ夫妻(フランス)、ダリア・ダニロワ/ミシェルツィバ組(オランダ)も全技術要素をわずかな乱れ程度で決め、続々と60点台をクリア。

「こんな神大会の流れなら、「SP落ちライン」が60点台に跳ね上がっちゃうんでは…?」と思い始めました

「ゆなすみ」こと長岡柚奈/森口澄士組の五輪初SP

演技前に抱いていた呑気な期待

私は「ゆなすみ」こと長岡柚奈/森口澄士組に対しては、SP落ちのリスクなど全く考えていませんでした。

演技前はまだ呑気に「いい演技ができて最終前グループ入れたらいいんだけど…さすがにまだ厳しいかな」なんて考えていました

今季の彼らはグランプリシリーズ(GPS)以降のSPが60点台後半~70点台前半。

大舞台の経験が少ないから、SBSジャンプとスロージャンプの双方の着氷が乱れたり、どちらかで転倒したりはありえそう。でもリフトとPCS(演技構成点)の評価が確立された今の彼らなら、大きなミスがあったところで60点台半ばは出せるだろうと。

演技は思わぬ展開に

要素二つ目のSBSジャンプ、トリプルループで長岡柚奈選手が転倒します。これが今大会のペアSP初の転倒でした。

残念だけれど、これは仕方がない。次のスロージャンプをステップアウトぐらいでこらえてくれれば…と願いましたが、何とこちらも転倒に。

「まさか」と思いました
いくら評価が上がっているとはいえ、2転倒だとPCSは期待できない…

※採点規定上、通常は2転倒=二つ以上のシリアスエラー(重大なミス)があった場合はPCS評価の上限が10点から8.75点に下がります

会場の観客から送られた拍手と声援

やがて会場の観客から暖かい拍手と歓声が沸き起こりました。

その後、二人が見せた笑顔は忘れられません

彼らはおそらく自分たちがフリーに進めないことは悟っていたでしょう。だからこそ、このオリンピックの空間で演技をする最後の瞬間を楽しもう、観客を楽しませようと気持ちを切り替えたのだろうと思いました。

拍手と歓声の変化

観客からの拍手や声援は、最初は連続ミスをした選手への励ましからだったかもしれません。

しかし、その励ましは純粋な称賛に変わっていったように感じました。だって、彼らはそこから素晴らしいリフトとステップを見せてくれましたから。

実際、ゆなすみのリフトはSP1位選手に続く2位の点数を得ています。ステップも最終グループに近い点数。2転倒しているというのに、PCSは30点を超え、全組中12位。
ミスが出た部分以外は高い評価を受けています。

何より、あれだけのミスが続いたあとに、「ゆなすみ」はちゃんと見せ場を作ったのです。

「励ましの歓声」が「本物の歓声」に変わる時

私は二人の演技後、2018平昌五輪直後のミラノワールドでの宇野昌磨選手のフリー「トゥーランドット」を思い出しました。足の怪我を抱えて強行出場したときです。

4回転4本中、3本を転倒。観客から拍手と歓声が自然に沸き起こった中で挑んだ、最後の4回転トゥループのコンビネーションジャンプ。着氷したとたん会場は大歓声に包まれます。そして立て続けにコンビネーションジャンプを成功させ、最後には大喝采となったのです。

あの時もイタリアの観客の励ましの拍手から流れが変わっていったように思います。当時のユーロスポーツの解説者は「彼はあの3度もの転倒の後から、どうやってかこの見せ場を作り上げた。これはとんでもないこと」と言っていました。

励ましの拍手や声援を本物の歓声に変えられる力を持つ選手は限られていると思います。
「ゆなすみ」はまだ若いですが、そんな力が秘められていると感じられた演技でした。

まだまだ続く、ゆなすみの未来

得点は59.62。昨季のボストンワールドや、2022北京五輪ならフリーに進めていた点数です。(両大会ともフリー進出ラインは55点台)

しかし、好演技が続いたミラノ五輪では19位。フリーには進めず。

彼らの素晴らしいフリープログラムを五輪を視聴する観客に見てもらえないことは、ファンの一人として、とても悲しいです。

あのコリオシーケンスで疾走する二人の姿を、全世界の視聴者に見てもらいたかったなぁ…

でも、彼らにはおそらく次の五輪、ひょっとしてその次の五輪も待っているでしょう。彼らは昨年のボストンワールドでの「SP落ち」から、大きく成長を遂げました。この悔しい体験がさらなる成長につながると信じています。

木原龍一選手も、初めてフリーに進めたのは3大会目の五輪でした。「フリー進出の壁」は厚いのですね。
まずは来月のプラハワールドでの活躍を期待したいです。

第3~第4グループ

中盤グループの組も好演技が続きました。いつもはミスが目立つ選手も、今回は技を決めてきます。

団体戦連戦だった「リアトレ」が大躍進


中でも目覚ましい活躍だったのが、「リアトレ」ことリア・ペレイラ/トレント・ミショー組(カナダ)。

先日公開した「ペアの見どころ」記事では、私は彼らを注目選手の最後に挙げて、こう書いていました。

疲労は心配されますが、団体戦フリーでパーソナルベスト(PB)を10点以上も更新していたので勢いに乗って来るかもしれません。

「リアトレ」の団体戦フリーの勢いは、まだ続いていました。

SPの点数まで4点もPBを更新、なんとSP3位に入って最終グループ滑走に入ったんです!

団体戦で自信をつけ、ジャッジからの評価が一段上がった感がありますね

「リアトレ」は、「ゆなすみ」とランキングやGPS成績で近い立ち位置にいた組です。

そもそも彼らが団体戦のSP・フリーを滑ることになったのは、ディアナ・ステラート=デデュク/マキシム・デシャン組(カナダ)の怪我による団体戦欠場が原因。直前の欠場発表だったので、急遽団体戦出場が決まったと思われるので、彼らもずいぶん大変だったことでしょう。

しかし、それが逆に功を奏して「リアトレ」大躍進に繋がりました。

私が「ゆなすみ」に抱いていた夢を実現しているかのようで、「いいなぁ…」と羨ましく思ってしまいました

中堅の注目選手たちは軒並みいい演技

その他、注目選手として挙げていた「パブスビ」ことマリア・パブロワ/アレクセイ・スヴィアチェンコ組(ハンガリー)も73.87とPBを更新する好演技。最終的に最終グループ入りを果たします。

心配と期待が入り混じっていた「エリダニ」ことエリー・カム/ダニエル・オシェイ組(米国)もスロージャンプ含む両方のジャンプが加点付きの演技(スピンで失点ありましたが)でシーズンベストの71.87(SP7位)

ディアナ・ステラート=デデュク/マキシム・デシャン組の「まさか」

しかし、第4グループ最終滑走だったディアナ・ステラート=デデュク/マキシム・デシャン組(カナダ)から少しずつ雲行きが怪しくなってきます。

彼らは2024世界選手権金メダリストですが、今季は調子が今一つ。しかも五輪直前の練習でディアナ・ステラート=デデュク選手が落下して頭部を打ち、団体戦を欠場しています。

あまり練習を積めていないはずなので、「厳しい演技になるかも」と覚悟して演技を見始めたのですが…演技前半は今季のこれまでの演技よりはずっとよくなっていました。

しかし、得点源のリフトからの出で二人のタイミングが合わず、ディアナ・ステラート=デデュク選手が転倒。

リフトは成功した!と思った瞬間の転倒だったので、驚きました

ペアSPで一番手痛いのは、ジャンプよりもリフトのミスです。

通常、SPの技の要素で最も高い得点を稼げるのはリフト
彼らのミスはリフトを終える際のものなので基礎点は入るものの、リフトは基礎点が大きい分加点幅も大きいため、ひとたびミスが出ると加点がごっそり消えてしまうのが痛い…
※実況解説でもその点が初心者向けに適切に説明されていました

2季前の元世界王者が、66.04でまさかのSP14位。

調子を上げていたのが見てとれただけに、とても残念な結果でした

最終グループに続いた、「思わぬミス」

その後、最終グループでは最終滑走組以外に思わぬミスが続きました。

「メテベル」ことアナスタシア・メテルキナ/ルカ・ベルラワ組(ジョージア)は、一番得意とするスロージャンプで着氷が乱れます。時々思わぬミスは出る組ですが、スロージャンプは鉄板のイメージがあったのでちょっとビックリでした。



続く「コンマチ」ことサラ・コンティ/ニッコロ・マチー組はスロージャンプの軸が完全にずれていて大転倒を覚悟しましたが、サラ・コンティ選手が軸ずれを空中で補正して普通に降りたのはベテランの意地を感じました。しかし、その後のSBSジャンプで着氷が大きく乱れてしまいます。

得点は71.70。(うまくまとめた団体戦SPは76.65)

「ジャンプ着氷乱れでそこまで下がる?」と思ったら、リフト・スピン・ステップでいずれも団体戦時よりレベルを落としていました

今回の五輪の暫定得点表示、レベル表示が出ないので「?」となることが時々あります

「りくりゅう」の「まさか」

得意のリフトで起きたアクシデント

私は「りくりゅう」が滑り出したときは、大きな不安は感じていませんでした。練習も滑り出しも動きがよかったし、ジャンプの乱れぐらいはあるかもしれないけど、まとめられそうだなと。

リフト動作に入ったときも、いつもの「“ピザ職人”のように頭上で回すリフト」をワクワクして待っていました。

しかし、リフトは二人のタイミングが合わず、途中で終わってしまいました。

「うそでしょ?」となりました

ミス後の要素は動揺を抑えつつクリア

しかし、二人が強さを見せたのはここからです。

次のスロージャンプは意地で着氷。サイド・バイ・サイドで行うスピンは団体戦のような完璧な同調性こそなかったですが、十分加点が取れる質。ステップとデススパイラルも団体戦に近い点数を出せました。

失点はあのリフトだけ。しかしレベル2になって減点も加わると、団体戦で9.90を獲得したあのリフトの点数は3.90になってしまいました。

逃した最終グループ入り

PCS評価も若干下がり、団体戦82.84だったSPは、個人戦では73.11この時点で暫定4位。

ということは…「りくりゅう」は最終グループに入れない!?

これが最大の驚きでした。

どんなトップ選手でも、フィギュアスケートで毎回ノーミスを続けることは難しいです。

最終グループ開始前は、「多少ミスが出てSP2~3位あたりからスタートする方がプレッシャー少なくなっていいかな」なんて呑気に考えていました。

「りくりゅう」が最終グループにいないという発想はなかったです。

最後を締めた「ハゼボロ」

この直後に登場したのが「ハゼボロ」ことミネルヴァ・ファビアン・ハーゼ/ニキータ・ボロディン組(ドイツ)です。

最終グループ内で唯一団体戦に出場していない彼らは、ここにピークを合わせてきているでしょう。しかし、こうもミスが続いた後はやりにくいはず。

しかし、彼らは冷静に一つ一つの技をしとめていきました。80.01はPB。初めての80点台で、SP1位発進です。

フリーの展望

SPの上位1~8名は下記の通りです。

ISU公式リザルトより引用 表をクリックすると元情報ページが開きます

この8組が、フリー後半グループ。順位の逆順に4組ずつ滑ります。

五輪での過去の逆転金メダルの実例

今回の展開で、2018平昌五輪の「サフマソ」ことアリオナ・サフチェンコ/ブリュノ・マッソ組(ドイツ)の逆転優勝を思い出した方は多いと思います。

「サフマソ」は金メダル有力候補でしたが、SPでミスが出て4位。フリーで当時の世界最高得点を出して、約6点差を逆転して優勝しました。

「逆転金メダル」の可能性があるのは誰?

「りくりゅう」の滑走順の影響

「サフマソ」の平昌五輪のときより、今回の点差は約1点多く開いています。また、「サフマソ」は最終グループに入れたのに対し、「りくりゅう」が最終に入れなかったのは少々痛いです。統計的に、後半グループの方が高めの評価が出やすい傾向があるからです。

ただ、高得点を出せそうな「コンマチ」や「スイハン」が前で滑りますので、彼らがいい演技をしてくれると採点傾向に弾みがつくことは期待できます。

「りくりゅう」はこれまでの実績が認識されていますし、先日の団体戦でも155.55ものハイスコアを出したばかり。もし素晴らしい演技が出来た場合に、前回の採点傾向を急には変えにくいのではないかと推測しています。

「りくりゅう」と「メテベル」のスコアの伸びしろは?


また、「りくりゅう」は団体戦フリーでは3連続ジャンプで軽微な回転不足「q」を取られ減点されています。こを決められればPBにまだ数点積むことは可能です。

「ハゼボロ」のフリーのPBは昨年の名古屋GPFの149.57。一方、約3点差でSP2位の「メテベル」のPBは、148.07。素晴らしいノーミス演技をすれば「メテベル」も150点台が出せる可能性があります。

逆転金メダルの可能性が残されているとしたら、「メテベル」と「りくりゅう」の2組じゃないかと思います。(SP3位の「リアトレ」と4位の「パブスピ」もフリーPBを更新すれば金メダルの可能性はあると思いますが、上位のミスは必要になるかと)

「ハゼボロ」にもスコアの伸びしろ大

「ハゼボロ」はSP・フリー両方を揃えて来るイメージは強くありません。

でも、もし五輪フリー最終滑走でノーミスなら、PCSは大きく伸びる可能性があります。PBを一気に更新して155点ぐらい出るかもしれません。

そうなるともうどの組も逆転は不可能です。

メダルの可能性はどこまで?

ペアのフリーで減点全くなしのノーミス演技を出来る可能性は高くはありません。男子シングル程ではないですが、フリーによって順位が結構入れ替わることはありえます。

もし上位陣に細かなミスが複数重なれば、理論上は最終2グループぐらいまで(上位8組)あたりまでは全組メダルの可能性は出て来るかと思います。

でも、順位が大きく入れ替わる波乱は、男子シングルでもうお腹いっぱいです

もう「波乱」はあまり見たくないかも…


高橋成美さんも最後に「フリーが楽しみ!」と言っていました。「りくりゅう」も「金」メダルを望んでいるでしょう。なので、私も明るい気持ちで逆転を願ってテレビ前で応援しようと思います。

そもそも、どの色でも「史上初の日本のペアメダル」です。何なら6位以上でも「日本ペア過去最高位」。こうやって日本人ペアが五輪でメダル争いをしているということ自体が物凄いこと。そして、実力伯仲しているライバルと闘って金メダルを獲得するのは大変なこと。それらを忘れずに、フリーを見守ることにします。

ミラノ五輪個人戦ペアフリーは、2/17(火)午前の3:55~6:00。約6時間後に始まります。
2022北京五輪個人戦のフリーのように、笑顔で演技を終えられますように!

ブルーノ・マルコットコーチに取材した記事が読み応えあったので最後に追記しておきます

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