アイスダンスのメダリストが決定したあとは、男子シングルフリー。
小一時間程度の休憩があるので外に食事に行こうと思えば行けないことはないのですが、アイスダンス表彰式を見ていると実質30分程度しか間がありません。男子シングルファンとしては「あ~ついに始まっちゃうのか…」という感じでした。
まずは前半グループのフリー演技の記憶をまとめていこうーと思っていたのですが、最初に書き始めたドノヴァン・カリーヨ選手について文章が止まらなくなってしまい…もう彼の話題だけで投稿しちゃうことにしました(苦笑)。カムデン・プルキネン選手やミハイル・シャイドロフ選手も触れようと思ってたのに。
カリーヨ君は北京五輪で人気が急上昇したものの、ここ数年ワールドでは本当いろいろあって活躍したくてもできない状況にいましたから…彼の過去を振り返ってきたら想いが溢れちゃいまして。私こんなにカリーヨ君好きだったのか!?と自分でも驚いております(苦笑)。
彼に少しでも興味がある方はお付合いください。
カリーヨ選手が試合に出始めたころの想い出
私が2024モントリオールワールド男子シングルフリーの前半グループにおいて、もっとも楽しみにしていたのはメキシコのドノヴァン・カリーヨ選手でした。
彼の演技を初めて見たのはいつだったでしょうか?
約30年ぶりにメキシコから現れたフィギュアスケーターということで、早い方はジュニア時代から注目されていたと思います。2016年ジュニアグランプリシリーズ横浜大会で来日しているので、その時ナマでご覧になった方も多いのでは。
当時の私はジュニアの試合まではマメにチェックしておらず、下記の横浜大会の演技映像公式動画は昨日初めて見ました。カリーヨ君はこの大会では13位。(ちなみにこの大会の優勝者はジュンファン、2位がヴィンセント・ジョウ、4位が友野くんでした)
私がほぼリアルタイムで彼の試合を初めて見たのは、シニアで初出場した2018年の四大陸です。彼はシニアデビュー前から日本のスケオタの間で話題になってましたから、注目していた記憶があります。
この時期彼が跳べたジャンプはトリプルルッツまで。フリーのアクセルジャンプはダブルアクセル2回でした。それでも四大陸SP突破してフリー17位。その後2018ミラノワールドにも出て、またまたフリー進出して総合22位!
他にスケーターが誰もいない国からの出場でシニアデビューシーズンにチャンピオンシップ大会二つ出てどちらもフリー進出果たせるなんてスゴイじゃないですか!?彼はあっという間に私のお気に入りスケーターの一人になりました。
北京五輪出場で「世界の人気スケーター」に
2019年四大陸ではトリプルアクセルを初成功、2021ストックホルムワールドでは総合20位に入って夢の北京五輪の出場切符を獲得しました。
もともと世界のスケオタには「魅力的な滑りをするスケーター」として人気を確立しつつありましたが、北京五輪で彼の人気が大ブレイクします。
「フィギュアスケート界では超珍しいメキシコ出身」「ショッピングモールの小さなリンクで練習」「自宅近くのリンクが潰れて13歳で実家を離れる」などというエピソードはそりゃ興味をそそられますもんね。
当時のオリンピックチャンネルの特集記事がこちら。
ドノバン・カリージョ、家族と掴んだオリンピックドリーム
Olympic Channelが本腰入れて作成したドキュメンタリー動画も再生されまくり。
(2023年4月時点の総再生回数は108万回超!)
しかし北京五輪開催時の日本メディアは、一部の日本人選手の話題とカミラ・ワリエワ選手のドーピング疑惑を繰り返すばかりでこういう海外選手の良エピソードをろくに伝えてくれず…。
新型コロナ感染対策の必要もあり、取材したくてもしづらい状況だったかもしれませんが、「こういう選手のことを報道してこそ“オリンピック”なのに」「彼は日本でももっと話題になってもいいのに」~と私は歯がゆく思っていました。
カリーヨ選手のスケートの魅力
彼のスケートは、十代の頃からなんというか“ハッピーオーラ”が漂ってたんですよ。「スケートが好きだぁぁ!」ってキラキラをまき散らしながら滑ってる感じ。私はキーガン・メッシングさんや友野一希選手にも似たものを感じます。
単に笑顔がステキだから、というだけじゃありません。当時のカリーヨ君の滑りはトップクラスレベルの技術ではなかったけれども、それでもスケートそのものから出ている多幸感が感じられたんですよね。本人にも滑りにも華がある、というか。
2019さいたまワールドにも彼は出場しているのですが、私は現地観戦はできずでした。大会前に怪我をしたこともあって、2019さいたまワールドではフリーに進めずでしたが。この大会はライブ視聴すらできなかったので、実は彼がどんな演技だったかを一度も見ていません。
北京五輪後のワールドは悲運続き
北京五輪で世界人気がブレイクした彼でしたが、五輪直後のモンペリエワールドでは、とんでもない悲劇に見舞われました。現地入り済みなのにロストバゲージで靴が届かず、SP直前に棄権せざるを得なくなったんです。
メキシコからフランスまで移動してきたのに。本人ワールドに備えて練習重ねてきてただろうに酷すぎる、あんまりだ…って思いました。
その後、2022-23シーズンは初めてグランプリシリーズにも出場を果たします。スケートアメリカで招待されて12位に終わるも、大人気なんでエキシビションにも呼ばれました。(宇野昌磨選手と一緒の大会だったのでよく覚えてます!)
私は海外観戦時以外はバナーや国旗を掲げることなく拍手隊に徹しているのですが、「2023さいたまワールドに彼が来るならメキシコ国旗だけは買っちゃおうかな」と思っていたぐらい、彼の演技をさいたまで見るのを楽しみにしていました。
しかし、2022年12月23日、彼のインスタに衝撃の投稿が!!!
「ええええちょっと待ってよー!今こんなギブスしてるってことは、さいたま来れないの!?」とガックリ来ました。
投稿を読むと、ずっと先延ばしにしていた足首の手術をしたので2022-23シーズンはこれにて終了、四大陸もワールドも出ないとのこと。
「手術をワールド後にすることも考えられないぐらい状態悪かったのかなぁ。彼ももう中堅の世代に入りつつあるし(当時23歳)、これからリハビリ始めてもとのような滑りを取り戻せるだろうか…資金援助とか変わらず受け続けられるだろうか?」とかなり不安になりました。
そして、こんな大変な時だというのに、笑顔がデフォルトのままのカリーヨ君…。
なんともステキな人だなと思いましたね(笑)。
やっとナマで観れるカリーヨ君!⇒ 公式練習は目が足りない
その後カリーヨ君は拠点をメキシコからカナダ・トロントに移しました。
今年の四大陸では足首手術後試合で初めて?4回転サルコウに挑んだのを見て私のテンションは上がりましたよ!残念ながらSPの4Tは転倒、フリーの4Sはステップアウトではあったけれど、手術から復帰直後のシーズンでこれだけできるのならモントリオールワールドではフリーにも進めそうだなと。
しかも公式練習は日本人3選手と同じグループと知り当初は大喜び!
なのに目が足りなさすぎてカリーヨ君を見る時間が少なくなってしまうジレンマ…
宇野昌磨選手と一緒のグループの時点でカリーヨ君をちゃんと見ようというのは到底不可能でしたね。大体このグループみんな休まず出て来るから毎回6人いるし!(他のグループは1~2人しか出てこない回もちょくちょくあったのに)
やっとナマで観れるカリーヨ君 ⇒ 会場にいるのにSPが見られない
そして迎えたSP当日。彼のSPは見逃したくない!と急いで会場に行ったのに…。システムトラブルで会場入口で足止めを延々食らい、彼のSP演技をナマで観られなかったことは多分一生恨み続けると思います(苦笑)。
当日のトラブルの詳細は下記の投稿内にて。そりゃサブリンク練習観に行ったせいでギリギリに会場入りしたってのはあるけどさ~演技開始前に十分間に合ってたのに(涙)。
帰国してからJSPORTSの放送録画で観ましたよ。
ああああこれはナマで観たかったよ~彼の国際大会初の加点つき4回転サルコウ、ナマで拝みたかった!!!
十代のころから徐々に上達していく選手を見守ってきた過程での最大規模の喜びの瞬間だったというのに。
フリー演技&演技後の笑顔がくれた多幸感
そんなこんなで、彼のフリー演技を見る時の思い入れは半端なかったです。めちゃくちゃ集中して観ました。あの練習グループに入っていたせいで、彼だけを注目できた時間はブツ切れ状態だったから、本番はしっかり目に焼き付けようと。
しかし、フリーの衣装は相変わらずキラキラがスゴイw ナマで見るとホントにキラッキラです。本人もキラッキラなんですけどね(笑)
冒頭の4回転サルコウ、3A-3Tが連続して決まり、もう既に満足している私(笑)。公式練習何個も観に行ったけど、結局助走から着氷までしっかり見られた彼の成功4回転サルコウはこれだけだったかも。(練習で何度も跳んでいたけど他のスケーターを同時に観ながらなので、離氷寸前ぐらいからしか見られてなかったw)
練習の時にも思いましたが十代の頃に比べて滑りの美しさが増しましたね。…ってナマで観るのこの大会が初めてだから比較対象があるわけではないのですが。
演技後半はステップアウトが複数あって勿体なかったですが、フリーはパーソナルベストを14点も上回る152.48!SPもPBで初の80点台を出してたし、今年はもう文句なしのワールドでした。この2年の不運を少しは取り返せたのではないでしょうか。
SPフリーとも着氷乱れがあっての点数なのでジャンプの精度を上げればこの構成でもまだまだ点が出せる。来年ボストンワールドでも頑張って、ミラノ五輪出場枠を掴んでほしいです。ミラノ五輪フリーの第2~3グループあたりで彼を見られたらいうことないな。
モントリオールの会場には彼の友人が何人も来ていたようで、演技終了直後の彼を直接祝福しようとスタンド席階段を駆け下りてくる姿が見えました。カリーヨ君も観客への挨拶終了後、ただちに観客席の友人のもとへかけつけ、嬉しそうにハグ。場内の観客みんなが、それはそれは微笑ましい空気感で見守ってましたね。
カリーヨ君がキス&クライに向かおうとしたとき、誰かが持ってた自撮り棒?だか杖?だかがリンクに落ちてしまいました。それを笑顔で拾い上げて返すカリーヨ君の姿に場内からはドッと温かな笑い声が沸いて、幸せ感マシマシでした(笑)。
彼の点数はメダルや入賞が目指せるようなレベルではありません。でも、資金不足や怪我に苦しみながら競技を続けてきた選手が晴れの舞台で過去最高の演技で喜ぶ姿を見ていると心が熱くなります。キス&クライでもず~~~っと嬉しそうで本当にこっちまで嬉しくなりましたね。
いや~フリーだけでもナマで観ることができて本当に良かったです。
他選手のフリー演技については後日また改めて…(苦笑)