現地観戦したグランプリシリーズ第5戦フィンランド大会(フィンランディア杯)、試合初日男子SPの記録です。
現地で既にざっくりとした感想は書いているので、今回は現地で私が撮影した写真を中心に振り返ります。今更感凄いので、最新情報もところどころ交えますね。
事前に今季プログラム映像を観ていても,現地で見ると印象が変わることがあります。今回印象が変わったのは、鍵山優真選手とルーカス・ブリッチギー選手のSPでした。
特にブリッチギー選手のSP曲は現地で聞いたら随分印象的で(初見時は何とも思わなかったのに!)、帰ってきて調べたら色々発見があって興味深かったです。
男子SP
高難度技が入れられずとも見応えのある演技をスケーターは大勢います。実力を発揮できた演技が観られれば、GPS前半グループも楽しいのですが…フィンランド大会男子シングル前半グループはなかなかさんざんな仕上りが続いてメンタル削られました(苦笑)。
フィンランド男子のミニマムスコアへの挑戦への道は厳しかった
私が楽しみにしていたフィンランド男子37才&19才(来月20才)による世界フィギュアスケート選手権に必要な技術点・ミニマムスコアへの挑戦。二人ともコンビネーションジャンプ決まらないわ着氷乱れまくるわで、「惜しいレベル」にかすりもしない状態で終わりました。
二人の過去のベスト技術点をスマホに表示しておいたのに全く見る必要なし。
「あ~0.8点だけ更新できたけど届かなかったかー!」とかやりたかった…
マカール・スンツェフ選手
フィンランド人観客から熱い声援を受けて登場したマカール・スンツェフ選手。
しかし3-3冒頭はダブルになりその後もジャンプが決まらず…私は現地ではダブルアクセルの失敗だと思いこんでたんですが、スコア見たら「3A<<」になってました。
あれはトリプルアクセルへ挑戦だったのか!そうか…今季ワールドミニマムスコアに5.06点足りない彼としては、技術点がっつり上げたいもんね。トリプルまでだと加点増やすにも限界あるし。
ヴァルター・ヴィルタネン選手
医師業を続けながら現役選手生活を続けるヴァルター・ヴィルタネン先生も、現地フィギュアスケートファンには大人気。
先生は技術点のベストスコアをSPとフリーで合計2.52点上げられればクリア。しかしトリプルアクセル無いからノーミス&スピンステップでレベル4を極力揃えてギリ何とか…ってレベル。コンビネーションつけられなかった時点で、ワールドミニマムスコア獲得の夢は消えました。
フィンランド男子はそれぞれトリプルアクセル&4回転トゥループに挑んでますが、どちらも成功は厳しそうな印象でした。成功してもプロがまとまらず、去年出した技術点も超えられなさそう…
先生の昨季のタリンクホテルズカップの演技にはすごく感動させられたから応援したかったんだけど、今季フィンランド代表男子を見られるのはユーロまでかな…
今季のワールドミニマムスコアの壁は想像以上に厚そうです
その他の前半グループの演技
前半グループ6人滑って、3-3コンボ降りられた人ゼロ。
前半グループなら「4回転挑戦したスケーター全員転倒 or 抜け」ぐらいは想定範囲内だけれど、3-3コンボ6人とも決まらないことって結構レアではないでしょうか…?
ウラジーミル・サモイロフ選手
カムデン・プルキネン選手
ダニエル・グラッスル選手
アレクサンドル・セレフコ選手
旅の疲れは全然感じてなかったけれど、前半グループ終了時は精神的にどっぷり疲れてました…
後半グループの演技 友野&鍵山両選手以外は…
友野一希選手
このイヤ~な流れをスッパリ断ち切ってくれたのは友野一希選手でした。
練習の調子よさそうだったから、「このSPは行ってくれるんじゃないか?」と実は期待していました。
冒頭4-2になったり、最後のスピンでちょっと乱れがあったので90.78点にとどまりましたが、まだスコアは伸ばせそう。
会場リンクがアイスホッケー仕様で狭いせいか、ちょっとスピード抑え気味?に感じられました。全日本ではきっとより爽快なステップを味わえるはずと期待しています。
リンクへの投げ込みプレゼントの中に、ヴィヒタ(白樺の枝葉を束ねたサウナグッズ、浴室内で体を叩くのに使う)があったのは受けました。真っ先に拾いに行って、体叩いてましたね(笑)。
Kazuki Tomono 🇯🇵 90.78 – so much improved from his first GP outing in France 💪🏻
— Golden Skate (@goldenskate) November 15, 2024
“I was very nervous and my warm-up didn’t go well, so I felt very skaky. This is why I only added the 2T on my combination. I was happy with my score of 90 points.”
He says his physical condition is… pic.twitter.com/VPWQLzj5dM
ケヴィン・エイモズ選手
続いてはケヴィン・エイモズ選手。4-3もトリプルアクセルも決まり、ジャンプノーミス来るか!?と思っていたらトリプルルッツが踏切が合わずにすっぽ抜け…
最初のジャンプで大きなミスが出るとその後大崩れするのが1年弱続いていただけに、未だに彼にジャンプミスが出るとヒヤッとしてしまいます。演技後に観客にニコニコお手振りをするケヴィン・エイモズ選手を見てホッとしました。
SP演技後のインタビューによると、彼氏が初めて会場に観に来ていたらしい。ミスしても落ち着いて演技を続けられたのは彼氏効果?
Kevin Aymoz 🇫🇷 opened strongly with a 4T3T and 3A but missed the Lutz. 85.13
— Golden Skate (@goldenskate) November 15, 2024
“This was fun. A silly mistake, but that’s okay, it can happen. It didn’t take anything away from the show.
“After the GP in the US I took a week off, I went to Disney Land. It was great. I learned… pic.twitter.com/MVVOwT37TB
グランプリファイナルが行われるグルノーブルはケヴィン・エイモズ選手の故郷らしいし、彼氏も当然現地に来てくれますよね!?私の精神安定のためにも、これから主要な試合のためにも応援に来て頂きたいですw
山本草太選手
次は山本草太選手。4-3美しく決まるも次の4回転サルコウが乱れ。「このまま切り抜けてくれ」ーと思ってたら、トリプルアクセルで転倒。ああこれは厳しい発進…
でもジャンプミスが続いたわりに演技の印象はよかったんですよね。ミスを引きずらずに演技に集中できている感じで。スコアを見たらやっぱりスピンステップ、オールレベル4!
ミスはあっても「何かを超えた感」があったのか、キス&クライでも元気そうにしていました。毎日新聞等の記事を見るとミスは出てしまったものの「(演技は)悪い感覚ではなかった」と話していたようです。
ファイナル逃したとはいえ、足踏みしている感はありません。全日本でどんな演技を見せてくれるのかが楽しみです。
チャ・ジュンファン選手
チャ・ジュンファン選手は最初の4回転サルコウで転倒し壁に激しく激突。
そうなんだよな…滑るスケーターには狭いよねこのリンク。
何とか立ち上がって次のルッツループは降りたものの、回転足りず「<」に。その後はいつもの彼が発するパワーが影を潜めてしまった感じに。結局スピンステップが一つをのぞきレベル3、77.33という嘘のような点数。まさかのSP7位発進。
「古傷の足の状態がまだ思わしくないのかな?それとも最初の転倒のダメージが大きかったかな?」と心配したけれど、この時はまさか翌日にWD(欠場)が発表されるとは思っていなかったです。
鍵山優真選手
鍵山優真選手はただ一人、予定構成を完遂。スピンステップオールレベル4でSPを終えました。ただ、友野選手同様スピード抑えめ?でNHK杯の時に比べると勢いが少なめだったかな。
今季のSP「サウンド・オブ・サイレンス」で後半にボーカル入りバージョンを使うのが、私は正直あまり好みではありませんでした。
でも、現地でナマで見ると後半ボーカルが入ってくると会場の雰囲気は否が応でも盛り上がるなと感じました。今回みたいに「彼比ではちょっと抑えめ?」位の演技の時には、あのボーカルがプログラムに更なるパワーを与えてくれる気がしましたね。
ただ彼ほどの滑りの能力がある場合、「会心の滑りが出来たら、ボーカルない方がずっと印象的な演技になるんじゃ…?」とも思ってしまいます。どっちがいいんでしょうね。
それにしてもNHK杯からの連戦で、両方ともノーミスでSPまとめられるのは凄い!
今季後半もSPはサルコウ&トゥループで行くんでしょうかね?4回転ルッツやフリップを練習で跳んでいるだけあって、ジャッジにはSPにもルッツやフリップを入れてくるのを期待されている感を受けています。ミラノ五輪までにはSPの構成を上げていけたらいいですね。
ルーカス・ブリッチギー選手
最終滑走はルーカス・ブリッチギー選手。
私、実はチャーリー・チャップリンの映画「独裁者」の演説を使った今季SP、正直余り気に入ってなかったんです。
以前のブレイディー・テネル選手が演じた「四季」(環境活動家グレタ・トゥーンベリさんの演説を入れ込んでいる)と同様、振付師のイデオロギー主張の場に使われてる感を感じてしまって。(ウクライナのシュムラトコの選手のように、選手自身の強い意思で反戦メッセージを込める場合などは別ですが)
ボーカル入り曲使用が解禁された頃から「身体表現芸術で言葉の力を直接的に利用するのはどうか?」と個人的に思っていることもあります。(ボーカル曲プロも好きなのあるから「ちょっと思ってる」って程度ですが)
ですが…ナマで演技を観たら、そういう先入観が消えました。
会場の大音響で聴くと、この曲がチャップリンのあの演説を見事にリミックスしているーと感じられ、意外にも引き込まれたんです。
そしてルーカス・ブリッチギー選手が曲とシンクロするパワーも少し伝わってきました。
着氷乱れは続いたものの、大きなミスなくまとめられたことも大きかったと思います。シーズン後半にはそのパワーが更に強くなって、私の第一印象とはガラリと変わるプロに育つかもしれません
下記が彼の使用曲「Iron Sky」公式動画です。このプログラムのために強引にチャップリンの演説をミックスしたわけではなく、スコットランドのミュージシャン・Polo Nutinigさんが2014年にリリースした曲でした。
フルで聴くと渋くてかっこいい曲です。
このミュージックビデオは2015年にSXSW映画祭で「最優秀ミュージックビデオ賞」を受賞しているらしいのですが、撮影されたのはウクライナのキーウ(キエフ)なんだそうです。
私は映画「独裁者」のイメージに引きずられて、機械化が進む社会への皮肉を表現しているのかと思いこんでいたのですが、ひょっとして現代社会への反戦メッセージを込めているのかもしれません。
「独裁者批判」と素直に受け止めれば、観客が暮らす国の政治状況により様々な解釈も広がるでしょう。
ユーロやワールドでの演技の進化を楽しみにしています。
ペアSPと女子SPも一気にまとめようかと思ってましたが、男子SP振り返ってたら力尽きましたので今日はもうこのへんで
最後にSP上位3人のかわいい写真を載せておきますw
The top 3 after the men’s short program in Finland:
— Golden Skate (@goldenskate) November 15, 2024
1.Yuma Kagiyama 🇯🇵 103.79
2.Kazuki Tomono 🇯🇵 90.78
3.Kevin Aymoz 🇫🇷 85.13#FinlandiaTrophy #GPFigure pic.twitter.com/062LliZ1RD