ボストンで現地観戦した2025世界フィギュアスケート選手権、写真や動画等を交えた振り返り記事をタイミングを見て順次公開していこうと思っていたのですが…そのタイミングが見つかりません。

ー気が付けばワールド終了からはや一カ月が経過(苦笑)
実はこの投稿、何日も前に書き終わってたんですが、ここしばらく宇野昌磨さん絡みのあれこれが多すぎて完全に公開のタイミングを失いまして。
今も全然そういうタイミングじゃないんだけど、「もう1か月も経った試合の振り返りに公開のタイミングもクソも無いな」と思ったので、これから時々しれっと上げていくことにします。
モントリオールワールド観戦時に比べれば、現地滞在中に競技の感想をある程度書き残せているので、観戦直後に書ききれなかったことやワールド終了後に調べて知った新情報などを中心に振り返ります。
サブリンクでの女子練習風景
米国スケート連盟のYoutube公式チャンネルで、プラクティスリンク(サブリンク)でのペア&女子の公式練習動画が視聴できます。(男子とアイスダンスの動画にはジオブロックがかかっているのに、ペアと女子は設定をしそびれているのか日本からも視聴できます)
約1分と短いですが、主要選手は一通り映っていますし、プロのカメラでカッコよく撮られているので女子選手のファンの方はチェックするのもよいかも?
女子SP 前半
ボストンの会場で撮影した写真&採点表、公式の演技動画などを基に、印象的だったスケーターたちについて振り返ってみます。
前半グループ
私は女子シングルはさほど詳しくないので、前半グループはよく知らないスケーターもちらほら。
アジア大会&四大陸で見た中国のアン・シャンイー選手や韓国のアソン・ユン選手などは注目していたのですが…アソン・ユン選手のSP落ちは衝撃でした。今大会での韓国女子3枠確保の夢がこんなに早く消えるなんて。
ソフィア・ステプチェンコ選手(ラトヴィア)はシャンペリー所属でステファン・ランビエールコーチに師事していることから注目していましたが、複数ミスが出て今年もSP通過ならず。クリーンに決めてたら行けそうだったんですけどね。
前半でひときわ目立っていたのは、ロシアからカザフスタンに国籍変更したソフィア・サモデルキナ選手。
Sofia Samodelkina 🇰🇿 63.58 is the first one who officially qualified for the Free Skate and guarantees an Olympic spot for 🇰🇿👏🏻!
— Golden Skate (@goldenskate) March 26, 2025
“Surprisingly, I wasn’t nervous at all. I trusted my training, I had a lot of good run-throughs in practice, so I knew I could do it.
I prepared for… pic.twitter.com/Rt0qhalGjU
今季からの復帰なので前半グループでの滑走となったぶん、実力差が際立った気がします。シーズン当初の演技からは「重そう」な印象がありましたが、現地で観るとそういう感触は受けませんでした。グラマラスだけどジャンプ得意な選手というと、エレーネ・ゲデヴァニシヴィリ選手やリーザ・タクタミシェワ選手などを思い出します。
冒頭のルッツが回転不足を取られてましたし、4回転ジャンプまで戻すのは厳しそう?スピン&ステップをレベル4で揃えられるようになれば、五輪入賞圏内に食い込めるポテンシャルはあるように感じました。
第4~第6グループ
女子SPは全部で6グループ。第4グループには、引退or休養を挟んだためにワールドランキングが低いアリサ・リウ選手と樋口新葉選手がいました。

「メダル候補が二人ももう出てきちゃうのかよ!」って感じでしたね(笑)
アリサ・リウ選手(米国)
アリサ・リウ選手の観客へのメッセージは「HOPE YOU ENJOY お楽しみください」。

おとなしい曲調ですが会場の盛り上がりは凄かったです。ボストンの観客に愛されてるなって思いましたよ。

私は引退前の彼女に際立った魅力は感じていませんでした。2022年のTHE ICEで彼女の滑りをナマで観た時も印象が薄く。
復帰後、彼女の何がどう変わったのか具体的に説明はできないのですが、今の彼女の滑りには、私がキーガン・メッシングさんや友野一希選手、りくりゅうなどに感じる「多幸感」をすごく感じます。
ボストンの現地では、彼女の滑りからあふれ出る多幸感を存分に浴びました。
ララ・ナキ・グッドマン選手(イタリア)
この直後がイタリアのララ・ナキ・グッドマン選手でした。観客へのメッセージは「LIVE IN THE MOMENT (今を生きる)」

冒頭の3回転トゥループの2連続コンビが回転不足になり転倒してしまったのは、枠取りのプレッシャーも大きかったかもしれません。でも、アリサ・リウ選手で会場が湧きまくった直後だったからーってのも一因としてあるかもなと思います。
樋口新葉選手
第4グループ最終滑走で登場した樋口新葉選手の観客へのメッセージは「THANK YOU FOR YOUR SUPPORT, I’LL DO MY BEST(応援ありがとうございます。がんばります)」。律儀な日本人らしさがにじみ出てます。

私、今季の樋口新葉選手は妙に落ち着いて演技を観ることができます。
もちろん演技は水物だからミスが出てしまう時はあります。でも、今の彼女なら何かミスがあっても冷静に対処してプログラムの世界観を守り抜き、きっちり演技をまとめてくるだろうという勝手な自信が生まれました。
「DUNE(砂の惑星)」のプログラム大量豊作だった今季。新葉バージョン、私はステップが一番のお気に入り。
ジャッジも同感だったのかGOE5をつけたジャッジが二人もいて、ステップの点数は全選手中トップでした!
イ・ヘイン選手(韓国)
最終前グループ第一滑走はイ・ヘイン選手。

合宿中の指導案件に端を発した3年もの選手資格停止処分騒動から一転。決着はしてないものの出場許可が出て、これが2試合目。
得点的には最後のトリプルフリップにエッジコール(!)がついたのが響き、SP7位。あと一息で最終グループ入りを逃しましたが、今季のあれこれ&まだ2試合目だということを考えると「よくぞここまで」と思います。
マデリーン・スキーザス選手(カナダ)
私、マデリーン・スキーザス選手の今季のSP「ライオンキング」結構好きなんですよね。
クリーンにまとめられることが少ない選手なのですが、この試合ではGOE減点なしのクリーンな演技を見ることができて嬉しかったです!

まさかこの後最終グループで波乱が起きて、彼女が最終グループ入りするとは。この時点では全く予想できませんでした。
千葉百音選手
千葉百音選手のSP「Let’s Dance」、今まで観てきた中で一番楽しめました。
それはボストンの観客の大声援の影響が大きかったと思います。日本人最上位でのSP2位発進!
あの現地の熱狂は放送&配信では全然伝わり切ってない気がします。会場の熱気は本当にとんでもなかったです。
「ドナ・サマーのヒット曲を選んだのはボストン出身だから」ということは知っていたけど、まさかここまでボストンにドナ・サマーが効くとは…!彼女の観客へのメッセージは「ENJOY!(楽しんで!)」の一言でしたが、観客は楽しみまくってましたよw
彼女の今季SPについては「優等生が頑張ってはじけてる感が抜けきらない」としつこく書いてきた私。ですが、千葉百音選手もこの時ばかりは会場の大声援に押されて乗りに乗っているように見えました。

最初のコンビネーションジャンプに入るときだけは緊張が感じられましたが、その後からは技が一つ決まるたびに凄い歓声と拍手でした。
会場のあの熱狂ぶりは忘れ難いです。
最後のレイバックスピンのキレのいいことといったら!
GOE5をつけたジャッジが6人もいて、SP1位のアリサ・リウ選手のレイバックスピンの点数を上回りました。レイバックスピンの中では全選手中最高点です。
ちなみにアリサ・リウ選手のレイバックスピンにGOE5をつけたのは3人。レイバックスピンで2番目に高い点を得たのはニーナ・ピンザローネ選手、GOE5が4人でした。
ネット上で「アメリカ開催のワールドだからアメリカ選手に盛りまくった」と主張する人も見かけましたが、採点表を見るとそこまで突出したGOE評価じゃないんですよね、彼女。
GOE0~1が一つもなくて「穴が無い」ところがアリサ・リウ選手の強みだと言えると思います。
女子SP最終グループ
最終グループ、好演技だったニーナ・ピンザローネ選手(ベルギー)より後の流れは思い出すのがちょっとしんどいです。
国別対抗戦を終えて、やっと振り返る気力が持てた感じでしょうか。
鑑賞直後の投稿でも、メダル候補選手たちが次々と崩れていった流れへの嘆きを書いています。

アナスタシヤ・グバノワ選手(ジョージア)
女子SPで最も衝撃だったのは、最終グループ二番滑走のアナスタシヤ・グバノワ選手の全ジャンプ失敗⇒SP落ちの流れでした。
コンビネーションのファーストで転倒してしまった動揺からか、次のダブルアクセルがシングルになってしまって要素抜け。この時点で「これはSP落ちか…?」と心配する空気が会場を包みました。懸命に演技を続けるものの、ラストのトリプルルッツも乱れてコンビネーションにリカバリーできず。スピンステップも動揺が隠せていない。
ただでさえ沈鬱な「Money Money Money…」の重苦しいメロディーが一層重く会場にのしかかってきて本当に見てるのが辛かったです。

点数が表示されたけれどもやはりフリー進出を示す「Q」マークはつかず。こらえきれずにすぐにキス&クライを立ち去ろうとするグバノワ選手をコーチが静止していた姿を見るのは辛かったです。

先日の国別対抗戦でSPフリーとも会心の演技が見られて本当によかったです

アンバー・グレン選手(米国)
今季はメンタル&演技がぐっと安定したアンバー・グレン選手ですが、あの沈鬱な空気感の影響は大きかったように思います。
前日の曲かけ練習でも6分間練習でもトリプルアクセルを下りていたのに、演技開始時は観客の私も大きな不安を感じていました。観客の不安が彼女に伝わってしまったかも。

トリプルアクセルは基礎点が高いから万一転倒したとしても最終グループに残れるのでは?と期待しましたがSP9位。採点は結構シビアでした。まぁ明らかに後半いつもの彼女らしさが薄かったですからね…
イザボー・レヴィト選手(米国)
続くイザボー・レヴィト選手の演技、正直あまり記憶にありません。このグループで唯一クリーンな演技ができた選手だったんですけどね…前後に色々あり過ぎて。
「ティファニーで朝食を」の「Moon River」を使ったこのプログラム、気に入ってたのに勿体ないことをした気がします。

SP3位、最後のトリプルルッツにエッジのアテンションマークがついていなければもう少し順位上だったかもしれません。
坂本花織選手
イザボー・レヴィト選手の好演技で会場の流れは少し変わっていました。ボストンの観客はケオリが大好きで、「さぁケオリの出番だ!」ってな感じで演技前から盛り上がってましたしね。
坂本花織選手は練習では好調そうでしたし落ち着いていたように見えました。しかし今季SPのタンゴは細かい動きなど全体レベルを上げているためか、昨季までの安定感は出せていない。好きなプロの最終形は観たいけれど、どうなるだろう…とうっすらとした不安を抱きつつ見守りました。

後半のトリプルフリップートリプルトゥループのコンビネーションのファーストジャンプがダブルになった瞬間は、「あっ!」という驚きの声がもれました。
でも、冒頭から「いつもの彼女の滑りよりはちょっと違う感」を感じていたので、自分の中でどこか予期していたような気もします。
ま、そこからトリプルトゥループつけて、最終グループにはしっかり残るあたりが彼女のとんでもない底力ですけどね。スピンとステップで1つずつレベル4を取りこぼしていなければ、もう少し上の順位になっていた可能性すらありました。
今回の採点表見るとGOEが彼女にしてはちょっと渋め。GOE5がついたのは冒頭のあのダブルアクセルだけで、5をつけたジャッジは一人のみ。
彼女の滑りの凄さを知っているだけに期待値が高まり過ぎちゃうーってのはあるかもなと思いました。「いや彼女はもっとできるず!」ってな感じで、自分の期待していた彼女の演技の方に軍配あげちゃうーみたいなところは私の中にもあったかもしれません。
キム・チェヨン選手(韓国)
グバノワ選手の次に驚いたのが、キム・チェヨン選手の不調でした。練習時から不調だったので「あれ?」と思ってはいたのですが、本番では決めて来るんじゃないかと思っていたのです。彼女にはそれだけ「本番に強い」イメージがありました。
だから、トリプルフリップートリプルトゥループのコンビネーションのセカンドで転倒したときは驚きました。
私は帰国後に、彼女が「ワールドに向け出発する3日前に交通事故に遭っていた」という事実を知りました。現地でのインタビューでも一切そんなことは語っていなかったのですが、関係者からの情報なのか韓国国内の報道には、事故についての情報が確認できます。

練習の時や演技後に腰を抑えたり、コーチが腰をさすっていたりしたのは見ていたので「腰を痛めてるのかな」とは推測していました。でも、女子シングル選手に腰痛の悩みは多いので、事故が原因だったなんて思いもしませんでした。
「アジア大会や四大陸を制し絶好調だったけど、今季はそこでピークアウトしたのかな?」とか思ってて本当にごめんなさいという気分です。彼女は昨季銀メダリストですし、ミラノ五輪の金メダル候補の一角には変わりはありません。来季は万全な体調で試合に臨めることを祈ります。

女子SPとフリー、合わせて振り返るつもりだったんですが、SPだけで長くなっちゃったので今回はここまでとします
<おまけ>チャ・ジュンファン選手の授賞式
チェヨン選手の交通事故情報を報じた韓国ネットメディアのページを見たら、韓国のスケート連盟のセレモニーのニュース記事がありました。チャ・ジュンファン選手やキム・チェヨン選手など大勢のフィギュアスケート選手が出席していて、ジュンファン選手はアジア大会優勝を祝して表彰されてました。ファンの方はどうぞ。
