今回は、先日の投稿の続きで「Ice Brave(アイスブレイブ/アイス・ブレイブ)」の各プログラムで私が感じたことを、現地エピソード等も交えて順に綴っていきます。

この「中編」は日曜中にアップしてしまうつもりだったのに、宇野昌磨さんのX(Twitter)投稿が別競技アスリート達にまで波及してるのがあまりに面白くて(笑)。関連投稿の反応まで追いかけてたら遅くなってしまいました。
前回の投稿と同様、セットリストや演出詳細のネタバレがありますので知りたくない方は公演鑑賞後にご覧ください。
前半のピークをピークのまま保持
「前編」記事で取り上げたのは、8つめの演目・「ブエノスアイレス午前零時/ロコへのバラード」まででした。
「ロコ」演技中は息を呑んでリンクを見つめている観客が多く、会場には独特の空気感が漂っていました。

ショー前半でガンガン振られていたペンライトの動きが愛知公演では静止してたぐらいですからね
旧来のエキシビションスタイルのアイスショーならば、「はいここから整氷休憩~」になってもおかしくない、会場を制圧した感のある演技でした。
グラビティ
「この空気感の中に一体どんなプロを持ってくるつもりなんだろう…?」とちょっと不安に思っていたら、ステファン・ランビエールさんがリンクに登場。

「あぁ彼なら大丈夫ね」と安心しました
宇野昌磨さんが創り上げた「ピーク」を「ピーク」のまま、彼なら保つことができます
そして流れて来たのは「グラビティ」で、ますます問題なし(笑)
宇野昌磨さんがアイスショーで「グラビティ」を披露して以来、一度見たいと思っていた振り付けた本人による「グラビティ」。
本人演技とあって、宇野昌磨さんの競技プロとほぼ同様の振付。でも、昌磨さんとはまた違う個性が漂います。

この時は、「レジェンズ」のように師弟が一緒に滑っているわけではありません。
しかし私は、「ステファン・ランビエールのグラビティ」にオーバーラップするかのように、「宇野昌磨のグラビティ」が透けて見えてきました。
ギターのフレーズに合わせて頭を抱えるところ、手を前方に伸ばして前進するところなど、特徴的な振り付けが出て来ると、透けて見えていた宇野昌磨さんの演技映像がより濃くなります。
宇野昌磨さんファンの中には、私のように「宇野昌磨選手の過去演技映像が脳内自動再生され、あたかもリンク上で恩師とコラボをしているかのような錯覚」を覚えた人が結構いたのではないでしょうか?

この演技の時の照明が星空みたいで何とも美しくてね~観客をセンチメンタルモードに誘います。
2023さいたまワールド会場で、直前に痛めた足の状態を心配しながら演技を見守った想い出が脳内を駆け巡った回もあれば、ステファンさんの上手さにひたすら舌を巻いた回も。毎回ちょっとずつ違う心境で見ていました。
「昌磨さんはこのプロで更に一段階上がったよな~」なんてことを思いながら見ていた回もありました。
私は、宇野昌磨さんは「グラビティ」を経て“「抜け感」マスタークラス”に到達したように感じています。
「抜け感」のある動きで魅せるには、優れた体幹が必要。体幹がしっかりしていない人だと「カッコつけてるのに、決まりきらずだらしない感じ」になりがち。
ステファン・ランビエールさんは「抜け感」を漂わせつつ美しく滑れる稀有なスケーター。昌磨さんも「抜け感」を魅せられるスケーターでしたが、「グラビティ」で師匠の要素も吸収して、より洗練されたように思います。

愛知公演初日後のインタビューを聞く限り、昌磨さん自身このプログラムについては「自分のものにできた自信」がある様子でした。
「昌磨さん版」は試合での満足感がまだ記憶に新しいので、「Ice Brave」で「ステファン版」が見られたのは嬉しい体験でしたね。
「四季」より「冬」
ステファン・ランビエールさんの演技は高揚感を保ちつつも程よい脱力感を残して行ったので、「次にどんな演目が来ても大丈夫」という落ち着いた心境を私に与えてくれました。
そこに流れて来たのは、ビバルディの「冬」の音色。
「『冬』やるんだ!」と嬉しい驚きを感じましたが、より驚いたのは、このプログラムを女性スケーター二人で演じることでした。
「なるほどこう来たか!」と思いましたね。

二人は白い衣装に身を包み、照明も白基調。(公演回数を重ねるたび、この演目時にはペンライトを白にする方が増えていきました)
何より驚いたのは、二人の振付が元の競技プロにかなり忠実だったことです。ところどころ違う動きが入りはしますが、ステップはかなり再現度が高く、私の脳内では昌磨さんも一緒にステップを踏んでいました。

女性スケーター二人で女性らしさを生かした演技をしているのに、「宇野昌磨感」が強く感じられるプロであることに、初演時は本当に驚きました
その一方で、「一般観客がフィギュアスケートに抱くイメージに近い、古典的な美しさ」をも堪能させてくれるプログラムでもありました。濃い宇野昌磨ファン以外の期待も満たしていたのではないでしょうか?
クラシック音楽&清楚ながら力強い演技によって、会場内は熱気は保ちつつも、格調高い清らかな空気感に包まれていました。
中盤のピークはストリートダンス系で攻める!
ナルコ
次の曲は、そんな会場の空気感を一変させて更にボルテージを上げます。
宇野昌磨さん、唐川常人さん、櫛田一樹さん、中野耀司さんの4名が登場。演じるのは、ストリートダンスのKAJ1さんによる激しい振付のプログラム。「前半の締め」となる演技にふさわしい、激しい盛り上がりを場内に沸き起こします。

トヨタイムズスポーツさんの初日の練習風景動画で、一部の振り付けは既に目にしていました。しかし練習を重ねたメンバーたちの動きはキレを増しており、もはや別モノw
そして、ストリートダンスを氷上にきちんと落とし込んであるのでガンガン滑ります。(アイスショーなんだから当たり前と言えば当たり前ですがw)
今までの宇野昌磨さんのプログラムではやってこなかったような動きが散見されてとても新鮮でしたね。
メンバーの中央で激しく踊っているところとか、全員で隊列組んで進んでいくところとか、一斉にバタフライ&ジャンプをするところとかを何度も見返したいのですが、いかんせん動画や写真が少ない、少なすぎる…
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現地の熱さは映像では伝えきれないとはいえ、「ナルコ」のプログラムは全容を映像に残してほしいですね。これまで世間に出ている映像&写真ではこのプログラムの良さが全然伝わってない気がして、もったいなさを感じています。
7/6に「Ice Brave」公式SNSアカウントで公開された新しい公式ダイジェスト動画で演技のかけらは見られますが、私が見たいところではないのが残念。(「冬」も入れて~)
MCタイム(2)
「ナルコ」で興奮のピーク値を更新した直後、ウォーターボトルとタオルとマイクを入れた籠を下げ、ステファン・ランビエールさんがリンクに乱入してきます。
ここからが2回目のMCタイム!

演技直後はメンバー全員「ゼーハー」しか言えない状態なので、まずは一人ずつ水を渡し、タオルで拭きふき
昌磨さんの汗を強引にタオルで拭っていた全日本選手権のキス&クライの情景が蘇ってきて、宇野昌磨ファンにはたまらない瞬間です
(ひょっとしてステファンファンも?)
昌磨さんはマイクを渡されても「ロングタイムスピーチ、プリーズ」と早々にステファン・ランビエールさんに「繋ぎ」を要請。ステファンさんも要望に応えてゆっくりめの英語で話し始めます。公演の数を重ねてきたら、頼まれる前から長く話し始めるように(笑)。
各公演とも話していた内容は、基本「このショー&昌磨さん&観客がいかに素晴らしいか」です。
特に「ナルコ」のプログラムは本当に気に入ったもようで、「僕も一緒に参加したいけどおじさんだから…」と自虐をかました回もありましたし、愛知公演初日には「昌磨もこの振付を手伝ったの?」と尋ねていました。

こういうことを尋ねるってことは、「昌磨さんは振付ができる実力を持つ人材だと、ステファン自身が認識してるってことよね」とちょっと嬉しかったです
(振付できなくても演者として素晴らしければ全然いいんですけど、できたらできたで嬉しいので…)
「昌磨と一緒に日本でアイスショーツアーをやりたいと思っていた」という主旨の発言をしてくれたのも嬉しかったですね。
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アイスブレイブ《新潟公演限定グッズ》 | UNOcafe https://t.co/drpRf0PIBI #BASEec @jumokuno0108
— 自由人(メインは樹💦時々昌磨) (@jumokuno0108) June 23, 2025
水が美味しくなるボトル入ってます pic.twitter.com/LCSIxR8Ja4
MCタイムでは日本男子4名が交代でマイクを持って喋ってくれます。
宇野昌磨さんは演技終わった途端通常運転に戻り、「これで前半の終わりです!」と興奮をぶった切って来る辺り相変わらずの昌磨節で笑わせてくれます。
中野耀司さんは安定したトークで、昌磨オタっぷりを披露することが多め。ナルコでリンク端で踊っている時に氷の穴に引っかかったのか一度転倒してしまったことがあったのですが、「昌磨くんうまいなと見とれてたらこけちゃってw」ってな感じのトークをして、笑いに変えていました。
唐川常人さんのトークは、落ち着いたトーンの時と振り切れた感じで観客を煽る時と2パターンに大別されます。おかげで「今回はどっちのつねっち?」と毎回楽しみ(笑)。
櫛田一樹さんは昌磨さんのヘアスタイリングをやっていることを発表したり(「滑走屋」でも男性陣のヘアスタイリストとして活躍)、観客を煽ったり。

昌磨さんはあの手のノリがちょいと恥ずかしいーみたいなことを言っていましたが、「昌磨さんができないことを敢えてやってみる存在」として光ってましたね
女子2名は着替えの時間の都合があってトークコーナーなしでした。ショー中は難しくとも、後日でいいので二人の話もどこかで聞けたらいいなと思います。
マイケル・ジャクソンメドレー
MCタイム終了後、昌磨さん&ステファンが退場。残った唐川常人さん&櫛田一樹さん&中野耀司さんによる「MJダンスタイム」が始まります。
このプログラムも写真や動画が少ないのが少々悲しいです。「Ice Brave」は全編宇野昌磨さんプロで、いずれも質の高い演技だったので全部写真を残してほしいのに報じられている写真や映像が一部に偏り過ぎだ~~~と言いたくなります。

とはいえ、このプログラムは3人がそれぞれリンクの両端に分かれて踊るパフォーマンス部分が多かったので、映像を切り取りづらいのは仕方ないかもしれません。
これは、目の前にスケーターが高速でやってきて、MJリスペクトな振付を見せてくれるたびに熱狂的な声援があちこちで上がる演目。「ライブの臨場感」が大きく占めるプログラムなので、ナマで体験しないとよさが伝わり切らないだろうなと思います。
唐川常人さんも、中野耀司さんも、櫛田一樹さんもそれぞれに熱心なファンがいますし、いずれもフィギュアスケートファンには定評のある実力派スケーターです。その彼らの魅力全開でファンサービス大盛りで演じてくれるのですからたまらないですよね。
中でも中野耀司さんのバックフリップに対する大歓声は、更にプログラムを締めます。
アイスショーを観慣れているファンなら「いつ入れて来るかな?」とワクワクして待ち構えていますが、見慣れていない方だと「えええええ!!!」って驚く瞬間です。

周囲に素直に驚いている観客がいると、「新鮮な驚きのお裾分け」を頂いているようで、こちらも素直に嬉しいです
ここから後は、各スケーター達の圧巻のソロ演技の連打でショー終盤に向かっていきます。そちらについては、日を改めて「後編」でまとめます。
「Ice Brave」セットリスト
下記は参考用の「プログラム名&演じた人、各プロの使用シーズン&種別を入れたセットリスト最終版」です。


No. | プログラム名 | 演じた人 | 使用シーズン&種別 |
---|---|---|---|
1 | グレート・スピリット | 宇野昌磨ソロ⇒全員 | 2018-19エキシ ⇒2019-21SP |
2 | カム・トゥゲザー | ステファン以外全員 | 2023-24エキシ |
MCタイム | |||
3 | レジェンズ | ステファン&宇野昌磨 | 2015-16SP |
4 | ラ・ヴィ・アン・ローズ | 本郷理華&中野耀司 | 2016&2019エキシ |
5 | タイム・アフター・タイム | 本郷理華&中野耀司&ステファン&櫛田一樹 | 2018-19エキシ |
6 | タンゲーラ | 唐川常人&宇野昌磨&本田真凜 | 2012-13SP(ジュニア) |
7 | 天国への階段 | 唐川常人&宇野昌磨&本田真凜(後半ソロ) | 2018-19SP |
8 | ブエノスアイレス午前零時/ロコへのバラード | 宇野昌磨ソロ | 2016-17フリー |
9 | グラビティ | ステファン・ランビエールソロ | 2022-23SP |
10 | 「四季」より「冬」 | 本郷理華&本田真凜 | 2017-18SP |
11 | ナルコ | 宇野昌磨&唐川常人&中野耀司&櫛田一樹 | 新プロ |
MCタイム | |||
12 | マイケル・ジャクソンメドレー | 櫛田一樹&中野耀司&唐川常人 | 2021-22エキシ |
13 | リバーダンス | 本郷理華 | 2009-10フリー(ノービス) |
14 | タイムラプス/鏡の中の鏡 | ステファン・ランビエールソロ | 2023-24フリー |
15 | ワイルド・サイド | 宇野昌磨&本田真凜 | 新プロ |
16 | ダンシング・オン・マイ・オウン | 中野耀司&本郷理華&櫛田一樹 | 2019-21フリー |
17 | ボレロ IV | 全員⇒最後のステップは宇野昌磨ソロ | 2021ー22フリー |
18 | シー・ユー・アゲイン | 全員 | 2016-エキシ |
最後の挨拶⇒周回(グレート・スピリット) |