引退後の新章「Ice Brave(アイスブレイブ)」第1弾を振り返る/「宇野昌磨アイスショー」の挑戦と未来

Ice Braveのペンライトが薄緑に光りピンクの光で縁取られている様子が黒背景に映っている

宇野昌磨さんが現役引退後、プロスケーターとして新たな一歩を踏み出したアイスショー「Ice Brave(アイスブレイブ)」。私は2025年6~7月の全9公演の熱気&進化の記録を綴ってきました。

今回は「Ice Brave」の企画・キャスティング・演出といった“ショーの骨組み”に注目しながら、宇野昌磨さんが挑んだ新たなステージを振り返ります。

第2弾「Ice Brave2」を楽しみにしている方や、第1弾の想い出をかみしめたい方などに届けばと思います。

目次

引退後の「宇野昌磨さんアイスショー」への期待

宇野昌磨選手引退直後、私は「彼が新しいショーを立ち上げる可能性」は全く考えられずにいました。

「彼の試合はもう見られないのか…」というショックが余りにも大きかったですし、「ワンピース・オン・アイス」再演や「フレンズ・オン・アイス(Friends on Ice)」でのステファン・ランビエールさんとの師弟共演などで大満足していたのもあります。

師弟共演プロ・「Fall On Me」後半の疾走感はエモすぎて…

本当に素晴らしいプログラムで今も時々見返します

浅田真央さんの「サンクスツアー」のような、「昌磨さんの過去プロで構成された、彼が出ずっぱりに近いアイスショー」が見られたらいいなーと考えたことはありましたが、それはあくまでも「夢」でした。

浅田真央さん現役時代は伊藤みどりさん時代以来のフィギュアスケートブーム最盛期。現状のフィギュアスケートへの一般関心度を考えると、サンクスツアー的な規模のアイスショーの実現は厳しいかもしれないーと思っていたのでね。

何より現役時代の昌磨さんの自己謙遜っぷりからいって、「宇野昌磨アイスショー」の企画を持ちかけられても「ぼくメインのアイスショーは厳しいのでは?」と遠慮しかねないのではーとすら考えていました。

「ワンピース・オン・アイス」みたいな2.5次元系アイスショーのオファーがもし別に来たら、彼はそっちに全力注いじゃうんじゃないかなって。

「宇野昌磨メインのアイスショー」企画が立ち上がり、昌磨さんが自分の可能性に賭ける気になってくれて、本当によかったと思います

「プロデューサー」としての新たな一面

昌磨さんがプロデューサー業務&指導を引き受けたことへの驚き

「宇野昌磨アイスショー」企画が立ち上がったこと自体には全く驚きませんでしたが、彼が「プロデューサー業務」や「他スケーターへの指導」を引き受けたことにはとても驚きました。

現役時代、衣装も選曲も振り付けも「僕は基本全てお任せ」スタンスを続けて来た彼が「宇野昌磨プロデュース」を前面に打ち出すとは!

「選手」から「プロ」になったのを機に、一気にギアチェンジをしたことを悟りました

ビジネスの場ではよく「地位が人を作る」と言います。

「私には皆をまとめるのは無理です」と自信なさげなことを言っていた若手ホープも、ひとたびリーダー格の仕事を与えるとリーダーにふさわしい行動をとれるようになるのと同じ。
(ポテンシャルが無い人に地位を与えたところでリーダーには育ちませんけどね)

「Ice Brave」がショーとして成長して行く過程の全てを見せてもらえたわけではないですが、PR過程での自信に満ちたトークやショーでの空気感からは、まさに「地位が人を作ったこと」が感じ取れました。

トヨタイムズスポーツでの会見場にてIce Braveの宣伝ボードを持って立つ宇野昌磨さん
最初の記者会見発表時のスクショタイム画像 

選手⇒プロスケーター&プロデューサーへのギアチェンジ

昌磨さんは現役時代の選曲や振付、衣装等も100%人任せにしてきたわけではなかったでしょう。

自分が受容できる範囲は全て受け入れつつも必要最小限の自己主張はしていたでしょうし、「プロが自分をどう料理していくか」という「プロの手腕」を長年かけて観察&吸収してきたのではないでしょうか。

「経験値が上がってきた」と思えた今だから、満を持してプロデュース面に参画する気になったのかな?と想像しています

彼は小学生時代から国内外の様々なショーに出てきました。現在活躍中の日本人プロスケーター陣の中で、宇野昌磨さんほど数多くのアイスショーに出演してきたスケーターはそうそういないんじゃないでしょうか?

多数のショー出演経験があるからこそ、「今までにないタイプの、自分らしいショー」を創っていく過程にはさぞやりがいがあったのでは?と思っています。

「今までにないタイプの、宇野昌磨らしいショー」のコンセプトとは

「宇野昌磨」の個性をどう打ち出すか

「Ice Brave」は浅田真央さんの「サンクスツアー」の形式を踏襲していると言えるでしょう。

  • 常設リンクで開催
  • メインスケーターの過去プログラム曲を主軸にショーを構成
  • メインスケーターが随所に出演、他スケーターによるソロ演技もある
  • 90分程度で途中整氷休憩なし

「Ice Brave」は新たなショーですから、これらの共通したフォーマットに彼らしいオリジナリティを加えていく必要があります。演出家さんなど周囲のアイディアなども取り入れつつ「宇野昌磨の強みは何なのか」を突き詰めたのでしょう。

その結果、一番前面に打ち出すべき自分の個性は“「グレート・スピリット」に代表されるようなパワフルでワイルドな演技”との結論に至ったんじゃなかろうかと思います。

数多くのプログラムを滑り切れるスタミナも強みですけど、そこは浅田真央さんにも共通する資質ですしね。

宇野昌磨新アイスショーIceBraveの宣伝素材(宇野昌磨さんがリンクの上でしゃがんで挑戦的な視線を送っている)
彼から伝わる熱が氷からマグマのように溢れる宣伝ビジュアルはショーコンセプトをよく伝えてるなと感心します

もちろん昌磨さんはスローなバラードも合うし、クラシック系のプログラム、特にバロック音楽をやらせれば右に出るものはいないとすら思います。

でも過去ショーとの「差別化」を図るなら、そして現役選手としてまだ戦いうる体力がある今なら、パワフルでワイルドな演技面を重視したのは自然な結論だったかもしれません。

演出に生まれた個性

その結果、「アイスブレイブ」には次のような個性が全面に打ち出されました。

  • パワフルな演技に観客が大声で盛り上がれる「ライブ風演出」
  • 最小限のメンバー構成で、全員が数多くのプログラムをタフに滑りこなす

振付で一番目立つのは宇野昌磨さんとはいえ、たった7人のメンバー(ゲストスケーターのステファン・ランビエールさん含む)の全員がほぼ均等に出番があるのはかなり斬新でした。

ちなみに「サンクスツアー」のキャストは10名。「Ice Brave」は当初6人でやろうとしていたようですから、これはなかなかの「挑戦」だったかも。

現役終盤のインタビューから推測するに、「自分がやりたいショーのイメージ」は引退前に既にあり、それは「少人数で長期間練習して行うショー」であったように思います。

これは「ワンピース・オン・アイス」の経験が大きかったように思いますね。下記記事のインタビューでは明確に「準備に長くかけた少人数のアイスショーをしてみたい」との主旨の発言もしています。

映像モニター演出を廃し、四方を客席で囲んだこともライブ感が増してよかったです。

使用する舞台演出装置は照明のみ。それも演目によっては必要最小限のスポットライト等に抑えて。「スケートの演技で熱くさせよう」という気迫の感じられる演出設計に、私は「宇野昌磨風味」を感じました。

キャスト選定

キャスト選びの基準について昌磨さんは「自分には行き届かない点が多々あるだろうから、放っておいても自主的に練習してくれそうな真面目な人を選んだ」と言う主旨の発言を冗談めかして何度もしていました。

実際それが一番の条件だったのでしょうが、それ以外のことも当然考慮していたと思います。事前練習の拘束時間からいって、プロスケーター専業に近い人ーという条件はまずあったでしょう。そしてもちろん、滑りの質や個性も

アイスブレイブキャスト7名のプロフィール写真

当初からの男子メンバーが中野耀司さん&唐川常人さんだったのも、昌磨さんのスタイルへの親和性があるからでは?と思いました。私は中野耀司さんは上半身の使い方、唐川常人さんは端正な滑りにそれぞれ親和性を感じます。

この二人はシルエットも似ていて、ある意味「昌磨さんの形代(かたしろ)」と思わせる雰囲気すらあります。一人で全プロを滑るわけにはいかないから「宇野昌磨イメージに寄せやすい」スケーターを選んだのかな?とも思いました。そんな意図が実際あったのかどうかはわかりませんけど。

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向かって左端が櫛田一樹さん

櫛田一樹さんは年明けの「謎ショー BISF25」での共演がきっかけでの加入でした。

彼は体格では宇野昌磨イメージとは全く重ならず、昌磨さんとは異なるタイプの個性を打ち出せるタイプです。しかしグループナンバーのフォーメーションを考えると、ステファン・ランビエールさんのような高身長の人を追加することでバランスが更に良くなったのではないでしょうか。

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女性が2名というのも絶妙なバランスだったと思います。全員男性にしてしまうとワイルドさの幅が狭まりますからね。

本郷理華さんと本田真凜さんはワイルド系のプログラムもこなしますし、二人とも違う路線の女性らしさを備えていていい組み合わせだなと。

男女揃うことで演劇風演出もしやすいし、互いのセクシーさも際立たせられるし、ここに恩師ステファン・ランビエールさんまで加わるんですから、本当最高でした。

過去と未来を行き来する振付と表現の熟成

私は「常に未来志向の彼が作るアイスショーならば、過去プロをショー用に軽くアレンジするだけではなく、大胆なアレンジをしてくるかもな」と予想していました。

でも、「タイム・アフター・タイム」「ダンシング・オン・マイ・オウン」のように演劇仕立てにしてくるとは予想外でしたけどね。それでも、その中にも過去プロでの印象的な振り付けをところどころに残してくれていたのはファンにはたまらなかったです。

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「グレート・スピリット」や「カム・トゥゲザー」の昌磨さんソロ部分は元のプログラムにかなり忠実でしたが、グループナンバーとして見事に作り変えられていました

元プロにかなり近かったプロとしては「レジェンズ」が筆頭に挙げられますが、こちらは「師弟コラボ」にしたことで全然別のニュアンスが加わりっています。

「ブエノスアイレス午前零時/ロコへのバラード」も過去の振付を極力踏襲した演技。しかしソロで真正面から勝負したことで、逆に「表現の熟成っぷり」を感じさせてくれました

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2016-17シーズンの「ロコ」は、「魅惑的な女性に翻弄され、狂気に身を焦がす若者」という感じでしたが、2025年「Ice Brave」の「ロコ」は「女性を翻弄し、狂気の世界に導く魅惑的な青年」に見えました。

ー同じプログラムなのに別の風味を味わえた感じ?

「もし10年後に「ロコ」を再び見ることができたら、2025「Ice Brave」版とは違う魅力があふれ出るのでは?」とつい期待してしまいます。

本人は「そんな先のことを今期待されても…」って思われそうですねw

でも、おばちゃん世代にとっては10年なんてあっという間なんで(笑)

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「ボレロ IV」は本当大胆なアレンジだったと思います。あのプログラムの前半があんな神々しい感じの展開になるなんて。あの壮大な流れからラストでは競技そのままのステップになだれ込んでいくのは本当にたまらなかったです。

「Ice Brave2」ではステファン・ランビエールさんとの2人の振付部分をそのまま再現することはできないでしょうが、もう一度観たいなと願う演目のひとつです。

新ジャンルへの挑戦

「ストリートダンス」と「アイスダンス」、二つの分野への挑戦を入れたのもこのショーの目玉でした。

私は彼が何かを成し遂げようと燃えている姿を見るのが大好きですので、何であれ新しいことに挑戦してくれる姿が見られるのは大歓迎

表現面でも様々な可能性をまだまだ秘めていると信じているので、本業?のフィギュアスケートの分野でも色々挑戦をしてほしいと願っています(笑)。

ストリートダンスへの挑戦は、KAJ1さんのファーストレッスンの日のトヨタイムズスポーツ動画を今見るととても楽しいです。練習風景動画を今見ると、「あ、ここナルコだ」「ここボレロのあの振付だ」ってすぐにわかるんですよね。

アイスダンスへの挑戦過程の記録も撮影してくれてないかなぁ…万一撮ってあったら、将来公開してほしいです。ダンススピン習得の過程のかけらとか見たい…本人たちはそんな苦労してる姿は見せたくないかもしれないけど(苦笑)。

「Ice Brave2」での「新しい挑戦」はどういうことをやるのか、既に楽しみにしています

スピーディな進行&個性溢れるMCタイム、衣装など

整氷休憩なで、演技ごとの演目紹介や演技終了後の挨拶は基本なしでサクサク進みます。これは「ライブ感」を保つには非常に良かったですね。

私の記憶が正しければ演技後に四方向に挨拶があったのフィナーレ以外では「レジェンズ」と「ワイルドサイド」かな?(確か千秋楽のときにステファン・ランビエールさんは「Timelapse」終了後の暗闇でひそかにレベランスしていた記憶)

合間に入るMCタイムは「宇野昌磨アイスショー」の個性が炸裂してましたね(笑)。

「以上をもちまして前半の終了でございます」とか「宴会の司会かよ!」って突っ込みたくなるような台詞は、余韻を見事にぶった切ってくれて私は楽しかったです。「あ~来たわコレw」みたいな謎の嬉しさがありました(笑)

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X(Twitter)で興味を持って観に行った方をX上でちらほら見かけましたが、「演技中のカリスマ性」と「ふんわりしたMCトーク」のギャップは十分楽しめたんじゃないかと思います。

おそらくMCタイムは休憩&着替え時間確保を目的に設けたんでしょうが、これも「宇野昌磨アイスショー」ならではの個性になっていました

「Ice Brave」には様々な音楽ライブを手掛けてこられた演出家TETSUさんを起用していましたが、本当「ライブ感」満載のショー。あのMCタイムは、「いかにもライブ」でしたね。

中高年の観客は1時間半ずっと騒ぎっぱなしじゃ疲れますし(笑)、ほっこりできる時間が合間にあるのはメリハリがあってよかったです

その他、衣装は現地で見ると凄く良かったですね。トヨタイムズスポーツ動画で初めて見た時はピンと来なかったんですけど、照明のもとで見ると全然違ってて。

グループナンバー衣装は一から仕立てて、他は各自の既存の衣装をうまく使いまわしていたのは好感度高かったです。

既存の衣装でもイメージに合っていれば全く問題がないし、既存のものだと気づくのは一部のファンだけでしょうから、衣装代のぶんを練習用のリンク貸切料に回せて凄くいいと思いました。

「Ice Brave2」への期待

第2弾の演出はどうなるのか、予定している「新しい挑戦」などについては、これからボチボチと想像を巡らせるつもり。

でも、まだ当面の間は第1弾の記憶を反芻していようと思います

未だに時々「Ice Brave」の使用曲が頭を巡って、演技が脳内再生されますからね(笑)

「Ice Brave2」への期待は、練習動画などがSNSアカウントで公開されるようになったらまたあれこれ書いて行くつもり。その前に夏の試合が色々あるので、そちらも楽しみたいと思います。

第1弾「Ice Brave」関連投稿まとめ

私と同じように「Ice Brave」の記憶を反芻している方や、「Ice Brave2」を観に行こうと思っている方向けに、過去の「Ice Brave」関連投稿の主要なものを下記に整理しておきます。
よろしければどうぞ。

第1弾「Ice Brave」のおさらい&第2弾セットリストを予想したい人向け

「Ice Brave」第1弾のセットリストを過去演技動画など参考資料とともにまとめた記事です。

最後の項目に2025「Ice Brave」でやらなかった過去プロリストを挙げていますので、「Ice Brave2」ではどのプロの代わりにどのプロが入りそうか?という予想をする資料にも使えるかと思います。

各プログラムを一つずつじっくり振り返りたい人向け

じっくり振り返っているので前中後編と長いです。

各公演ごとのフレッシュな感想を再体験したい人向け

こちらが愛知公演初日の感想。興奮のあまりかなり動転していますw

ステファン・ランビエールさんに感服した福岡公演は、これでも多少落ち着いてますね。

新潟公演は初日のレポと千秋楽のレポと2回に分けて書いています。

その他、「Ice Brave」関連の記事は全てこちらにまとめてあります。

いや~3月の制作発表から本当楽しい日々でした

秋以降も続くのはさすがに嬉しい悲鳴w
東京&島根公演あたりが観られないのはちょっぴり残念です

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