現地観戦したグランプリシリーズ第5戦フィンランド大会(フィンランディア杯)、今回は男子フリーの記録です。
現地でのフレッシュな感想はこちら。(他カテゴリにも触れてます)
現地で撮った男子出場選手全員の写真を中心に、演技後のインタビュー情報を追加してまとめてます。合間の観光情報もちょびっとだけ(笑)。
朝7時開始の公式練習
試合2日目の公式練習スタートは朝7時、男子シングルから。極北のヘルシンキはまだ真っ暗です。
初日は会場廊下で山本草太選手がアップしてましたが、二日目は友野一希選手と鍵山優真選手のアップ姿が。私がウォーミングアップ姿を見掛けた選手は結局日本人男子3名だけでした。
前半グループの練習が始まってしばらく経ってから、スケーターが5人しかいないことに気づきました。
チャ・ジュンファン選手がいない…
この時はまだWD(欠場)と発表されていませんでしたが、結局欠場に。
Junhwan Cha 🇰🇷 withdrew from today’s Free Skate due to injury.
— Golden Skate (@goldenskate) November 16, 2024
We wish him all the best and a speedy recovery! 🙏🏻#FinlandiaTrophy #GPFigure pic.twitter.com/XGOGRORcXn
この写真はおそらくSP後の撮影だと思いますが、柔和な表情をしていてちょっとホッ
後半グループの練習では、日本人3選手は他国選手たちより多めにジャンプを試していました。
休憩タイム(ホテルで朝食⇒サウナ⇒ホテル⇒会場)
残念ながら男子だけで練習見学は諦め、ホテルに戻り朝食タイム!(週末はホテル朝食開始が7時半だったので、食べてから行くことができず…)そそくさと食べた後はサウナへ直行。
サウナからいったんホテルに戻る最中に、チャ・ジュンファン選手の棄権情報を知りました。おかげでホテルでゆっくり出来る時間が10分弱増えたけど、私は慌ただしくていいから彼のロコを観たかったです…。怪我はしょうがないけど。
男子SP前半グループ
試合開始のISUファンファーレが場内で鳴る頃に会場に到着しました。いよいよフリー開始!
ヴァルター・ヴィルタネン選手
ワールドミニマムスコアに挑戦する一人目、ヴァルター・ヴィルタネン選手。
冒頭の4回転トゥループは着氷できたものの「<」の回転不足。そこから後が崩れてしまい、この日も過去の技術点は超えられず、ミニマムスコアは遠い…。
マカール・スンツェフ選手
続いて登場したマカール・スンツェフ選手も前半のループとルッツがどちらもダブルになり、ミニマムスコア届かず。
彼がトリプルアクセルに挑んだのはSPのみでしたが、フリー演技後のインタビューによると、トリプルアクセルは練習ではほぼ成功しているらしいです。試合で成功させることへの壁があるんでしょうね。
Makar Suntsev 🇫🇮 120.90 / 180.48
— Golden Skate (@goldenskate) November 16, 2024
“I really loved the atmosphere and all the support here.”
He moved to Espoo this summer and started studying business and tries to combine skating and school.
His goals for the season are qualifying for the World Championships, where he is… pic.twitter.com/HdisOU0yrk
トリプルアクセルが試合で入るようになれば、ワールドミニマムスコア獲得は夢ではないので今季の出場試合の経過を細々と見守るつもりでいます。
カムデン・プルキネン選手
フィンランドの血が4分の1流れているカムデン・プルキネン選手(そういや名前が「~ネン」)。
金融系サラリーマン生活は大変なのか、昨季までに比べ動きが今ひとつ。でも本人は地元アメリカのボストンワールドに出場したい気持ちが強いようです。私は演技後のインタビューを読むまでは、てっきりミラノ五輪に照準を合わせて徐々に上げて行くつもりなのかと思ってました。
Camden Pulkinen 🇺🇸 130.84 / 195.18
— Golden Skate (@goldenskate) November 16, 2024
“I am a quater Finish, I love coming here, it’s always nice skating here, seeing all the Finish flags.”
“I am not completely ready yet, for this competition it felt a bit better to take out the quad, but I am thinking long-term and want to… pic.twitter.com/Bvm0pa4hmS
こう話しているからには、全米選手権まではハードに練習するつもりなのでしょうか?今年のアメリカの男女シングル代表はイリヤ・マリニン選手以外本当読めません。
ウラジーミル・サモイロフ選手
ウラジーミル・サモイロフ選手のこと、私フィンランド大会関連最初の投稿で「モントリオールワールドの公式練習で注目した選手」と書いていましたが、これ大間違いでした。
練習で見たサモイロフ選手は、私の記憶に残ってた選手よりずっと背が高いうえ、私の好みとは全然違うタイプの滑りでした(苦笑)
所詮私は永遠のライトファン。私が当時見た練習グループには名前と顔が一致しない選手が2名いたのですが、もう一人と勘違いして覚えていた模様。私が練習で目を惹かれていたのはトルコの選手でした。下記の元記事(モントリオールワールドの練習関連の投稿)の方も今更ですが訂正してます。
ということで私、サモイロフ選手の演技は淡々とした気持ちで見始めたのですが…ショートサイドに彼を熱心に応援している女性グループがいるのが目に入りました。冒頭の4回転ルッツは美しく決まったものの、その後サルコウはダブルに、トリプルアクセルは抜けーという流れで会場内がやや盛り下がっていた中、彼女たちは熱心に応援を続けていたんです。
そしたら後半にコンボ3連発固め打ちが全部入り、彼女たちの熱狂はピークに!(確か最後のコンビ決めた時に悲鳴のような歓声が上がった)
演技終了後、ポーランド国旗を振り歓喜する彼女たちを見て、私もちょっと幸せな気分になれました。
自分好みのスケーターでなくとも、そのファン達が純粋に感動している姿を見るのはいいものです。
アレクサンドル・セレフコ選手
アレクサンドル・セレフコ選手はこの試合からフリーを昨季のショパンに戻してきました。今季フリーのタンゴ、割と気に入っていて進化を楽しみにしていたのにな。
フランス大会の後に風邪をひいてしまい、「今も鼻づまりが苦しいけどそれは言い訳にはならない」と語っていたアレクサンドル・セレフコ選手。
それでも去年のユーロでは4回転トゥループ1本構成だったところ、2本投入構成にトライしてきました。アクセルが抜けたり色々崩れはしたけど、練習の様子からするとかなり良くまとめられたんじゃないかと思います。
弟のミハイル・セレフコ選手が今季復調しているようなので、弟のワールド代表争いがこれから本格化します。どちらがワールド代表になるかはわかりませんが、「五輪のエストニア枠を二つ持って帰る」という使命が待っています。
後半グループ4人はいい流れ
ダニエル・グラッスル選手
ダニエル・グラッスル選手はNHK杯からの連戦。「イタリア⇒東京⇒イタリア⇒フィンランドはなかなか大変だよね…」と思っていたのですが、フリーはNHK杯同様4回転3種まとめてきてビックリでした。(ループに「q」がつきGOEマイナスついた程度)
当初私は、過去のあれこれから来る会場のリアクションをちょっと心配していました。フィンランドってロシア占領下にあったこともあるしどうなんだろうって。
(あれこれについてはこちらの投稿を参照)
でも会場では他の選手と遜色ない程度に拍手と声援が送られていたように感じました。彼の知名度にしては応援の旗を振る人は少なめ?でしたが、それなりにはいましたし。本人も堂々としてたし、観客も受け入れてた感じに見えましたね。
GPF会場のグルノーブルの観客がどう反応するかはわかりませんが、エテリ門下にいた時の欧州開催大会ほどの重い空気感にはならずにすむかも?
ルーカス・ブリッチギー選手
ルーカス・ブリッチギー選手のフリー演技なのですが…SPが印象に強く残りすぎててフリー演技の記憶が実はあまりありません(苦笑)。
冒頭4回転トゥループートリプルトゥループが決まったものの、次の4回転トゥがダブルに抜けた以外はまとめた演技。4T1本のみで166.26点も出してるのに…。どうも去年の陽気なフリープロの印象がまだ私の中から抜けていないようです。
山本草太選手
山本草太選手、実はフリー3位(日本男子最上位)でした。
冒頭ジャンプがトリプルループだったのは予定通りだろうし、前半着実に技を決めていっていたので期待が高まった中、トリプルアクセルで転倒。「あああ表彰台が~」とこの時はうろたえました。
でも、直後の後半4回転トゥループは着氷!落ちた気分はすぐに回復(笑)。
「なるほど後半4T初成功にはトリプルアクセルの犠牲が必要だったか!」と思いましたよ。試合で後半4Tを降りた経験を全日本前に得られたのは大きいのではないでしょうか。
多種4回転持ちの日本男子後輩達と闘っていくには、冒頭に4回転ループやフリップを投入するか、後半に4Tを投入するか、去年の構成のままで質を極限までに高めるか。どれがベストなのかはわかりませんが、後半4T投入が一番現実的なのかもしれませんね。全日本どういう構成で来るかなぁ。
Sota Yamamoto 🇯🇵 167.48 / 249.91
— Golden Skate (@goldenskate) November 16, 2024
“It is very important now for me to prepare foe Nationals and do well there. Of course my goal is to qualify for Worlds but I will put all my focus on Nationals now.”#FinlandiaTrophy #GPFigure pic.twitter.com/NXa8xBElml
「洗濯後そのまま干しました」感が漂うSOTAバナーが、使い込まれてる感じでなんか好きw
ケヴィン・エイモズ選手
ケヴィン・エイモズ選手が冒頭の4回転トゥループで派手に転倒した時、私はかなり動揺しました。またここから大崩れしてしまうんじゃないかと。
しかし、彼は次の4回転トゥループのコンビネーションをどうにかこうにか降りてきました。そこからは徐々に「今の彼はジャンプミスしても崩れないんだ」という安心感が生まれてきました。
演技後のインタビューでは、最初のジャンプで転倒したことで逆に「自由で幸せな気持ちになれた」と語っていました。「ミスをしてはいけない」ではなく、「ミスはするもの」と思って挑んだことで「ほら、ミスしたね」とホッとしたーって感じでしょうか?
その後は試合を観に来てくれた彼氏のサポートへの感謝が続きます(笑)。
Kevin Aymoz 🇫🇷 174.02 / 259.15 🥈
— Golden Skate (@goldenskate) November 16, 2024
“This was maybe one of the most stressful competitions of my career. After I did well at Skate America I wanted to show everyone that I am strong. It maybe sounds strange but after I fell on the first toe I kind of felt happy and free. I knew I… pic.twitter.com/WSULOPrNjL
ファイナルが行われるのは彼の故郷のグルノーブル。家族や友人がみな会場に来るそうです。「ファイナルではちょっとした馬鹿馬鹿しいサプライズを用意している」ということなのですが、何をやるつもりなんでしょうか?ちょっと楽しみにしています。
予想の範疇外だった友野一希選手と鍵山優真選手の演技
前半グループのサモイロフ選手から、後半グループの4人目まではミスはありつつもまとめた演技が多く、「SPと違ってなかなか良い試合展開では?」と感じるいい流れでした。
SP1&2位の鍵山・友野両選手もこの流れに乗ってくれるといいなと思っていたのですが…
友野一希選手
友野一希選手のフリーはフランス大会前の股関節の不調もあったので、ミスが出るのは覚悟の上でした。
ただ、出るとしたら冒頭の4回転3本のうちのどれかで、後半のトリプルアクセルで大きいミスが連続するとは予想していなかったです。それぐらい彼は「後半のトリプルアクセルは鉄板」な印象が強かったので。
股関節の不調ってアクセルに響くんですかね…?
友野選手は「後半に辿り着けば比較的安心して見ることができるレアな選手」の一人だったので、今季の全日本選手権では最後の最後のジャンプまでドキドキして見守ることになりそうです。
鍵山優真選手
いくら鍵山優真選手といえども、連戦では大きなミスの1つや2つ出るかもとーと覚悟していたものの、この日のフリーの乱れには驚きました。
4回転フリップは抜け、4回転サルコウとトリプルアクセル2本が着氷乱れ。それでも4回転トゥループは2本とも美しく決め、後半のセカンドループをとっさに2回転トゥに変更する底力は見せました。
GPSで複数のジャンプミスをするトップ選手は珍しくないですが、鍵山選手は毎回ミスを最小限でまとめてくる印象が強かったですからね。衝撃を受けた人が多かったのではないかと思います。「鍵山優真選手でも崩れるときは崩れるんだ」っていう当たり前のことを実感したというか。
でも、抜けや着氷乱れはあるものの、実は転倒なし。宇野昌磨選手の2019フランス杯の4転倒演技に比べればずっと点は出て、フリー5位159.12でとどまり優勝・ファイナル進出を果たしました。
見返してみると、初見時に感じた程の「大崩れ」ではありません。
でもなんというか…彼はジャンプ以外の部分でで十分魅せられる選手なのに、いつもの滑りの魅力が影を潜めた感じだったのが残念でした。今回も滑りは美しかったのだけれど…彼から発散されるパワーを感じづらかったです。
ミスが多発しても最後まで気迫を保ち続けた演技が観られたのなら、そんなに心配はしないのですが…「どうしたの?大丈夫?」ってなる感じの演技でした。
「この悔しい経験が殻を破る切っ掛けとなったらいいな。ファイナルでは今まで見たことの無いような気迫みなぎった演技になったりしないかな」ーと今は考えています