GPS中国大会 海外の反応が気になった男子FS/ボーヤン選手と連盟との対立&グラッスル選手への批判の声など

GPS中国大会のロゴ

グランプリシリーズ中国大会(中国杯/CoC/カップオブチャイナ)の男子フリー前日、フィギュアスケート専門記者のジャッキー・ウォンさんがこんなことをX(Twitter)に投稿していました。

ダニエル・グラッスルがグランプリファイナルに出場できない唯一のシナリオは、エガゼかシャイドロフのどちらかが中国杯で優勝し、シャオと佐藤が表彰台に上がった場合である。(佐藤が銅メダルだと、グラスルとのスコア勝負に勝つ必要がある)

昨日の日中、私は友人と映画を見に行っていたのですが、その後寄ったカフェでこの投稿の話をしていました。「アダム調子良くなさそうで優勝は逃すかもしれないから、この順位組み合わせはあり得ないことはないけど…さすがにこうなるのはちょっと考えにくいよね~」なんて話していたのですが…

その「まさか」があり得るところまで行って、本当にビックリ&ヒヤヒヤでしたよ!

佐藤駿選手は「この絶好のチャンスに優勝できるといいな」と思っていたたので、逃げ切れてホッとしました

そもそもジャッキー・ウォンさんがこういう投稿をしたのは「ダニエル・グラッスル選手のGPF進出確率がそれだけ高い」ということを強調する目的だったでしょうが、グラッスル選手のGPF進出を望まない層の声が大きかったことに応える意味もあったかと思います。

GPS中国大会男子フリーのまとめは、試合そのものよりダニエル・グラッスル選手のGPF進出の当落に一喜一憂していた海外の反応を含めて振り返りますその流れで見えてきたボーヤン・ジン選手が追い込まれている苦境も合わせて紹介しています。

シビアな話だけじゃなく、私が「シャイドロフ選手のフリーの変曲ぶりがちょっと癖になってきたかも」という馬鹿馬鹿しい?話も混じってます(苦笑)

グランプリシリーズ中国大会(中国杯)リザルト

目次

前半グループ

デニス・ヴァシリエフス選手 ~4S降りるも「q」の雨~

デニス・ヴァシリエフス選手、冒頭の4回転サルコウがダブルに抜けたのは正直「やっぱり…」と思ってしまいました。「ひょっとして構成変えてもう一度トライするんじゃ?」と思ったら…やっぱり跳んできました!

試合であんなキレイな4回転サルコウ降りたのは、銅メダル取った2022ユーロ以来のはず!?

あの時同様「q」はついちゃったけど、あの時もよりも美しく降りてた気がしたので「厳しー!」って思っちゃいました(苦笑)。他のジャンプも「q」取られまくりで点数は伸びず、本人もスコア見てガックリきていたようです。

モントリオールワールドで彼の公式練習を見るまでは「4回転外した方が上位狙えるんじゃ」って内心ずっと思ってたんですけど、練習では美しい4回転サルコウ降りてるんですよね。あんだけキレイに決まってたらそりゃプログラムに入れたくなるよねって思うようになりました。練習と本番って本当に違うんだなぁと思わせられます。

ただジャンプ構成急に変更したせいでジャンプ集中モードになったせいなのか、いつもの「ラ・バヤデール」の優雅さが控えめになった気がして微妙に物足りなかったです。

ダイウェイ・ダイ選手 ~ボーヤン選手より上の6位に~

ダイウェイ・ダイ選手、冒頭の4Tー2Tは昨日と同様美麗でした。セカンドダブルなのは後半に3Tへのコンビネーション入れてるからでしょう。残念ながら2本目の4Tは転倒。でもその後美しくまとめていたので「これは結構上位に食い込めるのでは?」と期待したんですが、最後のジャンプのトリプルルッツで転倒してしまいました。勿体ない!

去年の中国杯時に20才超えてたので「彼のジャンプ技術はトリプルアクセル止まりなんだろう」と思いこんでいたのですが、20才を超えてからこれだけ見事な4回転を習得することもあるんですね。日本の選手が早熟過ぎるだけか。

2転倒にも関わらず、ボーヤン・ジン選手(8位)を上回る6位!ダイウェイ・ダイ選手は決まったジャンプがことごとく加点がつく美しいランディングでしたしね。

インタビューでハン・ヤン元選手と比較されることの嬉しさと共にボーヤン・ジン選手へのリスペクトを語っているところがイイです。

今季のワールド代表はダイウェイ・ダイ選手になるかも?中国のナショナルは今月末だけど、中国の選考ってよくわかんないからな…どうなるでしょう

後半グループ

ボーヤン・ジン選手 ~フリーが今ひとつなのは連盟との対立が原因?~

ISU公式配信で見ていたら、ボーヤン・ジン選手演技開始前に音が消えてビビりました。音なし状態にイライラしながら見始めたけれど、音はファーストジャンプ前に復活。でも最初の4回転はルッツ高過ぎて転倒でした…。その次の4回転トゥループは凄くキレイでしたけどね。(スコア見たら「q」ついてたけど)

でもこの「ボストン」の曲、全然合わない…プログレハードロックってフィギュアスケートとは絶望的に合わない気がするのですが…BGMにしかなってない気が。

ボーヤン・ジン選手自身は十年前にメダルを獲得したボストンワールドに思い入れがあって、「ボストン」の曲で滑ることに意義を感じてるようですが「ううううむ」という感じです。曲のせいでは無いと思うけれど、ジャンプ加点伸びず8位。PCSもダイウェイ・ダイ選手より低く、総合順位も上回られてしまいました。

SPフリー共にぬいぐるみは沢山投げられていたけど、ボーヤン・ジン選手はそれどころじゃない状況に追い込まれてる模様

どうもボーヤン・ジン選手は中国の連盟からカナダクリケットクラブでの練習を制限され、今は国内で練習せざるを得なくなって色々大変なようです。

上記でリンクされてる記事に記載されているインタビューを翻訳かけて読んでみると、ただでさえカナダに渡る許可が下りず振付けが遅れたのに、カナダでフリーの振付けが終わる前に中国に呼び戻されたらしいです…だからあんな仕上がりのフリーなのかも。※フリーの振付けとは明言されてなかったと投稿後に気づいたので削除しました

今も怪我の状況が思わしくないとの情報も出ていて…。「ミラノ五輪に行くために続けたいのかな」と思っていたのですが、ここになって中国スケート連盟との対立状況が明らかになるとは…ひょっとしてあのフリーもちゃんと手直しされたら曲がBGMにならずに済むんでしょうか?

ダイウェイ選手とボーヤン選手、どちらが今季ワールドに行ったとしても、中国男子の五輪出場枠を2枠にするのはかなり厳しそう。

五輪1枠をこの二人で争われるとなると、どっちも好きな選手だし超・悩ましそうです…

マッテオ・リッツオ選手 ~4Lo降りるも今回も「<」に~

マッテオ・リッツオ選手の冒頭の4回転ループ、NHK杯に引き続き無事着氷できましたが両足だったのはわかりました。このまま後半まとめられたらそれでも表彰台ありうる?と期待したのですが、スタミナがつきたのか後半でジャンプミスが連続。ステップ得意な彼のステップがレベル2に。

これだとダイウェイ・ダイ選手下回っちゃう?って一瞬心配したけどさすがにPCSはちゃんと出て総合5位

本人は何で後半スタミナが持たなかったのかわからないと語っていました。4回転トゥループも早く戻ってくるといいのですが、来季には間に合うといいな。

ニカ・エガーゼ選手 ~ジャンプ大乱調も総合4位に踏みとどまる~

ニカ・エガーゼ選手は冒頭4回転ルッツがトリプルに抜けた後からずっと精細を欠く滑りでした。ジャンプの安定感が一番の売りだと思ってたのに一体何があったんでしょう?

途中バランスを崩して後方に転倒したのはヒヤッとさせられました。頭から落ちなくてよかった。

それでも点は出て総合4位。いつもの彼ならアダム・シャオ・イム・ファ選手を上回って表彰台に乗る絶好のチャンスだったので勿体ないことをしました。

アダム・シャオ・イム・ファ選手 ~右足首の怪我の中でも表彰台は確保~

アダム・シャオ・イム・ファ選手、DUNEの映画音楽にあわせたフリー冒頭の4回転ルッツは決まるとめちゃくちゃカッコイイんですが、それがダブルに抜けると残念感半端ないですね…転倒よりはいいとはいえ。

トリプルアクセルは抜けるわステップアウトするわで、フランス大会に続きさんざんな仕上がり。それでも後半の4回転トゥループは加点がごっそりつく美しいジャンプをしっかり決めてくるなど、彼の最低限ラインはきっちり取ってくるところはさすが。

しかしこの状態でグランプリファイナルに行くのは得策でしょうか…ファイナル進めなかった方が結果的には良かったんじゃ無いだろうかとすら思います。

上記の演技後のインタビューでは「今日のファーストジャンプで右足首を怪我してしまった」とのことですが、フリー演技の最初の抜けたルッツのことなのか、練習の時のことなのかがよくわかりません。

今季は怪我で調整も遅れているし、今日捻挫?をしたのだったら2週間後のファイナルは無理して出ない方が良さそうな気がするんですが、開催地がフランスなんですよね…無理してでも出ちゃいそうですよね。2週間で回復が望める程度の怪我であることを祈ります。

ミハイル・シャイドロフ選手 ~コリオのミスさえ無ければ…の凄い演技~

ミハイル・シャイドロフ選手は先日のフランス大会でトリプルアクセルー4回転トゥループというコンビネーションジャンプを試合で世界初成功させて注目を浴びました。

でもその後風邪を引いて高熱にうなされていたそうで、「うなされてるときに『アクセル、トゥループ、アクセル、トゥループ』の言葉が脳内で駆け巡ってたんだよ」ーとSP演技後のインタビューで語っていました。

そのせいか練習でも3A-4Tは一度も決まってなかったらしいし、6分間練習でも派手に転倒していました。「もう成功させちゃったんだし、点数的にはうまみの少ないこのコンビネーションを本気でまたフリーに入れてくるんだろうか?」と疑ってたら、さらりと成功させちゃったうえ、ジャンプノーミスで行って本当にビックリしましたよ。
(4回転フリップとトリプルアクセルに「q」はついたが「<」はなし)

もともと高難度技をバンバン入れてくる選手なので回転不足さえ取られなければ技術点は荒稼ぎできます。「こ、これは凄いことになりそう…」と思ったらコリオシークエンスのニースライドでの立ち上がりでちょっともたついてしまいました。

これが転倒扱いになってしまい、シャイドロフ選手は転倒による減点1点と、コリオシーケンスの基礎点から2.14点の減点と、合計3.14点を失いました

まさかこれが優勝の行方&ダニエル・グラッスル選手のGPF出場の行方を決定することになろうとはね

佐藤駿選手 ~チャンスを掴み、ついにGPS初優勝~

そして登場した最終滑走の佐藤駿選手。ミハイル・シャイドロフ選手が182.96点という高得点でしたが、SPでの点差&PCSの差を考えると1回ぐらいのジャンプミス以内でおさめれば彼の優勝は固いはず。ここはGPS初優勝の絶好のチャンスです。

4回転ルッツ決まって一安心したのもつかの間、4回転フリップがダブルに!「あああ、もう大きなミスできないよ~」とその後はドキドキ。着氷粗いところもあったので、得点が出るまでは「回転不足取られたらヤバいかも…」と、冒頭に紹介したジャッキー・ウォンさんの投稿が脳内をぐるぐる駆け巡っていました。

きっと海外掲示板では「SHUN、銀メダルになる程度に程よくミスって!」とか「程よい成績を出してグラッスルのGPF進出を防いでくれ!」とか今頃騒いでるんだろうなーと想像しながら採点結果を待ちました。

後で見たら、実際その通りでちょっとげんなり…日本では彼の優勝を望む声がもちろん多かったですけどね。

結果は2.31点の僅差で佐藤駿選手がフリー1位のシャイドロフ選手をかわして優勝!

シャイドロフ選手のコリオのミスが無ければジャッキーさんの書き込みが実現するところでした…

日下コーチと一緒に喜んでいる姿を見られてよかったです。このキス&クライの写真は日本人のキス&クライにしては、アンバー・グレン選手のキス&クライレベルに喜びが炸裂してて幸せを感じます(笑)

ダニエル・グラッスル選手GPF進出を巡る海外スケオタの反応

佐藤駿選手のGPS初優勝、私は世界のフィギュアスケートファンに素直に祝福してもらいたかったので、「グラッスル選手のGPF進出を防ぐため優勝はシャイドロフで!」という声が大きくなってしまっていたことだけはちょっと残念でした。

ジャッキー・ウォンさんが書いていた「ダニエル・グラッスル選手がGPF出場を逃す唯一の展開」が実現しちゃうかも?となったので、その展開を期待していた人たちの書き込みがまぁ多かったのなんのって。

ネットでは不満を持つ人の声が大きくなりがちなだけで、実際のところは世界のフィギュアスケートファンにはちゃんと祝福されてると思いますけどね

ダニエル・グラッスル選手は昨季ドーピング検査不履行が3回累積したことを理由に2年の出場停止処分となりました。先日ロシアのスポーツメディアに答えたインタビューによると、「故意で検査を逃したわけではない」と認められたことで出場停止は1年で解かれたらしく、今季から試合復帰となった模様。

しかしその過程の説明が不十分だったこと、北京五輪後にエテリ・トゥトベリーゼコーチの指導を受けにロシアに渡っていたこともあって、海外のフィギュアスケートファンの中には彼を毛嫌いする人が急増してしまいました。

こちらはエテリコーチの元に移籍した当時の記事。(今はイタリア国内に拠点を戻しています)


ドーピング検査の個人情報を表に出せないイタリア国内の規定があるようですが、復帰経緯の概要説明すら全くないまま復帰させたのはまずかったように思います。批判が激化した後に受けた取材も今のところロシアメディアだけだし…

ちなみに、今の私はダニエル・グラッスル選手を好きでも嫌いでもありません。以前は今のシャイドロフ選手のような「ジャンプ特化型の面白い若手」として応援していましたし、ドーピング検査3回スルー案件は昨季の出場停止処分で償われているので、「ファイナルに進んでくれるな」とは思いません。

1年試合に出られなかった選手がGPS2大会連続して演技をまとめたのは凄いことだと思います。それも連戦でしたしね。

でも、素直に応援出来る心境でもないんですよね。エテリ・トゥトベリーゼコーチへの無責任な擁護発言も含め、「ドーピング検査ツーアウトの崖っぷち状態だったのに、何でわざわざ戦時下で通信状況不安定なロシアに行ったんだよ…」と、「彼の迂闊さにちょっぴり呆れている状態」というのが近いです。

なので叩かれまくっているのを見るのは何とも複雑です。

そもそも私、場外の騒ぎと演技は別モノだと思っています。今季のプロさえ気に入れば積極応援モードになれたかもしれません。でも今季はSPフリー共に私の好みからは大きく外れていて…フィンランド大会の演技を現地で見ても、やっぱり今季のプロはどちらも好きになれそうには思えなかったです。

同じ変な曲編集のフリープロなら、シャイドロフ選手の月光⇒ダークなTake on Meの破天荒な繋ぎの方が私は好みです

あそこまで行くと、「曲の組み合わせの個性が炸裂してる」と考えていいと思う(苦笑)

今後あの編集が癖になる人が増え、「スケオタ間で長く語り継がれるユニークプロになりうるんじゃないか?」という予感をうっすら感じ始めていますw 

面白かったらしいエキシビションはこれから見ます~

エキシビションはシャイドロフ選手をはじめ、着ぐるみ系&キャラクターもの仮装系プロ大集合&ペア優勝したサラ・コンティ/ニッコロ・マチー組のプロも男女逆転コミカル系で面白かった模様。私は、後日ゆっくり見るつもりです♪

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