NHK杯フィギュア男子シングル観戦記/鍵山優真選手&佐藤駿選手が接戦の1・2フィニッシュ!全演技を振り返り

2025NHK杯会場内スクリーンに投影されたNHK杯ロゴと垂れ幕

2025NHK杯国際フィギュアスケート競技大会(NHK杯フィギュア)、11/8(金)と9(土)の2日間現地観戦しました。

今回は鍵山優真選手と佐藤駿選手が1・2フィニッシュを飾った男子シングルを振り返ります。

フィギュアスケートグランプリシリーズ(GPS)第5戦アメリカ大会(スケートアメリカ/スケアメ)も迫ってきているし、「Ice Brave(アイスブレイブ)2」東京公演の前に京都公演の振り返りなども済ませておきたいので、軽めに振り返ろうと思ったのですが…気づけば結構書いてしまっていました。

次こそは軽く振り返りたいと思います(苦笑)。

2025NHK杯リザルト 

目次

男子シングル 表彰台争い

まずは、表彰台争いをした主要選手たち(総合1~5位)についてSP・フリーまとめて振り返っていきます。

チャ・ジュンファン選手(韓国)

9月の木下グループ杯で優勝し、まずまずのスタートを切ったものの、その後靴トラブルに見舞われ続けているチャ・ジュンファン選手。

現在の状況がどうなのかを報じた記事は今回目にしていません。SPはそれでも91.60点を出して3位発進となったので、「状況は改善したのかな?」と思っていたのですがSP後の取材では「ちょっと今大変」と話していますね。具体的な話はしていませんが、いい靴が見つからない状況はまだ解決していないのでしょうか。

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フリーでは大きく崩れてしまい10位となりましたが、SP貯金が生きて総合では5位に踏みとどりました。

彼は問題なくミラノ五輪代表に選出されるでしょうし、あとはミラノ五輪に向けてじっくり調整してほしいですね。スロースターターなので彼の今後の調整能力には不安はないのですが、靴トラブルばかりはどうしようもありません。シンデレラフィットする靴が見つかることを祈ります。

ボーヤン・ジン選手(中国)

平昌五輪の少し前、4回転ルッツを引っ提げてシニアデビューしたボーヤン・ジン選手も今年でもう28歳。

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平昌五輪は4位を獲得しましたが、その後怪我などに悩み、GPS大会メダルは2020年中国大会の優勝を最後に一度もありません。ここ2シーズンは7位1回、8位3回。

2023-24シーズンのワールドはSP落ち、2024-25シーズンのワールドは若手のダイウェイ・ダイ選手が代表となり出場もできず。ーでも、現役を続けるからにはもう一度輝く彼を見たいと思っていました。

今季はGPS中国大会は5位、NHK杯は4位!

彼がGPS表彰台争いにまた加われるようになってきたのは嬉しい限りです

唯一不満があるとすれば、SP・フリー・エキシビション全てが「卒業ソング」っぽいしっとり系なことですね(苦笑)。

せめてエキシビションで「スパイダーマン」みたいな明るい茶目っ気のあるプログラムが見たいなぁ…特に最近宇野昌磨さんのお茶目なマクドナルドCM動画を見ただけに思います(苦笑)。

ルーカス・ブリッチギー選手(スイス)

事前に書いた「NHK杯の見どころ」記事で、表彰台候補として挙げていたルーカス・ブリッチギー選手

SPの6分間練習から動きが非常に良く、「これは今大会来るかも?」と思いました。

なのに、SP冒頭は華麗な3回転トゥループの連続ジャンプ…。

フィギュアスケートを見慣れていない人ならミスだとは気づかないかもしれない華麗なコンビネーションジャンプでした(笑)。実際加点が0.72ついてます。

4回転の回転が抜けてしまった際、被害をここまで最小限に食い止められる能力はレアで見事だと思います

織田信成さんが華麗な3回転トゥループ連続ジャンプを時々披露してたのを思い出しました

フリーは中近東の曲?「イタリアやミラノ」を全く意識していないエスニック音楽を選択しているのも、個性強くて好きです(苦笑)。

CS大会で初めて観た時に「何故五輪年にこのプログラムにしようと思ったんだw」ってビックリしたんですが、逆に個性が際立っていいかもなと今回思いました。

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フリーの4回転トゥループは2本とも華麗に決まって(セカンドジャンプがダブルにはなりましたが)「シーズン中盤なのにもう神演技来ちゃう?」とちょっとドキドキ。しかしトリプルアクセルからダブルアクセル2本へのコンビネーションジャンプで、冒頭のトリプルがダブルに抜けてしまいました。

「ダブルアクセル3本跳んだらジャンプ回数規定違反になっちゃうぞ~どうする?」と不安になりましたが、しっかり最後のジャンプはシングルアクセルに変更したあたりは冷静さが伺えました。

彼は国内五輪代表争いはないも同然で、こんなに早く仕上げて来る必要はない立場です。なのに今この仕上がりなら、欧州選手権(ユーロ)のあたりではどんなレベルの演技に進化しているだろう?と先が楽しみになりました。

佐藤駿選手

今大会男子シングル最大の活躍

今大会男子シングルでMVPを選ぶとしたら、私は佐藤駿選手に一票入れます

SPもフリーも不安を観客に感じさせない仕上がり会場の空気を明らかに支配している時間がありました

フリーのラストスピンの時には、会場中から「あ~早く立ち上がってスタオベしたい!」という空気感をひしひしと感じました

2大会連続の「ノーミス」演技

今季GPSは中国大会とNHK杯2大会ともSPとフリーをきっちり揃え「2試合ノーミス連続」と言っていい内容でした。

NHK杯演技で些細な「ミス」があったとすれば、フリーの4-3コンビネーションジャンプのセカンドがダブルになったことと、SPの4回転ルッツに軽度の回転不足「q」がついてわずかにGOE減点になったことくらい?
(あれは現地で見ていても「『q』を取られちゃうかも?」と身構えたので、そこには納得です)

怪我のため安定構成⇒PCS評価上昇 は怪我の功名?

彼は6月に負った骨挫傷が完治しておらず、練習時間も制限している状況です。それを思えば信じがたい演技の連続だったといえるでしょう。

というか、むしろ怪我があったことが「やり過ぎ」「思いつめすぎ」を抑制して程よい身体&メンタルコントロールや短時間集中練習に結びついているのでしょうか?

彼は足の怪我により、4回転フリップを入れた4回転4本構成をやめ、4回転ルッツとトゥループ2回の4回転3本構成を続けています。

この構成で安定した演技を続けてきた結果、演技構成点(PCS)評価が上がってきました。今回、SPは3項目とも8.6前後がつき、フリーではスケーティングスキルの項目が8.82まで上昇。

以前は技術点(TES)でリードしてもPCS差でかなわないーということが多かったですが、今大会フリーの点数は鍵山優真選手を0.48点上回り、フリー1位。総合285.71はパーソナルベストスコア285.88に迫る得点でした。

鍵山優真選手もGPS中は挑戦構成を控え、美しく安定した演技を狙っています。奇しくも佐藤駿選手が一足先に、「安定した演技による評価アップ」を実現した格好です。

長年の課題である「スピン・ステップでレベル取り損ねが多い問題」は残っていますが、以前に比べれば取りこぼしが少なくなってきました。

グランプリファイナル出場確定!

GPS1位&2位で、グランプリファイナル(GPF)進出を日本勢一番乗りで確定。

近年のジャッジ傾向から言って、GPFでも好演技をすればPCSは更に上がるのではないかと踏んでいます。鍵山選手らトップオブトップ選手たちの9点台が視野に入ってきました。こうなると五輪メダルの可能性も見えてきそうです。

鍵山優真選手

SPスピンでまさかのミス

鍵山優真選手の今季のSPは軽妙洒脱な明るいジャズ系。私が彼に求めていた路線だったので今回も楽しみにしていたのですが、スピンのエントリーでミスするという、かなり珍しい展開に。

そこから後は本人にも少し焦りが出てきたのが随所に感じられ、サマーカップで見た「明るく自信満々に煽って来る鍵山優真」は再見することができず残念でした。

今回スケート初観戦の友人と一緒に観たのですが、「鍵山くんの滑りって本当凄いですね!」と彼女が感心しているところに、「いや彼はもっとうまいのよ!もっとスゴイ鍵山君の演技を見せたかった」とつい言ってしまったくらい、私には微妙な不満が残りました。実力ある選手だと知っているだけに、どうしても彼には要求水準が高くなってしまいます。

フリーも好演技ながらヒヤヒヤする展開に

フリーの6分間練習では後半に珍しくスピンを入念に確認していました。「絶対今度はミスらないぞ!」という決意が感じられました。

佐藤駿選手の演技に観客ほぼ総立ちになった後、満を持して登場。「“鍵山版トゥーランドット”の世界に入り込むぞ!」と意気揚々と視聴し始めたものの、ジャンプの軸にヒヤリ。空中で修正して綺麗に着氷するのはさすがなのですが、何度見てもビビッてしまいます。

ーしかし4回転トゥループのコンビネーションでは修正しきれず、1本目でまさかの転倒に。

GPS大会では4回転はトゥループとサルコウの2種3本構成。トリプルフリップートリプルループのコンビネーションも入れて来るとはいえ、4回転での転倒は痛い。「優勝を目指すならもうこれ以上はミスできないぞ…」と思っていたら、そこから後半はまとめてきました。

「これは僅差?」と思った結果は…

後半の4回転トゥループにもダブルトゥループをつけて、前半の転倒で失ったコンビネーションジャンプをリカバリートリプルフリップートリプルループの連続ジャンプも降りました。これなら首位は守れそうかな?

でも、PCSは大きくは伸びないだろうし、SPの点差があまりなかったから佐藤駿選手とは結構僅差になるかも?

もしいずれかのジャンプで回転不足を取られてたりしたら、逆転の可能性もゼロではないかも?

ーと、演技終了後は、頭の中をいろんな予想が駆け巡りました

しかし鍵山選手は演技終了後、2023長野全日本最終滑走演技後の宇野昌磨選手のように「セーフ」のポーズをとりました。

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ーということは彼的には「行けた」という実感があるってこと?回転不足を取られそうな不安もなく、スピン・ステップでのレベルもきちんととれたから逃げ切れるという自信があるのかな?と推測。

それでも採点発表まではどうなるかわからなくてハラハラしました。

結果、彼の総合得点は287.24、佐藤駿選手とは1.53点差での優勝。スピン・ステップは全選手の中で唯一、すべてレベル4を獲得!さすがでしたね。

シーズン半ばの段階でミスが一つや二つ出たところで気にする段階ではないでしょう。五輪代表選出はほぼ確実ですし、彼の実力は世界中のジャッジが把握済み。ハイピッチで飛ばす必要もありません。ミラノ五輪に間に合えばいいのです。

さらに仕上がった演技が観られる日を、焦らず待ちたいと思います

その他で印象に残った選手たち

ここからは、それ以外の選手で印象に残ったポイントを振り返ります。

垣内珀琉(はる)選手

西日本選手権直前に重度の捻挫をし、「ジャンプ無しでほぼ滑るだけ」の衝撃演技をしたのが記憶に新しい垣内珀琉選手。

報道で10/13まで松葉づえをつきながら生活していて、練習再開は先月30日だったーと知り、国際大会に出られるレベルまで戻せたのか、実際に練習風景を見るまでは正直不安でした。

4回転を跳べるほどまでではなかったですが、流れる着氷姿勢が美しいジャンプは取り戻しており、美しい滑りと一緒に魅せてくれました。

彼はX(Twitter)で、松葉杖をついて歩いている時の映像や腫れあがった足の写真を公開していました。これを見ると、「よくぞここまで戻せたね」と思わされます。

NHK杯配信を観た海外のスケートファンに滑りや所作の美しさを評価されているのを見かけて、「やはり国際大会の場は貴重だな」と実感しましたね。惜しかったのはSPのスピンくらいで、今出せるものは出せたんじゃないかなと思います。

マッテオ・リッツオ選手(イタリア)

「ひょっとしてこれがナマで見る彼の試合は最後かも?」と見守ったマッテオ・リッツオ選手。

しかし、手術明け復帰してきて間もない頃よりも更に調子を落としているように見えました。一時は「これなら来季は行けるかも?」と思ったこともあったのですが。でも、彼にしては結構崩れてしまった演技だったにもかかわらず、総合6位には入るところは底力を感じさせました。

でも、総合229.60点ではイタリア国内の五輪代表争いには厳しいです。イタリアの五輪代表選考基準がよくわからないのですが、GPS次戦&欧州選手権で存在感を示せば何とかなったりするのでしょうか。やっと今季、「王道路線」系プログラムをやってくれているだけに完成系が見たいです。

ジミー・マー選手(米国)

NHK杯に出かける前日だったかな?海外掲示板でジミー・マー選手がフリーの曲を「トゥーランドット」から「明るいロック系定番曲メドレー」に変更したとの情報を得ました。

木下グループ杯で見た「トゥーランドット」、私割と気に入ってたんですけどね。

普段はネタバレ歓迎派の私なのですが、このフリー使用曲リストは知らないまま演技を見て驚きたかったかも(苦笑)。

まぁでも知っていても「YMCA」であそこまでノリノリで滑ってくれるとは思っていなかったので、十分楽しめましたけどね。「一度はナマで見たい」と思っていた彼の演技を今季は3か月の間に2回も見られたわけですが、フリーは2種類見られてお得でした。

この序盤の成績では、五輪代表選出はちょっと厳しそうに思います。でも、アメリカの3枠目候補者は今回出場したアンドリュー・トルガシェフ選手ともども実力を出し切れずで、一部の例外を除いて譲り合い状態になってしまっています。まだどうなるかはわかりません。

その他の選手たち

ガブリエラ・フランジパーニ選手(イタリア)はゴッドファーザープログラムがハマっていて楽しかったです。ゴッドファーザープロ、久々にフィギュアスケート演技で見た気がします。

その他、アダム・ハガラ選手(スロバキア)が4回転トゥループ入りで好演技を見せたり、ミラノ代表最終予選フリーで大崩れしてしまったフランソワ・ピトー選手(フランス)が良いフリーを見せてくれたりと、若手選手の活躍もまぶしかったです。

「この選手の試合をナマで見られるのもこれが最後かな…」と感慨にふける合間に、「これから羽ばたいていく人」の演技を見られるとホッとしますね

では今日はここまでと致します。女子とアイスダンスの振り返りはまた改めて。

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