ミラノ・コルティナ冬季オリンピック(ミラノ五輪)、フィギュアスケート競技男子シングルショートプログラム(SP)は、2月10日(火)深夜2:30から翌朝6:44にかけて行われる予定です。
本記事では、男子シングルSPに出場する選手の滑走順情報および、注目選手情報と見どころを滑走グループ順にまとめました。
男子SP滑走順情報
滑走順は、ワールドランキングごとに分けてその中での抽選です。
鍵山優真選手はイリヤ・マリニン選手の直後の最終滑走。三浦佳生選手は最終前グループの最終滑走、佐藤駿選手は最終グループの第一滑走となりました。
全選手のスタートリストはこちらから見られます。
名前の横の+ボタンを押すと、試合前は予定構成が、演技終われば各要素ごとの点数が表示されます。
男子SPスタートリスト(顔写真入りオリンピック公式サイト版)
※上記ページ下部に演技予定時刻(現地時刻)も記載したタイムスケジュールPDFリンクあり
下記のISU版リザルトページにも同じPDFが Time Schedule(PDF) 欄から見られます
スケジュール、滑走順、順位、採点表等へのリンクが網羅されたページは下記のリンクからどうぞ。
ミラノ五輪2026フィギュアスケート競技リザルト(ISU版)
世間にはあまり知られていない注目選手情報
ここからは、「私のおすすめ注目選手たち」の情報を紹介します。
後半グループの選手は知名度の高い選手が多いので、まずは第1・第2グループに登場する選手を厚めに紹介します。
なお、ここで取り上げる基準は「世間の注目度」と「私個人の好み」です。
第1グループ
第1グループからは3人を取り上げます。うち2人が使用曲の「著作権」に振り回されています。
メダル候補 ピョートル・グメンニク選手(AIN ※ロシア)
いきなりメダル候補が第1グループ第1滑走で登場します。
ロシアからAIN(中立アスリート)として出場する、ピョートル・グメンニク選手です。国際大会に長らく出ていないためワールドランキングそのものを持っておらず、早い滑走順となりました。

彼が最近出場した国際大会は、昨年9月のミラノ五輪最終予選のみです。
この試合での彼の印象は、下記の記事に詳しく記しています。

フリーでは4回転ジャンプを4種類・計5本跳べる構成に加え、セカンドループジャンプも組み込めるグメンニク選手は、ジャンプがうまくはまればメダル獲得の可能性がかなりあります。「ジャンプだけ」の選手でもなく、バレエで培われた所作の美しさや表現力も備えています。
彼が今季演じてきたSPは「Perfume: The Story of a Murderer」(映画「パフュームある人殺しの物語」)。
しかしこの曲が著作権関係で五輪での使用が許されず、現地入りしてから「ワルツ1805」に変更することを決定したと報じられています。彼はこの問題を事前に把握しており、過去のSP衣装を複数持って現地入りしていました。

1年間滑り込んできたプログラムを急遽変えなくてはならないというのは、選手にとっては悪夢のような状況でしょう。果たして、これがどう影響するのか?
「ブレード刃こぼれ問題(新情報あれば随時更新予定)」もそうですが、こういう外野の影響がない状態での実力勝負を見たいのに…ととても残念です。
ユニークな「ミニオンズ」 トマス=リョレンス・グアリノ・サバテ選手(スペイン)
スペインのトマス=リョレンス・グアリノ・サバテ選手のSPは映画「ミニオンズ」が題材。CS大会で初披露されたときからフィギュアスケートファンの間では大評判でした。(振付はなんとブノワ・リショーさん)
「彼が五輪でこれを演じたら、きっと世間で話題になるだろうな」と楽しみにしていた私。
しかし、五輪が始まる前の2/2に日本でこんな報道がされて驚きました。見出し見た時点で「サバテ選手じゃん!」とわかりましたからね。

この件は国内外で報道されて、五輪で「ミニオンズ」プロを見るのを楽しみにしていた各国のフィギュアスケートファン達が激しく反応。

過去のSP演技に著作権問題が発生しない音源(「ボレロ」など)をかぶせた動画が出回ったり、騒動を楽しんでいるかのような向きもありましたが、「あんな楽しいプログラムを見ることができないなんて。半年以上試合で披露し続けてきているのに何で今頃」と多くのファンが猛抗議。
すると、難色を示していた関係者も態度を変え、無事使用できるめどがついたと報じられています。彼はこの著作権処理に追われっぱなしだったようなのでどこまで練習が積めているのかが若干不安ですが、一般視聴者にも是非楽しんでほしいですね。

この「ミニオンズ」プログラムがステップのところがとても面白いんですが、今まで私が見た演技はどれもジャンプがうまくはまっていません。今回は転倒なしで観てみたいです。楽しい系のプログラムなのでやはり軽やかにジャンプを決めてほしいです。
海外ファンには広く大人気! ドノヴァン・カリーヨ選手(メキシコ)
3番滑走は、私が何度もこのサイトで書いているドノヴァン・カリーヨ選手。ショッピングセンターのリンクから世界に出て行ったスケーターです。
メキシコから北京五輪に初出場した際に世界中にファンを増やした彼ですが、日本メディアは彼の情報をあまり伝えてくれず、日本国内ではブレイクせずじまい。
彼の経歴や魅力については、2023モントリオールワールドで彼の演技を初めてナマで観た際に詳しく書いています。興味のある方はどうぞ。

ボストンワールドでのSPでミスが出てしまったため、ミラノ五輪代表枠を掴むための過程もドラマチックでした。興味がある方はこちらもよろしければ。

入賞が狙えるような実力がある選手ではないですが、大変魅力的な演技をする選手なので注目してほしいです。
第2グループ
第2グループからも3名を紹介します。
台湾から初出場の若手 ユーシャン・リー選手
第2グループ1番滑走は、台湾から初出場するユーシャン・リー(李宇翔)選手。彼も私の大好きなより多くの人に注目してほしい選手です。(台湾のフィギュアスケート選手の五輪出場は28年ぶり)
私がいつ頃から応援しているか&彼の経歴について綴っているのは、こちらのボストンワールド観戦記。

昨年9月のミラノ五輪最終予選では、4回転ジャンプを封印してトリプルアクセル1本の構成で挑み、代表枠を勝ち取りました。その時のことは下記の記事に詳しく書いています。
(ちなみにこの記事の後半は、第1グループに出るドノヴァン・カリーヨ選手についても語っております)

我が家の「ロイドさん」ことスティーブン・ゴゴレフ選手(カナダ)
2番滑走のスティーブン・ゴゴレフ選手(カナダ)は我が家ではアニメ(コミック)「スパイファミリー」のロイド・フォージャーさんと呼ばれています。団体戦のときのスーツ風衣装の色がグレーから黒に変わっていて、ロイドさん風味が少し薄れました。個人戦ではどちらの色を着て来るでしょうか。

戦地の故郷を想う キリロ・マルサック選手(ウクライナ)
3番滑走のキリロ・マルサック選手はウクライナの選手。私が好きなフィンランドのヴァルター・ヴィルタネン選手(医師と兼業スケーターでスケオタには有名)たちのいるクラブで練習しています。マルサック選手のコーチはヴィルタネン先生の奥様です。
彼の拠点リンクは爆撃で破壊されました。そんな中、国外に退避している自分に悩みながらも練習を続けてきたこと、今季のプログラム曲「Fall On Me」をウクライナにいる父が選んでくれた理由などが下記の記事に書かれています。毎日新聞が読める方でしたら、おすすめの記事です。

後半グループでの注目ポイント
第3グループから最終の第5グループには、著名な選手が増えてきます。
ここからは、選手自身の紹介というよりも各グループでの見どころを紹介していきます。
ベテラン男子×個性的な若手&中堅が集合した第3グループ
第3グループは、昔からのフィギュアスケートファンにはグッとくるメンバー構成です。
1番滑走がボーヤン・ジン(金博洋)選手(中国)、4番滑走がチャ・ジュンファン選手(韓国)、6番滑走がデニス・ヴァシリエフス選手(ラトビア)です。
その間に挟まるのが、超個性的なプロが魅力的なウラディーミル・ラトヴィンツェフ選手(アゼルバイジャン)、端正な滑り&情熱的なステップが魅力だが、たまに大崩れしてハラハラさせるアンドリュー・トルガシェフ選手(米国)、伸び盛りのさわやか若手のアダム・ハガラ選手(スロバキア)です。
濃いベテランに挟まれても負けなさそう?な個性の持ち主たちです。
メダリストが出てもおかしくない、第4グループ
第4グループ演技開始前の6分間練習が始まるのは、午前5時12分ごろ。
ここから表彰台・入賞の可能性が高い選手たちが数多く登場してきます。
団体戦表彰式に出たイタリア勢 マッテオ・リッツオ選手&ダニエル・グラッスル選手
1番滑走のマッテオ・リッツオ選手(イタリア)は先の団体戦フリーでイタリア銅メダルを決定する好演技を見せました。3番滑走のダニエル・グラッスル選手(イタリア)も団体戦SPに出場し、例の表彰台に乗っていますのでふたりともブレードの調子が心配されます。
ただ、グラッスル選手は「特に問題なく練習できている」とのインタビューが日本の記事で紹介されていました。リッツオ選手も経験豊富な選手だけに、大きな混乱にはならないと思われます。

ちなみにダニエル・グラッスル選手は名古屋グランプリファイナル(GPF)で4位、フリーでは鍵山優真選手・佐藤駿選手を上回る2位という好演技を見せています。
あの時のように全ジャンプが回転不足なくはまれば、メダル獲得の可能性は十分にあります。

アレクサンドル・セレフコ選手(エストニア)
2番滑走のアレクサンドル・セレフコ選手(エストニア)は、フィギュアスケートファンには有名なハンサム兄弟スケーターの兄ですが、彼はこの放送で世界中に女性ファンを増やすのではないかと予想しています。SPのプリンスの曲が著作権に問題なく無事使えていれば、落ちる人が増えそうかなと(笑)
彼のイケメン度がわかる写真をInstagramで探してたら、下記の投稿の4枚目写真で、胸元に五輪マークのタトゥーらしきものを入れているのを発見しました。。
2月2日の投稿ですから、兄弟での五輪代表争いに決着がついてから入れたんですかね?どうでもいいことですが気になります(笑)
よくも悪くも爆発力の高いスケーター達が集合
第4グループ後半の3名は、ルーカス・ブリッチギー選手(スイス)、ケヴィン・エイモズ選手(フランス)、三浦佳生(かお)選手。彼らは前述のダニエル・グラッスル選手同様、いずれもポテンシャルがかなり高いです。ミスなく演技を終えられれば、メダルに手が届く可能性があります。
しかし、上記に挙げた4人は、調子の乱高下が激しいことでも知られています。ルーカス・ブリッチギー選手はこの中では乱高下の幅が小さめですが、他3人は崩れるときはとんでもないくらい崩れるので、どんな試合でもハラハラさせられます。
でも、決まったときの演技の爆発力は最高です。見ている側の感情もアップダウンが激しくなるので、ファンが深くハマりやすいタイプの選手達です。
特にケヴィン・エイモズ選手は団体戦と同様しっかりまとめた演技をして、欧州選手権のような「SP落ち(成績下位でフリー演技に進めなくなること)」だけは本当に回避してほしいです。五輪を見る視聴者に是非、傑作のフリー「ボレロ」を披露していただきたい。

他の3名(グラッスル選手とブリッチギー選手と三浦佳生選手)は、万一大きなミスが出たところでSP落ちの心配はまずないと思うので、そこの心配は不要かなと思います。
今回、三浦佳生選手はSP直前になって靴のトラブルが出ているのが心配材料ではあります。

ですが過去の試合を振り返ると、何か課題を抱えている時ほど集中力を発揮してきた選手でもあります。佐藤駿選手同様彼もこれが初めての五輪、いい演技ができることを期待しています。
「メダル候補筆頭格」が集合した第5グループ
最終グループの6分間練習が始まるのは、午前5時57分ごろから。
文字通り「メダル候補」が集まっています。
佐藤駿選手と鍵山優真選手
佐藤駿選手は1番滑走、鍵山優真選手はイリヤ・マリニン選手(米国)の直後の最終滑走(6番目)です。
金メダルに少しでも近い位置につくためには、SPで確実に高得点を出しておきたいところ。二人とも今季のSPは比較的安定しています。ジャンプは勿論のこと、スピン・ステップの細かいレベルを限界まで上げて、100~110点を目指したいところ。
フリーでは、鍵山優真選手は4回転フリップを投入すると早々に宣言しています。

佐藤駿選手は団体戦直前まで4回転フリップ導入を考え、実際に練習では跳んでいました。

4回転フリップも入れた攻めたジャンプ構成にしてくるのか、ジャンプ構成はそのままでスピンステップのレベル獲得に注力してくるのかは注目しています。
団体戦表彰式で刃こぼれしてしまったブレードの状態が気になりますが、表彰式に出ていたイタリアやアメリカの選手も同じ条件です。突発トラブルにどう対処できるかという能力も併せて問われる試合となりそうです。
アダム・シャオ・イム・ファ選手(フランス)
彼も、「よくも悪くも爆発力の高いスケーター達」のひとりです。調子が悪いときはとんでもなく崩れるが、いざ「ハマる」ととんでもないパワーを発揮します。

総合300点を超えるポテンシャルを持っているので、メダル獲得の可能性は十分にあります。しかしながら今季は一度もまとめた演技ができておらず、欧州選手権も出場を取りやめたので現在の調子がよくわかりません。
公式練習情報はあまりあてにならないので、今大会のアダム・シャオ・イム・ファ選手は、何が起きるかわからない「ビックリ箱」のような存在となっています。
個性的なプログラム&衣装にもご注目を。おそらく解説の町田樹さんが力を入れて解説してくれるかと思います。
ニカ・エガーゼ選手(ジョージア)
先月の欧州選手権からジャンプ構成を上げてきて、フリーで4回転ルッツを含む4回転4本構成に挑んでいます。欧州選手権ではこの構成で大きなミスなくまとめることができて、優勝しました。他選手の状況次第ではメダルの可能性もありえます。

しかし、先日の団体戦では実力を発揮しきれず。だからこそ、個人戦では本来の実力を発揮してほしいという想いがあります。
ちなみに団体戦でSP・フリーを連投した男子シングル選手は彼とイリヤ・マリニン選手とスティーブン・ゴゴレフ選手の3名。彼はもともとあまりスタミナのあるイメージがなく、ジョージアの選手は団体戦にピークを合わせていたとみられているので、この中では個人戦の調子が最も心配なのですが、どうなるでしょうか。
ミハイル・シャイドロフ選手(カザフスタン)
ミハイル・シャイドロフ選手(カザフスタン)は、イリヤ・マリニン選手につぐ超高難度のジャンプ構成が組める若手です。昨年のボストンワールドでは恐ろしいぐらいにジャンプが決まり、ミスが出てしまった鍵山優真選手を上回って銀メダルを獲得しました。

ミラノ五輪メダル候補筆頭に躍り出たはずだったのですが、今季は調子が上がり切っていません。
ジャンプの調子がよければ大量の技術点を叩き出せるのですが、「回転不足」を取られやすいためジャッジの回転不足取り締まり傾向にも左右されるので、どうなるかが読めない選手です。
団体戦に全く出ることなく挑めるので、ピークをうまく合わせられれば活躍する期待は持てます。
ジャンプ主体の選手は私の好み路線からは外れているのですが、彼は妙な個性があって割と好きな選手です。彼の魅力を五輪会場で炸裂させてほしいと願っています。
「過去最強」の王者 イリヤ・マリニン選手(米国)
オッズメーカーによるとイリヤ・マリニン選手の金メダル確率は99.01%。ここまで優勝を確実視されている存在はそうそういません。これがどうメンタルに影響するでしょうか?

名古屋GPFで7本の4回転を全て成功させてフリー238.24と世界最高得点を叩き出したのは偉業でした。しかし、それ以降メディアやフィギュアスケートファンの間で彼への期待とやっかみが混在してきている感はあります。
メディアに注目されまくってあれこれ言われたい放題になりがちな五輪。イリヤ・マリニン選手もその洗礼を受けているようです。
団体戦でジャンプ構成を下げていた理由
彼は他の試合でも、試合当日までは跳ぶジャンプの本数を抑制している感があります(公開されている練習だけでそうしているのかもしれませんが)。
個人戦にピークを持って行くために、また彼の場合団体戦にMAX構成で挑む必要はないため、団体戦で構成難度を下げて来ることは予期できました。

ただ、その難度を下げた構成で思わぬミスが出てしまったのは意外でした。中1日で挑むSPではどこまでピークを上げているでしょうか。
個人戦でのジャンプ構成、どこまで攻めるか?
来季からはプログラム内で跳べるジャンプの本数が削減されるため、今季は「フリーで4回転を7本跳ぶ」というのが彼の目標ではないかと推測されていました。
しかし、彼は昨年の名古屋GPFでそれを実現。

記録は樹立済み。「五輪でもその記録を」と強くこだわる必要はありません。
4回転の本数を増やすほど、回転不足ジャンプが増えてGOE(加点)が減り、「跳び損」になってしまうリスクは上がります。「ジャンプの質に影響を及ぼさない適切な本数」への調整が必要です。
ただし、余程不調でない限り「五輪での4回転アクセル初成功」は狙っていくだろうと思います。
彼の最大の強みは4回転アクセルを跳べることではなく、後半に超高難度のコンビネーションジャンプを3連発で組んでいることだからです。
他選手が彼を上回れる条件は?
つまり、イリヤ・マリニン選手は万一4回転アクセルを転倒したとしても、後半のジャンプが決まれば60点ぐらいを稼げてしまう。こうなると他選手は追いつくことがまず不可能です。
ただ、団体戦のフリーのように後半のコンビネーションジャンプでミスが出ると、リスクの高い構成を組んでいるだけにダメージは大きいです。

素人ファンのひとりである私の予測では、他の男子選手に金メダルのチャンスが生まれるのは、
1)4回転アクセルではなく後半のコンビネーションジャンプにミスが複数出たとき
2)ほぼ全てのジャンプが回転不足になってしまったとき
このふたつのケースに限られるでしょう
さいごに
もう今日の深夜2時台から男子SPが始まるんですね。始まってから毎日が飛ぶように過ぎていきます。
さすがに午前2時から朝までずっと起きているのはきついので、今回も早朝に起きて追いかけ再生をしようと思っています。最後の方は生放送に追いつきたいと思っていますが、そう上手くいくかな?
男子フリーが行われるのは、2月14日(土)午前3~7時ごろです。(金曜深夜)
選手たちが心残りのない演技をできますように。

