ミラノ五輪フィギュア男子フリー|王者マリニンの「想定外」と鍵山・佐藤ダブル表彰台に揺れた朝

夜、ライトに照らされる五輪のモニュメント

ミラノ・コルティナ冬季オリンピック(ミラノ五輪)・フィギュアスケート競技男子シングルのフリーが終わりました。

あまりにも予想外の展開に、朝からずっと放心状態が続いています。

今回は、男子フリーに揺すぶられた、今の気持ちだけを綴ります。

目次

男子シングルの最終順位

まさかの結果でした。

以下が、ミラノ五輪男子シングルの最終結果です。

ISU公式リザルトより引用

入賞者(1~8位)と日本人選手の結果は下記の通りです。(敬称略)

1位:ミハイル・シャイドロフ(カザフスタン)
2位:鍵山優真
3位:佐藤駿
4位:チャ・ジュンファン(韓国)
5位:スティーブン・ゴゴレフ(カナダ)
6位:ピョートル・グメンニク(AIN※ロシア)
7位:アダム・シャオ・イム・ファ(フランス)
8位:イリヤ・マリニン(米国)

(略)
13位:三浦佳生

普段フィギュアスケートを見ない一般の日本人視聴者は日本人男子のダブル表彰台で大盛り上がりだったかもしれません。

でも、選手達にそれぞれの思い入れがあり、皆に頑張ってほしいと願っていた身にとっては、最終グループ後半の流れは悪夢のようでした。

SP1~3位の実力者全員がフリーで大崩れするというとんでもない展開

この多種4回転時代、最終グループの誰かが崩れることは覚悟していました。でも、ここまでの事態は想像だにしていなかったです。

違う、こんな試合が見たかったんじゃない…と何度も思いました。

第1~3グループまでの素晴らしい流れ

今大会、第1~3グループはいい演技の選手も多くて充実した気持ちで観戦できていました

私が好きな選手たちはほぼ全員好演技。もちろん中には痛いミスが出てしまう選手もいたけれど、本来の実力とかけ離れた結果になった選手はいなかったように思います。

特に、最終前グループ(第3グループ)は熱かったです。

ピョートル・グメンニク選手(AIN)は、最後のルッツ‐ループのコンビネーションジャンプこそセカンドがダブルになりましたが、何と4回転5本構成を完遂

続くキリロ・マルサック選手(ウクライナ)は複数ミスが出てしまって残念でしたが、総合では今季の平均スコアと同等の点数は出せました。

その後登場したスティーブン・ゴゴレフ選手(カナダ)はPBを約15点も更新する驚きのクリーン演技。

佐藤駿選手の「火の鳥」は、後半のトリプルルッツの着氷乱れこそあったけど、それ以外はジャンプノーミスでまとめ、入賞が期待できる点数まで挽回!

その後登場した、「大崩れが心配な選手」の筆頭格であるアンドリュー・トルガシェフ選手(米国)とケヴィン・エイモズ選手(フランス)。どちらもミスは出てしまったものの、プログラム自体はまとめきれて納得した表情で演技を終えられました。

男子シングルは、高難度ジャンプを複数回入れるためにクリーンな演技になることは少なく、大崩れしてしまう選手も多くなりがちです。その割には今回は大きなミスが比較的少ない印象でした。

「いい顔で演技を終えられる選手がこんなに多いなんて、今回の男子シングルは嬉しい試合展開だな」と思っていました

いいムードが続いていた最終グループ前半

最終グループ前半もその流れは続いていました。

チャ・ジュンファン選手(韓国)が2本目のジャンプの4回転トゥループで転倒して壁に激突したときは物凄く心配しましたが、激突直後のルッツ‐ループを綺麗に下りたのにはしびれました。

演技終了時には、「あの転倒だけは惜しかったけど、素晴らしい演技だった」と称えられる演技でした。
(その後「あの転倒がなければ、SPの採点があんなに辛くなければ…」とあれこれ思いはしましたが)

続くミハイル・シャイドロフ選手(カザフスタン)の演技は、ただただ驚きました。

ショートプログラム(SP)で調子がよさそうだったので、いいフリー演技が見られそうだとは期待していましたが、まさかここまでの神演技を見せてくれるなんて

昨季のボストンワールドの再来、いやそれ以上?という演技で驚き。ここまで高難度ジャンプが面白いくらいに入ると、最後のあのステップすら勝利の行進のようで。

「これはSP1~3位の誰かにミスが出たら、表彰台の一角に入りそうだ」と確信しました

続くダニエル・グラッスル選手も欧州選手権のような大崩れはなく、ほぼクリーンな演技。

一部のジャンプに着氷乱れや回転不足があり点数は伸び切らずでしたが、母国イタリアで胸を張って終えられる演技ができました。

最終グループ後半3名の演技で暗転

そこからの3選手の演技については、記憶をもう一度辿るのがきつかったです。録画を見返すこと、あるかな…

SP2~3位が双方崩れる、想定外の展開

アダム・シャオ・イム・ファ選手(フランス)

アダム・シャオ・イム・ファ選手の演技前、正直言って私は少し不安を抱えていました。SPにルッツを組み込んでいなかったのは本人にはルッツに不安があるのだろう。だとすると2回連続で「神アダム」が見られる可能性は正直厳しいかもな…と覚悟していたからです。

冒頭の4回転ルッツで転倒してしまった時点で、色んなものが狂い始めました。4回転は4本構成。残り3本は入るには入りましたが、着氷が綺麗に決まったのは4回転トゥループ-3回転トゥループのコンビネーションジャンプだけ。

ステップでは相変わらず魅せてくれましたが、ジャンプの乱れがこれだけ多いと、その凄さが伝わり切りません。

「観客を圧倒する凄いプログラムになる可能性があったのに…」と残念でたまりませんでした。

鍵山優真選手

鍵山優真選手は、冒頭の4回転サルコウでまさかの着氷乱れ。そこから歯車が狂ってしまったようで、次の4回転フリップはいったん着氷したように見えたものの、こらえきれず転倒に。

その後も3連続ジャンプの最後がダブルになったり、着氷が乱れたり…その焦りからか、表情も滑りも固い。

「鍵山優真選手の滑りはこんなもんじゃないんです!もっとすごいんです!」

って世界中に叫びたくなるようなもどかしさに襲われました

「この調子だと、後半のルッツ-ループとトリプルアクセルも乱れはしないか」とかなり身構えたのですが、そこはきっちり決めてきました。

それでも私は演技終了直後は「これ…佐藤駿選手の総合スコアを下回りかねないのでは?」とすら思っていました。

それでも暫定2位に踏みとどまれたのは、これだけ全体的に乱れがありながらもスピン・ステップのレベルを全てレベル4で揃えて来たところでしょう。

メダル確定に鍵山優真選手は安堵したようですが、笑顔はありません

現地練習では絶好調と伝えられてはいましたが、私は楽観視はせず「何かミスは出るだろう」と覚悟はしていました。

でも、例えジャンプで転倒や抜けが1~2回ぐらいあっても、溌溂とした「トゥーランドット」を見せ、観客の大喝采に包まれて演技を終えるだろう彼の姿を期待していたのです。

メダル確定はおめでたいことだというのに、演技直後のショックはとても大きかったです。

王者の「まさか」

最終滑走のイリヤ・マリニン選手の演技は、まさに悪夢でした。

団体戦からの過酷なスケジュールからいって、4回転アクセルが転倒に終わる可能性は考えていました。

なのに、彼のジャンプの回転がまさか抜けてしまうなんて…

試合でのジャンプの「抜け」をほとんど見た記憶がない選手なのに

4回転ジャンプでの「転倒」は、減点はされるものの基礎点自体が高いので、跳んだジャンプの基礎点がいくらかは入ります。

一方、「抜け」だとほとんど点数が入らないため、転倒よりも手痛いミスになることが多いです。

でも、彼は後半の高難度コンビネーションジャンプがハマれば大量に得点を稼げるから、そこで挽回できる。結局誰も総合点300点を超えられていないし、金メダルは取れるはずーと思っていたら…

なんとループもダブルに…

4回転アクセルのミスがあったから、私はここは大事を取ってトリプルに変えるかと思ったのですが、4回転ループを狙いにいったのでしょうか?

そこから先を見守るのは、とてもつらかったです。

あんなに鉄板だった後半の4回転ルッツで転倒、団体戦フリーと同様またしてもセカンドジャンプを付けられず痛恨のREPEAT判定(基礎点が70%に減点)。

次の4回転トゥループ~トリプルフリップという超高難度コンビネーションを決めたのは、王者の意地を感じさせました。

なのにそこで力を使い果たしてしまったのか、その次のサルコウがまたもやダブルに抜け、バランスを崩し再度の転倒。3つ予定していた超高難度コンビネーションジャンプは一つしか入りませんでした。

私、過去記事で「崩れる王者の姿は見たくない」って書いていたのに…

優勝を絶対視されていた王者の結果

4回転の回転「抜け」3回、転倒2回。

マリニン選手が「抜け」と「転倒」の両方をするだけで珍しいのに、これは一体なにごとですか…

演技終了直後に彼が一瞬見せた、子どもの泣き顔のような表情は忘れられません

ネイサン・チェン選手の平昌SPや浅田真央選手のソチSPは本当に辛かったです。それでも、あの二人にはフリーが残っていました。

マリニン選手のミラノ五輪の演技は、これで終了。
採点を待たずとも、メダルが彼の手から滑り落ちてしまったのはわかりました。

彼が奮闘してつかみ取った団体戦金メダルはあります。でも、こんな結果を彼が望んでいたはずはありません。

日本男子ダブル表彰台にも複雑な想い

マリニン選手の点数が発表される前に私は「これで日本男子が3大会連続ダブル表彰台となる」と悟りました。

でも、この時点では全く喜べなかったです。

イリヤ・マリニン選手は私好みの滑りのタイプとは異なるため、特に力を入れて応援してきた選手ではありません。

でも、彼がこれだけのジャンプを身につけるのに途方もない努力をしてきたこと、ジャンプ以外の技術や表現も磨こうと日々研鑽していることは毎年の試合を見ていればわかります。

ライバルへのリスペクトも思いやりもある人物で、フィギュアスケート競技の発展を願っている。今の男子シングル界のトップとして一目を置いている存在です。

その彼がこんなことになるなんて

彼の演技で大きなミスが1~2つ出て、完璧な演技をした鍵山選手が勝つーという状況ならば私の感じ方も違っていたでしょう。何とも言えない気持ちでした。

メダル獲得&いい演技をした選手たちに祝福を

佐藤選手の銅メダルに大喜びする鍵山選手

でも、その複雑な感情は、佐藤駿選手の銅メダル確定を知って大喜びする鍵山優真選手の姿を見たら、いったん消えました。

佐藤駿選手は、「人事を尽くして天命を待つ」が実現した銅メダル。
鍵山優真選手は、確かな技術の支えがあったからこそ取れた銀メダル。

どちらも自身の手でつかみ取ったメダル。誇ってほしいです。

金メダル確定したシャイドロフ選手へのマリニン選手の祝福

「リーダーズチェア(暫定首位席)」に座らされていたミハイル・シャイドロフ選手も、苦しむ王者の姿に心を痛めていた様子でした。

沈鬱な表情を浮かべていた彼は金メダルを獲得したとわかったとき、驚きに息を呑んでいました。

そこにすかさずハグをしにいったイリヤ・マリニン選手の姿は胸を打ちましたね。

あんな経験をした直後に、ライバルを思いやり、リスペクトする気持ちを見せられる。

この後ようやくミハイル・シャイドロフ選手にも笑顔がこぼれました。

メダリストの皆さん、おめでとう

もし銅メダルが佐藤駿選手でなかったら、鍵山優真選手はここまで喜びをあらわにできなかったかもしれないなと思います。

練習では好調だっただけに「もっといい演技ができたかもしれない」という想いや、「金メダルを獲得する絶好のチャンスを逃してしまった」という悔しさに襲われていたかもしれません。私自身、その想いが今も捨てきれません。

でも、こうしてジュニア時代から切磋琢磨してきた二人が表彰台に上がれたこと。三浦佳生選手もフリーではいい演技ができたこと。悔しさや後悔はいったん忘れ、表彰台で楽しそうにしている二人の姿を見られてよかったです。

ミハイル・シャイドロフ選手も昨年のワールド銀メダル以来、国内の期待に押しつぶされそうになっていました。それを思うとこの結果は嬉しいです。

メダリストの皆さん、本当におめでとうと祝福したいです。

でもどうしても、どこかにほろ苦い気持ちは残りますね…

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夜、ライトに照らされる五輪のモニュメント

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