先月の「世界フィギュアスケート選手権2026(プラハワールド2026/WC2026/世界フィギュア2026)」アイスダンスについて、今さらながら振り返りをまとめます。
アイスダンスは直前棄権や採点をめぐる議論などのネガティブな情報が続いたことで、視聴が後回しになり、一部のみの視聴にとどまっていました。また、「来季ワールドではエキシビションがなくなるかもしれない」という噂もあり、振り返るタイミングを逃していたのが正直なところです。
今回はそうした背景も含めつつ、印象に残った出来事や演技、採点への抗議結果に抱いた疑問など、気になったポイントを整理していきます。
世界フィギュアスケート選手権2026 リザルト
※出場者リスト・スケジュール・採点結果などの一覧です
棄権と採点問題が重なったアイスダンス
私は直前の男子フリーをフル視聴していたので、アイスダンスFDについてはライブ視聴は見送り。本来は1~2日以内に視聴し終えるつもりだったのですが、視聴前に気持ちが沈む情報が相次ぎました。
トゥルベル棄権でフィンランドは来季出場枠「1」確定
一つは、「トゥルベル」ことユーリア・トゥルッキラ/マティアス・ヴェルスルイス組(フィンランド)の棄権です。
RD(リズムダンス)で「ピリハラ」こと折原裕香/ユホ・ピリネン組(フィンランド)に大きなミスが出てしまってRD落ちしてしまっただけでも残念だったところへの追い打ち。来季枠を決める順位合計のルール上、FD(フリーダンス)開始前にフィンランドのアイスダンスは来季ワールド1枠が確定してしまいました。

来季のワールドはフィンランド開催だというのに…
「トゥルベル」は今季前半はマティアス・ヴェルスルイス選手の怪我で欠場続きで、今年に入ってからの試合復帰。怪我明けながらも欧州選手権8位、ミラノ五輪12位と健闘しましたが、まさか最後のワールドでこんなことになるとは。
もともとヴェルスルイス選手がミラノ五輪後に背中を痛めていたそうです。ちなみにシーズン前半の怪我とは別だとRD後のインタビューで語っていました。FD棄権後の報道によるとRD終了後に悪化し、腰を曲げることすら困難な状況になってしまったとのこと。
棄権理由詳細を伝えるフィンランドの記事はこちら
私フィンランドの2組とも好きなんです。ピリハラがFD進出を逃した時点で厳しくなっていたとはいえ、1枠が早々に確定してしまったのは悲しかったです。彼らの欠場が判明したのはFD開始直後、本当にギリギリの欠場決定でした。
参考までに来季ワールドのアイスダンス出場枠は次のようになりました。チェコも何とか2枠確保しています。
- 3枠:フランス、カナダ、アメリカ
- 2枠:イギリス、スペイン、リトアニア、ジョージア、チェコ
フィアギブ(ライラルイス)のリフト減点の波紋
もう一つは、「フィアギブ(ライラルイス)」ことライラ・フィアー/ルイス・ギブソン組(イギリス)の冒頭のリフトにシーズン初めての減点がついたこと。
この2点のマイナスがなければ、銅メダルを獲得していたのは彼らでした。(3位との点差はわずか0.22)

私は今季初めてこの演技を観たときからずっと、「このリフトは女性を頭上に持ち上げてるのにアイスダンスの規定違反にならないの?」と不思議でした。しかし今まで減点がついたのを見たことがなかったので、「今のルールではOKなのね」と思っていました。
なのに急に「持ちあげている腕の肘が伸び切っていたから減点されたのでは」との推測を聞いたところで…正直スロー映像を見ても違いがよくわからなかったです。肘部分の布はややゆったりしていて肘の形ははっきり見えなかったですし。

アイスダンスはリフトの動きや秒数などの細かい規定などがとても多く、真剣に観始めると神経を削られる競技だと私は思っています。
なので素人目線で楽しむように努めてきたのですが…このようにメダルが左右されるような判定が出て来ると一気に気持ちを冷やされますね。演技を観るのは好きなのに。
試合後は、イギリスのスケート連盟がこの判定に抗議する流れにまで発展しました。(その後の展開については後述します)
本人たちが観客にもわかるようなミスをした場合であれば、まだ受け入れられるんですが、今回はそうではありません。ミラノ五輪ではミスが出てしまった彼らには、満足する演技をして笑顔でシーズンを終えてほしいという想いが強かっただけに、この結果を知った上で演技を見るのはきつかったです。
ワールド後に相次いだカップル解散
また、「アリサウ」ことアリソン・リード/サウリウス・アンブルレヴィチウス組(リトアニア)の演技後の様子が「まるでこれが現役最後の演技かのようだった」という感想を目にしたのもありました。そういう話を聞くと何だか彼らの演技を観るのも気が進まず…。そうこうしている間にイギリスの組(アナスタシア・バイパン=ロー/ルーク・ディグビー組)の解散報告が出たり。
「ギニャファブ(シャルマル)」ことシャルレーヌ・ギニャール/マルコ・ファブリ組(イタリア)のように思いがけず来季続行情報が入ってきたベテラン組がいる一方、カナダは複数組が解散表明していますからね。(ワールド出場組ではありませんが、アリシア・ファブリ/ポール・エアー組など)
さらにこの記事を公開準備している最中にハンナ・イム/イェ・クアン組(韓国)まで解散発表されたし…

やっぱり、スポーツの試合は新鮮な間に視聴しておかないといけないなと思いました。
ちなみに「アリサウ」のFD演技直後は確かに感極まっているように見えましたが、引退を決意しているとの確信までは得られませんでした。続行もありうるかなと思っていますが、どうなるでしょうか。演技直後のインタビューでは引退を匂わせるような発言はなしでした。
Allison REED / Saulius AMBRULEVICIUS 🇱🇹 121.00 / 200.66
— Golden Skate (@goldenskate) March 28, 2026
Allison on the performance:
“This was an interesting one. The arena here is very, very beautiful, but the whole thing looks exactly the same. And so starting off with a lift that has to go one way to set up the whole… pic.twitter.com/mLo8A3bxFc
アイスダンス演技の振り返り
ここからは、注目されていた演技をいくつか振り返ります。
うたまさが自己ベスト更新で19位
昨年、わずかな差でFDに進出できなかった「うたまさ」こと吉田唄菜/森田真沙也組。FD進出を目指しRDに相当力を入れて来たのか、RDは特に素晴らしい仕上がり。これだけの演技ができたならミラノ五輪個人戦に出させてあげたかったなと思いました。
ステップのレベルが取れるようになってきているので、あとはGOE評価をどこまで上げていけるか。RD15位、FD18位、最終19位でした。来季のステップアップを期待したいです。

上位勢の注目演技
スマディクの「デューン」2作目がFD2位
総合では5位だった、「スマディク」ことオリヴィア・スマート/ティム・ディーク組(スペイン)。
「デューン 砂の惑星」のテーマを表現したフリーの2作目で臨んだ今シーズン。1作目が大評判だっただけに同じ系統で2作目作るのはリスクがあったと思います。しかし、個性炸裂したリフトなどが注目を浴びここまで評価が上がってきたのは凄いですね。何とフリーのスコアは2位!
スマディクのFD演技部分の再生回数の山は、最終グループと同じぐらい高くなっていました。会場のスタオベを受けて本人たちが感極まっている姿も良かったです。来季はどんなプログラムで臨むのかが気になります。
パイポーが「嵐が丘」を再演
ミラノ五輪で渾身の「ヴィンセント」を披露し、これで引退かも…と覚悟していた「パイポー」ことパイパー・ギレス/ポール・ポワリエ組(カナダ)。ワールド出場だけでもちょっと驚いたのに、FDはまさかの過去名プロ「嵐が丘」を復活!
五輪シーズンのFDプロに、過去プロの中ではある意味「地味」ともいえる「ヴィンセント」を選んだことから、ファンからはさんざん「『嵐が丘』にした方がいい」と言われていた声を受けたのでしょうか?(そう思っていたファンもミラノ五輪の演技には感服した人が多いと思いますが)
いくら以前滑り込んだ過去プロとはいえ、短期で再び仕上げるのは大変だっただろうに、そのショーマンシップが嬉しかったですね。しかも終了後は「来季続行かも?」という噂まで出ています。
フルシゼ圧勝に感じた、競技としての課題
優勝はミラノ五輪金メダルの「フルシゼ」ことロランス・フルニエ・ボードリー/ギヨーム・シゼロン組(フランス)でした。

ミラノ五輪では圧巻の演技の中にもごくわずかな乱れがありましたが、今回はそれもなく、圧倒的なポイント差で優勝。RD・FDともにトップで、総合点では230.81、2位には20点近い差です。大ミスが起きることが少なく、技の完成度で競いあうアイスダンスでこの点差は、他の組にとっては絶望的です。
素晴らしい演技を観られること自体は大満足なのですが、ここまで点差が開いてしまうと、スポーツ競技として順位争いの楽しみが損なわれるのは否めません。今季躍進し、銅メダルを獲得した「ジンコレ」ことエミリア・ジンガス/ヴァディム・コレスニク組(米国)あたりがまだ伸びてくるかもしれませんが、1~2年で追いつけるような差ではない気がします。
現時点で唯一の対抗馬といえる「チョクベイ」ことマディソン・チョック/エヴァン・ベイツ組(米国)は、来季の進退についてはまだ発表していません。米国選手はフェイドアウト型引退が多いので、去就については明確な発表なしでそのまま行くかもしれません。
リフト減点抗議と「Field of Play」の壁
最後に、フィアギブ(ライラルイス)のリフト減点に対する、イギリスのスケート連盟の抗議について少し記録しておきます。
試合後に行われたイギリスのスケート連盟が抗議は、予想通り却下されました。
連盟が出した抗議声明はこちら

この過程はロイターやフォーブスなどでも報じられています。却下された理由を報道で読むとブルーになります。
却下された理由は、「抗議された点を検証したが、審判の判断が正しかったと認めたから」ではなく、「『Field of Play(競技中判断)』は再審不可」だからです。
つまり、フィギュアスケートにおいては競技中に判断されたことに対して、選手側が競技終了後に異議を申し立てて後で検証すること自体が認められていないのです。データの入力エラーであれば検証修正されますが、それも24時間以内。ビデオレビューは競技中にしか行われないのだと。
かねてから、体操などの他競技のように「選手側が審判の判定に抗議する手段」がフィギュアスケートには設けられていないことに疑問を感じてきましたが、ここまでとは…。
そもそも、この減点理由も不透明なままです。「肘が伸びていたことが減点理由では」というのは関係者やファンの推測にすぎず、審判からは何をもとに減点をつけたかの公式説明はありません。ジャッジの技術判断に説明責任が伴っていない現状は、現代のスポーツ競技として重大な課題を抱えていると思います。
2027ワールドはエキシビション廃止の可能性?
さいごに、エキシビションの話題を少しだけ。
実は3月末から「来年のワールドではエキシビションが無くなるかも?」という噂がフィギュアスケートファンの間で飛び交っています。
というのも、2027タンペレワールドの公式サイトに掲載されているスケジュールに、現時点ではエキシビションの予定が記載されておらず、選手たちとのミート&グリートを実施する予定だとの情報しか載っていないからです。

今後エキシビションの予定が追記される可能性はまだありますが、チケットは4月中に先行販売開始予定と案内されています。もしチケット販売開始時点でもスケジュールにエキシビションの予定が記載されていなかったら、来季ワールドのエキシビションが開催されない可能性が極めて高くなると言えるでしょう。
2024-25シーズンから複数のグランプリシリーズ大会でエキシビションが廃止されました。廃止がほぼ確実になった段階で、私もこのサイトで話題にしました。フィンランド大会はここ2年エキシビションを開催していないので、フィンランドの連盟がエキシビション開催に消極的なのかもしれません。

「ひょっとして、この前のエキシビションが最後のワールドエキシビションになっちゃうの?」という不安がある状態だと、アーカイブを全部見ようという気にはなれずに現在に至っています。
「な~んだ、心配して損した!」と心置きなく見られる状態に早くなってほしいと願っているのですが、どうなるでしょうか…。

