2025年フィギュアスケートのグランプリシリーズ(GPシリーズ)第5戦アメリカ大会(スケートアメリカ2025/スケアメ2025)が終了しました。
ペアと男子シングルのフリーでは大きく崩れる選手が続出しただけでなく、他のGPS大会に比べ厳し過ぎるのでは?と感じる判定が多い大会でした。フィギュアスケートファンの中でもスケアメの採点を巡っては試合後も議論が続いています。
GPS大会終了後は毎回各カテゴリで印象に残った演技を振り返ってきましたが、今回は、細かく語れる心境ではありません。
今回はまず、アイスダンスと女子シングルについて、私が納得がいかなかったポイントを整理したのちに、印象に残った演技を振り返ることにします。
「波乱の演技」が多かったペアと男子シングルについては、また改めます。
アイスダンスで納得がいかなかった点
私が採点で最も驚かされたのは、アイスダンスでした。
厳し過ぎない?と感じたレベル判定
私はアイスダンスのルールに詳しくないので、演技を見たところでステップのレベルを推測することはできません。専門知識のない、ただのライトファンです。
でも、長年競技を観ているので「この辺りのランキングの選手なら大体この位のレベルは出せる」ということは把握しています。

今大会では、RDの中盤あたりで「今回、レベル判定がやけに厳しくない?」と感じ始めました。
いつもはステップでコンスタントにレベル2を出せている人たちが軒並み1だったり、1すら取れずB(レベル1より下)がつくケースまで出てきたからです
2025GPSアメリカ大会(スケアメ)リザルト
※出場者リスト(Entries)、採点結果(Judges Scores)などの一覧です
今年のスケアメはシリーズ第5戦とあって、この試合が2戦目の組が数多くいます。前の試合では出来ていたことを、今回一斉にミスをしたとは思い難いです。
ライトファンの目からは、レベル認定基準がこの大会になって急に厳しくなったようにしか思えませんでした。何組かを今季のGPS1戦目のスコアと比べてみたのですが、ほとんどの組がレベルを複数個所で落としていました。
キス&クライで困惑した表情を浮かべる選手たちも
シングル競技で高難度ジャンプがダウングレードされた時の減点と比較すると、ステップのレベルが2が1になることでの基礎点の減少は少ないです。(さすがにB判定まで落ちると結構な減点になりますが)
また、アイスダンスはレベル判定よりも「加点をどれ程取れるか」が勝負を分けがちなので、加点を大きく取れる組はトップクラスはそこまで大きな影響は受けずにすみます。
しかし、演技した実感よりも点が伸び悩むため、キス&クライでは多くの選手たちが困惑するか、納得いかない表情を見せていました。これでは見ている側も今一つ気持ちが盛り上がりません。いい演技をした後にそれに見合う点が出て喜ぶ姿を見るのがファンとしての楽しみなのに。

厳しくするならシーズン初めから統一してほしいんですよね…
それなら「今季から〇〇の認定厳しくなったんだ」と納得できますから
ここまで大会ごとに基準が違うと、試合が素直に楽しめなくなります
順位に影響がなかったとしても…
全選手に均等に厳しい場合は、試合の順位そのものには大きく影響はしません。
しかし、GPS大会でのスコアは国によったら大規模国際大会派遣や代表選出基準になっています。来季GPSに出場できるかどうかの「当落線上」にいる選手にとっては、シーズンベストスコア(SB)の数点の差で運命を分けることもあります。そして、来季枠の有無が選手の進退を左右することもあります。
そのため、私は大会ごとに大きく採点基準が違うのは納得がいきません。私が2023NHK杯での採点に対して嘆いたときと全く同じことが、また起きたなと思いました。

2年前、強い腹立たしさを感じたあの試合の採点を思い出し、沈んだ気持ちになりました。
アイスダンスで印象に残った演技
沈んだ気持ちになりつつ演技を見ていたので、いつもほどは演技を楽しめなかったです。現地観戦なら暫定技術点表示ははっきり見えないから、演技そのものを楽しんで観られたかもしれませんね。
マディソン・チョック/エヴァン・ベイツ組(米国)
優勝した「チョクベイ」ことマディソン・チョック/エヴァン・ベイツ組のフリー衣装などが変わっていたことなど、本来ならもっと色々熱く語りたいこともあったのですが、そこまで語る気力がありません。
でも、彼らの技術とスピードは圧巻で、演技が始まったら採点云々は忘れてしまいました。これを名古屋グランプリファイナル(GPF)でナマで見られるかと思うとワクワクします。

彼らの演技はGPSと全米、ワールドとどんどん別モノに変化&成長していく過程が醍醐味だと思っているので、名古屋GPFでは「中間段階」を見られることでしょう。今季で引退の可能性が高いと思うので、たぶんそれが私が彼らの試合をナマで見るラストチャンスでしょうか?
ラジョラガ VS ロパブリ
2位には「ラジョラガ」ことマージョリー・ラジョイ/ザカリー・ラガ組(カナダ)、3位には「ロパブリ」ことエフゲニア・ロパレワ/ジョフレー・ブリソー組(フランス)が入り、「ラジョラガ」がGPF進出を決めました。

その結果、昨年GPF初出場だった「ロパブリ」は、ファイナル進出のチャンスがほぼ無くなりました。「ロパブリ」のFDビョークプロ、ちょっと気に入ってたので名古屋で見たかったな~いやラジョラガの「ホワイト・クロウ」も素敵ですけれど。
※理論的には可能性はゼロにはなっていないのですが…
「ロパブリ」が出場するには、最終戦・フィンランド大会で「フルシゼ」ことロランス・フルニエ・ボードリー/ギヨーム・シゼロン組(フランス)、「パイポー」ことパイパー・ギレス/ポール・ポワリエ組(カナダ)、「ジンコレ」ことエミリア・ジンガス/ヴァディム・コレスニク組(米国)の3組全てが表彰台を逃す必要があります。
なので可能性は限りなくゼロに近いですよね…そんな大惨事の大会は見たくないです
ロパブリ VS ロイテオ(フランスの五輪代表枠争い)
この大会は「ロイテオ」ことロイシャ・デムージョ/テオ・ル=メルシェ組(フランス)も出ていて、「ロパブリ」と「ロイテオ」というフランスの五輪代表枠を争う組同士の直接対決でもありました。
その結果、ロイテオはわずか6点ほどの差で4位。順当に「ロパブリ」が上回りました。

「ロパブリ」はこれでGPS2大会で表彰台に乗りました(どちらも3位)。フランスの五輪代表選考基準はよくわからないのですが、「フルシゼ」ことロランス・フルニエ・ボードリー/ギヨーム・シゼロン組とロパブリの2組になりそうですね。
その他気になった演技
アイスダンスで印象に残った演技挙げていくとキリがありません(笑)。一つあげるとすると、ブラウン兄妹の「ゴッドファーザー」はユニークな振付が多くてストーリーが見えて来る感じで楽しかったですね。四大陸選手権には出られるかどうか、注目したいです。
これだけ魅せられるプロを持っている選手が五輪やワールドに出られないという、米国アイスダンス勢の層の厚さを感じました。
女子シングルで納得がいかなかった点
現世界女王アリサ・リウ選手が優勝、渡辺倫果選手は3点差で銀メダル
女子シングルは、現世界女王のアリサ・リウ選手が214.27点でSP2位からの逆転優勝、SP首位だった渡辺倫果選手は210.96と首位に3.31点差で銀メダル。銅メダルにはアナスタシヤ・グバノワ選手(ジョージア)が、ララ・ナキ・グットマン選手(イタリア)を僅か0.40点差でかわして入りました。

配信視聴前に知った、採点への異論
フリーはゆっくり疑似ナマ視聴をするつもりが…
女子フリーは午前6~8時前、朝の支度でバタバタする時間帯の実施でした。
なので私は娘が登校したあとに、ゆっくり配信アーカイブを疑似ナマ視聴するつもりでいました。
しかし私は何を思ったのか、娘を送り出した後にうっかりX(Twitter)を開いてしまったのです。
私の目に飛び込んできたのは女子フリーのリザルト表示。誰がメダルで何点取ったかまで目に焼き付いてしまいました。

試合がどう展開するかわからないドキドキ感を味わうつもりだったのに「やってしまったー」と、ショック大!
ライブ視聴していたスケオタ勢には困惑の色が…
その前後に続く「え?何で?」と困惑する人たちの投稿まで更に目にしてしまい…スケオタ勢複数が驚くような採点だったらしいことも悟ってしまいました。
「そういうことなら、しっかり心の準備をしてから見よう」と、情報をある程度仕入れてからアーカイブ視聴をすることに路線変更。

しかしその結果、心の準備どころかモヤモヤがつのってしまい、昨日はなかなかアーカイブ動画を見る気になれなかったです。
(アイスダンスFDも同様になかなか視聴する気になれずでした)
採点結果に対し戸惑うファン達(海外の反応含む)
「日本人だから日本人選手びいきになって公平な目線で見られていないのかも?」と思い、私はここ数日、英語圏フィギュアスケートファンが集まる掲示板のやりとりを複数チェックしてみました。
でも、どこの掲示板でも最終結果が出た直後には困惑の声が複数出ていました。
多くの視聴者は「2本目のトリプルアクセルはアンダーローテーションかダウングレードになりかねないから減点大きくなりそう」と思ったでしょう。また、ISU公式配信の実況では演技後のリプレイの間に「4つのジャンプで回転不足チェックが複数行われていて、暫定技術点からはかなり減点されるだろう」と細かな説明をしていました。

それでも「渡辺倫果選手が上回るのでは?」と思った人は、海外にもかなりいたようです
ISU(国際スケート連盟)のYouTube公式チャンネルでの配信コメント欄はかなり辛辣でした。
この大会を放送している主要国からはVPNを使わない限りアクセスできないためか、「アメリカの連盟がホームの選手を特別扱いしている」といった陰謀論めいた主張が炸裂。優勝したアリサ・リウ選手は何一つ悪いことをしていないのに、巻き添えを食ってかなり叩かれていて大変気の毒に感じました。
議論は水掛け論状態に突入
もちろん採点結果に驚いた人たちばかりではなく、「倫果はもともと回転不足の多い選手だからこれが正しい結果だ」という意見を当初から述べている人たちもいます。それに対しては「じゃあアリサの回転不足はもっと多くなきゃおかしい」という反論もあり、意見は割れています。
単に意見が割れているだけならよかったのですが、時間が経つにつれて二人の選手のジャンプの一部分の切り取りスローモーション動画や画像を上げて双方のジャンプの回転のあら捜しをする泥沼展開に発展してきています。

ジャッジ資格を持っているわけでもない素人ファンが一部分を切り取った映像をもとに重箱の隅をつつき合って悪口を言い合う
フィギュアスケートファンが時に見せるイヤな部分を再び見る羽目になってしまい、うんざりした気分です
おかげで演技そのものの良かった部分を楽しく振り返る気分になれません…
採点の成否はわからないが、納得感が得にくい大会だった
私は審判がチェックしている映像を見せてもらったわけでもないし、そもそもただのライトファン。今回のジャッジそのものに異議を唱えるつもりはありません。
ただ、一般視聴者のひとりとして「納得感が得にくい採点」だったとは言えます。
特に海外掲示板でかなり具体的に指摘され、かなりの議論を読んでいた日本ジャッジの採点には私も違和感を覚えました。(指摘の詳細を知りたい方はリンク先のやりとりを自動翻訳して読んでください)
SPもフリーも渡辺倫果選手への採点が他ジャッジに比べて極端に低い。他の選手への採点のつけ方を見ても、日本人全員に辛いというわけでもなく、回転不足気味の選手全員を低くつけているわけでもなさそうで、私には一貫性が見つけられず納得しづらかったです。
まぁ日本ジャッジが自国選手に辛いのは今に始まったことじゃないですけどね…
公平感はあったか?
2023NHK杯のときのように、今大会の回転不足判定が極端に厳しい印象を受けたか?と言われると、それも違います。
今季は割と回転不足をきっちり取ってくる印象はありましたし、採点表を見ると、アリサ・リウ選手もアナスタシヤ・グバノワ選手も回転不足がついています。(ララ・ナキ・グットマン選手にはひとつも回転不足がついていないあたりは、彼女の躍進の理由の一つだと思います)
ただ、一見公平にとっているように見えるけど「平等に厳しくとっていたと思うか?」と言われると疑問は残ります。男子シングルでも「こっちの選手のこれを取っておいて、何でこっちは取らないの?」と素朴に疑問に思った点がありましたが、女子でも同様だったからです。

フランス大会のテクニカルパネルがここにいたら、選手たちの点数は結構違っていたかも?
大会ごとに基準が違うのは本当何とかしてほしいですね…GPSのシーズンベストスコア比較ほど無意味なものはないなと思います
でも代表選考の材料としてはある程度重視せざるを得ないというジレンマ…
こういう展開になると、GPF前に盛り上がっていたフィギュアスケート観戦熱に水を差されたような感じで、熱が冷めてしまいます。
まぁ伊藤みどりさん時代から定期的に冷や水かけられてきてもなお、未だにフィギュアスケートを見続けてはいるんで、たぶんまた気持ちは復活するんでしょうけれど。
何よりこうやって「納得いかなかったポイント」を文字にしたことで、心の整理が少しついたようです。実はこの後、「女子シングルで印象に残った演技」も書いていたのですけれど、ざっくりとだけ振り返るつもりが、結構長くなってしまいました(苦笑)。

ということで、ここで一旦区切って、そちらはまた明日改めて公開することにします。では~

