2025年9月29日(月)、西山真瑚選手が紀平梨花選手とアイスダンスカップルを結成することを発表しました。

今季結成した「いくこう」こと櫛田育良/島田高志郎組に加え新しいアイスダンスカップルが増えたことで、今年の全日本フィギュアスケート選手権はかなり注目を集めそうですね!
一部報道では「ミラノ五輪をめざす」などと大々的な見出しが躍っています。
しかし、実際のところ「いくこう」や「りかしん(紀平梨花/西山真瑚組)」などの今季新結成組がミラノ五輪団体戦の候補選手に含まれる可能性はどのくらいあるのでしょうか?
今回は、彼らが五輪代表候補に含まれるために必要な条件について整理してみました。
<9/30 20:30>
うたまさの昨年の西日本選手権の技術スコア誤記してたので訂正しました
(0.2ポイント少なく書いてました すみません)
<10/2 22:50>
日本スケート連盟がゴールデンスピン杯派遣基準の引き下げを発表した旨、末尾に追記しました
世間には驚かれた、紀平梨花選手のアイスダンス挑戦
「あずしん」こと田中梓沙/西山真瑚組の解散が電撃発表されたのは今季7月。
先日、西山真瑚選手が新パートナーを発表すると報じられた時点で「相手は紀平梨花選手ではないか」という予想はかなり出回っていました。(紀平梨花選手のSNS情報から推測できたため)
でも、その予想を耳にしていなかった人たちには、今回の発表はかなりの驚きをもって受け止められたようです。全部のニュースは貼れませんが、一部だけ。



海外のフィギュアスケートファンの間でもかなり話題になっていて、ロイタージャパンも記事を出していました。

高橋大輔選手、島田高志郎選手、櫛田育良選手に続き、紀平梨花選手もーとなれば、シングルで国際大会メダルを獲得している選手のアイスダンス転向はもはや珍しくなくなってきました。
報道によると中部選手権欠場を決めた後にカナダでトライアウト⇒現在競技プロ練習中だそう。
まだ組み始めたばかりなので、「りかしん」の組み合わせがうまくいくのかどうかは、勿論まだわかりません。公開されている練習映像はごく一部です。
紀平梨花選手は女子シングルから完全撤退はしないとのことですが、今季の全日本選手権ではアイスダンスでの出場を目指すようです。
全日本に出場するためには、アイスダンス予選会(11/1~3に西日本選手権と同時開催)の出場が必要。彼らにとってはそこが競技会デビューとなります。
一部のメディアは「ミラノ五輪をめざす」と見出しに
彼らは「いくこう」と同様、2030年のアルプス五輪出場が大きな目標だと会見で語っています。
ただ、一部のメディアではミラノ五輪についての質問に対し「可能性がある限りは諦めない」と返したのが、は大きく取り上げられた感があります。


「可能性がある限り諦めない」というのはアスリート精神の表れでしょうから、彼らが直近のミラノ五輪を視野に入れていることをどうこうは全く思いません。
実際、「うたまさ」こと吉田唄菜/森田真沙也組以外の組がミラノ五輪団体戦に出場することは100%不可能ではありません。でも、今季結成したばかりの組がミラノ五輪団体戦出場者に選ばれる可能性は正直言って限りなく低いと思います。
新結成組がミラノ五輪団体戦出場するのに必要な条件とは?
大規模国際大会出場には「ミニマムスコア/CTES」の獲得必須
オリンピックや四大陸選手権、世界フィギュアスケート選手権等の大規模国際大会に出場するためには、大会エントリー締切前に既定の最低技術点(ミニマムスコア/CTES)を獲得する必要があります。
現在、日本のアイスダンス選手で、ミラノ五輪と世界選手権のミニマムスコアをクリアしている組は「うたまさ」のみ。
(今月の「木下グループ杯2025」はミニマムスコア獲得のチャンスだったのですが、アイスダンスに日本から出場したのは「うたまさ」のみでした)
ミニマムスコア獲得ラストチャンスは、12月のゴールデンスピン杯
日本選手がミラノ五輪出場に間に合うようミニマムスコアを獲得できる最初で最後のチャンスは、チャレンジャーシリーズ(CS)大会のゴールデンスピン杯(12/3~6)です。
※ミラノ五輪直前に世界選手権のミニマムスコアを獲得できる試合はありますが、ミラノ五輪のエントリーには間に合いません
しかし、この大会に派遣されること自体がかなり大変なのです。
ゴールデンスピン杯派遣へのハードルは超絶高い
「ゴールデンスピン杯派遣基準」9/14の発表時は話題に
日本スケート連盟は9/14に、ミラノ五輪ミニマムスコアを持っていない選手をゴールデンスピン杯に派遣する際の基準を発表しました。
この基準が恐ろしく高くて、スケオタの間ではかなり話題になっていました。

だって、シングル競技だと10~11月の東日本選手権or西日本選手権で男子は271点、女子は205点を出さないといけないんですよ?
【対象競技会】
・男女シングル :第 51 回東日本選手権大会/第 51 回西日本選手権大会
・アイスダンス :第 94 回全日本選手権大会アイスダンス予選会
【派遣基準点】
・男女シングル
男子:Points(総合得点) 271 点
女子:Points(総合得点) 205 点
今季の国際大会スコアでこの基準を超えたのは、男子だと鍵山優真選手、女子だと千葉百音選手、住吉りをん選手、中井亜美選手だけです。
こんなすごい点数出せるポテンシャルがあればとっくに戦績をあげてグランプリシリーズ大会に出場しているでしょう。最近頭角を現してきた三宅咲綺選手も、既に各大会のミニマムスコア獲得済みです。
これは「無名選手が突如覚醒、物凄いスコアを出した」という夢のような事態が起きない限り派遣しませんーという日本スケート連盟の意思表明だと、私はとらえています。

円安の昨今、派遣費用は高額になりますのでおいそれと金は使えないよーというのはやむを得ないことかもしれません…
アイスダンスのゴールデンスピン杯派遣基準
この資料に記載されているアイスダンスの派遣基準もかなり厳しいものです。
A)アイスダンスがオリンピックの個人戦枠を獲得した場合 : TES 85点
B) アイスダンスがオリンピックの個人戦枠を獲得しなかった場合 : TES 98 点
残念ながらミラノ五輪個人戦の枠は獲得できなかったため、B)が採用となります。
「アイスダンス予選会でのRDとFDの技術点合計98点」が派遣の必要条件です。
「アイスダンスのRD+FD技術点の合計98点」の難しさ
参考までにいうと、先日のミラノ五輪最終予選会のうたまさの技術点合計は95.50。去年の西日本選手権のうたまさの技術点合計が 98.97 99.17です。(誤記してたので訂正しました)
要はうたまさの技術点レベルを超えることができた最上位一組だけが、「ミラノ五輪出場に必須のミニマムスコア挑戦権」が得られるということ。
そして、挑戦権があったとしてゴールデンスピン杯でミニマムスコアを獲得できるかというとまた話は別です。何回挑戦してもなかなかクリアできない選手は多々いますから。
(ギリギリでクリアできず出場を果たせなかった選手たちを思い出すと悲しくなります…)

発表当初は「なんて高いハードルを課すのか」と驚きましたが、今では「ギリギリまで新規結成組&無名の若手にも五輪挑戦への道があることを明示してくれた」と考えています
めちゃくちゃ険しいハードルを越えないといけないけれど、ミラノへの道は用意はされているんですよね
注目を集め盛り上げるのもメディアの役割だけれど…
全選手向けに「ミラノへの道」が用意されてはいる以上、メディアは「グランプリファイナル優勝経験もあるあの紀平梨花選手がミラノ五輪をめざしアイスダンス挑戦!」と銘打ちたくなるのでしょう。
こうすればフィギュアスケートに少し興味がある程度のライト層も、驚いて関心をもって記事を読んでくれるかもしれない。
一般層の関心を引き付けるのもメディアの役割の一つだと思いますし、実際このニュースを知って久しぶりに「今年の全日本選手権見てみようかな?」と思った人もいたかもしれません。
でも、現実のハードルの高さを知っていると、「なんだかな~」とやっぱり思っちゃいますね。

高い目標を掲げて努力を重ねることは素晴らしいことだと思うので、新結成の組にもこれまで頑張ってきた組にも頑張ってほしいです
<10/2追記>アイスダンスのゴールデンスピン杯派遣基準引き下げ発表!
10/2(木)に、日本スケート連盟が9/14に公表したゴールデンスピン杯派遣基準の引き下げを発表しました。
CS 57th Golden Spin of Zagreb 派遣基準点のご案内
アイスダンスでの派遣基準だったRD&FDの技術点合計が世界選手権ミニマムスコア相当の98点ではなく、五輪・四大陸選手権ミニマムスコアの85点に変更されました!

新結成組を含む日本のシニアアイスダンスカップルにとっては、この85点もかなり大変な数字ではありますが、98点よりは遥かに現実味があります。

ひょっとして2026年1月の四大陸選手権に複数組が出られるかも?
五輪団体戦の補欠要員ができるかも?
という夢を抱くことが可能になりました