名古屋IGアリーナで開催された、2025年のフィギュアスケートグランプリファイナル(GPF2025/2025GPF)の観戦記の3本目は、アイスダンスを振り返ります。
チョクベイVSフルシゼ、パイポーVSフィアギブ(ライラルイス)の熱い決戦は見ごたえ十分でした。
また、同時期開催されていた別名「裏GPF」こと「ゴールデンスピン杯」のアイスダンス&他カテゴリの結果についても、少しですが併せてまとめています。
2025名古屋GPFリザルト
※出場者リスト・スケジュール・採点結果などの一覧です
GPF出場組&ゴールデンスピン杯出場組の情報
GPFアイスダンス出場組情報
アイスダンスのGPF出場は、下記の6組。
米国のみ二組で、後はすべて異なる国。
「チョクベイ(or チョックベイツ)」 マディソン・チョック/エヴァン・ベイツ組(米国)
「フルシゼ」 ロランス・フルニエ・ボードリー/ギヨーム・シゼロン組(フランス)
「フィアギブ(or ライラルイス)」 ライラ・フィアー/ルイス・ギブソン組(英国)
「パイポー」 パイパー・ギレス/ポール・ポワリエ組(カナダ)
「アリサウ」 アリソン・リード/サウリウス・アンブルレヴィチウス組(リトアニア)
「ジンコレ」 エミリア・ジンガス/ヴァディム・コレスニク組(米国)
※略称はたくさんありますが、ここでは私の独断で選んでいます

テレビ朝日フィギュアスケートXアカウントの投稿より引用 ※画面をクリックすると元投稿が開きます
「裏GPF」こと「ゴールデンスピン杯」出場組の情報
昨年まで3年連続GPF表彰台だった「ギニャファブ(orシャルマル)」ことシャルレーヌ・ギニャール/マルコ・ファブリ組(イタリア)の名がGPF出場組一覧に無いのは、正直寂しさを感じます。
「ギニャファブ」は、「裏GPF」とも呼ばれる「ゴールデンスピン杯」に出場。シーズンベスト(SB)スコアの204.18を出して見事優勝していました。
2025ゴールデンスピン杯リザルト
※出場者リスト・スケジュール・採点結果などの一覧です
ちなみに「ゴールデンスピン杯」アイスダンスカテゴリには、「いくこう」こと櫛田育良/島田高志郎組も出場していました。今季の四大陸選手権やミラノ五輪に出場するのに必要な技術点(ミニマムスコア)に挑む最初で最後の機会でした。
しかしながら、ミニマムスコアにはわずか1.56点足りず、獲得はなりませんでした。結果は148.62で13位。
※下記は登録者向けの有料記事ですが、彼らのインタビュー全文が読めます

本当に「あと少し」だっただけに惜しく感じますが、組んで間もない組がここまで迫っただけで凄いことです。来季はCS大会に積極的に派遣して、来季のNHK杯には地元枠出場し、四大陸選手権にも是非出てほしいです。
アイスダンス以外のゴールデンスピン杯情報
ちなみにゴールデンスピン杯、他カテゴリの優勝者は下記の通りです。
男子シングル:ケヴィン・エイモズ選手(フランス)/239.52
女子シングル:ブレイディ・テネル選手(米国)/194.97
ペア:「シンナギ」ことオードリー・シン/バラージ・ナギー組(米国)/194.00
そして、大会後のインタビューでケヴィン・エイモズ選手がフランス・ローザンヌ開催の欧州選手権(2027年)まで現役続行を明言しています!
Kevin AYMOZ 🇫🇷 152.00 / 239.52 🥇
— Golden Skate (@goldenskate) December 5, 2025
Good news first: Kevin decided that he for sure will continue his career after this season, as he aims to compete at Europeans in Lausanne! 🤩
Tonight was difficult because my feet hurt a lot. I injured myself two months ago. And actually, you… pic.twitter.com/bEso0EebpB

「五輪後引退してしまうかもしれない私の好きな選手リスト」から1名減って、私はとても嬉しいです!
アイスダンス6組の振り返り
さて、ここからは名古屋GPFのシニアアイスダンスを振り返っていきます。
GPSでは最後の2大会で突然アイスダンスのレベル認定が厳しくなったことが物議を醸しました。


「GPFもこの厳しい認定レベル継続なの?」と不安に思っていましたが、ステップの判定については以前に戻りました。「あの2大会での基準はなんだったんだ?」状態。

フィギュアスケートは採点競技のイヤな側面を目にすることも多いですが、こういう「大会ごとの基準のブレ」は勘弁してほしいです
そしてレベル認定基準は前に戻ったものの、今大会でも「何で今回だけそんなことに?」と採点に疑問を抱かせる事態がまた発生しました。
謎の減点を受けた「ジンコレ」(米国)
世界のトップレベルのアイスダンサーたちの滑りを一気に見ることができるのはGPFのいいところ。私がジンコレの演技をナマで見るのは、9月の「木下グループ杯」以来です。
RDでの謎の2点減点
彼らのRD(リズムダンス)の演技後、得点発表時のモニターを見ると、「deduction(減点)-2.00」との表示を発見。

「マイナス2って何?二人揃っての転倒もしてないし、よくあるリフトのタイムオーバーとかならマイナス1だろうし…」
と現地では混乱しました。
どうやら下記投稿内のインタビュー内容を見ると、彼ら自身もどこで減点されたのかがわからなかったようです。
これまでの4試合で披露してきた技は何一つ変えていないのに、今回初めて「規定違反要素がある」との指摘で減点になったとのこと。一体どこの動作で減点されたのか、全くわからないと答えています。
"We’re a bit confused about our score and where the two-point deduction came from. It says ‘illegal element,’ and we have no idea what it was for. We’ve competed four times this year and we’ve never had a deduction on this element, and the element hasn’t changed at all."
— AbsoluteSkating (@absoluteskating) December 4, 2025
選手たち自身がわからないのですから、素人ライトファンが減点理由がわかるわけもありません。今日改めて調べてみたところ、こちらの海外掲示板にファンが推定した「減点部分」の動画が複数投稿されていて多少は理解の助けになりました。
といってもコアなアイスダンスファンの方たちも理解しづらかったようで、減点理由は特定できず。さすがにジンコレの二人は試合後ジャッジに直接訪ねて減点理由は教えてもらえたかもしれません。
しかし、そもそもジャッジ自身が4試合も見逃してきているような減点要素っていったい…。

好意的に解釈すれば、「五輪の前に指摘してもらえてよかった」ということなのかもしれませんが、何だかスッキリしない採点でした
FDは黒衣装の「ロミオとジュリエット」
RDはあまり印象に残っていないのですが、二人とも黒い衣装で演じる「ロミオとジュリエット」のFD(フリーダンス)は、今年9月の木下グループ杯で見た時から記憶に残っています。今までにないタイプの「ロミジュリ」で、私は結構好きですね。
彼らはまだ23歳&24歳のカップルなので、ベテランアイスダンスカップルがごっそり引退するであろう来季からはメダル常連になるかもしれません。
米国内のミラノ五輪代表争い&候補選手の国籍取得状況
ちなみにヴァディム・コレスニク選手はウクライナ出身です。今年1月の下記の記事ではまだ米国籍取得ができていませんでしたが、8月に本人のInstagramで五輪出場に必要な市民権を獲得したとの報告がありました。

ミラノ五輪米国アイスダンス代表を争う「カレポノ」ことクリスティーナ・カレイラ/アンソニー・ポノマレンコ組も市民権を獲得しています。
あとは全米選手権次第。おそらくカレポノ、ジンコレ、「グリパー」ことキャロライン・グリーン/マイケル・パーソンズ組の三つ巴になるでしょう。このうち1組が五輪には行けないことになります。
GPFに進出できた「ジンコレ」は一歩リード。カレポノとグリパーの争いになりそうです。
(米国アイスダンスは層が厚いので、予想外の展開になる可能性はありますが…)
「アリサウ」(リトアニア)はFDでPB更新!
昨季ボストンワールドでは転倒でまさかのRD落ちとなり、今季は9月のミラノ五輪代表最終予選でスタートしたアリサウ。年々ジャッジ評価を上げてきていましたが、今季ついにGPF初出場となりました。
五輪代表最終予選に出場していた組がGPFに出ているって、前例がないんじゃなかろうか?と思うくらい珍しい展開です。
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Allison Reed / Saulius Ambrulevicius 🇱🇹 120.13
— Golden Skate (@goldenskate) December 6, 2025
Saulius:We gave everything and we feel tired, but we feel happy. It was super fun just gave in front of this crowd like. They gave us the extra boost that we needed towards the end of the program because it was it's physically hard… pic.twitter.com/IvwcbAhLqn
FDでは120.13とPB(パーソナルベスト)スコアを出しました。このままの調子で五輪入賞目指して頑張ってほしいです!
「パイポー」(カナダ)VS「フィアギブ」(英国)の銅メダル争い
金メダル争い&銅メダル争い、両方が僅差だったRD
GPFのアイスダンス採点は、「そのシーズンのジャッジの格付け」が見えてくる場だと思っています。
最も注目を集めていたのは、ワールド三連覇のチョクベイ と実力者同士の新結成組フルシゼのどちらをジャッジが上位につけるか。
そして、その次に注目されていたのは、評価が年々上がっているフィアギブとベテラン実力者のパイポーのどちらが上位に来るかでしょう。
RDの結果は予想通りチョクベイVSフルシゼの金メダル争い、パイポーVSフィアギブの銅メダル争いにくっきり分かれた感がありました。どちらの争いも僅差です。

現地で見ていると、滑りの実力はパイポーが上回っていると感じましたが、セルフプロデュースに長けているフィアギブは会場を大いにわかせる魅力があります。
何よりここ数シーズンのRDはフィアギブの得意路線。そのため、RD結果が僅差になったのは納得がいきました。
「パイポー」(カナダ)が描く、ゴッホの狂気
パイポーのFD「ヴィンセント」は、2018ー2019シーズンFDの再演です。私はこのプログラムを初めてナマで観るのを楽しみにしていました。
ゴッホの絵をモチーフにしたパイパー・ギレス選手の衣装は現地で見ると本当に美しかったです!衣装全体が光を反射して輝いており、圧倒的な存在感がありました。あの衣装の美しさは映像では写しきれていないですね。
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C’est une nuit étoilée à Nagoya ✨
— Skate Canada / Patinage Canada (@SkateCanada) December 6, 2025
Piper Gilles et Paul Poirier ont livré une danse libre envoûtante, terminant 4️⃣e au classement général lors de leur sixième participation à la finale du Grand Prix. 💙 pic.twitter.com/v5YTGwhKIh
ポール・ポワリエ選手のエッジの深さには惚れ惚れ。終盤に向けヴィンセント・ゴッホの哀しくも静かな狂気が感じられる表現に呑み込まれ、「いや~いいもの見たわ…」という気持ちになれました。
7年も前のプロだと、その後細かな技術規定の変更が行われているため当時の振り付けのまま再演はできません。同じ過去プロ再演なら比較的最近のプロ、派手さ&わかりやすさで優る「嵐が丘」の方がよさそうなのにーとずっと思っていた私。
しかし、今回演技を間近で見た直後は「これはこれで『しみじみ来る系』でいいのかも?」と思えました。
「フィアギブ」(英国)が描く、軽やかなスコットランド
続いて登場したのはフィアギブ。先月のNHK杯でも堪能させてもらったFDプログラムです。
キュートなスコットランド風デザイン衣装に身を包み、軽やかにステップやリフトを繰り広げていく二人。最後のあっかる~い「蛍の光」で会場は大盛り上がり。観客を巻き込むパワーはさすがです。
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Jumping from 4th to the bronze medal position, Lilah Fear / Lewis Gibson 🇬🇧 earn a total score of 208.81 at #GPFigure Final 🔥 pic.twitter.com/YVv3x8GQni
— In The Loop (@InTheLoPodcast) December 7, 2025
私も盛り上がって拍手をしまくりましたが、スケーティングの面ではパイポーの域には及ばないと感じました。
なので私はパイポーがRD3位から差を少し広げて銅メダルになるだろうと思っていたのですが…FDの得点はパイポーを上回り3位。RDから逆転で総合得点3位となって正直ビックリしました。その差はわずか0.06点。
「時代の波に乗った組の強さ」を感じさせられました。
「フルシゼ」(フランス)VS「チョクベイ」(米国)の頂上決戦
圧巻の演技の「フルシゼ」がまさかの…
フルシゼのFD「ザ・ホエール」は初披露を配信視聴したときから圧倒されたので、ナマで見るのをとても楽しみにしていました。
重低音から始まるスタート。現地だとその響きが観客の体にも伝わります。
でも、重苦しい音楽なのに「重いだけ」に感じさせない美しい滑り。「パパシゼ」のふたりが持っていた美し過ぎる無機質さの魅力とはまた異なる、「人間の苦悩」を美しく昇華して表現できる、別の個性を持った組が新たに誕生したことを実感できました。
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ギヨーム・シゼロン選手が腰を深く落としたリフトのスピードとエッジの深さがまぁとんでもなくて、周囲の観客から息をのむ音が聞こえましたよ。あれは凄すぎ。
それだけ演技に引き込まれていたので、ロランス・フルニエ・ボードリー選手が終盤で突如転倒し視界から消えてしまったのには本当に驚きました。後で映像を見たら、どうも衣装の裾に引っかかったようですね。何とも言えない心地よい緊張感は、あの転倒でぷっつり切れてしまいました。

「チョクベイVSフルシゼのジャッジ評価がどうなるか」を確かめたかったのに、片方に大きなミスが出てしまっては、これでは正しく比較ができない…
と、本当に残念な気持ちになりました
得点発表を待つ二人の映像をモニターで見ていたとき、ロランス・フルニエ・ボードリー選手の膝が流血していて、スカート部分に血がついているのが見えました。結構な転倒だったようです。
その後も彼らはリーダーズチェア(暫定首位席)に座り続けなくてはならなかったので、「早く傷の手当してあげて!」と思いました。
表彰式のときには衣装についていた血も落とされ、膝も治療済みだったのが確認できましたが、いつ傷の手当てをしたんでしょうね?次の演技ではリーダーズチェア付近を全然見ていなかったので、わからずじまいでした。
「チョクベイ」(米国)は猛牛を制す
演技開始前にモニターに表示される、チョクベイの観客へのメッセージは、「猛牛に気を付けて!」という内容でした。
ローリングストーンズの名曲「黒く塗れ!」のスパニッシュバージョンに闘牛の要素を掛け合わせるというある意味「謎プロ」。それをじっくり1シーズンかけて強引にねじ伏せていくのがチョクベイの魅力でもあります。
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おそらく今大会で見せてくれた演技もまだ。五輪の頃には更に変化を遂げるだろうと思います。
フルシゼの二人の後で見るとチョクベイの滑りには若干の差は感じました。でも、あくまでも「若干」で、二人の距離の近さと動きの同調性はとんでもなかったです。
互いにミスが無かった両者のRDのPCS採点は0.10フルシゼが上とほぼ同格。つくづくFDノーミス対決でのPCS評価が見たかったです。
フルシゼは全仏⇒欧州選手権⇒五輪。チョクベイは全米⇒五輪かなと予測しています。(四大陸選手権は五輪に近すぎるしアジア開催なのでスキップかなと)二組の次の直接対決は、ミラノ五輪です。
さいごに
アイスダンスは本当に濃密な時間でした。バカみたいな感想ですが、ただただ皆スケートが上手かった…。
また違う面白さがあった男子シングルと女子シングルについては、別記事でゆっくり振り返ります。
今日はPIW(プリンスアイスワールド)愛知公演の初日。私は新年のPIW東京公演の方に行くつもりなので、愛知公演は行く予定にしていません。(宇野昌磨さんの披露プロによったら、あす急遽名古屋日帰り鑑賞を決めるかもしれませんがw)

今日はSNSで流れて来るPIW情報を追いつつ、CSなどで放送される宇野昌磨さん番組を楽しみにすることにします。
今は全日本選手権前で気持が落ち着かないので、視聴は年末年始にするかもしれませんけどね。
ではまた~
この週末の宇野昌磨さん関連番組の放送予定等はこちらの記事でどうぞ


