2025年フィギュアスケートのグランプリシリーズ(GPシリーズ)第5戦アメリカ大会(スケートアメリカ2025/スケアメ2025)。
今回は、女子シングルで私の印象に残った演技を振り返ります。
当初は昨日投稿した、アイスダンスと女子シングルのまとめ記事内で振り返るつもりだったんですが、採点に関する違和感の話題&女子の演技振り返りのどちらも長くなってしまったので記事を分けました。

2025GPSアメリカ大会(スケアメ)リザルト
※出場者リスト(Entries)、採点結果(Judges Scores)などの一覧です
女子シングルで印象に残った演技
吉田陽菜選手
吉田陽菜選手は、フリー冒頭のトリプルアクセルに成功。降りた瞬間は笑顔がはじけました。
今季ずっとジャンプが不調だったので、正直ビックリしました。少しずつ調子は上向いてきているというインタビューを事前に読んでいたのに。
採点結果ではごく軽度の回転不足を示す「q」がついてGOE(出来栄え点)が0.57点マイナスとなりましたが、今季の試合ではここまでの着氷は初めて。(木下グループ杯や近畿選手権で着氷はしていましたが、アンダーローテーションやダウングレードでした)
ただ、その後のジャンプに乱れが出てしまったためシーズンベストスコア(SB)は更新できず、結果は総合9位。それでもキス&クライでは元気に笑顔を見せてくれました。
樋口新葉選手
樋口新葉選手のショートプログラム(SP)はNHK杯よりは良い仕上がりで、今季初めて60点台にのせました。足の痛みがある中では精一杯の演技だったのではないかと思います。
会場の観客の多くは彼女の苦しい状況を知っているようで、声援も暖かく大きかったです。
フリーは冒頭のダブルアクセルートリプルトゥループのコンビネーションジャンプからいきなり回転が抜けてしまい、辛いスタートとなりました。
その後もジャンプの乱れが続き、正直見守るのが辛く感じるときもありました。ーしかし、あまり考えたくないことではあるのですが、これがひょっとして彼女の最後の国際大会になる可能性があります。なのでしっかり見届けました。

スピンは全てレベル4、ステップはレベル3となりましたが、気迫がこもっていました。傷を負ったワンダーウーマンが最後の力を振り絞って戦っているかのような情景に見えたのは私だけでしょうか?
私がシーズン当初見たかったワンダーウーマンの演技とは違っていたけれど、心に響いた演技でした。総合11位は悔しい結果ですが、あのステップとラストポーズは今も強く記憶に残っています。
韓国のワールドメダリスト対決(イ・ヘイン選手 VS キム・チェヨン選手)
イ・ヘイン選手(韓国)は力強いジャンプを戻しきれておらず、フリーは苦しい演技となりました。
一方、ボストンワールド前の交通事故以来長く不調が続いていたキム・チェヨン選手は、復調傾向を見せて総合6位に入りました。回転不足を多数取られていたのが気がかりですが、それは今回の審判が厳しかったからなのかもしれません。他の大会だとどうなるかは何とも言えないですね。
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Chaeyeon Kim 🇰🇷 drilling in her SP #SkateAmerica #GPFigure pic.twitter.com/B4rs16shAH
— In The Loop (@InTheLoPodcast) November 15, 2025
今までキム・チェヨン選手は「無機質感」が彼女の個性だと思っていましたが、SP・フリーとも、私は今季のキム・チェヨン選手には人間味を少し感じられました。実際に彼女の演技に変化が出たのか、私の見方が変わったのかはよくわかりません。
スター・アンドリュース選手
フィギュアスケートファンにはおなじみ?の人も多い、「スターちゃん」ことスター・アンドリュース選手(米国)がGPSに復活!総合5位に入る活躍を見せました。
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A Star(r) was born tonight in Lake Placid! 🌟✨
— ISU Figure Skating (@ISU_Figure) November 16, 2025
⁰Starr Andrews blew the roof off the arena with a season’s best performance!#FigureSkating #GPFigure pic.twitter.com/oOI5I1n9uI
「スターちゃん」が注目を浴びたきっかけ
彼女の演技動画がYouTubeにアップされ、大評判になったのは2010年のことです。当時9歳でした。
凄い再生回数だった記憶がうっすらありますが、現時点(2025/11/19)は5781万回再生。とんでもない数ですね(笑)。
このおかげで私は彼女を子どもの頃から見守ってきた錯覚を抱いています。実際はGPS出場(NHK杯にも2回出場)や全米選手権のたびに「今年のスターちゃんはどうかな?」と気にかけていた程度ですが。
しかしその彼女も2022年のスケカナで銀メダルを獲得、翌シーズンもGPS2大会に出場ーと活躍していたのですが、昨シーズンは大きな国際大会出場なし。

どうしたのかと思っていたら、この間に心臓手術を受けていたようでビックリしました
「心房性頻拍」という慢性疾患があったのだそうです
来季ペア転向前に会心の演技
彼女は今季で女子シングルに別れを告げ、来季からペアに転向するとのこと。
女子シングル選手としては最後?の国際大会になる可能性があるためか、SPもフリーも思い残すことがないような渾身の演技で会場は大喝采でした。
下記はSPの一部分の動画が視聴できます。ゴージャスな衣装がよく似合います。
彼女は歌手としても活躍していて、開会式で国歌斉唱をしたかと思えば、フリーの使用曲は自分自身の歌唱。(全米で自分の歌で演技していたことはあったけど、GPシリーズでは初?)
以前エキシビションで歌った人(2017年NHK杯のアダム・リッポン選手)とか、自分の台詞とかエッジ音とか入れた人は何人かいますけど、自分の歌で滑った人って初めてじゃないですかね?全米選手権でも活躍を楽しみにしています。
アナスタシヤ・グバノワ選手 VS ララ・ナキ・グットマン選手
この3位争いは手に汗握る展開でした。
アナスタシヤ・グバノワ選手(ジョージア)
アナスタシヤ・グバノワ選手(ジョージア)は、春の国別対抗戦以来ずっとSPフリーをまとめる演技を続けています。驚異の安定力です。

昨季ボストンワールドでのまさかのSP落ち→ミラノ五輪代表最終予選での枠取りの闘いを経て、彼女は一段階段を上がったような感があります。「ミラノ五輪代表最終予選にピークを持って行ったから、GPSでは一旦調子を落として来るかな?」と思っていたら、とんでもなかったです。
ララ・ナキ・グットマン選手(イタリア)
一方、ララ・ナキ・グットマン選手は母国開催のミラノ五輪のフリープログラムに「トスカ」「椿姫」「ニューシネマパラダイス」などのイタリア絡みの名曲ではなく、なぜか「ジョーズ」を持って来るーという奇抜さでフィギュアスケートファンのハートを多く撃ち抜いています。(私もやられましたw)

回転不足判定に厳しい今回の採点下で、彼女はジャンプ全てがクリーン、「q」ひとつついていません。
ジャンプが安定したうえ、回り切って降りてこれる。これが彼女の最近の躍進の原因の一つでしょうね。五輪の団体メダルだけでなく、個人戦での入賞も十分狙えます。今季アンナ・ペゼッタ選手と五輪代表枠1つを争っていますが、今のところ彼女が大きくリードしています。
この二人の総合点はわずか0.4点差。ララ・ナキ・グットマン選手のトリプルループコンビネーションがダブルに抜けていなければ彼女が表彰台でした。本当に惜しかったです。
アリサ・リウ選手 VS 渡辺倫果選手
アリサ・リウ選手(米国)
アリサ・リウ選手は今季用のSPフリー両方の見直しを迫られ、今は一時的にどちらも昨季プロに戻しています。フリーはCS大会で披露していたレディーガガのプロを手直ししているらしく、その最中に旧プロで試合に出るという苦しい状況。どちらも昨季一旦完成させたプロとあって完成度は高いのですが、ボストンワールドの時の勢いまでは感じられません。

SPではトリプルルッツートリプルループを投入してきたので、私の気持ちは一気に上がりましたが、着氷は回転不足判定やむなしでした。フリーも回転にやや苦しんでいた印象。
でも、彼女は昨季もワールド前まではずっと回転不足の課題を抱えていたので、ここから調子を上げていきそうな気はします。今大会で優勝、2位ー1位で名古屋GPF出場を確定させました。

GPFはリニューアルした「ガガ」プロを披露するのか、それともこのまま昨季プロの「マッカーサーパーク」でいくのか?
できればリニューアルプロを見てみたいですね
<おまけのエピソード記録>
表彰式後のリンク周回時のアリサ・リウ選手の行動は、採点にまつわる微妙な空気感を和ませてくれました。
観客から3人分の花冠を貰ったんですが、グバノワ選手用の花冠がリンクと観客席との間のゾーンに落ちてしまったんです。アリサ・リウ選手がリンクの塀を乗り越えて落ちていた花冠を拾ってグバノワ選手に渡したんですよね。その後はみんな笑顔で花冠被って周回続行。
アリサ・リウ選手が何のためらいもなく「私に任せて~うりゃ!」って感じで塀を超えたあたりがワイルドで素敵でした(笑)。
渡辺倫果選手
渡辺倫果選手はSPでトリプルアクセルを決めたうえ、他要素もしっかりまとめてSP1位発進でした。A級国際大会でSP1位で折り返すというのはおそらく初めてだったのではないでしょうか?
世界女王の演技直後、それも自国での演技をまとめて場内大喝采の中で演技を始めるのは相当なプレッシャーだったと思います。

そこでよくぞトリプルアクセルートリプルトゥループを決めてきました。2本目の単独トリプルアクセルへの挑戦にもしびれました。
しかし凄かったのはむしろそこからだと思います。彼女はトリプルアクセルが入ったとしても、後半のジャンプが乱れたりスピン・ステップのレベルを取りこぼしたりーというのが課題。今回初めてそこをきっちりまとめてきました。SP・フリー共にスピン・ステップは全てレベル4です!
彼女は毎大会ごとに、着実に調子を上げてきています。全日本の前に、GPFで彼女の限界がどこまでなのかを是非見せてほしい気持ちが強まりましたが、惜しくも優勝を逃したため、今大会ではファイナル進出を確定できませんでした。
GPF女子シングル出場を巡る争いの状況は
渡辺倫果選手がGPFに出場できるかどうかは、最終戦・フィンランド大会に出場するアンバー・グレン選手(米国)、千葉百音選手、住吉りをん選手、ルナ・ヘンドリックス選手(ベルギー)の成績次第となります。最大の鍵は同ポイントでのスコア勝負になりそうな住吉りをん選手の順位ですね。
ソフィア・サモデルキナ選手(カザフスタン)が欠場者の代替として招集されたもののビザ発給待ち状態ーとの情報が出ていましたが、現時点でも出場の公式発表がありません。公式練習も始まりますし、そろそろ発表がないとさすがに厳しいかな…?彼女が出場できて表彰台に乗れば、GPF出場の可能性があります。
詳しくはこちらの記事をどうぞ。


それではスケアメ女子シングルの振り返りはこのへんで
フィンランド大会も迫ってきているので、男子とペアは少し軽めに振り返りたいと思います


