先日、今季序盤のCS大会で気になった男子シングル選手の記事を書きました。

その時「気になったアイスダンスのリズムダンス(RD)演技」項目を最後にちょこっとだけ書こうとしたんですが…全然「ちょこっと」にならず、別記事にしたら結構なボリュームに(笑)。
せっかくなので、観たいと思っていた他の組の演技も視聴しちゃいました。そろそろ記事を出そうかと思ったら「しょまりん」公式サイトオープンとかあるし、公開準備も後手後手に。
ということで、遅まきながらですが…今季序盤のCS大会で披露されたアイスダンスの演技で、個人的に気になった演技、そして日本同様代表争いが気になる米国のアイスダンス勢の状況をまとめました。
まずは、今季序盤のCS大会リザルト
まずは、今季序盤のCS大会のリザルト一覧を置いておきます。
(ペアのみ実施のジョン・ニックス杯のリザルトはこちら)
2026クランベリーカップリザルト
2026ロンバルディア杯リザルト
2026ネーベルホルン杯リザルト
2026ネペラメモリアルリザルト
本記事では採点の話題は少なめなので、採点詳細が気になったらこちらからリザルトを確認してください。
ここからは、今季序盤のCS大会で私が気に入ったプログラムを、RD中心にいくつか書き留めていきます。
「待ってました!」な古典的舞踏会路線RD
私はアイスダンスRDで近年のヒット曲路線の課題が続いていたのをあまり好ましくは思っていなかったので、今季RD課題が「ゴールデンワルツ」だと知ったときにはかなり盛り上がりました。
でも、ふたを開けたら「ゴールデンワルツ」要素以外にはワルツの雰囲気は微塵もないプログラムがかなりありまして。

近年のヒット曲を使っている組も結構いて、「この曲ってそういえば3拍子か!」と驚かされるのは、それはそれで面白いのですが…
当初私が期待していたガッツリ古典派路線プロは想像以上に少ない印象です
カレイラ/ポノマレンコ組(米国)のワルツ&スウィング
ネーベルホルン杯で優勝した「カレポノ」ことクリスティーナ・カレイラ/アンソニー・ポノマレンコ組は、私が当初想像していたRDに今のところ一番近かったです。
真っ白なドレスで、「マイ・フェア・レディ」の「I Could Have Danced All Night」を華麗に舞い、主人公イライザが初めて大使館での舞踏会で踊るシーンで使われている曲に合わせて、正統派ワルツをこれでもかと見せる。そして最後は「Sing,Sing,Sing」。
言うなれば「ワルツ+スウィングジャズ」の組み合わせですが、近現代の舞踏会感が最後まで残ります。
ムラズコワ/ムラゼク組(チェコ)のスペイン舞曲RD
チェコの「ムラゼク兄妹(ムラムラ)」ことカテジナ・ムラズコワ/ダニエル・ムラゼク組、「タシュラー兄妹(タシュラーズ)」ことナタリー・タシュレロワ/フィリプ・タシュラー組はどちらもアイスダンス好きには有名な組。
ちなみに私は、これまでどちらかというとタシュラー兄妹派でした。
(今季のタシュラー兄妹のRDも「カレポノ」同様、正統派舞踏会路線に近くて、かなり好きです!)
しかし、今季CS初戦となったロンバルディア杯でのムラズコワ/ムラゼク兄妹には、「こんなにうまかったっけ?」と驚いてしまいました。
RDのバレエ「ドン・キホーテ」の音楽を使った伝統舞踏寄り路線が私のツボに入ったのかもしれません。
彼らのRDは、いうなれば「ゴールデンワルツ×スペイン舞曲」という感じでしょうか。クラシカルなワルツを軸に、スペイン舞曲的なリズムを組み合わせた構成。長いスカートさばきが素晴らしいです。
(RD衣装写真は上記Instagramの3枚目にあります)
初戦ロンバルディア杯では総合188.61で優勝。2戦目のネーベルホルン杯では大ミスが出てしまって表彰台を逃してしまったのは残念でした。
「ピリハラ」のシンデレラ&「トゥルベル」のジゼル
その他で「正統派舞踏会路線」に近いものといえば、「ピリハラ」こと折原裕香/ユホ・ピリネン組(フィンランド)の「シンデレラ」もキュートで素敵でした。
(ロンバルディア杯4位、ネペラメモリアル6位。衣装はこちらのInstagram投稿で見られます)
ネペラメモリアル194.10点で2位の「トゥルベル」ことユーリア・トゥルッキラ/マティアス・ヴェルスルイス組(フィンランド)も「王道」路線の雰囲気があります。
ただ、「舞踏会風」というよりも「バレエ風」。というのも、彼らはクラシカルな解釈の「ジゼル」1幕をRDで、モダンな解釈の2幕をFDで演じるという、「RD+FDの2幕構成」に挑戦しています。
FDでは、マティアス・ヴェルスルイス選手がフロックコートを着用。男性も裾の取り回し技術を求められます。
王道路線かと思ったら、ゾンビダンス?
「正統派路線をこう崩して来たか!」なスマート/ディーク組
ネペラメモリアルで197.22点を出して優勝し、アイスダンスファンの間でも評判になっていたのは、スペインのオリヴィア・スマート/ティム・ディーク組のRDです。
私がリンクに登場した二人を見た第一印象は、「お、彼らも王道ワルツ系?」。
しかし、二人の衣装はよく見ると、あちこち破れてボロボロです。しかもメイクはゾンビ風。
…これ、死んだ花婿と花嫁が蘇って踊ってるって設定?
一瞬、「マリロマ」ことマリー=ジャード・ローリオ/ロマン・ルギャック組(カナダ)が2023-24シーズンFDでやっていた「コープスブライド」かな?と思ったのですが、あのプログラムで死体だったのは花嫁だけです。
「マリロマ」の「コープスブライド」についての話題は下記記事内で触れています

オリヴィア・スマート選手がプログラム発表時に語った内容によると、墓から蘇った二人が結婚式の日を追体験するというもの。墓から蘇り、二人のファーストダンスを踊り、最後はウェディングパーティーへ――というストーリーだそうで。
曲は、村元哉中さんも使ったロイシン・マーフィー「Ramalama (Bang Bang)」
使用曲は、ロイシン・マーフィー(Róisín Murphy)の「Ramalama(Bang Bang)」
どこかで聞いたことがあるなと思ったら、村元哉中さんが「Friends on Ice(フレンズ・オン・アイス)」で2025年に披露したソロプログラムと同じ曲でした。
人形に命が宿って不気味なダンスを踊り、最後には再び人形へ戻っていくような演目です。
村元哉中さんの演技内容詳細についてはこちら

そして上記の鑑賞記録を読み返してみると、私はこの曲について「YouTubeで検索するとゾンビ風ダンス動画などが出てくる」と書いていました。
……そんな動画を見たこと、すっかり忘れていました(笑)。
「Ramalama (Bang Bang)」は人気番組のゾンビダンスで有名だった
実際、「Ramalama (Bang Bang)」は米国TV番組「アメリカン・ダンスアイドル」(So You Think You Can Dance/略称SYTYCD)のシーズン2(2006年)で、トップ10のダンサーがゾンビ風の群舞を披露したことでも知られる曲です。(曲名とミュージシャン名を英語で検索すると当時の動画が出てきます)
この「Ramalama (Bang Bang)」の振付は翌2007年、プライムタイム・エミー賞の振付賞を受賞。番組の100回記念では、当時の出演者たちと振付師によって再演されています。
2019年に番組プロデューサーと司会者が選んだ「歴代お気に入り演目」にも、この「Ramalama (Bang Bang)」が挙げられています。

海外フィギュアスケートファンの集まる掲示板では、「この番組のあの群舞をモチーフにしているに違いない!」と騒いでいました。
「スマディク」が実際にあの群舞を参考にしたと明言しているかまでは確認できませんでしたが、「ゴールデンワルツ」に「ゾンビ風ポップ・ジャズ」を組み合わせようと思うこと自体、ユニークな試みです。
2年連続でFDで演じて来た「DUNE」で評価を上げてきた「スマディク」。今季のFDも、エニグマの曲を使った、かなりの独自路線です。

RDもFDも、「強烈な個性」を押し出していきたいという想いを強く感じます
ゴールデンワルツ × コメディ!「道化師」と「ミスター・ビーン」
ゴールデンワルツをコメディ路線に料理したトップクラスの組は、複数いました。
ロパレワ/ブリソー組(フランス)のコケティッシュな道化師
ロンバルディア杯2位の「ロパブリ」ことエフゲニア・ロパレワ/ジョフレー・ブリソー組は、道化師/クラウンがテーマ。

道化師の動きや表情、衣装などはコミカル路線ではあります。
しかし、全体的には彼ららしいシュールな世界観で包まれており、フランス風?なコケティッシュさも漂うプログラムになっています。
ローリオ/ルギャック組(カナダ)の「ミスター・ビーン」
ネーベルホルン杯2位の「マリロマ」ことマリー=ジャード・ローリオ&ロマン・ルギャック組(カナダ)のRDテーマは、英国の有名ドラマ「ミスター・ビーン」。
「ミスター・ビーン」を選んだ理由はこちらの記事のインタビューで熱く語っています

あのミスター・ビーンがチャチャ、ワルツ、スウィングを習うというストーリーを展開します。フィニッシュポーズ終了後までコメディ要素を入れこんでいるところがさすがです!
キス&クライでは、ロマン・ルギャック選手のジャケットの裏地に描かれたミスター・ビーンをチラ見せするというサービスつき(笑)。

どちらもゴールデンワルツをコメディ要素で仕立てているのに、方向性も個性も全く違うのが楽しいです
米国アイスダンスの代表争いは昨季以上に熱そう?
日本では今季、「いくこう」こと櫛田育良/島田高志郎組と「りかしん」こと紀平梨花/西山真瑚組が先日の木下グループ杯で四大陸選手権出場に必要なミニマムスコア(CTES)を獲得。
さらに「しょまりん」の参戦も決定。国内トップの「うたまさ」こと吉田唄菜/森田真沙也を追う組も増え、日本国内のアイスダンスの代表枠争いが注目され始めています。
世界トップ20に5組!層が厚すぎる米国アイスダンス
アイスダンスで最も代表争いが過酷な国は、アメリカかもしれません。
昨季のISUシーズンベストを見ると、トップ20にアメリカ勢が5組、トップ30ではなんと9組。
2026世界選手権でも代表3組が全員12位以内に入りましたし、2026四大陸選手権では、米国組が表彰台を独占しています。
世界トップ20級のカップルでも、世界選手権の代表に入れないことがある。
アメリカのアイスダンス勢の層の厚さは凄いです。
ミラノ五輪シーズンは「ジンコレ」が躍進
昨季は若手の「ジンコレ」ことエミリア・ジンガス/ヴァディム・コレスニク組が急激に成績を伸ばし、国内2番手とみられていた「カレポノ」ことクリスティーナ・カレイラ/アンソニー・ポノマレンコ組と評価が逆転する形になりました。
私も名古屋GPFの観戦記内の「ジンコレ」の項目で、当時の米国のアイスダンスの枠争いについて書いています。

ただ、GPFの時点ではすでにもう「今季の序列」は定まりつつあり、このままだとたぶん米国3番手=「カレポノ」で五輪代表が固まるかもな…という空気感は感じていました。
結局、ミラノ五輪代表は「チョクベイ」「ジンコレ」「カレポノ」で確定。
世界選手権は「ジンコレ」「カレポノ」「グリパー」、四大陸選手権には、「ジンコレ」と、「グリパー」ことキャロライン・グリーン/マイケル・パーソンズ組、「ブラウン兄妹」ことウーナ・ブラウン/ゲージ・ブラウン組がそれぞれ出場しました。
今季は「ブラウン兄妹」が急上昇?
ただ、今季は昨季の「ジンコレ」の躍進に近い空気を「ブラウン兄妹」が放ち始めているように感じます。
「ブラウン兄妹」は昨季のFDで「ゴッドファーザー」を演じ、そのユニークな振付で評判を上げました。
私も昨季スケートアメリカ(GPSアメリカ大会)の配信鑑賞記で、彼らのFDを印象的だった演技として挙げ、「四大陸に出られるといいな」と書いていました。
最終前グループながら総スタオベになった、2026米国選手権でのFD演技動画(公式)を埋めておきます。
※最後の曲だけ著作権の都合で変な曲に差し替えられていて台無しなのが悲しいのですがいい演技だったので…
小柄な妹のウーナ選手が兄のゲージ選手のバックフリップをアシストするところが見せ場の一つ。
その技の練習過程から試合で成功させるまでの動画も紹介しておきます。
※動画が再生されない場合はこちらからどうぞ
どの組も、新しい動きをマスターするまでは「チリツモ」な努力が必要なのがよくわかります。
今季注目株?の「ブラウン兄妹」の今季のプログラム
彼らの今季のRDはビリー・ジョエルの懐かしいヒット曲メドレー。
JVKE「golden hour (Fujii Kaze Remix)」を中心にまとめた「りかしん」と同様、3拍子&BPM(曲のテンポ)がRD課題を満たすヒット曲を軸に、そのアーティストの他の楽曲を取り合わせるという「ゴールデンワルツ×ポップミュージック」パターンです。
ビリー・ジョエル版のゴールデンワルツ部分は「Piano Man」。

確かに言われてみればあの曲は「ワルツ」です!
FDはNetflixドラマ「クイーンズ・ギャンビット(The Queen’s Gambit)」のサウンドトラックを使用。かなり壮大な曲調に真正面から取り組んだプログラムでした。
そして先日のネペラメモリアルでは総合190.81を獲得、「グリパー」を上回って3位に入りました。
RDのツイズルでマイケル・パーソンズ選手が転倒する大ミスが出たのが響いた結果とはいえ、FDでも「グリパー」を4点近く上回っています。
実力者の「グリパー」を始め、他の組たちも今後調子を上げていくでしょうから、3枠目争いがどうなるかはわかりません。どういう結果になるにせよ、昨季以上に面白い熱い戦いになりそうな予感がしています。

でも、ワールドではアイスダンスのアメリカ枠を増やしてほしいのが本音ですけどね…枠が足りない!
さいごに
日本のアイスダンスの世界選手権代表枠は、現在1枠。米国ほど世界トップクラスの組がひしめいているわけではありませんが、国内のカップルが増えてきた今、そのたった1枠を巡る競争はこれから激しくなるでしょう。
1枠を2枠に増やす壁は厚いです。ベテラン選手の層が厚いアイスダンスでは、2030年フランスアルプス五輪で個人戦一枠を獲得するのも大変なことでしょう。当面は「1枠」を巡って、たくさんの組が切磋琢磨する日々が続きそうです。
日本とアメリカ、おかれている状況は違いますが、どちらも代表争いから目が離せなくなりそうです。
