欧州フィギュア(ユーロ)2026男子|リッツオとメモラ、セレフコ兄弟の五輪代表争い最終決戦<1/19追記>

2026ユーロの大会ロゴ

欧州フィギュアスケート選手権(欧州選手権/ユーロ/ヨーロッパフィギュアスケート選手権)2026の全カテゴリの競技が終了しました。

この大会でミラノ・コルティナ冬季オリンピック(ミラノ五輪)代表を決定する国もあり、例年以上に注目が集まった今季のユーロ。

今回は、イタリアとエストニアの五輪代表争いが繰り広げられた男子シングルを振り返ります

欧州選手権(ユーロ)2026 リザルト
※出場者リスト・スケジュール・採点結果などの一覧です 

<1/19追記>
マッテオ・リッツオ選手五輪代表決定のニュース記事を追加

目次

二つのミラノ五輪代表争いが注目された男子シングル

私がユーロ2026開催前にまとめた「見どころ」で一番に取り上げていたのは、男子シングルにおけるイタリアとエストニアのミラノ五輪代表争いでした。

その二つの代表争いは、対照的な流れになりました。

イタリア:メモラ選手&リッツオ選手の「五輪代表2枠目」争い

ユーロに持ち越された「2枠目」の決定

ニコライ・メモラ選手は12月に骨盤に怪我を負い、五輪代表最終選考試合だったイタリアナショナルを欠場メモラ選手とマッテオ・リッツオ選手の今季成績が拮抗していたこともあってか、イタリアのスケート連盟は男子シングル代表2枠目の決定をユーロ2026後に持ち越すという判断をしました。

とはいえ、ニコライ・メモラ選手が練習を再開できたのは大会出発まで2週間を切ってから。トリプルアクセルまでは戻せたけれど4回転は戻っていないと伝えられていました。マッテオ・リッツオ選手も昨シーズン終わりに受けた手術からの復帰後、試合では4回転ジャンプがほとんど決まっていませんでした。

そのため、ユーロでの直接対決は、どちらも苦しい状況での試合になるだろうと覚悟していました。

「今出せる限り」が出たSP

コンディション的にはふたりとも厳しい状態にあったと思いますが、SPではどちらも「今出せる限りの演技」を見せてくれたように思います。

マッテオ・リッツオ選手はSPで4回転トゥループを決めて88.00をマーク。

ニコライ・メモラ選手も今できる範囲でSPを美しくまとめました。ただし4回転を構成に入れられなかったのが響いて得点は77.77。

SPで10点以上の差がついたうえ、フリーで4回転ジャンプが望めそうにないとなれば、ニコライ・メモラ選手の五輪代表の夢は厳しくなりました。

SP後、三原舞依選手を例に心境を語ったメモラ選手

ジャンプ練習を再開できたのは大晦日。代表選出は厳しい事情を覚悟したうえでの出場だったためか、彼自身の心の整理は既についていたようです。葛藤を超えて来た今の心情を語っている、SP終了後のコメントが本当に素晴らしいです。

ギリギリまで代表決定を待ってくれた連盟への感謝。出場すら危ぶまれる状態だったのに、大会に出られた喜びをまずは語ります。

そして、「五輪に出場できなかったけれど、素晴らしい選手」の例としてエリザベータ・タクタミシェワ選手や三原舞依選手をあげました。

続けて、三原舞依選手の最高のシーズンの1つは五輪の翌シーズン。彼女は北京五輪に選ばれなかったけど、翌シーズン勝ち続けてグランプリファイナルで優勝したーと話しています。
(彼は三原舞依選手が優勝した年のJGPFに出場していますので、彼女の優勝を間近で見ていたはず)

五輪だけが全てではなく、僕が日々頑張ればこれから色んなメダルを獲得できるはずだということを、前向きに語っているのです。そして、もしリッツオ選手が選ばれたら祝福すると。

メモラ選手のフリー演技&演技直後のインタビュー

フリー冒頭の4回転ルッツはやはり回避してトリプルルッツにしてきました。高難度ジャンプを入れることは叶いませんでしたが、トリプルアクセルの着氷は見事。美しさを保ち続けた演技にはメモラ選手らしさが溢れていました。

後半のトリプルフリップがダブルになったり、いつもなら取れるスピンやステップのレベルを落としたりしていたので、本当にギリギリのところで演技をしていたんだろうと思います。トリプルアクセルまでの構成ながら、145.75を出しました。マッテオ・リッツオ選手が万一フリーで大崩れしたらどうなるかは、まだわからない状況です。

しかし、彼は演技後に「自分が五輪代表になる可能性は全くないものだ」としてインタビューに答えていました。

「9月の僕なら、今頃泣き叫んでいたと思う。でも、色んな対処法を学んだ今の僕はすごく、すごく幸せ。これ以上のことはできなかったと思う。早く練習に行きたい。早く健康を取り戻したい」と語っています。

どうやら三原舞依選手がSP後の彼のコメントを読んだようで、それを聞いて喜んでもいました。その他、衣装&靴の盗難の話や、ミラノ五輪オリンピックではどうするつもりかなどたっぷり話しています。

関心のある方は、上記の投稿の、彼のスケート愛に満ちたインタビュー全文を日本語翻訳かけて読むことをお勧めします。(彼はミラノ五輪会場に20分のところに住んでいるらしいです!)

あとはリッツオ選手の演技を見守るだけ…だったはずが

イタリアの代表争いは、後はマッテオ・リッツオ選手の演技を見守るのみーとなりました。

リッツオ選手の直前に登場したのが、同じイタリアのダニエル・グラッスル選手。彼は名古屋グランプリファイナル(GPF)で出場、総合4位に入ったこともあり、男子シングルミラノ五輪代表の「1枠目」に決定済みです。

しかし、そのダニエル・グラッスル選手がまさかの大不調でして…。ジャンプ3転倒で、全てのジャンプにレビュー判定がつきました。

採点表を見ると、全ジャンプに何らかの回転不足を示すマークがついていて、最後のコンビネーションのセカンドジャンプはダウングレード判定。フリー得点は130.51。総合得点215.33はなんとニコライ・メモラ選手よりも下位の暫定9位。後4名を残し、総合13位以下が濃厚になりました。

「こ、これだと次のマッテオ・リッツオ選手の順位によっては来季のユーロのイタリア2枠も危なくなるのでは?

ーと別の注目ポイントが急浮上してしまいました。

「来季1枠」になってしまったフランスに続き、イタリアも…?

この時点の男子シングルフリーでは、強豪国フランスの来季ユーロ出場枠が「1」に減るのが既に確定していました。

実は、私は男子SPについて振り返った先日の記事でこう書いていました。

ケヴィン・エイモズ選手のSP落ちにより、ユーロのフランス出場枠は来季も「3」にならないことが確定してしまいました。

フランス男子シングルで唯一フリーに進めたフランソワ・ピトー選手はSP13位「2枠」を確保できる10位以内に入れる可能性は十分あるので、「1枠になる可能性が」と書くのは不吉だと思って避けたんです。

しかし、第2グループに登場したフランソワ・ピトー選手は転倒&お手付きが相次ぎ、ディダクション(減点)6をくらう大崩れ。総合10位以内は到底無理ーというのが途中でわかってしまった後半の演技を見守るのは辛過ぎました。

彼はいい選手なんですが、シニアに上がって間もない若手です

北京五輪代表最終予選でも崩れてしまいましたが、この手のプレッシャーはまだ厳しかったのでしょう…

フランスの来季ユーロ「1」枠確定には、かなりガックリ

なのに引き続いて、イタリアまで来季ユーロ「1」枠になっちゃうかもしれない危機が来るなんて!

不穏な空気感を一掃したマッテオ・リッツオ選手のフリー

最終グループは第一滑走のルーカス・ブリッチギー選手(スイス)もミスが多め。その後大乱調だったダニエル・グラッスル選手の演技後は採点にかなり時間がかかったこともあって、場内はかなり不穏なようす。

この空気感の中でマッテオ・リッツオ選手がいい演技を見せられるかどうか、私はとても心配でした。

しかし、それは杞憂に終わります。

一番心配していた冒頭の4回転トゥループは無事降りました。あとはトリプルアクセル以下の構成のようですが、ジャンプの軸はとても安定していますし、落ち着いた表情に見えます。ひとつひとつ着実に技を決めて行って…細かいミスは複数ありましたが演技を綺麗にまとめ上げました。

今季あれほど調子が上がらなかったのに、このタイミングでこんな演技ができるなんて!JSPORTS解説の岡崎さんが珍しく感情的になって「さすがベテラン、修羅場を多くくぐってきただけある」と褒め称えていました。

リッツオ選手2位+メモラ選手11位⇒イタリア来季ユーロ出場枠「3」確定!

気になっていたイタリアの来季出場枠はどうなったか?
3人出場した場合、来季出場枠「3」を確保するには上位2名のポイント合計が13以下が必要です。

マッテオ・リッツオ選手2位、ニコライ・メモラ選手11位。2ポイント+11ポイントで合計13ポイント。ギリギリで3枠確保です!マッテオ・リッツオ選手が来季継続するかどうかはわかりませんが、イタリアには他にも実力ある選手がいますのでファンとしては3枠ありがたいです。

何よりも、今季の不調を心配していたマッテオ・リッツオ選手がまさかユーロ銀メダルで五輪代表をつかみ取るとは。(イタリアのスケート連盟から正式発表が出たのかどうかは不明ですが、メディアも本人も五輪出場は確定として話をしているようです)

「メモラ選手が怪我してしまったからリッツオ選手が代表になった」のではなく、「マッテオ・リッツオ選手が良い演技をして代表を勝ち取った」と思わせてくれた演技で本当に良かったと思います。

<1/19追記>
イタリアのメディアがリッツオ選手で代表決定のニュースを出しているのが確認できました

エストニア:セレフコ兄弟の代表争い最終決戦

SPでは兄弟が2&3位発進!

五輪代表争いをユーロまで持ち越していたエストニアのセレフコ兄弟。SPでは兄のアレクサンドル・セレフコ選手が88.71で2位、弟のミハイル・セレフコ選手が88.28で3位に入り、注目を集めました。

ふたりはSP後にもらったスモールメダルを手に、「ユーロの表彰台に兄弟で一緒に乗るのがずっと夢だった」と語っていました。
(欧州選手権や四大陸選手権、世界選手権などのチャンピオンシップ大会では前半戦1~3位にスモールメダルが付与されます)

「片方がいいと、片方が悪い」兄弟の歴史

セレフコ兄弟はこれまで同じ大会に出ると、片方がよくても片方が調子が悪いということが非常に多い二人です。大きな国際大会で揃って好成績を残したことは記憶にありません。

初めて兄弟揃って出場したユーロ2024は、兄が銀メダルを獲るも、弟はSP落ち。

ユーロ2025は、弟が7位に入るも兄不調で9位でエストニア3枠ならず、ワールド代表は弟に。

なので、SPの結果は「ついに兄弟の成績が“いい方”で揃った!」とセレフコ兄弟ファンにとってはたまらない展開でした。

それでも私は、「これで五輪代表が決まる」というプレッシャーは大きいはず。二人ともフリーで崩れて表彰台を逃すかもーと不安を抱いていました。

今大会はSP&フリー共に兄弟の成績がシンクロしたが…

最終グループ4番滑走で先に登場したのは、弟のミハイル・セレフコ選手。冒頭の4回転トゥループ2本が上手く入らなかったのはまだ想定の範囲内でしたが、トリプルアクセル2本目で転倒してコンビネーションジャンプにできず。これが大幅失点となり、フリーは142.02。

「この点数だと、アレクサンドル・セレフコ選手の五輪代表はまず確定だろう」と思っていたのですが…

アレクサンドル選手の冒頭の4回転ルッツがトリプルになってしまったのはともかく、次の4回転トゥループでも転倒してびっくり。「6分間練習と違って表情が硬い。緊張しているんだろうか?」と急に不安に襲われました。そして、トリプルアクセル2本目で2度目の転倒。コンビネーションジャンプをつけられず、大幅失点になりました。

「何もそこ(2本目のトリプルアクセル転倒⇒REPEAT扱い)まで兄弟お揃いにしなくてもいいのに~!」って、叫びましたよ

その結果、今大会の成績はこうなりました。全てが見事に並んでいます。

SP:兄88.71(2位) 弟88.28(3位)
フリー:兄143.75
(10位) 弟142.02(11位)
総合:兄232.46
(5位) 弟230.30(6位)

君たち今までほとんど成績をシンクロさせてこなかったのに、何で今回はそこまで揃えてくるんだよ!
何も悪い方までシンクロすることないのに~!と嘆きました

エストニアの五輪代表の正式発表はまだのようですが、この結果だと兄のアレクサンドル・セレフコ選手で確定かと思われます。

どちらが選ばれるにせよ、納得のいく好演技で五輪代表をつかみ取ってほしいと願っていたので、少し残念な展開でした。

エストニアは来季ユーロ「3」枠確保

しかし悪いことばかりだったわけではありません。

しかし今回は、ミハイル選手がこれまでの最高位の6位に入り、兄も5位で二人のポイント合計は11。エストニアの来季ユーロ出場枠は「3」で確定しました。アーレット・レヴァンディ選手も出場できます!

「兄弟が揃ったユーロ表彰台」の夢はおあずけ

でも、今回で成績をシンクロできるようになったので、次回こそいい方だけにシンクロしてくれるよう祈ります

表彰台争いはどうなったか

ここからは、「ユーロ表彰台争い」の結果についてです。
ミラノ五輪シーズンということもあり、本来なら一番の注目ポイントなのに後回しになりました。

ニカ・エガーゼ選手は完全優勝

SP・フリーとも1位で完全優勝を遂げたのはニカ・エガーゼ選手(ジョージア)

ここまでクリーンにまとめきれたフリー演技は久しぶりではないでしょうか?シーズン半ばから調子を落とし気味でしたが、挽回してきました。

ジョージアは全カテゴリに上位入賞できそうな選手が揃っており、団体メダルの有力候補です。今回ジョージア勢はペアと男子シングルで共にユーロ初優勝。ミラノ五輪に向け、弾みをつけてきそうです。

メダル候補たちの「譲り合い」により、予想外の選手が銅メダルに

メダル候補だったアダム・シャオ・イム・ファ選手の欠場にケヴィン・エイモズ選手のSP落ち。そして、フリーでのルーカス・ブリッチギー選手やダニエル・グラッスル選手、セレフコ兄弟の乱調。

その結果、ほとんど誰もメダル予想をしていなかっただろう、ゲオルギー・レシュテンコ選手(チェコ)が238.27で3位になりました。

ゲオルギー・レシュテンコ選手(チェコ)は昨年9月の北京五輪最終予選で代表枠獲得を逃した後、「トリプルジャンプしかない選手が五輪出場を決めたこと」について批判的なことを口走り、海外のフィギュアスケートファンから批判を浴びました。

4回転以外のジャンプで複数ミスをした五輪最終予選とは異なり、今回は4回転トゥループとサルコウ合計3本を含む全ジャンプが入りました。しかしスピンはレベル1と2があり、フリーのPCSは70.63。上位2名のPCSは80~85点台で、大差があります。

「ここまで極端なジャンプ特化型選手が表彰台に乗れてしまうほど、今回のユーロ男子シングルは低調だったんだな」と思わせられる最終結果に、私は正直少しがっかりでした。技術点を武器に表彰台に乗るのも一つの勝ち方ですが、他の候補達にもう少し頑張ってほしかったなと思いました。

その他の選手の一言感想メモ

もう一つ注目していたポイントに、シャンペリーに戻ったデニス・ヴァシリエフス選手の演技がありました。SPもフリーの新プロも、まだ粗削り部分が多く見えました。でも表情は終始穏やかでしたし、これからどんどんよくなりそうです。

環境の変化が大きかったのが影響したのか、今大会ではレベルの取りこぼしなどが多くてSPフリーとも点は伸びずでしたが、最終的には227.51で9位。イギリスの観客から暖かい声援を貰っていました。

しかし、20代後半の選手の演技後半に「剣の舞」を使うのはステファン・ランビエールさんあまりに鬼すぎやしませんかね?

私は「剣の舞」には10代後半の体力があり余った若手男子プロのイメージしかありません
久しぶりにフィギュアスケートで「剣の舞」を聞いた気がします

その他にも、色々あったんですけど、書き切れないので箇条書きメモだけ残しておきます。

★期待の若手マティアス・リンドフォース選手(フィンランド)やイアン・ワイラー選手(スイス)がユーロ初出場。将来が楽しみ!

★ベテランのヤリ・ケスラー選手(クロアチア)がいぶし銀のような好演技。29歳で自己史上最高成績のユーロ14位にはビックリ!

SPはミニオンズ、フリーはサタデーナイトフィーバーではじけたトマス=リョレンス・グアリノ・サバテ選手(スペイン)の演技は超印象的!
(ブノワ・リショーさんはこういう振り付けもできるのなら、もっとやってほしい!)

★若手のアダム・ハガラ選手(スロバキア)が10位にランクインしてスロバキアが2枠になってる!

スイスも2枠だ!(ブリッチギー選手4位、ワイラー選手21位で25P、2枠獲得条件28P以内をクリア)

ケヴィン・エイモズ選手(フランス)は靴を変えたことが原因でメンタルの問題ではないと話してる模様。五輪ではいい演技をお願いしたい。五輪後も現役続行してくれるので一度はユーロでメダルをと思っていたけど、1枠になったら来年の出場はないだろうことが残念…フランス1枠恨めし過ぎる

ちなみに3枠はジョージア、イタリア、エストニア。2枠はチェコ、スイス、イスラエル、ウクライナ、ラトビア、スロバキア。フランスを含む他の国は1枠です。

ユーロ2026のペアやアイスダンス、女子シングルについては余裕があれば振り返るかもしれませんが、五輪前のもうひとつのチャンピオンシップ大会・四大陸フィギュアスケート選手権は1/22(木)から始まります。

そして、今日はミラノ五輪日本選手団の結団式と壮行会が行われました。いよいよ、という感じです。

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