「宇野昌磨選手がいない2026ミラノ・コルティナ冬季オリンピック(ミラノ五輪)」を、私はきっと複雑な想いで見ることになるだろう。
ーー長年彼を応援し、「ミラノ五輪シーズンまでは現役でいてほしい」との願いを持っていた私は、ずっとそう思っていました。
しかし実際のところ、「宇野昌磨選手がいないミラノ五輪」に対して辛い気持ちになることは一度もありませんでした。
とはいえ、感傷的な想いに全く襲われなかったわけでもなく…何とも微妙な心情でした。
今回は、自分の気持ちに区切りをつけるためにも、この「何とも言えない感情」を整理してみました。
引退から約2年、ミラノ五輪を身構える気持ちの変遷
宇野昌磨さんが現役引退を発表したのは、北京五輪から2シーズンが経過した、2024年5月。
この頃から私の頭には「楽しみにしていたミラノ五輪を私はどんな気持ちで迎えるのだろう?」との不安がありました。それがこの2年でどう変わってきたのか、まず振り返ります。
引退直後:すぐには諦め切れなかった現役続行への期待
2023-24シーズン終了後、心境の変化を感じ取っていたファンの多くは宇野昌磨さんの引退を覚悟していました。それでも私は心の奥で、彼が「現役続行」を選んでくれないかとの望みが捨てきれませんでした。
引退発表直後に書いたこちらの記事では、引退を祝福しながらも「オリンピックなどで世界中の人にもっと彼のすばらしい演技を見てもらいたかった」という思いを綴っています。

1年後:心境は落ち着くも、「ミラノ五輪では感傷に襲われそう」と心配
幸い引退後の活動は精力的で、引退発表から丸一年経ったときに書いた下記の記事では「思いのほか落ち着いてた心境で1年を切り抜けられた」と書いています。
それでも「ミラノ五輪シーズンはまた別の感傷に襲われそう」と恐れてもいました。

ミラノ五輪約1年前:ボストン世界選手権で襲われた感傷
「宇野昌磨さんが引退しなかった可能性」に備えてチケットを買っていた、2025世界フィギュアスケート選手権(ボストンワールド)。
フジテレビ解説陣に加わった宇野昌磨さんが近い席にいたこともあり高揚モードで観戦できたものの、この時は強い感傷に襲われた瞬間が何度かありました。

今、改めて読み返してみると、ミラノ五輪で感じた感傷との温度差に驚きます。
この時はまだ傷口がうずいていたけれど、今はもう完全に傷跡になったんだなと実感します。
ミラノ五輪約2か月前:「わずかな未練がこれで消えそう」との域に
その後アイスショー「Ice Brave(アイスブレイブ)」で新たな挑戦を続ける昌磨さんの姿を見て、「競技への未練」は徐々に薄れていきました。
意外にもゲームに取り組む姿から「試合の時の緊張感」を感じることもできて、「試合に出ている彼をもう少し見たかった」という想いも少しは満たされました。
その結果、2025年末には「ミラノ五輪で僅かな未練も消え、完全成仏できそうです」と書くまでに至っています。

そして、今の感覚としては…たぶん成仏できたかなと思います(苦笑)。
ミラノ五輪の観戦中、色々心の中をよぎった感情はあれど、辛いと感じることはありませんでした。今月末の世界フィギュアスケート選手権(プラハワールド)も、感傷に浸ることもなく観終えられそうです。
ミラノ五輪中に「もし現役を続けていたら…」と考えた瞬間
私がミラノ五輪期間中に「昌磨さんが今も現役を続けていてミラノ五輪に出場できていたらなぁ…」と思ったきっかけは3つありました。
ミラノの会場を埋めた観客を見たとき
「満員の会場を見たらきっと複雑な気持ちになるだろう」とは思っていました。やはりその通りでした。
無観客だった北京五輪とは対照的な光景
ミラノ五輪のフィギュアスケート競技の観客は総じて暖かかったですよね。素晴らしい演技には惜しみなく歓声やスタンディングオベーションが送られていました。
賑やかな会場を見ると、「宇野昌磨さんにとって最後の五輪が無観客試合だったこと」を少し悲しい気持ちで思い出すことはありました。
北京では、関係者しかスタンドにいない状態での演技。どんなに素晴らしい演技をしても、声援も拍手もまばらでした。
やるせなさを強く感じたのは、宇野昌磨選手ではなくネイサン・チェン選手
ただ、宇野昌磨さんはその後の世界選手権などで有観客の試合に出ています。
世界選手権で初優勝した2022モンペリエワールドでは観客の喝采を受けて演技をできたことを幸せに思いましたし、ワールド2連覇を遂げた2023さいたまワールドは超満員でした。
私が今回やるせなさをより強く感じたのは、北京五輪が事実上の引退試合となったネイサン・チェンさんに対してでした。

ミラノ五輪で金メダリストたちに送られた観客のスタンディングオベーションを見て、「平昌五輪で辛い結果になったネイサン・チェン選手が北京で見せたあのフリーも、大喝采を受けるべき演技だったのにな…」と複雑な心情を覚えました。
一方、当のネイサン・チェンさんは、ミラノ五輪の会場にコメンテーターとして訪れて楽しそうにしていました。その姿を見て微笑ましいとも思いましたが、満員の五輪会場にいる彼を見る私の想いは若干複雑でした。
ミラノ五輪会場で楽しく過ごすネイサン・チェンさんの映像まとめはこちら
北京五輪を最後に引退した選手は他にもいましたし、中には新型コロナ感染で出場すらできなかった選手もいます。やむを得ない事態だったとはいえ、「本来の五輪を体験してもらいたかった」という想いは今後も残りそうです。
試合前のフィギュアスケート選手関連の映像を見たとき
日本の放送で、フィギュアスケート選手の取材映像が流れたときにも複雑な気持ちになることがありました。
余りにも少なかった北京五輪での現地情報
北京五輪は、とにかくテレビで放送される現地映像が少なかったように思います。コロナ禍で現地に入れたスタッフが少なかったこともあったかとは思いますが、日本のメディアが流す映像や情報はあまりにも偏っており、北京五輪時の現地情報は海外メディアが頼りでした。
私は恨みがましい性格なので、現地の公式練習情報をちゃんと流してくれなかった当時のテレビ局については根に持っています。後ろにちらっと映っているのに、どういう練習内容だったか紹介すら満足にしてもらえないことも多かったですし。北京五輪は身内ですら現地入りが制限されていたから、メディアが出してくれる情報が全てだったのに。

ミラノ五輪では公式練習情報がふんだんに放送されていて、羨ましくて仕方なかったです
有名選手に偏りがちな報道傾向は今も…
とはいえ、テレビ報道については著名選手に偏りがちな傾向は少し残っているとは感じました。「この選手は実績の割に映像紹介が少なすぎない?」と思ったことも。
ただ、今回は観客撮影映像も多く出回っていましたので、テレビで紹介が少ない選手もSNSなどを追えばカバーできました。
その結果、大手メディアでは取り上げられなかった選手やコーチのリアクションも、SNS経由で拡散。アンバー・グレン選手や佐藤駿選手の日下匡力コーチの言動が注目されたのも、その結果です。
2022北京五輪でもSNSは活用されていましたが、「組織が拡散をねらい、後日撮影した情報」が主体でした。関係者や観客が撮影したものが自然と拡散していくのとは、また性格が異なります

もしミラノ五輪に「宇野昌磨選手」が出ていたとしたら、北京五輪のときよりはメディアに取り上げられたかもしれません
でも、私がそれで満足できていたかどうかは少々疑問です
結局過去を思い出していやな気持ちになっていたかも…
男子シングル個人戦のリザルトを見た一瞬
個人戦男子シングル終了後にスコアを見たときにも、「もし宇野昌磨選手が出ていたら」という気持ちがほんの一瞬だけよぎりました。
大波乱の衝撃のあとで一瞬よぎった「たられば」
ミラノ五輪個人戦男子シングルフリーは、SP上位3名全員が乱れた演技となりました。最終グループで「会心の演技ができた」と言えるのは、金メダルを獲得したミハイル・シャイドロフ選手(カザフスタン)のみ。

試合を見ていた最中は、「宇野昌磨選手がいたら」との想像は一度もせずじまい。ただただワクワクして試合を見ていました。
そのせいもあって、最終グループの展開はただただショックで、呆然。
しかし試合終了後、1位291.58、2位280.06、3位274.90という点数を見たときーー

初めて「たられば」が一瞬だけ頭をよぎりました
※北京五輪は1位332.60、2位310.05、3位293.00
しかし男子フリー最終グループは、リンクがかなり荒れていた様子に見えました。さらに団体戦の表彰台が原因でブレードが刃こぼれする非常事態までありました。日下コーチが研磨対応してくださったとはいえ、選手たちは皆かなり厳しいコンディションで臨んでいただろうと思います。ここで好演技が出来る保証なんて誰にもない。
そもそも一般的なピーク年齢を過ぎた宇野昌磨さんが、以前のような高得点を出し続けられる保証もありません。なので、この「たられば」がよぎったのは本当に一瞬だけでした。
今、改めて自分に「たられば」を考えることを許しても…もし昌磨さんがミラノ五輪で三大会連続メダルを獲れていたとして、自分は喜べたでしょうか?ミラノ五輪個人戦男子フリーは、未練がましいファンに「たられば」の妄想を許さない衝撃的な展開でした。
ミラノ五輪で宇野昌磨さんの引退を惜しむモードにならなかった理由
結局、危惧していた程の感傷モードには陥ることなくミラノ五輪は閉幕しました。その背景には、「引退後の2年間の密度」があったと思います。
引退直後はまだ強かった、「引退を惜しむ」気持ち
宇野昌磨さん本人は「現役生活に未練は全くない」とセカンドキャリアをスタートしました。
しかし私にとっては「ようやく応援に時間を割けるようになった」矢先の引退だったため、私は「ファンとしてやりきった感」を感じられず。「ミラノ五輪シーズンまであと2年間、彼を応援したかった」という心残りが強くありました。
「挑戦の過程」「プログラムが成長していく過程」を見られた
アイスダンスやストリートダンスなど、「新たな挑戦」が多かったアイスショー「Ice Brave」を多数鑑賞出来たことは大きかったと思います。

「プログラムが1年をかけて成長していく過程」を、引退後も味わうことができるとは思ってもいなかったです
「Ice Brave 新横浜 Special Edition」千秋楽のときには、シーズン終わりのワールドを見ているのに少し近い感覚を味わえました。
撮影されていたこともあって、「積み重ねてきた成果をどうか発揮できますように」と祈るあの感覚…何とも懐かしかったですね。試合のヒリヒリ感が少し減ったぶん、ちょうどいい塩梅になったかも(笑)。
これがもし一般的なアイスショーで1~2演目を演じる姿を見続けるだけの2年間だったら、私の感じ方は違っていたと思います。
「宇野昌磨の凄さを世間に知ってほしい」との願いが、別の形で…
私が昌磨さんに「もう一度五輪に出てほしい」と思っていたのは、「世間に宇野昌磨の凄さをもっと知ってほしい」という願いがあったからです。「彼がこれまで実力&実績にふさわしい報道をされてきていない」との、長年積み重なった不満が背景にありました。
五輪ほどの瞬間最大風速はなくとも、「細く長く続く効果」もある
確かに五輪は普段フィギュアスケートを見ない一般層からも大きな注目を浴びます。
今回逆転金メダルを獲得した「りくりゅう」こと三浦璃来/木原龍一組への注目度は強烈で、「瞬間最大風速」で五輪にかなうものはないと圧倒されました。
しかし、私は宇野昌磨さんがここ1~2年で得てきた、X(Twitter)やゲームでの活躍経由の注目も決して捨てたものではないと思っています。風速は五輪に比べればそよ風程度かもしれませんが、長くず~っと吹き続けています。
昨年末の「2025年の宇野昌磨さんプレイバック」記事を読み返して気づいたのですが、この中で紹介していた「ゲーマーさんへのスケート指導動画」は、当時60万回再生手前でした。

その動画は現在(2026/3/11時点)で78万回再生を超えています。大晦日に公開したゲーマーさんへのスケート指導動画第二弾(こちらは現在80万回再生)の相乗効果が最大の要因。
しかしこれまで世間でフィギュアスケートが注目されるたび、抜き出しショート動画がバズるたび、宇野昌磨さんがゲームやX(Twitter)で話題になるたび、どちらの動画も再生が伸びています。
つまり…
「彼の凄さをもっと知ってほしい」という私の願いは、私が期待していた展開とは全く違う流れで、じわじわ実現に近づいているんじゃないか?
と最近思えるようになってきました。
3/21~のゲームイベント「VSPO!SHOWDOWN」も「知ってもらえる」チャンス
宇野昌磨さんは、3月21日(土)~22日(日)に有明アリーナで開催されるゲームの大きなイベント「VSPO!SHOWDOWN」にゲームストリーマーの一人として出演予定です。(2日目の日曜日のみに参加)

今週3/10にはメンバーとの顔合わせ配信を行い、一同で対策を練っていました。
(ちなみに昌磨さんの弟の樹さんは対戦相手の女性VTuber「ぶいすぽっ!」の大ファンのため、昌磨さんに「全敗」を望んでいるらしいですw)
有明アリーナに集まるファンは「ぶいすぽっ!」のファンが大半でしょう。昌磨さんたちは完全「アウェー」状態での参戦となります。でも、そんなファンの中にもこのイベントをきっかけに宇野昌磨さんに新たに関心を持つ人が少しは出て来るかもしれません。
(各種ゲーム関連の配信を追うと、ゲームやストリーマーのファンの中にも「フィギュアスケート競技に多少の興味があったorある」という人が一定割合いることに毎度驚きます)
競技引退後に「世界中の人にもっと知ってほしい」という夢は少し厳しくなりましたが、「国内で関心を広げる」という夢にはじわじわと近づいているとは思える日々。

私が当初望んでいた形とはかなり異なりますが、これはこれで興味深いので気長に行く末を見守りたいです

