スペインのテネリフェで6/10~12にかけ行われた、2026 ISU(国際スケート連盟)総会。
日本のメディアで話題になったルール改正や北京での2028年合同世界選手権(複数のISU競技を同時開催)、グランプリシリーズ(GPS)へのセミファイナル導入案だけでなく、SNS対策やアイスダンスでの情報共有の新たな取り組みなど、さまざまな改革の動きが見られました。
今回は、総会で話題になった内容について振り返ります。
今回のISU総会の流れ
先日の記事でも伝えた通り、今回の総会ではルール改正関連の投票は行われません。

ただ、既に決定された事項の発表などは行われています。ジャッジの偏向度の調査報告など、選手の動きの解析に使う新技術のプレゼン、選手に対するSNS反応の分析報告などもありました。
メディアには非公開でしたが、アイスダンスのオリヴィア・スマート選手(スペイン)と男子シングルのケビン・エイモズ選手(フランス)がソーシャルメディアについて語る会議も行われたようです。
日本の共同通信の記者も現地に行っていますが、現時点で出ている記事は主要な項目に限られています。無料で読める媒体としては、同じく現地に行っているフィギュアスケート専門記者のジャッキー・ウォンさんのサイトが詳しいです。総会はISU公式YouTubeチャンネルにてライブ配信されており、実際に関係者の発言内容を直接確認することもできます。
総会初日には、日本スケート連盟から円安に関連する懸念事項についての言及や、今ISUが推進している試合でのLED等を使用した演出について「名古屋グランプリファイナルの日本人観客からは6分間練習の演出は気が散るとの苦情が多数寄せられた」という主旨の報告もありました。
連盟の提言内容の記事(有料)はこちら。私も6分間練習は余計な演出を加えず見せてほしいと感じた一人です。苦情は出していませんが…

2026-27シーズンのルール改訂について
ISU総会を機に、「2026-27の新シーズンからジャンプの本数が減る」云々の報道がされています。

改正自体は2年前の総会で決定済み
ただしこの改正自体は2年前の総会で決定済みの内容です。総会ではその変更事項や、その他の細かい規定についての確認が行われました。

私はこの改正自体は、シングル競技でのジャンプ偏重が多少は是正されそうだと好意的に受け止めています
フリーの既定ジャンプ回数が1つ減りはしますが、今まで3連続ジャンプ扱いだった、オイラー(軸足を替えるジャンプ)を挟んだコンビネーションジャンプが2連続扱いに変更されます。その結果、オイラー入りの連続ジャンプにもう一つジャンプを付けられるようになります。「REPEAT」(同種の単独ジャンプの繰り返し規定違反)判定ジャンプの点数も基礎点の70%から80%に変更され、失点が若干減ります。
なので「規定上のジャンプ数は減るものの、実際に演技で跳ぶジャンプ数やジャンプの得点はさほど変わらない」場合もあり、観客には「ジャンプ減」の印象は意外とあまり感じられないかもしれません。
シングル競技でのルール変更への期待
私は逆に、今まで見たことのないコンビネーションジャンプが見られそうなのが楽しみです。2年前に決定していることですから、選手たちも時間をかけて対策を進めてきています。
たとえば、ニカ・エガーゼ選手(ジョージア)は、4回転サルコウ‐3回転トゥループ‐(オイラー)‐3回転フリップのコンビネーションの練習動画をSNSにあげています。以前のルールだと「4連続ジャンプ」扱いになってしまうので試合では実施不可能でした。これを決めればかなりの高得点が狙えます。
オイラーを挟んでトリプルフリップが飛べる青木祐奈選手は、ダブルアクセル-トリプルフリップ-ダブルアクセルの連続ジャンプを投入する見込みです。これまでの試合では見られなかった連続ジャンプが何種類も見られそうなことにはワクワクしています。
また、スピン・ステップの配点が僅かではありますが上がります。特に、独創的な振り付けが期待できる「コリオスピン」の導入は個人的に楽しみです。
現役続行予定のドノヴァン・カリーヨ選手(メキシコ)が、コリオスピンの試みを先週Instagramストーリーにアップしていました。スピンの名手たちが注目を集めるシーズンになるかも?
2028世界選手権は他スケート競技と合同で北京開催決定
総会初日に、スピードスケート・ショートトラック・シンクロナイズドスケーティング・フィギュアスケートの世界選手権を、2028年に北京で同時開催することが決定したとの発表がありました。
実は、「2028年にはISU競技の合同世界選手権をする予定」ということは、昨年の12月のISU理事会時に既に公表済み。昨年末には海外のスケオタを中心に話題になっていました。
2025/12/22公開のISU理事会資料に2026年春に「4競技の合同世界選手権」の正式承認を目指すとの記載がある


当時この情報に対して最初に感じた想いは…
そんなことされたら、ホテルの予約取りにくくなっちゃうじゃん!
ただでさえワールド開催時期の会場周辺ホテル価格は高騰して争奪戦なのに!!ーーでした(苦笑)
「2027世界フィギュアスケート選手権が、フィギュアスケート単独で開催される最後の世界選手権になるのかも?」という危機感を感じたことが、フィンランドタンペレワールドに行こうかと考えた理由の一つでもありました。なので私は2027ワールドチケット販売開始前にタンペレの会場周辺のホテルを調べ、予約済みでした。
しかし、世界情勢の変化による航空料金高騰の懸念が出てきたうえ、宇野昌磨さんと本田真凜さんのアイスダンス現役復帰で今季は国内大会観戦に集中しようと決断。タンペレ行きを見送った――と書いたのは、先月末に公開した記事。

「今後海外観戦するとしたら、せいぜい四大陸選手権。世界選手権観戦で海外に行くことは当面無くなるだろうな」と思っていました。
…しかし、北京なら日本から数時間、数万円で行けます。ホテル価格も欧州や北米よりは安い。ちょっぴり心は動きました。
まぁISUとしても「合同世界選手権」を開催できる地域は限られているとの認識はあるようなので、2028年以降も毎年合同開催にはならないかもしれませんけどね…。
2028北京の世界選手権のチケット販売のハードルが2027タンペレワールドのように高くならないことを祈ります。合同開催だから、何かとハードル上がりそうですよね。(タンペレワールドは旅行代理店が大量に良席を抑えたためか個別チケット手配に困難が多く、痛烈な批判を浴びています)
2028合同開催世界選手権への不安
北京での2028合同世界選手権でフィギュアスケートの会場になりそうなのは、「首都体育館」か「国家体育館」です。2010北京グランプリファイナルと2022冬季五輪の会場は、「首都体育館」。私が現地観戦した2023北京グランプリファイナルは「国家体育館」での開催でした。

首都体育館は北京の中心部にありますが、国家体育館は、中心部から若干離れた北京オリンピック公園の敷地内にあります。
この会場は、着席するまでに2回のセキュリティチェックがありました。首都体育館でのセキュリティチェック情報はわかりませんが、もしこの会場での開催となれば、同等あるいはそれ以上のセキュリティチェック体制が予想されます。長丁場になる世界選手権では、一度は食事などで会場外に出て休憩を取りたいのですが、セキュリティチェックがかなりわずらわしそうですね…。
ちなみにセキュリティチェックの際、現地観戦者からは「国旗が没収された」との報告が相次いでいました。気が早いですが、2028世界選手権でも同じ対応をするのかどうかは気になります。
2027-28はGPF前にセミファイナル導入へ、ワールド4月開催案は断念
総会初日に出た話題で私が最も驚いたのは、GPF前にセミファイナルを実施し、GPFは年明けに実施、四大陸とユーロを3月にしてワールドを4月に実施するという案を、2027-28シーズンから導入したいーと発表したことでした。
この案自体は、今年1月には既に明らかになっていました。

以前も当サイトで紹介した、2026年1月の海外記事。この記事の中にも「グランプリセミファイナルを設けて、年明けの大会を1カ月程度後ろにずらす案」に関する記述があります。
提案されているスケジュール変更案では(略)、12月にセミファイナル、1月にファイナルが行われる。ただしオリンピック開催年は、グランプリの「レギュラー」シーズンは11月にセミファイナル、12月にファイナルが行われる。
そうなると、12月下旬から1月にかけて開催される国内選手権の日程変更を余儀なくされる可能性が高い。そのため、ISU加盟連盟の多くは、提案されている日程変更の一部に反対を表明している。
オリンピックイヤーを除き、ISUは、全体的な日程は現在とほぼ同じとなるよう、2月中旬に国内選手権を開催し、3月に四大陸選手権と欧州選手権を開催することを提案している。また、すべてのシーズンにおいて、世界選手権は3月下旬から4月中旬に延期される。※上記のフィリップ・ハーシュ記者の記事を機械翻訳したものを筆者が若干修正し引用(太字強調は筆者)
この大胆な日程変更提案は、国内外のコアなスケートファンの間では結構な話題になっていました。
私が見た限りでは「選手の負担が大きすぎる」 「各国の国内選手権の日程が崩壊する」 「チャンピオンシップ大会の代表選考をどうするのか」など、否定的なものが大半でした。今のGPF進出者選考は「エントリー運」に左右される部分が大きいので、不運なエントリーでGPF出場を逃す選手の救済措置になるという考えはあるのですが…。
加盟連盟の多くが反対を表明しているということでしたし、こんな大規模な変更をするには調整に何年もかかるだろうと思っていたんです。

それを2027-28シーズンにやろうって本気で言ってるの?
…とただただビックリ
トップレベルの選手にとっては賞金を得る機会が増えるのはいいことかもしれません。しかし、オフシーズンが短くなります。その期間で休養と次シーズンの準備をしなくてはいけない。現役選手たちのアイスショー興行参加機会の減少にもつながるかもしれません。賞金が増えても逆に総収入が減るということもありえます。
総会前半ではこの日程で確定かのような情報が流れていましたが、私はそれでも「本当にこの通り実施されるかどうかは怪しいのでは?」と思っていました。
すると、総会最終日にこんな情報が出ました。

国際スケート連盟(ISU)の金載烈会長が11日、スペインのテネリフェで取材に応じ、フィギュアで2027~28年シーズン以降も従来通りに世界選手権は3月に実施する考えを示した。雪上競技が一段落し、テレビでの露出がより見込める4月開催を模索したが、反対もあって断念したという。
同シーズンからグランプリ(GP)シリーズにセミファイナルを導入するため、シリーズ開幕が約2週間早まる見通し。
※上記共同通信報道記事より引用
やっぱり…って思いました。
だって2027~28シーズンのチャンピオンシップ大会はどこもこれまでの日程で会場確定しているし、各国の国内選手権の開催地とかも2~3年先まで決まっているところもあるでしょう。様々な条件をすり合わせて落ち着いていた日程を世界中で動かすとなったら、相当なリサーチと事前調整必要ですよね?
議論と調整が尽くされているようには見えませんでしたし、妥当の結論だと思います。
「SP・フリー廃止案」は2030年五輪後まで見送り
そして、フィギュアスケートファンが気になっていた「SP・フリー廃止案」とでもいうべき大幅なルール改革案の見送りですが…下記の記事を読む限りでは、あくまで今回は見送っただけで2030年のオリンピック後に導入する考えを捨ててはいないように見えます。

当初の案では現場からの反発が大きすぎて実現に繋がる道筋が全く見えないと思っているので、現場の声をしっかり聴いた上で改革案を練り直してほしいと思います。
アイスダンスのルール説明が一歩前進?
いくつかあった発表の中で個人的に一番今後の展開が気になったのは、前半で少し触れたSNSでの選手への誹謗中傷対策と、アイスダンスのルール説明に関するチャットシステムについてです。
技術委員会とアイスダンスコミュニティを繋ぐチャットが始動
総会で行われた説明によると、2026年1月から「Chat IDTC」なるものを開始。技術委員会とアイスダンスコミュニティを繋いでリアルタイムでの最新情報、説明、回答をチャットで共有できるようにしたとのこと。今後はQ&Aプラットフォームも追加する予定だそうです。

これは、選手や振付師、コーチなどから審判にオンラインで説明を求めやすくなるということでしょうか?
これまでは「審判からの情報をいち早く得られるクラブにいる方が有利」と考えられがちでしたが、これで少しはルールに関わる情報の流れが透明化して広く共有されるのだとしたら、興味深いです
ジャッジによる「判定に関する説明責任」に一歩前進?
私がこのサイトでも何度も書いている採点への不満点としては、「ジャッジ側の判定に対する説明責任がないこと」があります。
2025-26シーズンではアイスダンスにおいて、「選手への説明がもっと必要では」と思わせる事態が何度も発生しました。
宇野昌磨さんと本田真凜さんの現役復帰に複雑な想いを感じた理由の一つは、アイスダンスの判定の不透明さでした

これからどう活用が進んで、事態が改善されていくのかが気になります。このあたりは私たちファンの見えないところで進む専門的な話なので、効果のほどは新シーズンでの選手たちの反応を見て判断するしかありませんけどね。
ちなみに、これまでのアイスダンス技術委員長は今回の総会の選挙で、大差で落選しました。2025-26シーズン半ばでいきなり厳しいレベル判定を行い、ファンだけでなくトップ選手からも不満の声が出たGPS大会の審判です。このことも昨季の流れが変わる要因になるかもしれません。
ロシア・ベラルーシ選手の試合参加については後日の理事会で審議
私はこのISU総会で、ロシア・ベラルーシのジュニアでの試合参加を認めるかどうかの問題が言及されるかと思っていたのですが、全く言及なしでした。
どうも、この問題に関しては当初から「ISU総会後に発足する新たな理事会(6月13~14日開催予定)で協議される」と決まっていたようです。この週末にも結論が出る予定なので、引き続き注目したいと思います。


