また発生したフィギュアスケート界の「性加害告発」による資格停止処分騒動

左手を前に突き出し「NO」の意思表示をする人の白黒写真

上海トロフィーにデニス・テン杯やJGPSと3つも重なる今週末の試合の情報を追いつつ、先日の記者会見後の宇野昌磨さん&本田真凜さんのトーク動画(フジテレビ撮影)を観たりしている中に飛び込んできたこのニュース。11月のNHK杯出場メンバーに関わる事態なので触れておこうかと思います。

「過去に性被害を受けた」との告発を昨年受けていたアイスダンスのニコライ・ソーレンセン選手(カナダ)の処分が、「6年の試合出場資格停止」と確定しました。

この処分については日本でも共同通信社が報道し、大手新聞社&スポーツ紙がそのソースを基に報道しています。

既に現地入りしていた「上海トロフィー」も、滑走順まで出ていたのに出場停止NHK杯も出場取り消しがISUから発表されました。

今はまだNHK杯のホームページに出場選手として掲載されていますが、いずれ消されるでしょう。代わりにどの組が出場するかは現時点では確定していません。

どうでもいいことですが、NHKはソーレンセン表記ではなくサアアンスン表記なんですね

目次

ニコライ・ソーレンセン選手への告発→資格停止処分の経過

昨年の告発については、海外の詳報記事を読んだ限り被害者証言は信憑性が高そうだと感じました。

しかしこれは十年以上前の出来事。処分を確定させるのに必要な証拠が残っているようには思えず、厳しい処分が下りる可能性は低そう。それでも彼は世界中から厳しい批判&疑惑の目に晒されたので、彼女の最低限の目的は達することができたのではーと思っていました。

それが6年間もの資格停止処分が出たということは、何らかの証言なり記録なりが揃ったのでしょう。約1年間じっくり審議してきただけあります。

審議されていることが明らかになった時点から、彼に対する批判はかなりのものでした。

しかしニコライ・ソーレンセン本人は告発内容を否認していましたし、処分が確定するまでは「推定無罪」とすべき段階。なので私は試合会場に批判を持ち込むのは辞めて欲しいと願っていました

今年3月のモントリオールワールド開催前には「ブーイング」「抗議バナーの掲示」「ビラ配り」などを提案する人たちがいました。最終的には試合の空気感を乱さない静かな抗議となり、正直ホッとしたことを当時の投稿に書いています。

結局ワールドでのフルニエ・ボールドレー&ニコライ・ソーレンセン組はリズムダンスでミスが出て、総合9位でした。

しかし、今季GPSのアサインが発表されてビックリしましたよ。

フルニエ・ボールドレー&ニコライ・ソーレンセン組がアサインされている!

しかもNHK杯に名前がある!?

二人は32歳&35歳、アイスダンスなら現役を続続行でも引退でもおかしくない年齢。確か昨季の母国開催ワールドを花道に引退すると言われていたはず。「彼が引退後コーチになる予定」と聞いた被害者が「将来の生徒に被害が及んではいけない」と告発を決意したーと伝えられてたはずなのに何で?って思いました。

「結局処分が下されなかったから現役続けちゃおうってこと?コーチの道が断たれたから、汚名を少しでも晴らすため現役を続けざるを得ないの?それともワールドの演技には納得がいかなかっただけ?」

…と何とも言えない気分にはなりました。アサイン発表時はその後の進展情報が全くなかったので黙っていましたが。

近年多い「性加害」告発&加熱するファンの批判行動

世界各国で相次ぐフィギュアスケート界の「性加害」告発

ここ数年、フィギュアスケート界では「性加害」告発が相次いでいます。アメリカ、フランス、オーストラリア、カナダなどの国で関係者の処分が発表されました。

韓国と日本でも騒動が発生。どちらも現在ジュニアの選手が絡んでいたのに、当事者の名前が判明する事態になりました。

韓国の件は処分内容からいって相当の事実が確認できたのだろうと当初は思っていました。しかしその後出てきた処分対象者側の反論を聞く限り、妥当な処分だったかは今は疑問を抱いています。

とはいえその反論もどこまで信憑性があるかはわからず、真相は藪の中。処分対象の韓国女子選手2名が再審請求したものの3年&1年の資格停止処分は確定。両選手のGPSエントリーは取り消されています

日本の件は週刊誌報道に端を発したもので処分どころか実際のところ何があったのかなかったのかすら不明なままです。

加熱する海外ファンの批判行動

これらの「性加害」案件に対し、英語圏のフィギュアスケートファンの批判行動はかなり攻撃的です。

性加害は犯罪ですから本人への批判が飛ぶのは当然のこと。私が理解に苦しむのは、「告発された人と一見これまで通りの関係を続けていたスケーター」へのバッシングです。「関係を絶たなかった人」全てが攻撃対象になっているのです。

大勢の人形の中で孤立している人形が1体ある状況の写真

「なぜコーチし続けるのか、彼をクラブから追い出すべきだった」「告発があった後も選手たちが彼と食事したり出かけていたりするのは許せない」などなど。コーチ、同じクラブの同僚選手であるマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組、今季プロの振付を行ったギヨーム・シゼロン氏などをかなりきつい言葉で批判している人たちを何人も見かけました

フルソレ組が練習していたのは、トップクラスアイスダンサーの大半が集まる「I.AM」。批判されるのはかなりの人です。告発が明るみになってからソーレンセンと距離を保っているスケーターもいたようですが、一方でこれまで通りのつきあいを続けたスケーターもいました。

「あの告発を否定するなんて許せない」と思ってつきあいを絶つのも自由。「本人が否定しているし、事実がはっきりするまではこれまで通り付き合おう」と決めるのもまた自由。周囲の人たちがどんな行動を選択するかは本人が決めるべきことで、他者から非難される筋合いはないと私は思います。

被害者が「他スケーターへの攻撃は控えて」と声明を出すまでに

それでも余りにもバッシングが過熱化してきたので、ニコライ・ソーレンセンを告発した女性は、女性記者を通じて「彼と交友する周囲の選手まで攻撃するのは控えて」とのコメントを出しました。(この思慮深い内容は、彼女の告発内容の信憑性を更に上げるものでしたね)

コメントは画像で掲載されていてX(Twitter)の翻訳機能が使えません。ざっと内容を紹介すると、前半1枚目は彼女を支持してくれた全員&弁護士、セラピストたちへの感謝のことば。2枚目前半はソーレンセンに自分の責任を果たしてもらいたいという要望&彼のダンスパートナーであるローレンス・フルニエ・ボードリーを気遣うことばです。

そして2枚目後半部分は下記の通り。

フィギュアスケートファンの皆さんへ一言:
ニュースが報道されて以来、彼と一緒に写真に写っている人に対するいじめや報復は控えてください
彼と一緒に練習したり、競技したりすることを余儀なくされたスケーターたちは、耐え難い状況に置かれました。
安全な環境を作る責任は、主にコーチとフィギュアスケート連盟にあります。彼と近づいたり、この件について沈黙したりしたことで、仲間の選手を責めるべきではありません。
(上記掲載ポストの一部を機械翻訳)

被害者の女性は「コーチ陣や連盟、解説者については批判対象となるべき」と考えているようで、特にISU配信解説者(マーク・ハンレッティ氏)を明確に非難しています。

私はアイスダンスのISU配信は観ていないのですが、どうやら配信中に「フルソレ組は今季辛い状況にあった」という主旨の「同情」とも受け取れるコメントをしたため、彼女の告発を非難していた人たちを勢いづけてしまったようです。

好感度の高い解説者さんですが、3月の時点ではノーコメントを貫くべきだったと思うので、この件では責められても仕方ないと思います。

地面に描かれたNOの文字 上に落ち葉がいくつも載っている

私はこれを見て

「もし自分が長年一緒に仕事をしてきたビジネスパートナーなり同僚なりが性加害で告発された場合、私はどうするだろう?」

って考えこんじゃいましたよ。

告発内容に信憑性があると感じたなら、その人を見る目は変わってしまうでしょう。でも「有罪」と確定しない限りは契約を破棄したり、持ちかけられた契約を断ったりまではしないでしょうね。今まで以上の距離を慎重におきつつ、失礼にならない程度のビジネスライクな付き合いに徹すると思います。

その行動を告発者に批判されることは納得できますが、世間一般の人から攻撃されるのは受け入れがたいですね。文化の違い、価値観の違いなのでしょうか。

ケヴィン・エイモズ選手も「フランス人男性スケーターの性加害事件の証言隠ぺいに加担した女性コーチにつき続けていること」を理由に、かなり強烈なバッシングを食らっています。THE ICEでは元気な姿を見せてくれていましたが、先日の試合演技を見る限りまだメンタルは回復しきっていないようです。

罪を犯した人を「許さない」とか「嫌いだ」とか思うのは自由。でも、その人を許している人や受け入れている人を攻撃するのは「前科がある人とは口を聞くな」「前科がある人を近所で働かせるな」と言ってるのと同じように感じてしまいます。

周囲も含めて批判攻撃をしている一部の海外ファンからしたら、ケヴィン・エイモズ選手やギヨーム・シゼロンさんに喝采を送ってる日本人の気がしれないってことになるのでしょうか…

なんかどんよりした気分になってきたのでもうこのへんにしときます。

明日10/6の宇野昌磨さん出演の「初耳学」の予告が追加されるたびに「ナマで見るべきか」って悩みが深くなってたんですけど、そんな悩みが物凄くちっぽけなものに思えてきました…

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