2025ハルビン冬季アジア大会 チャ・ジュンファン選手の「ロコ」は圧巻でした

赤ワインが注がれたワイングラスのアップ

2025冬季アジア大会 、「最終日の女子&男子フリーの話題はアイスダンスFDとペアフリーの振り返りを出してから週末にゆっくりと…」と思っていました。

しかし、今日のチャ・ジュンファン選手の圧倒的なフリー演技についてはこの興奮が冷めないうちに書いておきたくて夜中につらつら書いてます。

チャ・ジュンファン選手のフリー「ロコへのバラード」は彼のこれまでの演技の中でもっとも心打たれました。圧倒的でした。凄かった。2023さいたまワールドフリーの007を大きく超えてきました。

採点表は下記に格納されています。Judges Details per Skater というタイトルです。滑走順(Start List)もここに入っています。

2025冬季アジア大会フィギュアスケート公式資料

目次

敢えて「兵役免除」について触れなかった理由

私、これまでの冬季アジア大会の投稿では敢えて「兵役免除」の話題は一切しないようにしていました。

韓国のスポーツ選手の兵役免除については五輪やアジア大会の度に話題になっていたので、私も昔から気にはなっていました。「五輪メダルかアジア大会金メダルを獲れば兵役免除されるらしいから、ジュンファン選手もアジア大会で金メダル獲れるといいね」と思い始めたのはもう何年も前。

アジア大会金メダルの方が五輪メダルよりもハードルが低そうに思えましたしね。でも、彼がシニアになってからはアジア大会の開催は一度もなく(前回のアジア大会はコロナで中止)

でも、ハルビン冬季アジア大会の「見どころ」として「彼が金メダルを獲って兵役免除なるか」を他の話題と並べて扱うのは違う気がしました。

そういう扱いにふさわしい話題じゃない気がして…
「兵役免除」のあり方には賛否両論ありますしね。

それに兵役免除の話題を出すと、私がライバルである日本選手たちの失敗を願っているような誤解を呼びかねないという危惧もありました。私はあくまで選手たち全員が力を出して闘った末に「そういう結果が出るのもいいね」という気持ちなんですけど、そこをうまく伝えるのは難しいなと。

何より、今年の冬季アジア大会金メダルが本当に兵役免除につながるのかは実際に発表があるまではわかりません。

韓国は「兵役法」でオリンピックのメダルかアジア大会の金メダル獲得を兵役免除の条件にしており、ロンドン五輪のサッカー競技で韓国チームが銅メダルを獲得し、選手18人全員が兵役免除されたーと報じられたのは2012年。冬季アジア大会においても2003年の大会(開催地は青森)でスピードスケート選手が金メダルを獲得し、兵役免除を受けたとの現地報道(東亜日報記事)がありました。

ただ、ロイター社から2018年に「韓国は軍事要員不足でスポーツ選手の兵役免除を見直すらしい」って報道が出たこともありまして。国内でも兵役免除を巡っては賛否両論が行きかっているようです。

先ほど検索してみましたが、私が調べた範囲では今のところ韓国内では「兵役免除確定」の報は出ていないようです。早く確定情報が出て欲しいなと思います。

そもそも出場メンバーが決まった時点で考えないようにしていた

そもそもですね、エントリーが決まった時点で「兵役免除=優勝は期待できないな」と思ってました

だって鍵山優真選手と佐藤駿選手とミハイル・シャイドロフ選手がエントリーしましたからね…。今季のチャ・ジュンファン選手の体調は万全とはいいがたく、この3人に勝てるかというと正直厳しいなと。

「アジア大会の金メダルよりもワールドの銀メダルを取る方がずっと難しいのに!」と恨み言の一つも言いたくなりました。

韓国の事情もよくわからないから、彼が兵役免除を受けることが長い目で見て本当にいいのかどうかもよくわからないし、もう考えるのは止めようと思いました。

しかし、SPでジュンファン選手が好演技をした結果、鍵山優真選手との差が思ったより少なかったので、ジュンファン選手逆転優勝の可能性は少しはあるなと思ってはいました。(といっても10点弱の差がありましたが)

ただ、それを実現するにはジュンファン選手の2023さいたまワールドフリー並みの神演技+鍵山優真選手の大きなジャンプミスが2回以上は必要です。

鍵山優真選手は4回転ルッツ入れる挑戦をするからいきなり完璧な演技とはいかないだろうけれど、多少のミスはありつつもまとめた結果、SPの点差で逃げ切って優勝するだろうと思っていました。

しかし、そのごく僅かだった可能性が実現してしまいました。

とにかく圧倒的だった「ロコ」

こちらが今日の配信動画です。


6分間練習の時のジュンファン選手は踏切り確認をしているところぐらいしか映っていなかったような…?そのせいで特に調子がいいようにも悪いようにも見えず。

そもそも私はこの時は佐藤駿選手の様子を一番心配していて、その次に鍵山優真選手のルッツを心配して、ジュンファン選手の心配はその次でした。彼の優勝はほぼ無いと思ってましたしね。

静かな気迫で始まった演技…でも抜けたルッツループのセカンド

ところが、始まってからの静かな気迫が凄かった。心配していた4回転サルコウが美しく決まり、次のトゥループも見事に決まってホッとしたのもつかの間、トリプルルッツートリプルループが単独になってしまいました。

「ああ、ここでセカンドループが入らなかったら、万一の逆転優勝展開の夢はこれで消えちゃったな」
…と、この時思いました。

そこからは優勝どうのこうのは一切頭になく、彼の演技を楽しむ時間。

チャ・ジュンファン選手は宇野昌磨選手と同様、所作の緩急のつけ方が素晴らしいと思っています。ちょっとした動作の抜け加減が何ともいえない空気感を醸しだし、「急」に切り替わった時のパワーをより強く打ち出す

色んな要素が次々と綺麗に決まって行って(スピン絶品過ぎ)、「あ~ルッツループさえ入っていれば…もうこれは今季一番の演技、いやジュンファン史上最高の演技だったろうに」と思っていたら…

最後の最後のトリプルフリップですよ!

えええええこんなド終盤のフリップにループつけてきたー!!!
うぉっギリギリだけど降りたー!!!!

着氷が若干乱れたので採点暫定表示が一回赤くなってマイナスがついたけど、すぐにマイナスが消えて加点0に戻り、赤がグレー表示に変わりました。

「そうだよ!こんな最後にセカンドループつけたってだけでもうGOE2ぐらいプラスしていいからそこからのマイナスでいいよ!!!」って思いました。

最終的にはセカンドループに「>(アンダーローテーション)」がついてGOEマイナス1.17点くらってます。まぁ確かに足りてなかったので、しょうがありません(苦笑)

渾身のリカバリーに持っていかれた感情

もうそっからは脳内ドーパミンがドバーという感じでした。凄い、何この演技!って感じ。間違いなく私の中ではチャ・ジュンファン選手史上最高の演技。

これ、昨年末の全日本選手権フリーの青木祐奈選手の最後のトリプルフリップートリプルループのリカバリーを思い出した人が多いんじゃないでしょうか。私もすぐにそれを思い出しました。

私、ジュンファン選手のフリップループをリアルタイムで見たの初めてでした。
(調べたら2021年のGPSイタリア大会で1回跳んでました。鍵山選手が優勝した大会です)

興奮冷めやらぬ中で感じたこと

余りにも感情を持っていかれてしまったので、「こんな一世一代レベルの演技を見せたジュンファン選手が報われてほしい」と真面目に思いました。鍵山優真選手がこれから滑るというのに。

でも、鍵山選手のミスを願っていたわけでは勿論ありません。ルッツ入ったいい演技を見たいと思っていました。矛盾してるんですけどね(苦笑)。もしこの後鍵山選手が素晴らしい演技を見せて優勝をかっさらっていっていたら、それはそれで盛り上がったと思います。

2023年四大陸選手権がそうでした。

長年応援し続けてきたキーガン・メッシング選手の引退イヤー
チャンピオンシップ大会の優勝には無縁だった彼が素晴らしいフリーをやり遂げて、「キーガン引退年に四大陸初優勝かも!!!」って内心凄く盛り上がった直後
若手の三浦佳生選手が完璧なフリー演技やってあっさり優勝をかっさらっていった。

あの時の展開みたいになってもそれはそれで納得したと思います。

まぁあの時は友人と「もう~佳生くんが空気全然読まないイイ演技してくるから~(笑)」とかは話してましたけど、あくまでも冗談。全選手が全力を賭けている大会ですから、優勝できるチャンスはどの選手にも逃してほしくはない。勝てる試合には勝たないとね。キーガン・メッシング選手が優勝できなかったのは残念に思ったけれど、三浦佳生選手の四大陸優勝を心から祝いましたよ。

今日はジュンファン選手の気迫と集中力がとにかくすごかった。彼にとってはボストンワールドよりも大事な大会だったのだろうと思います。ここぞという試合に集中してくる力はやはりベテランならではだと思いました。

鍵山優真選手は攻めの構成の結果、残念だったかもしれないけれど学びのある大会にはなりました。(ワールドのルッツ投入悩ましくなりましたが、これがワールドでなくてよかった…)

あれだけのミスがあっても銀メダルを確保できる、鍵山選手のこの安定感は本当にすさまじいと思いましたね。

今日はジュンファン選手の日でした。
鍵山優真選手の日も今後巡って来ると私は信じています。

「ロコ」リピートの旅にハマりそうな予感

8年前の北京アジア大会では宇野昌磨選手が「ブエノスアイレス午前零時/ロコへのバラード」で金メダルを獲り、今回チャ・ジュンファン選手が「ロコへのバラード」で金メダルを獲る。何だか勝手にご縁を感じてしまいました。

今日のジュンファン選手のフリーは今後の再生率高くなりそうです。最後のフリップループの驚きと感動が癖になります。

そして、これだけ「ロコ」を聞かされていると宇野昌磨選手版の「ロコ」も観たくなるんですよね。しばらくは二人の「ロコ」リピートの旅が続きそうです。

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