GPSアメリカ大会(スケアメ) りくりゅう優勝&友野一希銅 ペア&男子で“大乱調”が続出した理由とは

2025スケートアメリカの大会ロゴ画像

2025年フィギュアスケートのグランプリシリーズ(GPシリーズ)第5戦アメリカ大会(スケートアメリカ2025/スケアメ2025)。今回は、ペアと男子シングルをざっくりと振り返ります。

どちらもSPは楽しく視聴できたのですが、フリーは実力ある選手たちに大ミスが続出する「大波乱の展開」となり、喜びよりも精神的疲労感が強かったです。

2025GPSアメリカ大会(スケアメ)リザルト
※出場者リスト(Entries)、採点結果(Judges Scores)などの一覧です 

目次

ペアの演技振り返り

ここからは、ペアと男子の演技を順に振り返っていきます。

「五輪メダル争い前哨戦」は思いもよらぬ展開に

私にとってスケアメ・ペアの最大注目ポイントは、「りくりゅう」こと三浦璃来/木原龍一組と「メテベル」ことアナスタシア・メテルキナ/ルカ・ベルラワ組の直接対決でした。

でも、今大会で彼らが3位以下になることは考えにくく、双方グランプリファイナル(GPF)進出はほぼ確実そう。「二組ともこの試合にそこまでピークを合わせてこないだろうし、点差さえつかなければどっちが1位でもいいか~」ぐらいのゆるい気持ちでした。

技の成否次第で3位に入れそうな組が多すぎて、表彰台候補をリストアップするのを諦めたくらいだったので、「今回は3位争いに注目するか~」と思って見始めたのですが…

まさかこんな展開になるとは。

フリーはスピンやリフトなどでも大ミスが相次ぐ

りくりゅうはSPでサイドバイサイドジャンプでダブルになるミスがあり、2位発進。このままメテベルが逃げ切るかもしれないと思っていました。

しかし、フリー後半グループは何とも言えない空気感の展開になりました。

ジャンプでの転倒ならば予想の範疇であり全く驚かないのですが、GPSレベルの大会の後半グループではあまり見られないような大きなミスが多発したからです。

3位に入るかも?と期待していた組の一つ、「アコラフ」ことカリーナ・アコポワ/ニキータ・ラフマニン組(アルメニア)はペアスピン中に男性が転倒

スピン中に転倒するシングル選手は見たことがありますが、ペアスピンで見た記憶は思い出せず。

ペアスピンの転倒ってかなり危険なんですね…ヒヤッとしました

続く「ホッケクン」ことアニカ・ホッケ/ローベルト・クンケル組(ドイツ)は、リフトが上がらず。彼らほどのベテランがリフトミスをするのは珍しく、これまたビックリ。

りくりゅうは大ミスの流れには呑み込まれずに終了

この流れの後に登場したのがりくりゅうでした。

会場を包む妙な空気感に左右されることなく落ち着いて演技を進めた結果、大きなミスは3連続ジャンプのみ。最初のジャンプの際に三浦璃来選手が一度両足を突く形になってしまい、3連続と認められなくなってしまったのが理由で、失点は大きかったですが演技の流れは乱さずに済みました。

後半のサイドバイサイドのトリプルサルコウもスロージャンプも降り、終盤までスピードの落ちない演技はさすがでしたね。

「先ほどまでの大ミス連続の流れは何だったんだろう?」というくらい、会場を「グラディエーター」の力強さで満たしました。

最終滑走のメテベルがまさかの大崩れ

しかし問題はその後のメテベルの演技でした。

彼らの今季のフリーのシーズンベストスコア(SB)は148.07とりくりゅうのフリーSBを5点上回っています。他の試合でも130点台後半をコンスタントに出していますから、「SPの差もあるし、今回はメテベル優勝かな~」と思い、演技を見始めました。

しかし、最初予定していたサイドバイサイド3連続の冒頭ジャンプで女性が転倒、続く単独ジャンプでは男性が転倒して3連続にリカバリーできず。「ありゃ~これで僅差勝負になるか?」と思いました。

そして、中盤ではまさかのリフト失敗です。

このときルカ・ベルラワ選手は明らかに動揺していて、音楽に合わせ動くのも忘れているかのようでした。その後のバックアウトデススパイラルでもB判定(レベル1以下)…いつもはあんなに着実に技を決めていく二人が別人のようになっていました。

「GPS国際大会で優勝争いする選手がここまで崩れたことあったっけ…?」と思うほどの大乱調。

りくりゅうの演技で一旦上がった気持ちは、またもや沈んでしまいました。

りくりゅう優勝はおめでたいことですが、こういう勝ち方は望んでいなかったです

メテベルが崩れた理由は?

ふたりとも落ち着いた容姿なので忘れがちなのですが、彼らは昨季まで世界ジュニア選手権にも出ていた若手。試合経験が浅いためか、たまに派手に崩れるときがあるのを、すっかり忘れていました。

試合後に下記のインタビューとは別の報道で「現世界王者に勝てるかもと思って緊張してしまった」と伝えられていましたが、「いや君たち去年NHK杯でりくりゅう破って優勝してたやん!?」ってちょっと思いました(苦笑)。

しかし、こういう経験をGPS大会で積んだことによって、メテベルはミラノ五輪前にさらに強くなってしまうかもしれませんね。

北米勢のミスが少なめだったのはホッケーリンクのせい?

3位争いは、ミスが一番少なかった「ケリーアンルーカス」ことケリー・アン・ローリン/ルーカス・エティエ組(カナダ)が制しました。

(私は彼らのことを女性名しか覚えられずいつも「ケリーアン」と呼んでいるのですが、男性の名前が覚えられない最大の理由は、彼が「コンマチ」のニッコロ・マチー選手に似ているせいだと思います。同じリンクで練習されたら私は多分見分けがつきません…)

4位は「チャンハウ」ことエミリー・チャン/スペンサー・アキラ・ハウ組(アメリカ)でした。

こうして振り返ると、上位勢で大崩れしたのは欧州の選手ばかり。素人の推測ですが、今回使用されたアイスホッケーサイズのリンク(国際規格より小さい)に慣れている北米拠点の選手の方が有利だったのかな?とちょっと思いましたね。

ペアのGPF進出状況

りくりゅうは二戦とも優勝でGPF進出を決めました。1位&2位だったメテベル、コンマチことサラ・コンティ/ニッコロ・マチー組(イタリア)、ステデシことディアナ・ステラート=デデュク/マキシム・デシャン組の計4組が確定。

最終戦・フィンランド大会でハゼボロことミネルヴァ・ファビアン・ハーゼ/ニキータ・ボロディン組(ドイツ)がおそらく2位ー1位で出場確定する見込み。ペアのGPF出場枠は事実上残り1となります。

進出可能性を残しているのは5組いて、その中に「ゆなすみ」こと長岡柚奈/森口澄士組がその中に入っているっていうのが熱いです!

夢を見られるのはありがたいです

男子シングルSP

好演技多めだった印象

SPは80点以上を出した選手は5名。そのうち90点台が2名いますし、70点台の選手の中にはウラディーミル・リトヴィンツェフ選手(アゼルバイジャン)やリーアム・カペイキス選手(米国)など、実力を出せた印象の選手も多く、「好演技が多い試合」だったと思います。

壷井達也選手ニコライ・メモラ選手(イタリア)のように、4回転で転倒してしまった選手もいましたが、男子シングルなら想定範囲内のことです。

何より友野一希選手ケヴィン・エイモズ選手が予定構成をまとめ、1・2位に入ったことは嬉しかったです。

不調気味に見えたミハイル・シャイドロフ選手はSPをしっかりまとめきり、「これは首位か2位かな?」と思っていたら、冒頭の四回転ルッツのコンビネーションジャンプが「q判定(ごく軽度の回転不足)」に。その影響もあって3位となりました。

随分厳しいな~と思ったのですが、今思えばこの判定が優勝を分けたことになりますね…

友野一希選手のSP首位に大喜びした一日

友野一希選手は今季初めてSPをクリーンに決めました。この時期にこれだけの演技ができるとは!と嬉しかったですね。改善ポイントはまだあるので、点はまだ伸ばせます。シーズン終わりに100点超えを目指すのは夢じゃないなと思わせてくれる演技でした。

友野一希選手が真ん中の位置でプレカン(記者会見)に出ていることがとても嬉しくて、この日はプレカン動画を喜び勇んで視聴しました。

冒頭で友野選手が英語で話すところや後半のエイモズ選手の語りは見ごたえあり 友野選手の意気込みは今見るとせつないですけどね

「この調子なら2位以上に入ってGPFも夢じゃないかも?優勝もありうる?」とテンションが上がり、その勢いでSP振り返り記事を書いてしまおうかと思いました。でも、「いや、フリーで何が起きるかわからないからあまり気持ちを上げ過ぎても…」と思い直し、関連情報を探るのに専念。

関西で久々にGPSの地上波テレビ放送があるので、「明日はSPのリプレイやってくれるかな?早く見たいな。いい結果だとわかったうえで放送が見られたら最高だな」と思っていました。

フリーの多少の波乱は覚悟していましたが、まさかあそこまでの展開になるとは、考えてもいなかったです。

男子フリーは波乱続きに

採点システムのトラブルで17分の中断

私は午前中の配信をライブ視聴していました。
ーしかし、第一滑走選手の演技中に採点システムにトラブルが発生、なかなか得点が発表されません

確かに演技中に暫定技術点表示のカウンターが消えていましたが…れまでは同様の事態が発生しても、採点そのものには支障がなかったのにどうして?

現地にいたフィギュアスケート専門記者のジャッキー・ウォンさんによると、ジャッジが採点情報を紙に書いて、それをシステムに手入力し直していたようです。中断は17分。前半グループの残りの滑走者達は、6分間練習からかなり時間が空くことになってしまいました。

このような不測の事態に対応できる力が試される事態です。

再開後の演技は残念な演技の連続に(例外1名)

再開後は、期待に届かない残念な演技の連続となりました。

長く氷上で待たされていたダイウェイ・ダイ選手(中国)は冒頭の4回転トゥループは着氷しましたが、後半で2転倒。中断による悪影響があったせいかどうかはわかりませんが、その後もミスが複数ある演技が続きました。

唯一の例外は、前半グループ最終滑走者だったウラディーミル・リトヴィンツェフ選手(アゼルバイジャン)。

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彼は今大会、SP・フリー両方の予定構成を一見ノーミスで揃え、総合6位に入りました。とんでもないメンタル?それとも中断が無ければもっと凄い演技が観られていたのでしょうか?

彼の今季のSP「レオン」とフリー「ジョーカー」は、どちらも「ユーロ男子の個性派」色がムンムンしていて結構好きです

残念な演技を観続ける辛さ

後半グループの演技も残念な演技が続きました。

第一滑走だった壷井達也選手は4回転3本のうち2本が抜けと転倒。続くジェイソン・ブラウン選手も転倒こそなかったものの、セカンドトリプルが一度も入らず着氷が厳しいジャンプが多く、彼にしてはヒヤヒヤさせられる演技でした。

ダニエル・グラッスル選手は冒頭4回転が抜け、他の着氷も厳し気で点数が伸びず。ミハイル・シャイドロフ選手はまさかの2転倒…。ケヴィン・エイモズ選手もちょっとジャンプが怪しい感じでヒヤヒヤしましたが、彼は何とか制御して、ボレロの世界観は守り抜きました。

最終滑走・友野一希選手に与えられた絶好のチャンス

この時点で、暫定1位の総合得点は253.53。最終滑走は友野一希選手。「優勝の絶好のチャンス」です。

しかし、私は内心「絶好のチャンスはあかん…」と心配していました。

採点システムトラブルがあった時、私はこんなX(Twitter)投稿をしていました。

友野一希選手は急な代打出場とか、「来季ワールドの枠取りが厳しい」などのピンチには強い印象があるのですが、「ライバルの成績が振るわなかったからこれは優勝or表彰台に乗る絶好のチャンス!」というときに実力を発揮しきれないイメージが残念ながらあります。

試合進行が20分弱遅れたことは「ピンチ」にあたるからいいなと思ったのですが、その後のライバルたちの展開には余りにも「絶好の条件」が揃いすぎて、わずかな不安に襲われたのです。

もちろん期待する気持ちの方が大きかったですけどね。

そして、友野一希選手まで…

不安は、残念ながら的中してしまいました。4回転トゥループが2転倒になった時は本当に悲しかったです。

せめて単独4回転の2本の転倒ならば失点が少なくてすんだのですが…ここで体力を奪われたためか、トリプルアクセルも少し乱れ、後半の3連続ジャンプでサルコウがダブルになってしまいました。

今季は本当に五輪代表候補選手のショックな演技が続きますね…

三浦佳生選手と山本草太選手のGPS初戦演技は、心の準備をしていたから受け身体勢がある程度取れてはいました
(それでも衝撃でしたけど)

今回は期待が膨らんだ隙に投げを食らってしまった感があり、ダメージが大きかったです

幸いSP貯金が効いて銅メダルを獲得できましたが、最大の目標だった2位以上&パーソナルベストスコアの更新はならず。視聴していた側もショックでしたが、本人にはどれだけショックだったでしょうか

でも、最後かもしれないGPS大会で銅メダルを獲れたのはすばらしいことです!
あのSPがあってのことでしょう。表彰式での雄姿は配信終了まで、しかと見届けました。

<18:30追記>
これ、有料記事なんですが良かったです…読める方はどうぞ。

ケヴィン・エイモズ選手がGPS初優勝!

現在28歳のケヴィン・エイモズ選手は、長いキャリアの中で初めてのGPS大会優勝となりました。

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彼の演技が大好きな私は、こういう展開じゃなかったらもっと大はしゃぎしていたと思います。

でも、同様に長いキャリアを持つ友野一希選手の初GPS優勝を一度頭に思い描いてしまった後だったので、正直複雑で…。「一緒に大はしゃぎできなくてごめんね」という気持ちになりました。それでもこの大会で優勝したのが好きな選手でよかったです。優勝おめでとう。

男子のグランプリファイナル進出状況

既に名古屋GPF進出を決めていたイリヤ・マリニン選手(米国)、佐藤駿選手に続き、ミハイル・シャイドロフ選手(カザフスタン)が出場を確定させました。

残る3つの枠は、ダニエル・グラッスル選手、友野一希選手、ルーカス・ブリッチギー選手、そして最終戦フィンランド大会に出場予定の鍵山優真選手、アダム・シャオ・イム・ファ選手(フランス)、ジェイムズ・ブラウン選手(米国)の計6名で競う形となります。

友野一希選手に出場の可能性はまだ残ってはいますが、同ポイントのダニエル・グラッスル選手とスコア差では負けています。鍵山優真選手とアダム・シャオ・イム・ファ選手が下馬評通りファイナル進出を確定すれば出場は叶わず、補欠になる可能性が高いです。二人はそれぞれ初戦1位・2位ですから相当順位を落とさない限りほぼ確定ですし、出場メンバーからいって6位以下になるとは思えない。

全日本までもう1戦国際大会のチャンスを…という気持ちはあったのですが、他の選手の失敗や棄権は望まないので、ファイナル進出の夢は忘れます

何より最終戦のフィンランド大会がまもなく始まります。代表争いは「全日本勝負」なのは変わらずですから、気持ちを切り替えたいと思います。

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