2025世界フィギュアスケート選手権現地観戦の記録、今回は男子フリー整氷休憩中のトークタイム&第3グループの演技の振り返りです。
ネイサン・チェンさんと昔懐かしいスコット・ハミルトンさんが登場したトークタイムはちょっと多め(笑)
写真&動画が多めなので後半グループの感想は第3グループと第4グループに分けることにしました。
2025世界フィギュアスケート選手権リザルト(総合)
2025世界フィギュアスケート選手権男子フリー
フリー前半振り返りはこちら

現地観戦直後のフレッシュな状態で書いた記録はこちら

整氷中にネイサン・チェンさん&スコット・ハミルトンさんが登場!
男子フリーの整氷中トークタイムには、この日の午前に有料イベントのゲストで会場に来ていたネイサン・チェンさんが出て来るだろうと確信していた私。この日は整氷休憩突入後も、自席でデジカメを片手に待機していました(笑)。

ネイサン・チェンさんは会場のあちこちで目撃されていたようだけど、私はモントリオールでもボストンでも一度も遭遇できず…
せめてトークタイムに出て来る姿くらいは見たい!
しかしトークタイムのゲストはネイサン・チェンさん一人ではなく、スコット・ハミルトンさん(世界選手権4連覇&サラエボ五輪金)もでした!

あぁ私スコット・ハミルトンの現役時代知ってるけども!あの高速スピン大好きだったけども!控えめな性格のネイサンを彼と混ぜちゃダメよ~あんまりしゃべんなくなっちゃうかも…と危惧しました。
案の定、スコット・ハミルトンさん:ネイサン・チェンさんの喋る時間の割合は7.5:2.5位の比率でした(苦笑)。まぁネイサンは高速トークだから、実際の喋った文章量は五分五分に近いところまで持ち込んでいた印象ですw

ネイサン・チェンさんが最初に話したのは近況(飼い猫のローフちゃんの話)と、ボストンのこの会場での想い出。
「2014年の全米選手権の時にこの会場で君(アシュリー・ワグナーさん)が演技してるのをあのへんの席で見たよ~ここはすばらしい会場だね」ってな話をしていました。
帰国後調べてみたら、確かに2014年にボストンTDガーデンで全米選手権が開かれていました
こんな大きな会場で全米やったことあったのか~グレイシー・ゴールド選手の人気を活用しようとアメリカのスケート連盟が色々頑張っていた時期ですね
その後はスコット・ハミルトンさんが4連覇をしていた時期の心境を、いつもの調子でジョークを交えながら語っていました。話を楽しく聴きながらも、私は「ネイサン・チェンさんも新型コロナがなければ、きっと4連覇達成してただろうにな…」と思いちょっぴりしんみり。
でも彼は終始ニッコニコで、スコット・ハミルトンさんのジョークについての感想聞かれた時も笑顔でした。

そしてその後また話を聞くのかな?と思いきや、スコット・ハミルトンさんが大声で音頭をとって、会場の観客にウェーブを求めまして(笑)。

ステージ上のメンバーもノリノリでウェーブを指示。
スコット・ハミルトンさんは「こうやって盛り上げるのが僕の別稼業でね~」なんてふざけながら観客を乗せていきます。

こうなると私もカメラを向けたままではいられなくなり、立ち上がってウェーブに参加せねばなりませぬ(笑)。

ウェーブは会場内2~3周したかな?うまくいっているときは皆さんご満悦な様子でした。
おかげで私はいったん退出されていたフジテレビ解説陣3名が放送席に戻ってきていたことに全く気付きませんでした。私の昌磨さんセンサーもウェーブ要求の前には作動せず(笑)。
第3グループ
さて、ここからは第3グループの演技です。4回転ジャンプが多い男子は、第3グループの選手も表彰台に登れるチャンスあり。6分間練習を見守る観客の高揚感も高まります。
ジェイソン・ブラウン選手(米国)
ジェイソン・ブラウン選手のフリー演技は、曲が宇野昌磨さん現役最後のフリー後半で使った「鏡の中の鏡」。
今季不調気味だったジェイソン・ブラウン選手が素晴らしい完成度で滑り切った演技を見て、私は現地で複雑な感情に襲われました。

彼の演技内容&その時の私の感情の流れについては上記投稿でがっつり書いているので、ここでは前回書き切れなかったことのみ記します。
一つだけ文句を言いたいことがありました。演技前に場内モニターに映し出される紹介で、曲目がSPの「THE LEGEND OF TARZAN」と表示され「?」となったこと。

あの静かな世界への心の準備がちょっと邪魔されましたね。もっともジェイソン・ブラウン選手の演技は文句なしですぐに忘れちゃいましたけど。
昨季前半はトリプルアクセルが決まらず不安視されていたジェイソン・ブラウン選手は、このワールドにしっかり合わせてきてフリー4位、総合8位という見事な結果。SPでミスがなければ5位辺りに入っていた可能性すらあります。

これは、来季の五輪代表争いでかなり優位に立ったなと思いました。たとえ来季シーズン序盤の成績がふるわなかったとしても、代表候補にはカウントされるのではないでしょうか。
ルーカス・ブリッチギー選手(スイス)
今季ユーロ(欧州選手権)でついに優勝を果たしたルーカス・ブリッチギー選手。しかし、私が昨秋のフィンランド大会で見たようなパワーは今大会では出せず。
冒頭の4回転トゥループからのコンビネーションジャンプはセカンドがダブルトゥループとなり、2本目の単独4回転トゥループはダブルに。後半のトリプルルッツからのコンビネーションでトリプルループをつけようとしたものの転倒。その直後のトリプルフリップもダブルになり…とミスが連鎖した結果、フリーは14位でSP11位から順位を下げて総合12位。

SPの振り返りでも書きましたが、実は彼はユーロ後に入院して足の簡易な手術を受けていたんですよね。

彼としてはフリー進出にこぎつけ、「来季ワールド&五輪のスイス出場枠1確保」を達成することが今回のワールドの現実的な目標だったのかもしれません。演技後も比較的すっきりした表情をしていたように思いました。
チャ・ジュンファン選手(韓国)
チャ・ジュンファン選手のこのフリーもこれで見納め。初見時から「ジュンファンのロコ」として見ることができた作品でした。
なんといっても2月の冬季アジア大会のフリーは鳥肌ものでした。リカバリーのため、ラストジャンプのトリプルフリップにトリプルループつけたところは何度見返しても痺れます。

4回転トゥループがダブルに抜けた以外はいい演技だったし、惚れ惚れしながら見ることはできたんですけど…私は完全には没入しきれないまま終わってしまいました。ドラマチックな展開だったアジア大会の演技の記憶が鮮明過ぎて邪魔してくるんですよね。
後でジャッジスコア見ると「もうちょっとPCS出してくれてもいいんじゃないか…」とは思いました。ジャンプ1本抜けたとはいえ転倒して演技の流れも乱してないんだし。
同じ「ロコへのバラード」を使った名演技を持つ宇野昌磨さんの反応は気になったので、ほぼずっとフジテレビ放送席を視界の片隅に入れていました。でも、私達観客と同様に真剣に演技に見入っていた様子。目立ったリアクションは感じ取れずでした。
アダム・シャオ・イム・ファ選手(フランス)
2023‐24シーズンに一気に次期五輪のメダル候補に食い込んできたアダム・シャオ・イム・ファ選手。
今季前半は怪我のため彼比では低調モードでしたが、怪我からは回復したようで公式練習を見る限りでは調子は悪くなさげ。なのに今年もまたSPでミスが出て最終グループに残れずでした。
とはいえポテンシャルがとても高い選手ですから、フリーで昨季のモントリオールワールドのような演技ができれば一気に表彰台まで駆け上がれる可能性があります。
冒頭の4回転ルッツ降りられてホッとはしましたが、万全な着氷ではありません。その後のジャンプも、少し不安を感じさせるものもありましたが全部クリア。「これならひょっとして…?」と思わせる勢いがあっただけに、最後のトリプルアクセルで転倒してしまったのは残念でした。
本人が言うに、最初のアクセルジャンプで靴にトラブルが生じたとのこと。この靴トラブルがなければ後半アクセルも降りて表彰台に乗れていたかも?あるいは本人が下記のインタビューで言うように、最後のアクセルをトリプルルッツに変更して着氷できていれば、3位行けた計算にはなりますね。
Adam Siao Him Fa 🇫🇷 188.26 / 275.48
— Golden Skate (@goldenskate) March 30, 2025
“I kind of had flashbacks from last year. I did my best out there. Actually, I have a funny story to share – after my first Axel, one of my boots broke and got soft. In hindsight, I probably should have gone for a Lutz instead of the second… pic.twitter.com/4DWOuyATb4
五輪シーズンも振り付けはブノワ・リショーさんなんでしょうかね。リショーさんの振付は気に入っている演技もあるけれど、私はそろそろ別の方の振付で見たいです…。
アンドリュー・トルガシェフ選手(米国)
この日ある意味一番衝撃的だった演技をしたのは、アンドリュー・トルガシェフ選手だったかもしれません。
癖が無い誠実な滑りをする印象のあるアンドリュー・トルガシェフ選手。彼は今季グランプリシリーズ以降ずっと安定していました。グランプリシリーズ大会3位と4位でファイナル進出もあと一歩でしたし、全米選手権はSPもフリーもクリーンな演技で280点台を出し2位。
全米は国際大会より点数高く出る傾向ではありますが、彼のパーソナルベストスコア(PB)が246.58であることを考えると全米での演技がとてつもない好演技だったことがわかると思います。
私は他候補のカムデン・プルキネン選手やジミー・マー選手が好きなので少々複雑な想いもありましたが、全米であんないい演技されたら「彼がワールド代表で当然!」と思いました。そして、五輪代表アメリカ男子3番手争いでは彼が一歩抜け出したかな?と考えていました。

その彼が一体何でこんなことに…。7回のジャンプ中、問題なかったのはトリプルループとフリップのみ。4回転は2本とも転倒。動揺が出たのかスピンステップも精彩を欠きレベル4が取れたのは一つのみ。
冒頭の4回転トゥループがジャンプで転倒が2回続いたとき、観客からはため息がもれました。しかしそれは一瞬のこと、気を取り直したボストンの観客は彼に熱い声援が送り続けます。女子フリーのキミー・レポンド選手のように、前半で転倒が連続しても後半盛り返せる場合だってありますからね。
しかし彼は一向に立ち直る気配がなく…。負のスパイラルにはまっていく彼を観客はなすすべもなく見守るしかありませんでした。あんなに熱気に溢れていたボストンの観客が徐々に静かになっていくのを見るのは辛かったです。

彼はとても愛されている選手で、プレゼントを用意していたファンが会場にはたくさんいました。
ワールド2週間前、「ぬいぐるみの会場持ち込み禁止」が発表されて騒ぎになったとき、「ピザ好きのトルガシェフ選手のためにピザのぬいぐるみを用意してあるのに!」というファンが多数悲鳴を上げていたことを下記の投稿にも書いています。(批判&要望が多かったためか、一転持込許可されました)

ファンは持参したプレゼントを、「元気出して」「あなたを応援してるよ」という想いでリンクに投げ込んだと思われます。でも、彼は周囲に目をやる気力も尽きた、呆然とした表情でリンクを引き上げていきました。キス&クライではけなげに笑顔を見せていましたけどね。
SP8位だったのにフリー23位で総合順位は22位。SPフリー共に4回転が入らなかった壷井達也選手の一つ下となりました。来季はこの演技のイメージを払拭する演技を見せてほしいです。その実力が十分にある選手です。
ニコライ・メモラ選手(イタリア)
ダニエル・グラッスル選手の競技結果が振るわなかったため、イタリア3枠は既に望み薄な状況。でも、だからこそニコライ・メモラ選手は枠がどうこうを考えずに演技に臨めたかもしれません。
今回も4回転はルッツ2本のみの構成です。
ダニエル・グラッスル選手といいニコライ・メモラ選手といい、高得点の4回転しか跳べない選手を見ると「4回転ジャンプの点数設定って…」ってわけわからなくなりますね(苦笑)。

去年のワールドでも勝負強さを見せたメモラ選手ですが、今年はフリーもクリーンにまとめきりました!
今回エッジコールはなく、ジャンプでの減点要素は2本目の4回転ルッツのみ(回転不足「<」判定だったので痛い)、167.24で11位、総合で10位。
3枠獲得にはダニエル・グラッスル選手との順位の合計が13以下である必要がありますから、グラッスル選手が足の不調を抱えていなかったとしてもイタリア3枠獲得は難しかったかもしれません。

彼の場合、いい演技をしても「回転不足やエッジコールで見た目の印象ほど点出ないかも…」とつい身構えてしまって素直に喜びきれないのがちょっともったいないなと思っています
私の思い入れが成長していけば、いずれデニス・ヴァシリエフス選手のように「回転不足?そんなもん知るか!」って境地に達する日が来るかな?
ミラノ五輪イタリア代表はマッテオ・リッツオ選手、ダニエル・グラッスル選手、ニコライ・メモラ選手の三つ巴の争いになりそう。開催国特別枠みたいな感じで一つ増やしてもらえないだろうかとマジで思ってしまいます。
今回はここまでです。最終グループは改めて。
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