「ペア」と「アイスダンス」の違い、実は説明しすぎない方が伝わると思う話

トレースが多数残ったスケートリンクに暖色系のライトが当たっている様子

宇野昌磨さんと本田真凜さんのアイスダンス競技での現役復帰宣言を受け、様々なメディアが「ペアとアイスダンスの違い」をこぞって説明しています。

高橋大輔さんがアイスダンスに転向した際とは異なり、今回はミラノ五輪でペアの「りくりゅう」こと三浦璃来/木原龍一組が注目を集めた直後とあって、「ペアとの違い」に重点を置いた解説になっていますが、「なんだかなー」と思うことが多いです。

ということで、今日はメディアの「カップル競技の説明方法」へのぼやきです。

目次

興味がない人にはわかりづらい「ペア」と「アイスダンス」の違い

違いの説明はもっとシンプルに

「ペア」と「アイスダンス」の違いは、私は超シンプルに説明するのが一番だと思っています。

  • 「パートナーを放り投げる or 放り投げない」
  • 「二人が揃ってジャンプをする or しない」

この二つで十分ではないでしょうか。何なら最初の一つだけでもいいです。

もちろん、これ以外にも違いは山ほどあります。でも、フィギュアスケートをあまり見ない人に説明する場合、それ以外の違いを挙げるのは逆効果だと私は思っています。

「アイスダンスにはアクロバティックな動きがない」との説明は混乱の元

最近私が見かけた説明では、ほぼ全てに「アイスダンスにはアクロバティックな動きがない」との説明が入っていました。

「それが一番混乱させる表現だろうに、なぜそれを入れるんだ…」と毎回歯がゆく感じながら見ていました

私がフィギュアスケートをテレビ観戦し始めた1980年代は、「アイスダンスは女性を肩より上に持ち上げてはいけない」「二人が離れて滑ってもよい時間が短い」というルールをアナウンサーが競技中に何度も説明していた記憶があります。

当時の私は、ジェーン・トービル/トーマス・ディーン組(英国)とナタリア・ベステミアノワ/アンドレイ・ブキン組(ソビエト連邦)が双璧で好きでした。

当時は動きが激しいと言われたトービル/ディーン組の演技ですが、アクロバティックなリフト技が増えた今見返すと、さほど派手には感じません。それでもフィニッシュに向け盛り上げるリフトでの動作は十分アクロバティックと言えるのではないかと思います。

当時は画期的な振り付けだった「ボレロ」には、審査員全員が芸術点で満点をつけた

当時の私が「アイスダンスはアクロバティックな動きをしない」と解説されたら、混乱したと思います。

もちろんアイスダンスにはペアのリフトとは異なるルールがきちんとあり、その範囲内で可能な動きで構成されています。でも素人にはそんな判断はつきません。

長らくアイスダンスを楽しんで来た私ですら、ミラノ五輪シーズンのライラ・フィアー/ルイス・ギブソン組(英国)のFD(フリーダンス)の冒頭リフトで「女性をあんなに上げちゃいけないのでは?」と混乱しました(男性の肘が伸び切っていなければOK)

アイスダンスカップルと全く同じポジションのリフトをペア選手がコリオシークエンスでやっていることもあります。「アイスダンスではアクロバティックな動きをしない」という説明は禁句だとすら思います。

ちなみに、「二人が離れて滑ってもよい時間が短い」という説明も、今ではわかりづらくなりました。2022-23シーズンにコリオグラフィックリズムシークエンス(ChRS)が導入されて以降は、二人が離れて激しく踊る場面の印象がだいぶ強くなりましたからね。

「ジャンプがない」という説明もわかりづらい

「アイスダンスにはジャンプがない」「アイスダンスのジャンプは1回転まで」と説明している場合も、ちょっと気になりました。

アイスダンスでは、パートナーと組んだ状態でサポートをされて跳ぶ「アシステッドジャンプ」があるんですよね。フィギュアスケートをよく知らない人にとってみれば、これもジャンプです。回転数の見分けもつきにくいのにそんな細かいことを言われても…とややこしくなるだけじゃないでしょうか。

ジャンプの回転数制限を紹介するよりも、「二人が同時にジャンプを跳ぶ/跳ばない」を違うポイントとして押し出した方がまだわかりやすいのではと思います。

興味のない人に判別させるのには情報を絞る必要

正直言って、ちょっとルールを調べてからペアとアイスダンスの最終グループの演技を一通り見れば、二つのカテゴリの違いは誰もが簡単に分かると思います。

でも問題は、それをやろうと思わせるハードルが結構高いこと

かなり興味を持たないと、人はわざわざ調べようとはしません。たまにテレビでやってるのをちらりと見る程度の人には何をどう説明したところで、「男女が一緒に滑っている」という1点のみで、一緒の競技に見えてしまうようです。

うちの旦那はもう何十年も私がフィギュアスケートの試合を視聴しているのを横目で見ているのに、未だにペアとアイスダンスを見分けられませんw

ミラノ五輪でアイスダンスを見ているときに「あの面白い二人(「りくりゅう」のこと)は出て来るのか」と聞かれました…

さほど関心がない人には「ペア」と「アイスダンス」の違いを何度説明したところで、覚えてもらうのは難しいものと私は諦めています。

観戦初心者に「ペア」と「アイスダンス」の違いをどう説明するか

とはいえ、「ペア」と「アイスダンス」って何が違うの?と聞かれた時点で、その人は最低限の関心は持っているということです。私も最小限の説明は試みます。

  • 「遠く(高く)に放り投げるのがペア、投げないのがアイスダンス」
  • 「二人同時にジャンプを跳ぶのがペア、揃って跳ばないのがアイスダンス」

まずこの2点を説明します。

そして

  • 「ペア」は「二人で大胆な投げ技」に挑戦するのが見どころ
  • 「アイスダンス」は「二人で複雑で難しいステップを滑りこなす」のが見どころ

とだけ伝えます。

本当は他にもたくさん見どころはあるんですけど、それを伝えたい気持ちはグッと抑えて(苦笑)。詳しく言いたくなったら、こんな風に伝えた項目に関することだけを掘り下げます。

  • ペアの投げ技は、シングルでは不可能な高さや飛距離が出せるのがスゴイ!
  • アイスダンスはスケーティングに特化しているので、下位選手でもエッジの使い方がとても上手い!

リンクでの移動距離、足元の動きなどに注目して見るようになれば、ユニゾン、衣装や楽曲表現など他の魅力は自力で発見できると思います。注目してみてもピンと来なければ、その人の好みではないということでしょう。

ちなみに
「大柄な男と小さい女が滑っていたらペア」
「うさんくさい男と派手な女が滑っていたらアイスダンス」
なんて見分け方を目にすることもありますが…

例外のペア&アイスダンスカップルは結構いるので、初心者にとっては混乱の元。この手の見分け方は、スケオタ同士のジョークとして語り合うものだと思っています(笑)

「ペア」呼びではなく「組」呼びにしてほしい

メディアのカップル競技の説明に対し、私はもう一つ不満があります。

それは、アイスダンスの組に対して「ペア」という呼称を使うことです。これが「ペア」と「アイスダンス」を混同させる一因にもなっていると思っています。

以前はメディアでは「渡辺・木戸組」「村元・リード組」などと言うことが多かったと思います。しかし「りくりゅう」「かなだい」などの愛称がメディアでも広く使われるようになってから「かなだいペア」「うたまさペア」などと書くメディアが増えてきました。

ペアをしている「りくりゅうペア」は許容範囲です。ただ、日本のスケオタは、アイスダンスの組は「ペア」ではなく「カップル」と長年呼び分けてきました。

なので、私はアイスダンス選手を「〇〇ペア」と呼ぶことには、強い拒否感があります

日本語では「カップル」=「恋人同士」との意味が第一義になっているので、一般メディアに対して選手を「〇〇カップル」と呼べとまでは言いません。

でも、日本語には「組」っていう便利な1文字で済む文字があります。
「かなだい組」「うたまさ組」と呼べばいいのにーとずっと思っていました。

愛称は「うたまさ」「いくこう」など単独で鍵かっこに入れて使い、後ろに何かを付けたいときは「りかしん組」「しょまりん組」などと呼んでほしいです。

二つのカテゴリの違いが認識されるのはいつ?

ペアでは、「りくりゅう」がミラノ五輪で劇的な金メダルを獲得。アイスダンスでは、昨年に櫛田育良選手と島田高志郎選手による「いくこう」と、西山真瑚選手と紀平梨花選手による「りかしん」の結成、そして今春の本田真凜選手と宇野昌磨選手による「しょまりん」の現役復帰宣言。

過去には海外選手と組んで大活躍したペア女子選手たちも、村元哉中さんや高橋大輔さんのようにシングルから転向して活躍したアイスダンス選手もいましたが、日本のフィギュアスケート界でペアとアイスダンスが同時にここまで注目を集めそうな新シーズンは初めてではないでしょうか?

今後メディアによるわかりやすい報道が積み重ねられ、4年後の2030年フランス・アルプス五輪開催時には一般の方にもペアとアイスダンスの違いがもう少し認知されるようになっているといいなと思います。
私もペアとアイスダンスの違いを聞かれたときに、ダラダラ語らないよう気を付けなくては…。

まぁ、うちの旦那は4年後もアイスダンスを見て「りくりゅうは出ないの?」と聞いてきそうですけどね(苦笑)

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