9月4日(金)から6日(日)まで、田中貴金属アイスアリーナ(東京辰巳アイスアリーナ)で開催された「木下グループ杯2026」。私は3日間とも現地で観戦しました。
今回はその締めくくりとして、前半は最終種目となった女子フリーを振り返ります。
後半では、ロシア勢の国際大会本格復帰に感じたことや、会場でのロシア国旗掲示をめぐる問題、来春の国別対抗戦に「AIN Team」が出場する可能性などを取り上げます。新ルールや若手選手たちのライバル対決など、3日間を通して印象に残ったことも併せてまとめています。
「木下グループ杯2026」リザルト
※滑走順や詳細タイムスケジュール、採点表などが確認できます
女子フリー
こちらが女子シングルの最終結果です。(敬称略、AIN2はロシア)
| 順位 | 選手名 | 国名 | 総合得点 | SP | FS |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 島田麻央 | 日本 | 231.32 | 2 | 1 |
| 2 | アレクサンドラ・イグナトワ | AIN2 | 221.06 | 4 | 2 |
| 3 | アンナ・フロロワ | AIN2 | 207.86 | 5 | 3 |
| 4 | 中井亜美 | 日本 | 207.72 | 1 | 4 |
| 5 | カミラ・ネリウボワ | AIN2 | 201.34 | 3 | 6 |
| 6 | ヴェロニカ・ジリナ | アゼルバイジャン | 193.00 | 6 | 5 |
| 7 | 青木祐奈 | 日本 | 181.79 | 8 | 7 |
| 8 | キム・ソヨン | 韓国 | 172.99 | 7 | 8 |
| 9 | アレクサ・ガスパロット | アメリカ | 158.04 | 9 | 10 |
| 10 | ユン・ソジン | 韓国 | 155.78 | 10 | 9 |
| 11 | アンドレア・モンテシノスカントゥ | メキシコ | 143.23 | 11 | 11 |
前半グループ|青木祐奈選手のリカバリーとミニマムスコア挑戦者たち
青木祐奈選手(日本)
前半グループで印象に残ったのは、昨季の四大陸選手権女王・青木祐奈選手。
SP終了後、大会数日前から肩に違和感があったことを明かしていました。

6分間練習でもジャンプの調子は今一つ上がっていない様子。無理はせず、ランキングポイントが入る順位にとどまってくれればそれでいい――と思いながら本番の演技を見始めました。
しかし、冒頭のトリプルルッツで転倒。得点源であるトリプルループをつけることができませんでした。
今季からはフリーのジャンプ回数が7回⇒6回、コンビネーションジャンプの回数が3回⇒2回に減っているため、コンビネーションジャンプでミスするのはこれまで以上に手痛いです。いつもの彼女なら後半の単独ルッツで取り返しに来るでしょうけど、後半で高難度のコンビネーションを入れるのはかなりのハイリスク。
しかし彼女は演技後半、6分間練習では決まっていなかった、ダブルアクセルからトリプルフリップ、さらにダブルアクセルをつけるジャンプシークエンスを無事着氷!

そして、予定では単独予定だったトリプルルッツはこの直後。「いや~さすがにリカバリーは厳しいか…ダブルループならつけられるかな?」と思っていたら…トリプルループをつけてきました!
回転不足で両足着氷気味にはなりましたけど、いや~ここでリカバリーを入れて来るとは。しびれました。

これが全日本選手権ならダブルにしたかもしれませんが、今回はCS大会ですし何も手堅く行くこともないですもんね!
SP8位から、フリーは123.18点で7位。総合181.79点で7位まで順位を上げ、ランキングポイントも獲得できました。
ミニマムスコアへの挑戦者たち
事前記事でミニマムスコア(CTES)取得に注目していた米国のアレクサ・ガスパロット選手と、メキシコのアンドレア・モンテシノスカントゥ選手は、残念ながらどちらも今回世界選手権の基準には届きませんでした。
前半グループで滑った韓国のユン・ソジン選手も、ミニマムスコア獲得に挑戦した一人。彼女は今季シニアデビューで、昨季のJGPS(ジュニアグランプリシリーズ)イタリア大会では銀メダルも獲得しています。

SPとFSを合わせたTESは77.12点となり、四大陸選手権のミニマムスコア75点を2.12点上回ってクリアしました!世界選手権の88点まではあと10.88点です。
彼女はグランプリシリーズ(GPS)フランス大会に出場予定なので、そこで再び世界選手権ミニマムスコア取得を狙えます。
後半グループ|ロシア勢 VS 島田麻央選手&中井亜美選手
強烈な6分間練習
そして迎えた後半グループ。島田麻央選手はトリプルアクセルと4回転トゥループ、イグナトワ(旧姓トゥルソワ)選手は4回転ルッツ、中井亜美選手とネリウボワ選手はトリプルアクセルと、6名中4名がフリーの構成に高難度ジャンプを入れています。

おかげで6分間練習は、各選手のジャンプ確認を追いかけるのが本当に忙しかった!
イグナトワ(トゥルソワ)選手の4回転ルッツがとにかく見たくてずっと目で追っていたんですが、なかなか決めてくれなくて(苦笑)
早く会場入りしていれば女子の公式練習を見ることができたのですが、私は3日間とも遅めの会場入りだったので、事前の練習は全く見られていません。

私が彼女の演技をナマで見るのは2017年の名古屋グランプリファイナル以来。当時の彼女はまだ4回転ルッツは跳んでいませんでしたから、そもそも私は女子の4回転ルッツを一度も目前で見たことがないのです。

ついに綺麗に4回転ルッツを降りたときには、観客から「おおお」という歓声がわきました
さすが皆さん、よく見ていらっしゃいます
中井亜美選手は、トリプルアクセルを降りているところは確認できました。島田麻央選手のトリプルアクセルは決めていましたが、4回転トゥループは転倒やステップアウトなどで、成功している所は見られず。ネリウボワ選手はじっくり追いかける余裕が全く無くて、トリプルアクセルらしきジャンプをちょっとお手付き気味に着氷したのをかろうじて目撃できたくらいです。
ヴェロニカ・ジリナ選手(アゼルバイジャン)
ヴェロニカ・ジリナ選手は今季からアゼルバイジャン代表となっていますが、ロシアで生まれ育ったスケーターです。
ジュニア時代はロシア選手として複数種類の4回転ジャンプを武器に活躍していました。肩や背中の怪我で約3年半試合から離れていたのですが、これが競技復帰戦となりました。
SPでは「レディーガガ」の曲を奇抜な手袋をつけて滑り、日本のネットニュースにも取り上げられていました。

フリーは赤を基調にした、どことなくインドを思わせるエスニックな衣装。
私は最初「白人女性スケーターがやりがちな、エスニック系プログラム?」と思いながら見ていました。
でも、フィニッシュポーズは斬新でした!
座った状態で回転する「キャンデロロスピン」を思わせるようなコレオスピンをしたあと、そのまま両手を頭上に掲げたポーズで終了します。

男子選手と違い女子だと薄いタイツ1枚だけなのに、氷上に座った状態でスピンするのは膝や足が痛くないのでしょうか…?
何よりも、座った状態で回転しながらも音楽終了に合わせてジャッジ側を向いて、ぴったり真正面で止まれるのは凄いなと思いました
キス&クライでは観客に向けて「日本、ありがとう」「愛してます!」と書いた紙を見せていましたが、会場モニターでは全く文字が見えず。
場内の観客にとっては「真っ白な紙」を2回も見せてくれましたが、周囲の人たちは「全然見えないw」とちょっと受けていました。
何が書いてあるのかを知ったのは、取材に入っていたライターさんのSNS投稿。テレビ放送にも何とか映っていました。お願いだから誰か、太字のマジックペンを渡してあげて~と思いました(笑)。
アンナ・フロロワ選手(AIN ※ロシア)
アンナ・フロロワ選手は、映画「タイタニック」の音楽でラブストーリーを表現するプログラム。

トリプルアクセルや4回転といった高難度ジャンプがあるわけでも、強烈な個性や迫力あるスケーティングで魅せてくるタイプでもありません。でも、丁寧な所作でストーリーを描く力はあるように感じました。
出身国も名前も知らずに演技だけ見せられたら、私はロシアの選手だとは当てられないかも?と思いました。しかし、3時間のラブストーリーを4分間にギュッと詰め込んで足早に見せてくれる感じはロシアっぽいといえばロシアっぽいかも…?
アレクサンドラ・イグナトワ(旧姓トゥルソワ)選手(AIN ※ロシア)
そして、個人的にこの日の女子でかなり楽しみにしていた、アレクサンドラ・イグナトワ選手の登場。
私はロシアから出場する選手たちのプログラムの情報は全く調べずに会場に行きました。なので今回の演技はすべて初見。
彼女のフリー冒頭で流れて来た曲は…ジャーニーの往年のヒット曲「Separate Ways」!
日本ではTBSのWBC中継のテーマ曲としてお馴染み。本当は失恋ソングなのに、勇ましい曲調のせいでもはや日本のスポーツ中継の定番曲になっています。

80年代を感じるベタなハードロックですが、私はこれ結構好きでして(笑)。この曲を使ってくれるだけで超アガるんですよ!(フィギュアスケートでは、ペア競技のツイストやスロージャンプのところでよく使われているイメージ)

その曲の前半の盛り上がり部分で4回転ルッツを豪快に決めるんですよ!?
私も周囲も皆変な声が出ましたよ!アガることこの上ないです
しかもですよ、その次に流れて来たのはこれまた私の好きなケイト・ブッシュの「Running Up That Hill」。(2024-25シーズンの樋口新葉選手がフリーに使った曲ですが、その時も私は喜んでいました)
でも今回は「何でSeparate Ways のあとにRunning Up That Hill…?組み合わせの意図がさっぱりわかんないけれど、どっちも好きな曲だからもういいや!」という感じでした。
終盤のステップで若干スピードとパワーが落ちた感じは否めませんでしたが、大きく崩れることなく最後まで滑り切りました。産後約1年ということでSPはともかくフリー後半はスタミナが持たないのでは?と心配していたのですが、滑り切れる構成にとどめていたおかげでしょうか。
フリー146.14点、総合221.06点で総合2位となりました。ジャンプばかりが注目されがちですが、スピン、ステップをすべてレベル4でそろえているのは努力のたまものだろうと思います。
試合後の囲み取材は、息子さん連れで対応。

息子さんは観客席にも連れてこられていたようですが、私は直接目にすることはありませんでした。
なので囲み取材時に撮影された写真の数々を「この子が会場での練習時にママと一緒にスクワットしてたというミーシャ君か~かわいいな」としげしげ眺めてしまいました(笑)。
カミラ・ネリウボワ選手(AIN ※ロシア)
イグナトワ(旧姓トゥルソワ)選手の演技後は場内がかなり騒然としていたので、この直後の滑走はかなりやりづらかったと思います。しかも、SP3位スタートだったカミラ・ネリウボワ選手にとっては、ただでさえ久々の国際大会で、この環境だったわけで…
冒頭のトリプルアクセルがシングルに抜けてしまったときは、観客からは大きなため息が漏れました。そこには「トリプルアクセルが見たかった」という残念な気持ちもありつつ、「やっぱりこの環境で決めるのは難しかったか…」という想いも混じっていたような気がします。
その後はきちんと立て直してまとめたのはさすがロシアのトップクラス女子選手という感じでしたが、今季ルールでは高難度ジャンプの「抜け」はこれまで以上に点数に響きます。125.26点でフリーは6位、総合5位と表彰台を逃しました。
島田麻央選手
そしてSP2位だった島田麻央選手の登場です。
フリーは「雨ごい」のプログラムらしいのですが、この日の東京は朝から雨が降り続いており、夜には豪雨が予想されている状況。現実としては雨ごいは全く必要ないのですが、彼女はフリープログラムを実にのびのびと滑り切りました(笑)。
取材にも「今日は雨だったので楽しく滑れた」と答えています。

冒頭のトリプルアクセルは決めるだろうと思っていましたが、成功確率が高いとはいえない4回転トゥループも見事に着氷!観客席から起きた歓声にはちょっと驚きが混じっていたようにも思います。
私が彼女が冒頭のジャンプ両方を決める演技をナマで見たのはこれが3回目。それでも、この日は6分間練習で跳べていたかがちゃんと確認できていなかったので、かなり驚きました。昨季は怪我の影響でジャンプ不調が続いていましたしね。
なのに、今季は国際大会初戦でいきなり両方で加点つき成功というこの上ない出だし。

「もうここでノーミス券使っちゃっていいの?」とすら思いました(笑)
とはいえ、トリプルルッツのコンビネーションジャンプと、トリプルフリップからのジャンプシークエンスの双方に「q」と「<」という回転不足がついていましたから、まだまだ伸びしろがあります。
フリーは152.48点、総合231.32点。

9月上旬のシニア国際大会デビュー戦とは思えないような得点で、SP2位から逆転優勝しました。

中井亜美選手
最終滑走は、SP首位の中井亜美選手。島田麻央選手が大技2本を決めた演技に、場内はかなり沸いています。
中井亜美選手はこのような事態にも比較的強いメンタルの持ち主のように思いますが、今回は少し勝手が違うように感じました。
何がどう、というわけではないのですが、滑走前に中庭コーチと話している後ろ姿を見たときに、いつものパワーを感じられなかったのです。私のただの思い込みかもしれませんけど。
「パリのアメリカ人」で鮮やかなイエローの衣装が彼女にピッタリなプログラムだったのですが、私には若干の「弾けきれない感」が最後まで残りました。

冒頭のトリプルアクセルは回転が足りずに両足着氷のような形になり、転倒。(採点上は<<とダウングレードを取られました)
「抜け」ではないし、後半をまとめられれば上位に踏みとどまれそう…と思ったのですが、後半のトリプルループ~トリプルサルコウの着氷が少し乱れ、練習ではその後につけていたダブルアクセルにつなげられませんでした。これが痛かったですね。
後半のダブルアクセルは基礎点だけでも3.63点あります。最終的に3位と0.14点差だったことを考えると、非常に大きな取りこぼしとなりました。フリーは127.45点。総合207.72点となり、総合4位となりました。
若手同世代ライバルの「明暗」
中井亜美選手と島田麻央選手は、ジュニア時代から競い合ってきた存在です。
同学年なのに、誕生月の違いで中井亜美選手が1年早くシニアに移行、ミラノ五輪で銅メダルを獲得できましたが、島田麻央選手は五輪後のシニアデビュー。
その二人がシニア国際大会で再び競い合うことになったこの大会、どういう結果になるかな?と思っていました。結局は、SP1位だった中井亜美選手は表彰台を逃し、SP2位だった島田麻央選手が逆転優勝。SPとフリーで明暗が分かれる結果になりました。
これには、同様にSPとフリーで明暗が分かれた、中田璃士(りお)選手とソ・ミンギュ選手(韓国)との対比を思い出しました。
彼らもジュニア時代から表彰台を競い合ってきたライバル。

SP1位だった中田璃士選手は、フリーでは思わぬジャンプ回数規定ルールにはまり、総合5位。SP9位だったソ・ミンギュ選手がフリー1位となり、中田璃士選手の一つ上の総合4位に入りました。

中井亜美選手と島田麻央選手、中田璃士選手とソ・ミンギュ選手。
ジュニア時代から競い合ってきたライバル同士は、シニアでもこんな試合をいくつも重ねていくのでしょう。
連続ドラマの新シリーズ初回を観終わったような気持ちになりました。
木下グループ杯2026を振り返って
ここからは、大会全体を振り返っていきます。
大雨の影響を心配しながらの遠征
木下グループ杯2026期間中は、日本南方沖に停滞する台風の影響で大雨となることが予想されていました。
私も豪雨を心配してレインコートやタオル、着替えなどの雨対策グッズを持参。
記録がてらに大会前日の台風24号ニュースをはっておきます

しかし辰巳周辺の天候は、初日は小雨程度、2日目は終日曇り。3日目は1日中雨が続いていましたが、移動時間は普通程度の雨だったので、レインコートは一度も使わずじまい。(会場の固い椅子の背もたれ用クッション代わりとしては大活躍しました)
最終日の夜の首都圏はかなりの豪雨だったようですが、深夜だったので影響は受けず。帰阪の翌日も小雨がパラつく程度でした。
ただ、日曜昼の新木場駅からの田中貴金属アイスアリーナまでの道中は、既に歩道が完全に雨水に浸かってしまっている区間がありました。夜道だとレインブーツなしでは足元がびしょぬれになりそうだと思い、帰りはホテルまでタクシーを利用しました。

GO!アプリでタクシーを呼んだら、幸い5分で到着!
私が受けた雨の影響は、その程度ですみました
しかし帰宅後、複数の地域で大雨の被害が報告され続け…昨夜9/8には名古屋で線状降水帯が発生し、宇野昌磨さんのご家族が経営するUNOcafeくるまみち店が浸水被害に遭いました。
私は今夏の「Ice Brave」愛知公演時に、「焼肉 龍音」さんに会食に行った際、すぐ近くのくるまみち店の前で記念写真を撮ったばかり。(この2店はすぐ近くにあります)
私は何の影響もなく帰ってこられたのに、あの素敵なお店があれほどの被害に遭ったかと思うと、ちょっと心苦しいです。どうか早く復旧できますように。
「Ice Brave」東京公演も木下グループ杯も、台風や豪雨予報を心配しながらの鑑賞でしたが、たまたま大きな影響を受けずに済んだのは、本当に運がよかったんだなと思います。
観客席の様子
木下グループ杯2026の3日間は、連日かなりの観客が入っていました。
さすがに前半日程では目の前にリンクが無いブロックは販売されていませんでしたし、スタンド上段にも空席がありましたが、1階のスタンドS席は連日ほぼ満員でした。

最終日の日曜日は、私が入場した時点で当日券もなしの完売状態。リンクが目の前に無い端のブロックの席から天井席まで観客が一杯でした。
私は3日間ともスタンドS席で観戦したのですが、バナーや国旗を多数備え、休憩時間中にはスマホでリザルトのチェックをするような「スケオタ層」が多かったように思います。時折聞こえて来る外国語から、ロシアや韓国などからいらした方も多かったように感じました。
「AIN」としてのロシア勢、国際大会本格復帰
今回もっとも世界のフィギュアスケートファンの注目を集めたのは、長らく国際大会への参加が禁止されていたロシア・ベラルーシ勢のAIN(中立アスリート)としての国際大会本格復帰だったかと思います。
毎日新聞のポッドキャスト情報によると、ロシアのメディアだけで約15社が来ていたとか…。
視聴規模はわかりませんが、海外から配信を視聴していたフィギュアスケートファンもWEB上では数多く見かけました。
ロシア国旗を掲げる観客について思うこと
ロシアのドーピング問題について十分な調査や総括が行われているとは思えないのに、ある意味なし崩しのように復帰となった現状を私は良いとは思っていません。
しかし、選手たちが試合に出場するのが許可されている以上、私はそこは切り離して「いい演技はいい演技として拍手で称えたい」と思って観戦しました。
でもやはり、この大会を終えて、彼らを応援するにあたって色々難しいことがあることを感じたのも事実です。

フィギュアスケートファンの間で今ちょっとした議論の種になっている、「ロシア国旗を掲げる観客」は私の周囲にはいませんでした。

でも、もし今後自分の隣にそういう方がいらしたら、どうしたものか悩ましいですね…
私個人としては、選手がAINとして出場していることの意味、AIN本人には、会場内で国旗やナショナルユニフォームなど国家を示すものの使用が厳格に制限されていることを考えると、会場でロシア国旗を掲げるべきではないと思います。
なので、私は今回のようにロシアのタス通信社が「ロシア国旗を掲げる観客」として報道した写真に、国旗を広げている人の隣に自分が映り込んで、同じような価値観の持ち主だと思われるのは避けたいです。
でも、観客に対する明白な禁止規定がない以上、「ロシア国旗を出すのはやめてください」とも頼みづらいです。
もし隣にそういう方がいらしたら…スタオベしたくなっても我慢せざるを得ないでしょう。あるいは運営スタッフに相談して席の変更をお願いするとか?
ーでも休憩時間はトイレや軽食だけですぐ終わってしまうのに、そんなことに時間を割きたくないですね。

「運営側から明確に禁止してほしい」というのが、正直な気持ちです
「ロシアの代表選手」は誰一人出場していないのですから、「出場選手・組が代表する国・地域以外の国旗の掲示は禁止」という形をとればよいのではないかと思うのですが…
11月のNHK杯男子シングルは欠場が出そうで、現在GPS補欠1・2位のジキジ選手とグメンニク選手が出場する可能性があります。まぁ私はNHK杯に行くのは諦めたので、自分が隣り合わせになる心配とは無縁なんですけど…
私がもっと気になっているのは、来春東京で開催予定の「国別対抗戦」です。
来春の「国別対抗戦」にAIN(※ロシア)の出場がありうる?
ISUは今季からロシア・ベラルーシ選手の国際大会復帰を認めましたが、個人戦だけでなく、条件を満たせば「AIN Team」として国別対抗戦にも出場できることを明記しています。(2ページ目の4.1.に「ISU World Team Trophyを含む」と記載あり)
6月に国際試合復帰方針を発表した際の記事はこちら。この時点から「団体戦出場可能」とされていた

国別対抗戦に出場する6チームは、単純なワールドスタンディングの国別順位ではなく、今季のグランプリシリーズ(GPS)や世界選手権など、指定された大会で各国・地域の選手が獲得したワールドスタンディングポイントを基に決められます。
男子・女子は各2人、ペア・アイスダンスは各1組分を基本に資格ポイントが計算されますが、GPSと世界選手権などで異なる選手がポイントを積むことも可能です。
ロシア勢は復帰初年度のため出場機会が限られていますが、今後GPSに出場する選手が増える可能性もあります。欧州選手権や世界選手権でも上位に入れば、「AIN Team」が上位6チームに入り、国別対抗戦に出場する可能性は十分ありそうです。
(今季世界選手権はフィンランド開催なので、AIN選手の入国が実際にどう扱われるのかという問題はありますが)

私は木下グループ杯では、AINとして出場するロシアの選手たちも他の選手と分け隔てなく応援しました
ただし、「国別対抗戦」となれば、話は別です
AINはあくまで国を代表しない「個人の中立選手」として国際大会への出場を認められています。それなのに、複数のAIN選手でチームを組み、団体戦に出場できるという規定には納得がいきません。
ましてや「国別対抗戦」は、五輪団体戦とはまた異なる、お祭り要素の強い大会。
各国の選手が応援席に集まり、各国のイメージに合わせた飾り付けや応援グッズなどで仲間を応援する光景が名物です。
前回(2025年)の国別対抗戦の日本チーム応援席の様子
AINには国旗や国歌、代表ユニフォームなど、国家を示すものの使用が認められていません。
「国を代表しない選手」で構成したチームを、「国」を前面に出した大会に参加させること自体、大会のコンセプトと大きく矛盾しているように私には感じられます。
そもそも私は、国家ぐるみのドーピング問題が明らかになった後も平昌・北京五輪の団体戦にロシア勢が出場できたことには疑問を感じていました。個人として競技への復帰を認めることと、団体戦への出場を認めることは、やはり別の問題ではないかと思います。
新ルールや若手のライバル争いが楽しめた大会
ロシア勢の国際大会復帰から、国別対抗戦への憂慮まですっかり話がそれてしまいましたが、木下グループ杯自体はとても見ごたえのある大会でした。
今季はルール改訂が多かったことから、「演技や採点は実際どうなるんだろう?」と疑問が多かったです。今大会でコレオスピンなどの「今季の演技」を間近に見ることで、「なるほどそういうことか!」と納得する瞬間がいくつもありました。
「同種のジャンプは3回まで」とのルール改訂に引っかかり、リカバリーで跳んだ4回転トゥループが無得点になってしまった中田璃士選手のケースには、ビックリでしたけど。

新ルールの怖さを知らしめることになったので、中田璃士選手は今後各国のシングル選手に感謝されることになるかも…(苦笑)
大勢の観客たちと共に、日本のアイスダンス勢が四大陸選手権のミニマムスコア獲得に挑む姿を見守ったのは楽しかったです。SPとフリーで明暗が分かれた若手同士の勝負も印象に残りました。
また、海外中堅選手たちのミニマムスコアへの挑戦や、トップ選手たちの新プログラムをたくさん見られたことも楽しかった。
…欲を言えば、男女シングルでも日本人選手のミニマムスコア挑戦を見たかったですけどね。
来年以降も木下グループ杯継続を!
「木下グループ杯」は、フィギュアスケートファンには長年待望されていた、日本開催のCS(チャレンジャーシリーズ)大会です。
初開催地は私の地元・大阪だったので、「これから毎年大阪で開催してくれないかな」なんてことを夢見たこともありました。
初開催が決まったときの記事はこちら

しかし今回、これだけの観客を集めたことを思うと、今後も首都圏開催がベターだろうと痛感しました。
今年はミラノ五輪後のシーズンで、ロシア選手の本格試合復帰などもあって最終日は大入り。
来年以降に多少観客が減ったとしても、観客席が1500程度の関空アイスアリーナでは「行きたいのに席が取れない」ファンがたくさん出てしまうことでしょう。空港からすぐなので海外選手たちには便利かもしれませんけどね。
東京・辰巳の田中貴金属アイスアリーナは公営の通年リンクで、交通も比較的便利。スタンド席は約3600あり、首都圏なので大勢の観客を集めやすいです。

ファンとしても、スタンド席が全部ジャッジ側で見やすいですし、チケットが取れやすい方がありがたいです。
最寄り駅から結構歩くとはいっても、30分歩くわけでなし、いざとなればタクシーもすぐ呼べます。最寄り駅が複数あることから、行き帰りの電車が混雑しづらいのもありがたいです。
椅子が固いとか、屋外の気温に左右されやすいとかの難点はありますが、事前に持参するグッズで自衛できます。
来年以降もできれば東京辰巳で開催してほしいですね。日本の特別強化選手複数を今後も出場させるなら、規模的にはちょうどいいのではと思います。来年もどうか木下グループ杯が開催されますように。

大阪の関空アイスアリーナさんには、ぜひJGPS大会をまた開催してほしいです!


