ISU(国際スケート連盟)が8月24日、2027年に開催される世界選手権や欧州選手権・四大陸選手権などへの出場に必要な最低技術点「ミニマムスコア」を発表しました。
今季はシングルでフリーのジャンプ回数が削減されたほか、ペアやアイスダンスでも技術要素や構成などにさまざまな変更が行われています。
また、日本のアイスダンス勢で四大陸選手権のミニマムスコアをクリアできる組が増えれば、2027四大陸選手権には最大3組出場が可能になります。

しかし、近年は6~7月に発表されていたミニマムスコアが、今年は8月に入っても一向に発表されないまま…
「新ルールで実際にどのくらいTESが出るのかを見てから決めるつもりなのかも?」と思い始めていたのですが…意外にも発表された今季のミニマムスコアは、全カテゴリで昨季から据え置きでした。
今回の記事では、2026-27シーズンのミニマムスコア情報のほか、発表が遅かった事情や、大幅なルール変更が行われた過去シーズンにはどのような対応が取られていたのか等についても調べてみました。
そして、最後の項目では、日本のアイスダンスカップルのミニマムスコア取得状況と今後の条件を整理しています。
2027年世界選手権・欧州&四大陸選手権のミニマムスコア
現在、世界選手権や欧州選手権&四大陸選手権への出場資格には、「CTES」(Combined Total Elements Scores)と呼ばれる最低基準が設定されています。
世界選手権
まず、2027年世界選手権のCTESを昨季と比較してみます。
| カテゴリ | 2026年 | 2027年 | 変更 |
|---|---|---|---|
| 男子 | 109.00 | 109.00 | なし |
| 女子 | 88.00 | 88.00 | なし |
| ペア | 91.00 | 91.00 | なし |
| アイスダンス | 98.00 | 98.00 | なし |
欧州選手権・四大陸選手権
そして、欧州選手権・四大陸選手権はこちらの通りです。
| カテゴリ | 2026年 | 2027年 | 変更 |
|---|---|---|---|
| 男子 | 86.00 | 86.00 | なし |
| 女子 | 75.00 | 75.00 | なし |
| ペア | 75.00 | 75.00 | なし |
| アイスダンス | 85.00 | 85.00 | なし |
ご覧の通り、男女シングル、ペア、アイスダンスの全カテゴリで昨季と全く同じです。
世界ジュニア選手権についても、男子80.00、女子72.00、ペア63.00、アイスダンス71.00と、昨季から変更されていません。
※数値はいずれもISU Communication No.2818より。
現在の「ミニマムスコア」CTESとは?
以前はSP(ショートプログラム)/RDとFS(フリースケーティング)/FDそれぞれに最低TESが設定されていましたが、現在は仕組みが変わっています。
CTESでは、SPまたはRDの最高TES+FSまたはFDの最高TESを合計して基準をクリアすればOKです。二つのTESは同じ大会で獲得する必要はありません。
また今季については、今季(2026-27)または前季(2025-26)にISUが認定する国際大会で獲得したTESが対象です。
つまり、昨季のSP/RDと今季のFS/FDを組み合わせることも、その逆も可能。すごく出来のよかった演技が1度でもあると、クリアがより近づきます。

今季はルールが変わったのに全種目据え置き
今季は、フィギュアスケートの技術ルールにさまざまな変更が行われています。
特にシングルでは、フリーで実施できるジャンプ要素が7本から6本に減りました。

単純に考えればジャンプが1本減ればTESも下がりそうですが、一方でスピンやステップの配点が上がり、従来はルール上組み込めなかった、より高難度の3連続ジャンプコンビネーションも可能になるなど、TESを押し上げる可能性がある変更もあります。
そのため、ジャンプが1本減ったからといって今季のTES平均が低下するとは限りません。
アイスダンスでも、今季はRD・FDともに要素構成やレベル要件などにさまざまな変更が行われています。
またペアでも、フリーの通常リフトが最大3本から2本に減り、新たにコレオグラフィック・ペアリフトやコレオグラフィック・ペアスピンが導入されるなど、さまざまな変更が行われています。

こうした変更は、実際のTESにどの程度影響するのでしょうか?
今季の国際大会はすでに始まっていますが、まだ大会数も出場選手数も少ないため、少なくとも現段階では、「新ルールになったのでTESが全体的に下がる」とも「上がる」とも言いきれない状況です。
今季のCTES発表は例年よりかなり遅かった
今季、とても気になったのが、ミニマムスコアの発表時期です。
近年のミニマムスコア/CTESの発表時期を確認したところ、2024年選手権分は2023年6月、2025年分は2024年7月30日、2026年分は2025年7月18日に発表されていました。
ところが今回は2026年8月24日。今季の国際大会がすでに始まってからの発表です。
そもそもISUの規則では、各シーズンのCTESは毎年8月1日より前にISU Communicationで公表すると定められています。
※ISU Special Regulations & Technical Rules Single & Pair Skating and Ice Dance 2026(Rule 378)
つまり今年は、規則に記載された公表期限を3週間以上過ぎてからの発表だったというわけです。
なぜここまで発表が遅れたのでしょうか?
大幅ルール変更時には「序盤戦を見てから決定」した前例も
ISUは2018-19シーズンに、「シーズン序盤の大会でもう少し経験を得てからミニマムスコアを決める」という対応を行っています。
このときISUは6月の時点で、ルール変更とシーズン序盤の大会でさらに経験を得る必要性を考慮し、ミニマムTESの決定を10月まで延期すると説明。
※ISU Communication No.2175(2018年6月20日)
実際にミニマムTESが発表されたのは2018年10月18日でした。
※ISU Communication No.2205(2018年10月18日)
さらに、前シーズンに獲得したTESも引き続き有効としたうえで、2017-18シーズンと2018-19シーズンのルールの違いを考慮し、どちらのシーズンに獲得したTESなのかによって異なるミニマムスコアを設定していました。
たとえば2019年世界選手権男子の場合、
| TES取得シーズン | SP | FS |
|---|---|---|
| 2017-18 | 36.00 | 66.00 |
| 2018-19 | 34.00 | 64.00 |
と、新旧ルールで異なる基準が設定されていました。
ただし、現在はSP/RDとFS/FDの最高TESを合計する「CTES方式」。しかも昨季のSP/RD+今季のFS/FDという組み合わせも可能です。
そのため現在の制度で2018年と同じように「旧ルール用CTES」「新ルール用CTES」と単純に分けようとすると、両シーズンのTESを組み合わせた場合をどう扱うのかという問題が出てきます。
現在のCTES制度では、2シーズンで同じ基準値を維持する方がシンプルなのは確かです。
ただし、それが今回すべてのCTESを据え置いた理由なのかは分かりません。あくまでも推測です。

今季途中でCTESが変更される可能性は?
では、今回発表されたCTESはこのままシーズン終了まで固定なのでしょうか?

実はCommunication 2818には、今後CTESを調整できることも明記されています
ISU選手権へのエントリー数が想定より著しく多い、または少ないことが明らかになった場合はCTESを調整することができます。
つまり、制度上は今季途中にCTESが変更される可能性も残されています。
今季のCTES「据え置き」は、どう影響する?
大きなルール変更が行われたにもかかわらず、全カテゴリで昨季から据え置きとなった今季のミニマムスコア。
昨季すでに高いTESを獲得している選手は、そのスコアを今季のTESと組み合わせることができます。
一方、今季からシニアに移行する選手や新結成組など、昨季の有効なTESを持たない選手は、新ルール下で一からCTES獲得を目指すことになります。
新ルールによってTESが出やすくなったのか、逆に出にくくなったのかは、まだ国際大会が少ない現時点では判断できません。
日本のアイスダンス勢のミニマムスコアはどうなる?
では、この「全カテゴリ据え置き」のCTESを、今季の日本選手はどこまでクリアしているのでしょうか?
最後に、今季の日本のアイスダンス勢のミニマムスコア(CTES)獲得状況を整理してみます。

「うたまさ」は世界選手権までクリア済み
「うたまさ」こと吉田唄菜/森田真沙也組は、世界選手権のCTESをクリアしています。

昨季の最高TESは、
- RD:42.40点(2026世界選手権)
- FD:59.91点(2026四大陸選手権)
で、合計すると102.31点。世界選手権の基準98.00点を4.31点上回っているため、四大陸選手権はもちろん、世界選手権についても今季あらためてCTESを取り直す必要はありません。
「いくこう」は四大陸まであと1.56点
「いくこう」こと櫛田育良/島田高志郎組は、昨季12月のゴールデンスピン杯が初のシニア国際大会でした。

この大会で獲得したTESは、
- RD:33.51点
- FD:49.93点
合計83.44点。今季の四大陸選手権CTESは85.00点なので、あと1.56点です。昨季は本当に惜しかったですね。
そして今季最初の国際大会となる木下グループ杯では、昨季のFD最高TES49.93点をそのまま利用できます。
つまり木下グループ杯のRDでTES35.07点以上を獲得すれば、
35.07+49.93=85.00
となり、FDを待たずに四大陸選手権のCTESをクリアできます。
また、万一RDで昨季の33.51点を上回れなくても、FDで51.49点以上を獲得すれば、昨季RDとの組み合わせで85.00点をクリアできます。
四大陸出場に必要なCTESについてはかなり近いところまで来ています。
「りかしん」は木下杯が最初のCTES獲得チャンス
「りかしん」こと紀平梨花/西山真瑚組には、昨季のシニア国際大会で獲得したTESがありません。そのため、今季はシニア国際大会で一からCTESを積み上げることになります。

ただし参考になる数字はあります。
8月にカナダ・オンタリオで行われた地方競技会では、RDでTES39.49点、FDでTES48.59点を獲得しました。単純に合計すると88.08点です。
この競技会はISU認定の国際大会ではないため、もちろんこのスコアそのものをCTESとして使用することはできません。また、国内の地方競技会とISU国際大会ではジャッジやテクニカルパネルも異なるため、点数をそのまま比較するのも危険です。
それでも、仮に同程度のTESを国際大会でも獲得できれば、四大陸選手権の85.00点は射程圏内です。
「かほゆう」はシニアCTESを一から獲得
同じく木下グループ杯に出場する「かほゆう」こと山下珂歩/永田裕人組は、今季からシニアに上がりました。

二人は昨季もジュニア国際大会に出場していますが、ジュニアカテゴリーで獲得したTESを、四大陸・世界選手権のシニアCTESに使用することはできません。
ISUの規定では、シニア選手権に必要なCTESはシニア国際大会で獲得する必要があります。したがって、「かほゆう」も木下グループ杯からシニアのCTESを一から積み上げることになります。
木下グループ杯には、「うたまさ」、「いくこう」、「りかしん」、「かほゆう」の日本勢4組が出場予定。このうちCTES未取得の3組にとっては、まず四大陸選手権を目指すうえでも重要な大会になりそうです。
さらに今季のNHK杯アイスダンスには、日本の開催国枠が現在2枠残っています。今後この枠に選ばれた組には、木下グループ杯でCTESをクリアできなかった場合にも、もう一度挑戦する機会が生まれます。
「しょまりん」はまず国際大会への派遣が必要
「しょまりん」こと本田真凜/宇野昌磨組の場合は、少し状況が違います。

二人はまだアイスダンスチームとしてはシニア国際大会に出場していないため、まずはCTESを獲得できる国際大会への派遣を得る必要があります。今季中に四大陸選手権のCTES獲得を目指すのであれば、12月のゴールデンスピン杯など、今後のシニア国際大会への派遣を得られるかが重要になりそうです。
ただし、現時点では今季のゴールデンスピン杯への具体的な派遣基準はまだ発表されていません。具体的な派遣基準点や対象競技会については、全日本の予選会前までに示される見込みです。
10月29日~11月1日に行われる全日本選手権アイスダンス予選会の成績が、その後の国際大会派遣のうえでも大きなポイントになりそうです。

ジュニアの「あゆとも」は世界ジュニアCTESをクリア!
一方、ジュニアでは早くもCTESをクリアした日本カップルがいます。「あゆとも」こと柴山歩/木村智貴組は、先週行われたJGP中国大会で、
- RD:TES30.98点
- FD:TES48.30点
を獲得。合計79.28点となり、今季の世界ジュニア選手権CTES71.00点をすでにクリアしています。
もちろんCTESを持っている=世界ジュニア代表決定ではありませんが、出場資格という最初のハードルは早くも突破したことになります。
ミニマムスコアがわかっていれば、試合の時にもっと盛り上がれたのにな~。

シニアのアイスダンスチームのミニマムスコア挑戦は、まずは木下グループ杯からですね
日本からアイスダンスに3組が出ている四大陸選手権を、また見られますように!

