11月6日に開幕したフィギュアスケート・グランプリシリーズ(GPS/GPシリーズ)第3戦、中国大会。
初日の男子ショートプログラム(SP)は、これでもかというほどの高得点が続く、とんでもない展開になりました。
100点超えが2人、90点超えが5人。しかも98点台の選手が4位という、ほかの大会ならダントツの首位発進をしていてもおかしくない得点が続出。
実力者が揃っていたためハイレベルな好試合が期待されてはいましたが、「一か八かの勝負」感が強い男子シングルなのに12名中転倒は1回だけという、まさかの神試合。
今回は、そんな男子SPの結果と印象に残った演技をまずは振り返ります。他の3カテゴリは別記事にてまた後ほど。
男子SP結果|上位4人が98点超え!
驚きのSP結果は、次の通りです。
| 順位 | 選手(国) | TES | PCS | 得点 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 三浦佳生(日本) | 59.58 | 43.32 | 102.90 |
| 2 | 佐藤駿(日本) | 59.57 | 42.40 | 101.97 |
| 3 | エフゲニー・セメネンコ(AIN) | 59.52 | 40.20 | 99.72 |
| 4 | ウラジスラフ・ジキジ(AIN) | 58.06 | 40.80 | 98.86 |
| 5 | ミハイル・シャイドロフ(カザフスタン) | 54.62 | 40.25 | 94.87 |
| 6 | ウラジーミル・サモイロフ(ポーランド) | 51.56 | 37.65 | 88.21 |
| 7 | ニカ・エガーゼ(ジョージア) | 48.37 | 39.30 | 87.67 |
| 8 | ジミン・ペン(中国) | 53.35 | 34.30 | 87.65 |
| 9 | ユードン・チェン(中国) | 44.54 | 36.20 | 80.74 |
| 10 | ソ・ミンギュ(韓国) | 40.64 | 39.13 | 79.77 |
| 11 | ジェイコブ・サンチェス(米国) | 40.75 | 38.70 | 79.45 |
| 12 | ルシウス・カザネツキ(米国) | 29.87 | 33.29 | 63.16 |
先週のスケカナSPでは、首位の中田璃士選手が92.64点、3位の友野一希選手が85.31点。今回の中国大会なら5位までがスケカナの首位を上回り、8位までが3位の得点を超えています。
そして、1位から4位まではわずか4.04点差。上位5人全員が90点を超え、98.86点でも4位、87.67点を出しているのに最終グループに残れないというハイレベルな争いになりました。
しかも技術点だけを見ると、上位3人の差はたった0.06点。PCSの差がそのまま順位を左右したような結果です。
AINとして出場するロシア選手たちが2名追加アサインされたのがダメ押しになったとはいえ、ここまでの結果は期待を超えていました。
先週のスケカナSPでは4人の選手にそれぞれ1回ずつ転倒がありました。中国大会男子SPで転倒したのはウラジーミル・サモイロフ選手の1回だけ。
4回転ジャンプが大量にある男子シングルのカテゴリでこの展開は稀に見る好試合だったと言えます。
三浦佳生選手|102.90点で首位発進
フランス大会に続くグランプリシリーズ2戦目の三浦佳生選手。
6分間練習に登場したときは、既にジャージ素材のベストから赤い袖と肩のフリルがチラチラ見えていて、衣装を赤に変えたんだなとちょっと驚きました。
彼はうまくいかなかったときのプログラムや衣装は使いたがらない選手のイメージがあるので、大きなミスが続いたフランス大会SPのピンク衣装はしばらく封印かもしれません。
「マンボ」感は、赤衣装の方がより強く感じますね。
冒頭の4回転サルコウ+3回転トウループを決めると、トリプルアクセルにも成功。後半の4回転トウループも決め、3本のジャンプすべてで高いGOEを獲得しました。
特に4S+3Tは17.23点、後半の4Tは12.89点。ステップもレベル4で、TES59.58点、PCS43.32点の合計102.90点をマーク。PBの102.96を超えるにはわずか0.07点届きませんでしたが、2年ぶりの100点超え。

そりゃキス&クライで「うぉっ!」って声も出るわw
と思いました(笑)
スピード制御に努めていた感があって、前半の弾け方は彼比ではやや控えめ?という感じでしたが、ジャンプ全部決まってからは弾けていましたね(笑)。PCSは全選手中トップ、首位に立ちました。

佐藤駿選手|101.97点、首位とは0.93点差!
佐藤駿選手も会心のSPでした。

冒頭の4回転ルッツを成功させ、4回転トウループ+3回転トウループ、後半のトリプルアクセルも決めました。
4Lzは14.46点、4T+3Tは15.46点、3Aは11.09点を獲得。TES59.57点は三浦選手とわずか0.01点差で、総合101.97点の2位につけました。
「チャルダッシュ」の高速テンポに、淡々と乗って行くのが私はちょっとツボ。この控えめな情熱感、好きな人は好きだと思います。

私は以前彼の演技を料亭料理の上品な薄味に例えたことがあります
ドラマチックな演技も好きですが、情熱を奥に秘めた感も、逆に個性的で好きです
ただ、フライングキャメルスピンとステップがレベル3判定なのは勿体なかったですね。以前を思えばレベルを落とさなくなってきていますが、今季はスピン・ステップの基礎点が上がっているので。ここを上げられれば更に上積みできます。
セメネンコ選手|99.72点! 冒頭から高難度ジャンプを成功
AINとして出場したエフゲニー・セメネンコ選手。
登場したとき、AINカラーのジャージの肩がパワースーツみたいに角ばっていてちょっと面白かったです。あんなに肩が張ったデザインでしたっけ…?

冒頭の4回転ループは見事に決まりましたね!
続く4回転サルコウ+3回転トウループにも成功。後半のトリプルアクセルも含め、ジャンプ3本を揃えました。
9月の木下グループ杯では緊張が色濃かったこのSPですが、昨夜の演技にはパワーが感じられました。
4Loは13.50点、4S+3Tは16.53点。TES59.52点は三浦選手と0.06点差。PCSも40.20点を加え、99.72点で3位。100点まであと0.28点に迫りました。

滑ったのが後半グループだったら100点超えていたかもな?と思える演技でした
ジキジ選手|4回転ルッツのコンビネーションで19.31点!
同じくAINのウラジスラフ・ジキジ選手も98.86点という高得点。他の大会なら余裕の1位でもおかしくありません。
冒頭の4回転ルッツ+3回転トウループはGOE+3.61点がつき、ひとつの要素だけで19.31点を獲得しました。
続く4回転サルコウは軽微な回転不足の「q」判定がつき、GOEが減ったのが痛かったですね。これが無ければ100点は超えていたかもしれません。
TES58.06点、PCS40.80点で4位。デニス・テン メモリアルで急上昇していたPCSが少し落ち着いたのにはホッとしました。

私、このロボットプログラムで胸元のポケットから赤い花を出す演出が結構好きだったんですけど、やめちゃったんですね。先のCS大会でポケットから花が落ちそうになったからでしょうか。今回、赤い花は手袋の内側につけられていました。
あの花が何を表現しているか気になる方は、映画「ウォーリー(WALL-E)」をご覧ください。
このプログラムは「ウォーリー」に着想を得ていて(ただし使用曲は映画のサントラではありません)、ロボットがゴミの山で小さな花を見つける、印象的なシーンを振付に取り入れています。
シャイドロフ選手|94.87点でも5位
最終滑走だったミハイル・シャイドロフ選手。
冒頭の4回転ルッツの着氷が少し乱れたので「フランス大会に続いて今回もまた崩れてしまうか?」とヒヤッとしましたが、トリプルアクセルと後半の4回転トウループ+3回転トウループを成功させました。

4T+3Tには16.97点がつき、TES54.62点、PCS40.25点の合計94.87点。
それでも順位は5位なんですからね~エグい。
そのほかの選手も高得点が続出
6位のウラジーミル・サモイロフ選手は、トリプルアクセルで転倒しながらも88.21点。後半の4S+3Tでは17.37点を獲得しました。
7位のニカ・エガーゼ選手は87.67点、8位の地元中国ジミン・ペン選手は87.65点と、わずか0.02点差。どちらも本来なら最終グループに入っていてもおかしくない点数。他大会ならSP3位以内で記者会見に出ていてもおかしくない得点でした。
9位・ユードン・チェン選手までが80点台。本当にハイレベルな大会でした。

公式練習のときは、氷の状況が今一つよくないような噂も聞こえていたのですが、あれはいったいなんだったんでしょう…?
フランス大会3位だった期待の若手、ソ・ミンギュ選手は、冒頭の4回転サルコウの回転が抜けてしまって無得点でした。今季はSPがうまく行かずに出遅れるのが定着しつつあります。タンゴのハイテンポなリズムではタイミングがつかみにくいんですかね。
フリーはどうなる?
5位シャイドロフ選手まで8.03点差にひしめいています。そのうえ、高難度ジャンプが多数入る男子シングルではSPでは10点台の差がついていたとしても、ひっくり返ることは珍しくはありません。
つまりSPでは差はあってないようなもの。フリーで良い演技をした選手が表彰台に上がるというシンプルな展開になりそうです。
後半に登場する日本男子選手たちは、先に演技したシャイドロフ選手とAINの2選手の演技内容いかんによっては相当大きなプレッシャーを受けて滑ることになりそうで、見ている側も今から既にドキドキしますね。
GPFを決めたい三浦佳生選手は2位以上が欲しいし、2戦目のNHK杯が大激戦区になってしまった佐藤駿選手はGPFを狙うならここでできれば優勝しておきたい。AIN2選手は、ワールドランキングを上げるためにもGPFには出ておきたい。
それぞれ勝ちたい想いは強いはずなので、その想いをいかにうまく演技につなげられるかが鍵になりそうです。


