2026GPS中国大会 初日観戦記|千葉百音が僅差で首位発進!「ゆなすみ」復帰、ペア&アイスダンスの波乱

GPS中国大会のロゴ

11月6日に開幕したフィギュアスケート・グランプリシリーズ(GPS/GPシリーズ)第3戦、中国大会。

初日の男子ショートプログラム(SP)は、100点超えが2人、98点台でも4位という、世界選手権やグランプリファイナル(GPF)かのような驚異的な高得点争いになりました。

一方、女子SPも上位はハイレベルな接戦に。ペアSPとアイスダンスのリズムダンス(RD)では、トップクラスの選手たちに思わぬミスも飛び出しました。

そして個人的に一番楽しみにしていたのが、2度の骨折を経て試合に戻ってきた「ゆなすみ」こと長岡柚奈/森口澄士組。

とにかく元気に滑っている姿を見られただけでも嬉しかったのですが、ISU公式配信の解説が思いがけず詳しかったことにも驚きました。

一方、アイスダンスではキーポイント判定の厳しさや、理由がよくわからない減点も。観ていて「えっ、なんで?」と気になる場面がいろいろありました。

今回はそんな話題も含め、男子SP以外の3カテゴリを振り返ります。

2026GPS中国大会リザルト(ISU)

目次

女子SP|千葉百音選手が首位、上位は接戦に

まずは女子SP上位の結果から。

順位選手(国)TESPCS得点
1千葉百音(日本)42.3133.7776.08
2アナスタシア・グバノワ(ジョージア)41.4533.6075.05
3アレクサンドラ・イグナトワ(AIN)39.9832.3972.37
4ララ・ナキ・グットマン(イタリア)39.0832.6871.76
5山下真瑚(日本)39.1030.0769.17
6イ・ヘイン(韓国)34.8632.6367.49
TES=技術点、PCS=演技構成点。上位6選手に減点なし。出典:ISU公式女子SP結果

千葉百音選手が76.08点で首位発進しましたが、2位グバノワ選手とはわずか1.03点差。

3位のアレクサンドラ・イグナトワ(トゥルソワ)選手から5位山下真瑚選手までも3.20点差で、フリーで順位が入れ替わる可能性は十分あります。

渡辺倫果選手は残念ながら冒頭のトリプルアクセルで転倒。コンビネーションジャンプにもミスが出て、11位と出遅れてしまいました。

千葉百音選手|76.08点で首位発進!

千葉百音選手は貫禄の首位発進。

右足首捻挫の影響で、今季国際大会初出場となった彼女。

演技前は少し緊張した面持ちで「大丈夫かな?」と思ったのですが、冒頭の3回転フリップ+3回転トウループを成功。坂本花織さん風の入り方をしたダブルアクセルは着氷が少し乱れましたが、後半の3回転ルッツも決めました。

3つのスピンとステップはすべてレベル4なのがさすがですね。特にコンビネーションスピンはGOE+1.56点、ステップは+1.58点と高い評価を獲得しています。

今季のルール改正でスピンとステップの基礎点が上がったことで、ダブルアクセルの着氷の乱れがカバーされた感があります。TES42.31点、PCS33.77点はいずれも全選手中トップ。合計76.08点で首位に立ちました。

グバノワ選手|75.05点で千葉選手に肉薄

アナスタシア・グバノワ選手もほぼノーミスの好演。

3回転フリップ+3回転トウループ、ダブルアクセル、後半の3回転ルッツをすべて成功させ、スピン・ステップもすべてレベル4を揃えました。

TES41.45点、PCS33.60点の合計75.05点はPB(パーソナルベスト)を更新。PCSのプレゼンテーションでは千葉選手を上回っています。首位とはわずか1.03点差です。

演技後のインタビューを読むと、五輪後に2か月ほど休養し、その後また滑りたいと思うようになったとのこと。

来年4月東京開催の国別対抗戦に意欲を感じてくれているみたいなのは嬉しいです。

イグナトワ選手|72.37点で3位

AINとして出場したアレクサンドラ・イグナトワ選手。

木下グループ杯などのCS(チャレンジャーシリーズ)大会よりも、若干固さと慎重さが感じられたように思います。でも冒頭のダブルアクセル、続く3回転ループを成功させ、後半には3回転ルッツ+3回転トウループを着実に決めてくるところはさすがですね。

ジャンプはすべてプラスのGOE。3Lz+3Tは後半で決めただけあって12.54点を獲得。

一方、最後のコンビネーションスピンにはV判定がつき、基礎点が1.05点下がりました。基本姿勢の一つが認定されなかったようです。イグナトワ選手自身も、演技後にスピンの姿勢を十分に保持できなかったようだと話しています。

合計72.37点で3位ですが、彼女はフリーで逆転するタイプなのでこの点差ならば首位は射程圏内です。

グットマン選手|71.76点で4位

ララ・ナキ・グットマン選手は、冒頭の3回転トウループ+3回転トウループ、ダブルアクセル、後半の3回転ルッツを成功。

コンビネーションスピンとステップはレベル4。最後のフライングキャメルスピンはレベル3でしたが、すべての技術要素でプラスのGOEを獲得しました。

TES39.08点、PCS32.68点の合計71.76点で4位につけています。

今季はグバノワ選手とずっとほぼ同じ点数を取り続けてきているのが実は注目ポイントだと、先の見どころ記事でも紹介していました。今大会フリーではどうなるでしょうか?

山下真瑚選手|カムバックを印象づける69.17点!

今回の中国大会で特に注目していた日本選手の一人が、山下真瑚選手です。

23歳にして、6シーズンぶりのGPSカムバック!
華々しく飾ってほしいと願っていました。

女子SPの第1滑走で登場し、冒頭の3回転ルッツ+3回転トウループを成功。GOE+1.52点がつき、この要素だけで11.62点を獲得。

ダブルアクセルも決め、後半の3回転フリップにエッジ不明瞭の「!」判定がついてGOEがわずかにマイナスになったものの、大きな失点はなし。スピンとステップはすべてレベル4。合計69.17点で5位につけました。

第1滑走でこれだけの得点を獲得できたのはよかったです。あとは何と言ってもフリーの「ボレロ」!あの迫力ある「ボレロ」を世界のスケオタに見せてほしいです。

そのほかの女子選手

6位のイ・ヘイン選手は、冒頭でトリプルアクセルに挑戦。「q」判定ながら、乱れなく着氷できたのですが、その後のコンビネーション冒頭がシングルルッツに。幸いその直後に3回転トウループを付けられたので、ルッツが無得点になったものの、コンビネーションが0点になることは避けられました。67.49点で6位。

渡辺倫果選手は冒頭のトリプルアクセルで転倒。さらに続くルッツが1回転となり、コンビネーションが1Lz+2Tにという、痛恨のミスが続いてしまいました。

後半の3回転ループは成功させたものの、55.72点。11位と厳しいスタート。実力のある選手なので、フリーではいい演技ができるよう期待したいです。

ペアSP|ミーガリ首位、メテベルに思わぬミス

ペアSPは全8組が出場しました。

順位ペア(国)TESPCS得点
1ミーシナ/ガリャモフ組(AIN)41.4533.2474.69
2メテルキナ/ベルラワ組(ジョージア)32.8734.1967.06
3アコポワ/ラフマニン組(アルメニア)36.6129.7366.34
4長岡柚奈/森口澄士組(日本)33.2329.8363.06
5リウ/ベダード組(米国)34.4428.2762.71
6プラサス/フェルナンデス組(米国)32.6427.8459.48
7デロシェ/スラッシャー組(カナダ)31.2627.9859.24
8ジャン/ファン組(中国)31.5027.0256.52
TES=技術点、PCS=演技構成点。6位に転倒減点1点、8位に減点2点あり。出典:ISU公式ペアSP結果

首位は74.69点の「ミーガリ」ことアナスタシア・ミーシナ/アレクサンドル・ガリャモフ組。一方、2位「メテベル」ことアナスタシア・メテルキナ/ルカ・ベルラワ組には思わぬミスが複数あり、上位争いは意外な展開になりました。

AINの「ミーガリ」が74.69点で首位発進

「ミーガリ」は、第1滑走で登場。

冒頭のソロ3回転サルコウを成功させ、続くトリプルツイストはレベル4。スロー3回転フリップも決めました。ステップはレベル3でしたが、すべての技術要素でプラスのGOEを獲得し、合計74.69点。

世界選手権金メダル、北京五輪銅メダルと華々しい戦績を持つ彼らにとってこの点数はまだ満足できるものではなかったのでしょうか。キス&クライでも終始落ち着いた感じでしたね。

「メテベル」はデススパイラルが0点に

「メテベル」ことアナスタシア・メテルキナ/ルカ・ベルラワ組は、演技序盤のトリプルツイストの最後で、珍しいミスが出ました。

序盤のミスに動揺があったのか、ステップもレベル2に。さらにデススパイラルがノーカウントになり、無得点。

今大会の出場選手の中ではスピード感などは圧倒的に見えたので、全組トップのPCSを獲得したのには納得。合計67.06点で2位。

点数が出たとき、私はデススパイラルがノーカウントになったことに気づいていなかったので、「ツイストでミスがあったとはいえ、点が低すぎない?」と驚きました

フィギュアスケート専門記者のJackie Wong氏がその理由を次のように推測していますが、これがもし本当だったとしたら「いや~厳しい~!」ってなりますね。

首位の「ミーガリ」とは7点以上もの差がついてしまいました。これほどの点差となると、逆転には相手のミス待ちが必要になってきます。

よっぽどのことがない限り表彰台は大丈夫でしょうし、GPF進出は決められるとは思います。でも、今後の試合のためにもSPで見られた「どこか嚙み合わない感」を払拭しておく必要がありそうですね。

アルメニアの「アコラフ」が66.34点で3位

SP3位に入った「アコラフ」ことカリナ・アコポワ/ニキータ・ラフマニン組は、ミラノ五輪シーズンにロシアから移籍したペア。

技の確実性が高いし、今季は評価も上げてくるだろうと思っていましたが、やはりこのSPも着実に全要素を揃えてきました。合計66.34点で3位につけています。

「ゆなすみ」|2度の骨折を経て、ついに試合復帰!

そして今回、個人的に最も楽しみにしていたのが、「ゆなすみ」こと長岡柚奈(ゆな)/森口澄士(すみただ)組の試合復帰です。

今季序盤は長岡柚奈選手が4月に右足かかとの疲労骨折、その完治後に今度は8月上旬の交通事故で左足を骨折と、短期に2度の骨折に見舞われるという不運続き。

怪我で予定していた大会への出場を見送っていた2人が、ようやく揃って試合のリンクに戻ってきました。

私は二人の公式練習の映像を全く見られていなかったので、長岡柚奈選手がジャンプをどのくらい戻せているのかがとても不安でした。

6分間では意図的に回転を抑えたようなジャンプが多かったので、ちょっとハラハラしましたが、BS朝日解説の高橋成美さんが「いけると思う」と言ってくれて少し落ち着けました。

私はライブはBS朝日で見て、後でISU公式配信で一部の演技だけを見返したのですが、ISU公式YouTubeチャンネル解説のマーク・ハンレッティさんの「ゆなすみ」解説の情報量はとても多かったです。

6分間練習や演技前に、長岡柚奈選手の2度の骨折の経緯を詳しく説明してくれていました。練習再開して間もない頃に、練習帰りに自転車で車と接触したことなどまで。きっと日本語の記事を翻訳して読んだんでしょうね

そして、「これだけの苦難を乗り越えてたった1か月程度の練習でここまで仕上げてきたのは凄い」と称賛してくれていました。

演技後の振り返り映像では「日本のファンには『モリグチ・トランスポート(森口運送)』と呼ばれている」とまで説明してくれるおまけつき(笑)。

ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番のSPは、今回が初披露。これまでにないクラシカルな雰囲気だ~と思って見始めたら、想像以上に早いテンポに当初はちょっと戸惑いました(笑)。

ジャンプの着氷で惜しいミスが続いてしまいましたが、私はもっと厳しい初戦も想像していたので、合計63.06点で4位という結果がとても嬉しいです。フリー最終グループにも残れましたしね。

今季SP指定のグループ3リフトはレベル3判定でしたが、女性を上げたときに男性の肘がすぐにまっすぐに固定できなかったのが原因では?という推測を見かけました。今後修正できるといいなと思います。

今季は四大陸選手権辺りからのスタートになるかもなと一時は思っていたので、この初戦SPは嬉しい驚きでした

フリーもいい演技ができるよう期待したいです!

アイスダンスRD|「フィアギブ」と「デビスモ」接戦、「スマディク」に波乱

アイスダンスRDは、首位争いが接戦になっています。

順位カップル(国)TESPCS得点
1フィアー/ギブソン組(英国)43.9536.0580.00
2デイビス/スモルキン組(ジョージア)43.9435.3779.31
3タシュレロワ/タシュラー組(チェコ)40.4032.7073.10
4ドゥムジョ/ル・メルシエ組(フランス)39.6931.7271.41
5スマート/ディーク組(スペイン)38.3933.5970.98
TES=技術点、PCS=演技構成点。5位スマート/ディーク組に1点減点あり。出典:ISU公式アイスダンスRD結果

首位の「フィアギブ(ライラルイス)」ことライラ・フィアー/ルイス・ギブソン組と、2位の「デビスモ」ことダイアナ・デイビス/グレブ・スモルキン組の得点差はわずか0.69点。

一方、上位争いが期待された「スマディク」ことオリヴィア・スマート/ティム・ディーク組は、ミスと減点が響いて5位となりました。

厳しかったパターンダンスのキーポイント判定

今季のRDのパターンダンス課題の「ゴールデンワルツ」。今季からキーポイント判定が4季ぶりに復活し、その判定が暫定技術点表示でも視聴者にわかるようになったのは、私には嬉しいルール改訂でした。

私はアイスダンスのステップのレベルを見分けられるような観察眼は到底持ち合わせていない素人ファン。どの部分がOKでどの部分が基準を満たせていないと判断されたのかが可視化されることは、わかりにくいルールを理解する手助けになります。

…と思っていたのですが、この大会のキーポイント判定は厳しかったですね。

今季初めて「YYYY(四つのキーポイントの判定がYes/Yes/Yes/Yes)」を記録した「デビスモ」が暫定では「NNNN(No/No/No/No)」表示でしたからね。後で「NNNY」に修正はされましたが。
(ただし「デビスモ」の「YYYY」は「地元びいき採点」との批判も飛び交ったトリアレティ杯で出したものではあります)

首位の「フィアギブ」も「NNNY」で少し驚きました。

何がどう違うのか、足元のアップのスロー分析比較動画を出してじっくり解説してもらわないと、素人には到底理解できそうもありません…

GPS大会はいずれも、9月の木下グループ杯などCS大会に比べるとレベル判定が厳しいと感じています。

木下グループ杯では日本の上位3組はYを一つは獲得できた=レベル1判定を取れました。でも、GPS大会では世界選手権ミニマムスコアを持っている組でも、米国のブラッティ/サマーヴィル組がNNNN判定。ペイト/バイ組もYは一つだけでした。

「いくこう」「りかしん」が木下グループ杯で四大陸ミニマムスコアを取れていて本当によかったなと今になって胸をなでおろしているくらいです。

「フィアギブ」と「デビスモ」は0.69点差!

「フィアギブ」は、サーキュラーステップは男女ともレベル2。CDE(クリエィティブ・ダンス・エレメント)とローテーショナルリフトでも高いGOEを獲得し、TES43.95点、PCS36.05点の合計80.00点で首位に立ちました。

一方「デビスモ」は冒頭のサーキュラーステップが女性レベル2、男性レベル1。ツイズルは女性レベル3、男性レベル4となりました。合計79.31点で2位につけています。

アイスダンスはRDの段階でFDの順位が見えてしまいがちですが、この点差は本当にどちらが優勝してもおかしくないですね。

「スマディク」はミスと減点で70.98点、5位

表彰台候補だった「スマディク」は、冒頭のステーショナリーリフトを下ろす時に珍しくミスが出て、レベル2判定。GOEも-0.75となり、一つ一つの技の確度が強く求められるRDでこのミスは、かなり痛かったです。

ツイズルやサーキュラーステップではプラスのGOEを獲得しましたが、最後のCDEにはExtra Element(余分な要素)の判定がつき、1点の減点。

ISUの技術規則によると、CDEの中で認められていないリフトを行うと、この判定がつくとのこと。

今回も何らかの動作が「余分なリフト」と判断された可能性が高そうですが、具体的にどの部分が問題になったのかまではわかりませんでした。

そして、衣装・小道具違反についてもジャッジ10名中4名から何らかの指摘があったものの、実際の減点には至っていません。

今季出場していたCS2試合でもこのような減点は受けていなかったのに…

誰かちゃんと減点理由を視聴者にも説明してよ~って思います

個性的なプログラムで魅せる力も抜群の組とあってPCSは全体3位だったのですが、ミスが響き5位になりました。どこまで巻き返せるか、少々微妙な点差です。

3位には、ナタリー・タシュレロワ/フィリップ・タシュラー組がつけました。

初日を終えて

私としては、とにかく「ゆなすみ」の2人が元気に滑っている姿を見られただけで嬉しいです。

男女シングルではハイレベルな争いでしたが、ペア・アイスダンスでは上位勢の思わぬミス。特にアイスダンスでは「やっぱりアイスダンスのルールはよくわからん」という心境に陥りました。

それでも、今夜のフリー・FDは面白くなりそうな流れではあるので、間もなく始まるアイスダンスFD、女子とペアのフリーが楽しみです。

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