「しょまりん」こと本田真凜/宇野昌磨組がリズムダンス(RD)の曲を「ポエタ」にするとの発表を受けて、「『ポエタ』に今季既定のゴールデンワルツをどう組み込むのか?」という記事を先日公開しました。

今回は、前回の記事で書き切れなかった2026-27シーズンRDのルールについてです。
過去のパターンダンス規定種目の歴史も交えながら、私自身が資料を読み進める中で理解した内容を、できるだけわかりやすく整理してみました。
今季はパターンダンスの要素の復活をはじめ、必須技術要素にも大きな変更があり、ルールを知っていると観戦がより面白くなりそうです。
アイスダンスをもっと楽しむための予習に、また今季ルールの確認用として読んでいただければ幸いです。
昔の「ゴールデンワルツ」と、今求められているものは違う
2026-27シーズンのRD課題発表は、今年2月
アイスダンスのRD課題は毎年変更されます。

ミラノ五輪の2025-26シーズンは、「90年代の音楽とフィーリング」でした
2026-27シーズンの課題が「ゴールデンワルツ」になることが発表されたのは、ミラノ五輪開催期間中のこと。
ここ数年間のRDは80年代音楽だとか90年代音楽などの年代指定のみでダンススタイル指定がなく、「昔のような『社交ダンス』的アイスダンスは、もう競技では見られなくなるのかな…」と思い始めていたので、これは嬉しい決定でした。
アイスダンス、来季のRDワルツで決定なんですね
— けろわん (@kero_one1) February 17, 2026
出来れば今季ワルツで見たかったな
でも、「クラシックなワルツはもう二度とアイスダンスで見られないんだろうか」とすら一時は思ったから、うれしい
ISUが規定するパターンダンスには「ワルツ」と名の付くものだけでも9種類あります。その中でも、ゴールデンワルツは最も難度が高いと言われています。
(そのためかどうかはわかりませんが、ジュニアのRD課題は「ゴールデンワルツ」ではなく、「ウェストミンスターワルツ」指定です)
過去に実施された「ゴールデンワルツ」と、どう違う?
今回RD振付を担当する宮本賢二さんは、2002長野ワールドで当時のパターンダンス規定種目「コンパルソリーダンス」で「ゴールデンワルツ」を滑っています。(パートナーは有川梨絵さん)
SNSで話題になっていたので、私も当時の演技動画を視聴しましたが、当時は全組同じ曲で「ゴールデンワルツ」の規定ステップで2周していました。

シェイ=リーン・ボーン/ヴィクター・クラーツ組(カナダ)やアルベナ・デンコワ/マキシム・スタビスキー組(ブルガリア) の演技まで見られて楽しかったです!
2006-2007シーズン、2009-10シーズン(トリノ五輪シーズン)などでも「ゴールデンワルツ」が課題になっていますが、この頃のパターンダンス規定種目の名称は「ショートダンス」、ルールは「コンパルソリーダンス」とも今のRDとも異なります。
(実はこの他に「オリジナルセットパターンダンス」という種目もあってですね…私は重なるルール変更についていくのに疲れ、アイスダンスのルールを覚えるのを諦めました)
今季のRDは、ゴールデンワルツの規定ステップ(の一部)を入れたうえで「異なるリズム・テンポ・ダンススタイル」を少なくとも一つ組み合わせることが必須です。
きっちりホールドしてワルツを滑るのはパターンダンス要素の部分のみという組も多いかと思うので、演技全体の印象は、昔の「ゴールデンワルツ規定種目」とはかなり異なるものになるでしょう。
今季RDでの「パターンダンス要素」はどうなる?
実は、今季のRDでは「ゴールデンワルツ」のパターン全部を実施する必要はありません。
規定されているステップの途中から始まり、途中で終わってOKです。
今季の「パターンダンス要素」で求められるのは既定の一部のみ
下記の図面は、左側が男性のステップ規定図、右側が女性の規定図です。(ISUの規定図に筆者が黄色と赤のマーカーを追加)それぞれに指定されているステップが順番をつけて明記されています。
このうち黄色で示したのが、今季RDで実施を指定されている部分です。

「ゴールデンワルツ」で規定されているステップはNo.1~No.47までで、そのうち今回指定されているのはNo.33からNo.20までです。元の指定パターンの途中から始まって終点に戻り、始点から途中までを滑ることになります。
また、この部分にはバリエーションが認められているところもあり、全てこの規定ステップ通りに実施するとは限りません。
参考:ISUの最新規定資料Communication No.2795
得点を左右する「キーポイント」とは
パターンステップの中には、「キーポイント」と呼ばれる重要な箇所があります。
「キーポイント」は技術を見定めるのに重要視されているところで、男性・女性それぞれに2つずつ計4か所あります。
| Key Point | 対象 | ステップ | 主なターン・動作 |
|---|---|---|---|
| KP1 | 女性 | 34~35 | Swing Open Choctaw → LBO |
| KP2 | 男性 | 34~35 | Swing Open Choctaw → LBO |
| KP3 | 女性 | 15 | Bracket |
| KP4 | 男性 | 15a~15c | Open Mohawk → RBI → LBO |
上記のステップ図面に番号が書かれていますので、その番号と照らし合わせるとどのあたりかわかります。パターンダンス動作に入ってすぐの部分と、終盤に男女二人が異なるディフィカルトターン(ブラケットとモホークなど)の2か所が、レベルと得点を左右する「鍵」となります。
※最初はチョクトーからのLeft Back Outside(左足・後ろ向きでアウトサイドエッジに乗る)の動き、次は女性がブラケット、男性がオープンモホークからのRight Back Inside(右足、後ろ向きでインサイドエッジに乗る)です。
盛り上がりやすい「キーポイントの暫定判定表示」はどうなる?
2021-22シーズンまでは、暫定得点表示欄にYNNY(Yes/No/No/Yesの略)、NNYY(No/No/Yes/Yesの略)など、Y/Nの判定表示が出ていました。

私はステップのレベル要件を見極められるような目の肥えたファンではないので、暫定得点表示が頼りです。

アイスダンスのステップ認定はシングル競技よりずっと厳しいです
(シングルのステップレベル4よりずっとレアだった記憶)
なので「YYYY」が出たら大盛り上がりしていたのが、ちょっと懐かしいです
直近の4シーズンは、シニアRDから「キーポイント」がなくなっていました。なので私は、「これで『Y/N判定』に一喜一憂する時代が復活?」と内心楽しみにしていたのですが…そうなるかどうかはまだわからないようです。
ISUの規定では、4つのキーポイントの合否判定は行い、その結果でレベルを認定するように読めます。でも、キーポイントの合否を観客・視聴者向けの暫定得点表示として出すかどうかについては記載がありません。
来月から始まるチャレンジャーシリーズ(CS)大会で暫定得点表示がどのようになるのか、注目したいと思います。
今季RDは「共通点」と「個性」の両方が楽しめる
RDの要素は「ゴールデンワルツ」だけではない
今季RDでは「ゴールデンワルツ」の部分に注目が集まりがちですが、実際にはRD全体では5つの必須技術要素があります。
| シニアRD必須要素 (2026-27) | 見どころ |
|---|---|
| パターンダンス要素 | ゴールデンワルツの規定ステップを滑る |
| クリエイティブダンス要素 | 各組の個性や表現力が最も出る |
| ショートリフト | 8秒以内のリフト |
| ステップシークエンス | ホールドせずに滑る円形ステップ |
| シーケンシャルツイズル | 同調性が求められる連続ツイズル |
なかでも、今年新設された「クリエイティブダンス要素」は自由な発想・表現力を評価する新要素。各組の個性が最も表れそうなポイントです。
昨季(2025-26シーズン)との違い
以下では、今季RDで変更された3つのポイントを順番に見ていきます。
「パターンダンス」の要素が復活
<昨季まで>
パターンダンスタイプ・ステップシークエンス/Pattern Dance Type Step Sequence(PSt)
<今季>
パターンダンス要素/Pattern Dance Element(GW)
こちらは上記で説明した通り。今季指定されているパターンダンス要素はGW(ゴールデンワルツ)です。
コリオグラフィック・リズムシーケンスが変更
<昨季まで>
コリオグラフィック・リズムシーケンス/Choreographic Rhythm Sequence(ChRS)
<今季>
クリエイティブダンス要素/Creative Dance Element(CDE)
昨季のアイスダンスRDをご覧になった方なら覚えているかもしれませんが、観客席寄りのリンク中央でポーズを取り、ジャッジ席に向けて激しく踊りながら進んでくる組が多かったですよね?

あの部分が「コリオグラフィック・リズムシーケンス」です。
※進むルートの指定はないのですが、ほとんどの組があの位置で実施していました
これが「創造性を重視した新しい要素」という位置づけの「クリエイティブダンス要素」に置き換わりました。何がどう違うのか?と言われると…正直私も演技を見るまで全然想像がつきません。
ステップシークエンスのルートが変更
昨季はリンクの長辺(ロングサイド)を突っ切るミッドラインステップか、対角線上に進むダイアゴナルステップかのどちらかの選択でした。(※7/20夕に読み直した際に適切な表現に変更しました)
今季、シニアはサーキュラー(円形)に固定されています。
私はダイアゴナルが一番たっぷりステップを見られる印象があって好きなんですが、何故この変更なんでしょうね。ゴールデンワルツが大変だから、こちらのステップの負担を軽くしたのか?などと勝手に想像していますが、真意はわかりません。

今年のRDはどこに注目すると面白い?
今季RDでは、全組が指定のパターンダンス要素(ワルツ)を滑ります。
一方で、ワルツ以外の楽曲は異なるリズム・スタイルを組み合わせるのが必須条件とされていますし、演技全体の構成は各組が既定の技術要素の範囲内で自由に構成できます。
- どんな曲を選ぶのか
- ワルツと別のリズムをどう組み合わせるのか
- クリエイティブ・ダンス要素をどのように演出するのか
によって演技の印象は大きく変わります。
同じ課題でもそれぞれが全く違う個性のプログラムになるところが、今季RDの一番面白いところと言えるでしょう。
ゴールデンワルツの規定ステップをどう曲に溶け込ませるのか、そして自由な部分でどんな世界観を見せてくれるのか――その両方に注目すると、今年のRDはより面白く観戦できそうですね。
今季の国際試合が始まる前に、フリーダンス(FD)の必須要素や見どころについても整理したいと思っています。今回は情報量がかなり多くなったので、その話はまた別の記事で。…その前に、まずは少し頭を休ませようと思います(笑)。
※本記事は複数の資料に目を通してまとめていますが、解釈に誤りがございましたら、SNSまたは問い合わせフォームよりご指摘ください。修正対応いたします。

