「木下グループ杯2026」最終日の9月6日(日)は、ペアのフリー、アイスダンスのフリーダンス、女子シングルのフリーが行われました。
私はこの日も田中貴金属アイスアリーナ(東京辰巳アイスアリーナ)で現地観戦。
ペアではAIN(個人の中立選手)として出場したロシア勢が表彰台を独占。アイスダンスでは日本の「りかしん」が、「いくこう」に続き四大陸選手権のミニマムスコア(CTES)をクリアしました。
そして最後の女子では、シニア国際大会デビュー戦となった島田麻央選手が、トリプルアクセルと4回転トゥループを決めて逆転優勝!
今回はまずペアとアイスダンスについて、現地で見た感想を中心に振り返ります。
「木下グループ杯2026」リザルト
※滑走順や詳細タイムスケジュール、採点表などが確認できます
<9/8>
「ランキングポイントの謎」項目で言及したISUのポイント換算方法の食い違いについての進捗を追記
ペア
まずはペアの最終結果から。(敬称略、AIN2はロシア)
| 順位 | 選手名 | 国名 | 総合得点 | SP | FS |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | アレクサンドラ・ボイコワ/ドミトリー・コズロフスキー組 | AIN2 | 203.66 | 2 | 1 |
| 2 | エカテリーナ・チクマレワ/マトベイ・ヤンチェンコフ組 | AIN2 | 202.55 | 1 | 2 |
| 3 | アナスタシア・ムホルトワ/ドミトリー・エフゲニエフ組 | AIN2 | 189.94 | 3 | 3 |
| 4 | チェルシー・リュウ/ライアン・ベダール組 | アメリカ | 165.70 | 5 | 4 |
| 5 | バレンティナ・プラザス/マキシミリアーノ・フェルナンデス組 | アメリカ | 158.99 | 4 | 6 |
| 6 | カミーユ・コヴァレフ/パベル・コヴァレフ組 | フランス | 151.69 | 6 | 5 |
| 7 | レーガン・モス/ヤクブ・ガルバビー組 | アメリカ | 143.08 | 7 | 7 |
| 8 | ニーム・デービソン/ダニエル・ボリソフ組 | イギリス | 115.16 | 8 | 8 |
ペアは、AINとして出場したロシアの3組が表彰台を独占。
1位は「ボイコズ」ことアレクサンドラ・ボイコワ/ドミトリー・コズロフスキー組、2位は「チクヤン」ことエカテリーナ・チクマレワ/マトベイ・ヤンチェンコフ組、3位はアナスタシア・ムホルトワ/ドミトリー・エフゲニエフ組となりました。

今回のエントリーでは、よほどのことが起きない限りロシアのペア勢が表彰台を独占すると予想していたので、結果に驚きは全くなし。しかし、ロシアペア同士の争いには興味深いものがありました。
SPでは「チクヤン」が首位、「ボイコズ」が2位。正直SPでは「チクヤン」の演技が想像していたよりもよくて、フリーもこのままいくかも?と思いながら見ていました。
しかし、フリーの「ボイコズ」はSPとは一味違っていました。
6分間練習でも凄かったけれど、本番で決めたスロー4回転サルコウは本当にド迫力でした。高さも飛距離も申し分なくて、私を含め周囲の観客が一斉に「おおお」と驚きの声をあげていました。

あまりに回転に余裕をもって着氷したので、「…本当に4回転だったよね?」と自分の目が不安になるくらいでした
「チクヤン」のフリーも良かったのですが、「ボイコズ」のフリーは振付の個性が印象深かったです。異なる方向から入って来るサイドバイサイドジャンプ、着氷が乱れてしまったけれどあれ決まったら物凄くカッコいいと思います!
スロー4回転ジャンプは難易度の割には基礎点が高くはないので、スロー4回転の威力のみで勝ったわけではないと思います。(まぁ私がボイコズのフリーが単純に好み路線だったせいかもしれませんが…)
このところペアは「ハードロック」「いかにもなバラード」「王道クラシック」の3パターンが多かったので、毛色の違うプログラムが見られるのは嬉しいです。ロシア選手の試合復帰については色々と思うところもあるので、複雑な思いもあるのですが。
今季のペアはさらにアクロバティックに?
今回ペアのフリーをご覧になった方には、「こんな動き、今までペアスピンでやってたっけ?」と思われた方も多いのではないでしょうか。
今季のペアフリーではルール改訂により、3連続ジャンプが2連続になるなどの変更がありました。そして、従来のペアスピン・コンビネーションに代わって「コレオグラフィック・ペアスピン(ChPSp)」が新設。また、通常のペアリフトが1本減り、「コレオグラフィック・ペアリフト(ChPLi)」が加わっています。
※詳細はISU Single & Pair Skating Handbooks 2026/27
今季は全カテゴリで大きなルール改訂があり、ペアの変更点詳細まで把握しきれていなかったのですが、今季のペアの演技をいくつか実際に見て、最も驚いたのが「コレオグラフィック・ペアスピン」でした。
女性がエッジを氷につけることなく、男性が女性の手や足などを持って大きく振りまわすかのように回転したり、女性が男性の体をつかんだ状態で回転したりと、これまでのペアスピンとはかなり印象の違う動きが次々登場。
2位の「チクヤン」の写真では、女性の片手と片足を持った男性だけが氷上をスピンしているのがわかります
Taking the silver medal 🥈 in the pairs event at Kinoshita Group Cup are Ekaterina Chikmareva and Matvei Ianchenkov 👏💙 pic.twitter.com/TPpxw5RXsC
— In The Loop (@InTheLoPodcast) September 6, 2026
調べてみると、コレオグラフィック・ペアスピンは少なくとも一方の選手がブレード上で規定の回転を行えばよく、パートナーを持ち上げる動きも可能。かなり自由度の高い要素になっているようです。

アクロバティックさが一気に増した印象ですが女性側の肩への負担はちょっと気になりましたね…
三浦璃来さんをはじめ、ペアには肩の脱臼を経験している選手も少なくありません。今回のコレオグラフィック・ペアスピンの動きは、見る側は楽しくても選手側の負担は大きいかもしれないなと感じました。
ペアのミニマムスコアは?
AINの3組は、当然ながら3組とも今回の木下グループ杯で世界選手権のCTESを余裕でクリアです。(たぶん誰も心配していないはずw)
一方、事前の記事でミニマムスコアまであと少しと紹介していた、米国のレーガン・モス/ヤクブ・ガルバビー組(四大陸選手権まであと1.38点)、英国のニーム・デービソン/ダニエル・ボリソフ組(欧州選手権まであと6.55点)はともに、今回はこれまでの自己ベストTESを更新できませんでした。

客席には「ゆなすみ」の姿も
そして、この日は客席に「ゆなすみ」こと長岡柚奈/森口澄士組の姿も!
席に座っているとき遠目に森口選手らしき姿が見えたので、「観戦に来たのかな?」と気にはなっていました。整氷中に客席内廊下を歩いていたら、たまたま向こうから歩いてくる二人と至近距離ですれ違いまして。

気づいた瞬間はもう目の前を歩いていてビックリ!
私、普段は選手たちに気づいても気づいているそぶりを見せないようにしているのですが、今回ばかりは振り返ってしまいました。
長岡柚奈選手は交通事故による足の骨折で今大会を欠場することになったので…彼女の今の足の状態が、どうしても気になってしまったのです。
欠場が報じられたときの記事はこちら

競技復帰できる状態にいつなれるかどうかまではわかりませんが、少なくとも普通にスタスタと歩いている姿をこの目で見られたのは、とても嬉しかったです。

ちなみに戻って来たときも、通路の空いたスペースで木下グループCEOと立って談笑されていたので、2回もすれ違えました(笑)
アイスダンス
続いてアイスダンス。こちらが最終結果です。(敬称略 AIN1はベラルーシ)
| 順位 | 選手名 | 国名 | 総合得点 | RD | FD |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ダイアナ・デイビス/グレブ・スモルキン組 | ジョージア | 189.99 | 1 | 2 |
| 2 | ワシリーサ・カガノフスカヤ/マキシム・ネクラソフ組 | AIN2 | 184.81 | 2 | 1 |
| 3 | ナタリー・タシュレロワ/フィリップ・タシュレル組 | チェコ | 176.83 | 3 | 4 |
| 4 | ノエミ・マリア・タリ/ノア・ラフォルナラ組 | イタリア | 175.43 | 5 | 3 |
| 5 | エリザベータ・パセチニク/ダリオ・チリザノ組 | AIN2 | 172.71 | 6 | 5 |
| 6 | 吉田唄菜/森田真沙也組 | 日本 | 170.49 | 4 | 6 |
| 7 | 櫛田育良/島田高志郎組 | 日本 | 161.76 | 7 | 8 |
| 8 | 紀平梨花/西山真瑚組 | 日本 | 156.86 | 8 | 9 |
| 9 | エカテリーナ・ミロノワ/エフゲニー・ウステンコ組 | AIN2 | 154.56 | 10 | 10 |
| 10 | エカテリーナ・アンドレーワ/ドミトリー・ブリノフ組 | AIN1 | 154.26 | 9 | 11 |
| 11 | カタリナ・ウルフコスティン/ディミトリー・ツァレフスキー組 | アメリカ | 152.84 | 12 | 7 |
| 12 | 山下珂歩/永田裕人組 | 日本 | 131.83 | 11 | 12 |
ロシアの3組は上位に食い込めるのか?
今回のアイスダンスで注目されていたことの一つは、AINとして出場するロシアの3組がどのあたりに入ってくるのか。
結果は、「カガネク」ことワシリーサ・カガノフスカヤ/マキシム・ネクラソフ組が2位。「パセチリ」ことエリザベータ・パセチニク/ダリオ・チリザノ組は5位、エカテリーナ・ミロノワ/エフゲニー・ウステンコ組は9位。
優勝したのは、「デビスモ」ことダイアナ・デイビス/グレブ・スモルキン組(ジョージア)、2026プラハの世界選手権10位の組です。FDでは「カガネク」が110.60点で1位、「デビスモ」は110.25点で2位でしたが、RDからのリードを守って「デビスモ」が総合優勝しました。

正直言ってこれまで私は「デビスモ」の演技にそこまでピンときたことがなかったのですが、今回のRDのタンゴはとてもよかったです。
3位は「タシュラー兄妹」ことナタリー・タシュレロワ/フィリップ・タシュレル組(チェコ)。ダイナミックで個性的な演技が好きで、以前から応援している組の一つです。
ただ、今回はいつものスピード感も控えめ。FD後半の見せ場となるステップでは、二人ともレベル1にとどまりました。それでも総合3位に入るあたりは、さすがの底力。まだシーズン序盤ですから、これからの滑り込みで変わっていくでしょう。
フリー3位、総合4位だったのはイタリアの「ノエノア」ことノエミ・マリア・タリ/ノア・ラフォルナラ組(イタリア)。もしシャルレーヌ・ギニャール/マルコ・ファブリ組が今季試合に出場しないのであれば、イタリアの実質的な1番手になりそうな組です。まずまずのスタートになったのではないでしょうか。
「りかしん」も四大陸ミニマムクリア!
日本の観客の多くが注目していたのは、日本アイスダンスチームのミニマムスコア(CTES)の行方。
前日のRDでは「いくこう」こと櫛田育良/島田高志郎組が、早々に四大陸選手権の基準をクリアしました。

「りかしん」こと紀平梨花/西山真瑚組はRDでTES34.84点だったため、四大陸選手権のCTES85点をクリアするにはFDで50.16点以上が必要でした。
そして、FDで獲得したTESは…52.79点!
RDと合わせて87.63点となり、四大陸選手権の基準を2.63点上回って無事クリアしました。

今回、特にCTESの行方が気になっていた日本の3組についてまとめてみます。
(「うたまさ」こと吉田唄菜/森田真沙也組は世界選手権ミニマムまで取得済みなので除外)
| 組 | RD TES | FD TES | CTES | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| 櫛田育良/島田高志郎組(いくこう) | 36.93 | 53.00 | 89.93 | 四大陸CTESクリア |
| 紀平梨花/西山真瑚組(りかしん) | 34.84 | 52.79 | 87.63 | 四大陸CTESクリア |
| 山下珂歩/永田裕人組(かほゆう) | 30.66 | 40.50 | 71.16 | 四大陸CTESまで13.84点 |
残念ながら、「かほゆう」は今回は届きませんでした。
二人は2027年冬季ユニバーシアードの基本的な出場資格を満たしているので、出場することになれば、そこでCTES更新に挑戦するチャンスはありそうです。
(ユニバーシアードはISU主催大会ではありませんが、過去大会で獲得されたTESはCTESとして認められています)
一方、四大陸をクリアした「いくこう」「りかしん」の次の目標となる世界選手権のCTESは98点。「いくこう」はあと8.07点、「りかしん」はあと10.37点必要になります。

おそらくこの2組はNHK杯アサインが来るでしょうから、NHK杯がまた楽しみですね!
日本勢のFDプチ感想
点数のことばかり書いて日本のアイスダンスチーム4組のFD感想を全く書いていませんでした(苦笑)。
昨季までジュニアだった「かほゆう」はシニア選手たちに混じると、さすがに若干の表現の若さが感じられました。体格差のないところを武器にしている感がある二人なので、今後にも注目しています。

「りかしん」、FDは新衣装でした。黒ばかりを着ていたエディット・ピアフのプログラムで赤?という素朴な疑問はありますが、紀平梨花さんの華を引き立たせるにはこれもいい選択かもしれません。

1年でリフトの質が格段に進歩していますが、今後ますます進化していきそうな予感があります。
「いくこう」は、5分間練習で見せた美しいポジションのリフトで観客が「ほぉぉ」と歓声を上げた直後に島田高志郎選手が尻もち。歓声は一瞬で心配の声に変わりました。幸い本番では美しく決まり、一安心。

RDでミニマムスコアを獲得できたぶん、FDでは技術要素をミスなくこなすことへのプレッシャーが少し減って、より表現に注力した演技ができたんじゃないでしょうか?
アクラム・カーン版「ジゼル」のプログラムの世界観を優先するため、リフトの難易度は敢えて下げていたとのことですが、賢明な判断だと思います。

個性的な振付×表現力のある二人。今後の国際大会で今回のような演技ができれば、「あのジゼルをやった日本の組」として認知してもらえるのではないかな?と思いました
世界観の表現力では「いくこう」、アクロバティックな動作等のポテンシャルの高さは「りかしん」という印象でした
「うたまさ」のFDは今回が初披露、攻めた感じのある曲調で、個性溢れるプロになりそうです。ただ、木下グループ杯、NHK杯ともに出場が決まっていた彼らは、FDはまだRDほどは滑り込めていなさそう。98.99点でFDは6位。

総合6位と日本勢最上位。ワールドスタンディングのランキングポイント185点も獲得しました。
今思えば、今回のアイスダンスは「日本勢がランキングポイントを獲得できるか」というのも見どころの一つに挙げておけばよかったですね。ロシア勢3組が国際大会でどのくらいの評価を受けるのか読みきれなかったこともあり、事前にはそこまで頭が回っていませんでした。
しかし、大会後に実際にランキングポイントを確認してみたところ、今度は別の疑問が出てきました。
ランキングポイントを確認していたら謎が……<9/8追記>
今季のワールドスタンディングについて定めたISU Communication 2812では、チャレンジャーシリーズでランキングポイントが与えられるのは、男女シングルは8位まで、アイスダンスは6位まで、ペアは5位までと記載されています。
3.3. ISU Challenger Series Competitions
3.3.1. Men and Women places 1 – 8
3.3.2. Pair Skating places 1 – 5
3.3.3. Ice Dance places 1 – 6
※PDF4ページ目の「3.3. ISU Challenger Series Competitions」より
同資料に掲載されているCSの配点表自体は8位まで設定されており、7位は165ポイント、8位は150ポイントとなっています。(PDF最終6ページ目(文書上のページ番号6)の「4. Table of Point Distribution」)
つまり、この文書の記載どおりなら7位・8位のポイントが入るのは男女シングルだけです。
ところが、現在公開されているISUのWorld Standingsでは、木下グループ杯7位の「いくこう」に165ポイント、8位の「りかしん」に150ポイントが実際に加算されています。

となると、Communication 2812の「アイスダンスは6位まで」という記載が間違っているのか、それともランキングへのポイント加算が間違っているのか……。
ちなみに、Communication 2812の内容を変更する追加資料が発表されていないかとも思って調べてみましたが、発見できませんでした。そもそもCommunication 2812自体が2026年7月29日付のかなり新しい資料です。

現時点でISUが提示している資料上は食い違いがあり、どちらが正しいのか私には判断できません
普段私はISUのCommunicationを根拠にあれこれ書いているだけに、こういう食い違いがあると正直困りますね
どっちが正しいんでしょう?
今季のCS大会でアイスダンス・ペアのカテゴリが実施されたのは木下グループ杯が初めてです。今後Communicationの訂正やランキングの修正がないか、しばらく様子を見たいと思います。
ただ、「いくこう」「りかしん」の名前がランキングに入っているのを発見したときは嬉しかったので、文書の記載の方が間違っているといいなと思います。
<9/8 12時追記>
先ほどISUのWorld Standingsの新旧サイト双方を確認しましたが、記事公開時点では掲載のあった「いくこう」「りかしん」の名前は、残念ながら消えていました。
ということは、どうやらWorld Standingsへのポイント加算の方が誤りで、「CS大会のアイスダンスのポイントがつくのは6位まで」というCommunication 2812の記載が正しかったようですね…。今大会では「うたまさ」のみがポイントを獲得したことになります。
「いくこう」のランキング記載はキャプチャーを残していたので、実際に掲載されていた証拠として上記項目内に追加しておきました。
(「りかしん」は私の環境ではISU公式サイトの方では表示されず、文字だけの表記の旧ランキングでの確認だったため、キャプチャーを残していませんでした)
女子フリー&3日間の振り返りは改めて
このあと行われた女子フリーも、島田麻央選手のシニア国際大会初戦での優勝、中井亜美選手との接戦、AINとして出場したロシア女子の演技など、書きたいことがたくさんあります。
本当は3日目の全カテゴリをこの記事で振り返るつもりだったのですが、ペアやアイスダンスについて書いているうちに、すっかり長くなってしまいました。
特にアイスダンスのランキングポイントの謎まで追い始めたら、予想以上の長さに(笑)。
女子フリーの感想と、3日間現地観戦して感じたことについては、改めて別の記事でまとめたいと思います。

