いよいよ9月4日(金)から、東京辰巳アイスアリーナ改め田中貴金属アイスアリーナで「ISUチャレンジャーシリーズ 木下グループ杯2026」が開催されます。
日本でチャレンジャーシリーズ(CS)大会が開催されるのは、昨年に続いて2年目。今年は日本のトップ選手だけでなく、ロシア・ベラルーシの選手たちがAIN(中立アスリート)として久々に国際大会へ多数出場します。
さらに五輪・世界選手権のメダリストから、シニア国際大会デビューを迎える若手まで参戦。各カテゴリとも、シーズン序盤とは思えないほど興味深い顔ぶれが揃いました。
この記事では、木下グループ杯2026の放送・配信情報や出場予定選手、全カテゴリの注目ポイントをまとめます。
<9/1>千葉百音選手欠場情報を追記
<9/3>ロシア男子の出場選手が変更となり、一昨季ロシア王者のウラジスラフ・ジキジ選手が出場することになりました。選手変更を反映し、ジキジ選手の実績や見どころについての紹介も加えました。
変更の経緯やCS大会の補欠制度についてはこちらの記事をご覧ください。
CS放送の解説情報の追記、海外配信の視聴期間の修正もしています。
CS大会「木下グループ杯」とは
チャレンジャーシリーズ(CS)大会とは
フィギュアスケートの国際大会の分類上、チャレンジャーシリーズ(CS)大会は、GPS(グランプリシリーズ)に続く格付けの大会です。
獲得スコアはパーソナルベスト(PB)、シーズンベスト(SB)スコアとして認められます。
CS成立条件
「CS大会」として認められるには、各カテゴリごとに定められた参加国数や参加人数などを満たす必要があります。今後選手の急な欠場が複数国で連続発生しない限り、今年もCS大会として成立しそうです。
CS大会の位置づけや成立条件については、去年の記事に詳しく書いています。

放送&配信
放送や配信の情報は以下のとおりです。
CSテレ朝チャンネル2で全カテゴリ生放送
地上波やBSでのテレビ放送予定はありませんが、日本国内ではCS放送(有料)での生中継が予定されています。
<9/3追記>
町田樹さんが、ご自身の公式サイトで男子シングルの解説を担当すると発表されています!
続いて村元哉中さんもご自身の公式サイトで解説を担当すると発表されました
【CSテレ朝チャンネル2】放送予定
9/4(金)15:00~19:45
男子ショート・女子ショート
9/5(土)14:00~21:15
ペアショート・アイスダンスリズムダンス・男子フリー
9/6(日)12:30~20:00
ペアフリー・アイスダンスフリーダンス・女子フリー
※放送予定は変更になる場合があります
CS放送をご覧になるには、「スカパー!」などを通じ事前の視聴契約(有料)が必要です。
私は「スカパー!セレクト5」を契約しています。時々セレクトするチャンネルを変更すれば、これで大抵のフィギュアスケート関連番組の視聴が可能です。JSPORTSがセレクトできないのは難点ですが。

日本国内はスカパー!番組配信でも視聴可能
日本国内向け配信は、「スカパー!番組配信」で視聴できます。

「スカパー!番組配信」は、「スカパー!」で「テレ朝チャンネル2」の視聴契約者を対象にしたサービス(追加料金不要)で、テレ朝チャンネル2の放送と同じ内容をインターネット経由でも視聴できます。今回は、1週間の見逃し配信に対応しています。
契約者である私は試合映像をスマホやPC経由でホテルのTVに映して視聴できるので、正直ありがたいです。
ただし、契約していない方が日本国内で木下グループ杯のネット配信を視聴するには、スカパー!でテレ朝チャンネル2を新たに契約する必要があります。
日本国内からスカパー!番組配信を視聴するには
「スカパー!番組配信」は、CSアンテナがない場合でも、インターネット環境があればパソコンやスマートフォンなどで視聴できます。
「テレ朝チャンネル1&2」は、この2チャンネルだけのセットで視聴料月額1,100円(税込)で契約可能です。これにスカパー!基本料月額429円が加わり、合計月額1,529円(税込)が必要となります。
海外向けは Ice Stars TVでライブ配信
昨年私は、この大会の海外向け配信が無いことに驚いていました。今季のCS大会で国際向けのライブ配信を行っていないのはペア専門大会のジョン・ニックス杯くらいで、CS大会で国際配信が無いのはかなり異例なことだからです。
発表が遅かったので少し心配していたのですが、2回目の今年は海外向け配信の実施が決まりました!
3日間視聴可能なAll Day Access Pass、29.99ドルのみの販売です。1日ごとの視聴チケット販売はありません。ただし、日本国内からは利用ができないと説明されています。
今回配信を提供するIce Stars TVは他のCS大会も配信しており、フィギュアスケートの配信視聴層には馴染みのあるプラットフォームです。

私も過去にネペラ・メモリアル杯やゴールデンスピン杯などの視聴で利用したことがあり、アカウントを所有しています
Ice Stars TVの料金29.99ドルは、本記事公開時点の為替相場だと4,792円です。ライブ配信だけでなく今年の12月まで9月13日までアーカイブ視聴も可能ですし、CS大会の配信料金の相場からいっても妥当な金額だと思います。(※当初12月までと記載されていたと記憶しているのですが、9/3に確認したところ9/13になっていたので修正しました)
私は当初、海外配信と国内配信を分けたことにあまり良い印象を持っていなかったのですが、こうして比較してみると、1600円以下で済ませることができるスカパー!動画配信はかなりお得な価格設定といえます。見逃し配信期間が1週間のみなのだけはちょっと残念ですけどね。
出場選手&リザルト情報
参加選手たちは、日本・韓国を中心にアメリカ・メキシコ、ヨーロッパからも集まりました。下記の公式サイトで最新の出場者情報を確認できます。
スケート連盟の公式リザルトページ(全カテゴリのエントリーリストや滑走順、採点表などのリンクを集めたページ)は下記からどうぞ。
木下グループ杯2026|6つの注目ポイント
大きな注目ポイントとしては、私は下記の6つを挙げたいと思います。
ロシア・ベラルーシ勢がAINとして国際大会本格復帰
今大会の最大の注目ポイントは、北京五輪終了後、国際大会出場が許可されていなかったロシアやベラルーシの選手たちが、「AIN(中立アスリート)」として多数出場することでしょう。
ミラノ五輪では男女シングルにロシアから1名ずつがAINとして出場しましたが、今回出場するロシア勢のうち、昨季も国際大会に出場していたのはミラノ五輪6位のピョートル・グメンニク選手のみです。

北京五輪銀メダリストのアレクサンドラ・トゥルソワ(現姓はイグナトワ)選手やマルク・コンドラチュク選手をはじめ、ペアとアイスダンスにもロシア国内上位勢が3組ずつ出場。ロシア勢の本格的な復帰で、国際大会の勢力図がどう変わるのかは注目です。
<9/3追記>
マルク・コンドラチュク選手に代わり、ウラジスラフ・ジキジ選手が出場することになりました

日本のトップクラス選手が多数出場
今年は日本の強化指定選手の海外派遣試合数が絞られており、シニア選手でこれまで海外の国際大会に実際に出場したのは、アジアンオープントロフィーの友野一希選手と渡辺倫果選手のみです。(どちらも優勝)
国内のCS大会に出場予定の日本勢は以下の通り。まるで「プレ全日本選手権」のようなメンバーです。
※記載は木下グループ杯公式ページ掲載順
男子シングル:三浦佳生選手、中田璃士選手、佐藤駿選手
※腰の怪我が心配されていた山本草太選手は8/31夕に欠場との発表あり
女子シングル:青木祐奈選手、中井亜美選手、島田麻央選手
<9/1追記>※千葉百音選手は9/1夕に欠場との発表あり
アイスダンス:紀平梨花/西山真瑚組、櫛田育良/島田高志郎組、山下珂歩/永田裕人組、吉田唄菜/森田真沙也組
※ペアの長岡柚奈/森口澄士組は、長岡柚奈選手の交通事故による骨折治療で欠場
日本のアイスダンスチームが4組も同じ国際大会で競うのは初めてのことです。
まだシーズン序盤なのでこの大会でつく順位で今後の序列が決まるわけではありません。それでも、国際大会ジャッジからどのような評価を受けるのか(GOEのつきかたや、どの位のPCSがつけられるか等)は注目ポイントになりそうです。
日本の出場選手決定時に派遣意図などについて考えた記事はこちら

シニア国際大会デビュー組
男女シングルでは、ジュニアで長年活躍してきた島田麻央選手と中田璃士選手がそれぞれシニアの国際試合デビューを果たします。

この二人がロシア選手も含んだシニア上位勢にどこまで食い込めるのかは注目です。
日本勢だけでなく、中田璃士選手とジュニアで長年優勝争いを繰り広げていたソ・ミンギュ選手(韓国)などもここでシニア国際大会デビューです。
ミニマムスコア(CTES)獲得競争
CS大会の見どころの一つに、欧州・四大陸選手権や世界選手権の出場に必要な最低技術点(ミニマムスコア/CTES)獲得のゆくえがあります。
今季のミニマムスコアに関する詳しい情報は先日公開したこちらの記事でどうぞ

通常の大会で「ミニマムスコア獲得への挑戦」を繰り広げるのは、グランプリシリーズ大会には選出されないような選手が大半です。
しかし今回の木下グループ杯は違います。
欧州・四大陸選手権への出場を目標としているような選手も複数出場していますが、
- 長らく国際大会に出られていなかったロシア・ベラルーシの選手
- 今年シニアデビューで、シニア用のミニマムスコアをまだ持っていない選手
が多数参加しています。
つまり、「ミニマムスコア獲得」を課題にしている選手たちが通常より大勢いる大会だということです。
彼らのSP/RDとFS/FDの技術点の合計が下記の基準に達するかどうかは、要チェックです。
| カテゴリ | 2027欧州・四大陸CTES | 2027世界選手権CTES |
|---|---|---|
| 男子 | 86 | 109 |
| 女子 | 75 | 88 |
| ペア | 75 | 91 |
| アイスダンス | 85 | 98 |
特に日本のアイスダンス勢の最大の見どころの一つは、「うたまさ以外の3組のうちどこがミニマムスコア獲得できるか」です。
「木下グループ杯でのミニマムスコア獲得競争」については、全カテゴリの注目選手を別記事で改めてまとめる予定です。(記事が長くなりすぎるので、分けることにしました)
新ルール下での採点傾向
今季は全カテゴリで採点に関わるルール改正が数多く行われました。
中でも男女シングルについては、ジャンプ回数の削減・コレオスピンの導入やスピン・ステップの基礎点変更などにより、これまでとは点数の付き方が変化することが予想されています。
既に何試合かCS大会が行われはいるものの、はっきりとした傾向まではまだ見えていません。

トップ選手がこれだけ集う大会は比較的珍しいですから、点数のつきかたにはかなり注目が集まるのではないかと思います
新プログラムの初披露
日本の選手は「Dreams on Ice(ドリーム・オン・アイス)」や地方競技大会で既に今季のプログラムを披露済みの選手が大半です。
ただ、今大会が今季用の新プログラム初披露となる選手もいますので、どんなプログラムを見られるのかを注目しているファンも多いでしょう。

私もその一人です!
男子シングルの注目ポイント
ここからは、各カテゴリごとに出場メンバーをチェック。
各カテゴリごとの見どころや、私個人の注目ポイントを掘り下げていきます。
男子シングル出場予定選手一覧
男子シングルの出場予定選手は下記の通りです。
<9/3追記>
マルク・コンドラチュク選手に代わり、ウラジスラフ・ジキジ選手が出場することになりました
男子シングルの出場選手名(国名)※敬称略
ウラジスラフ・ジキジ(AIN ※ロシア)
ピョートル・グメンニク(AIN ※ロシア)
エフゲニー・セメネンコ(AIN ※ロシア)
タオ・マクレー(イギリス)
マルク・ゴロドニツキ(イスラエル)
ラファエレ・フランチェスコ・ジチ(イタリア)
三浦佳生(日本)
中田璃士(日本)
佐藤駿(日本)
キム・ヒョンギョム(韓国)
ソ・ミンギュ(韓国)
ドノバン・カリーヨ(メキシコ)
ルカシュ・バツラビク(スロバキア)
リアム・カペイキス(アメリカ)
ルシウス・カザネツキ(アメリカ)
ジェイコブ・サンチェス(アメリカ)
※掲載順は木下グループ杯公式サイトの表記に倣っていますが、9/3に変更されたAIN男子についてはISU公式エントリーの掲載順としています
ロシアVS日本の4回転対決
今大会の男子シングルは、「ロシア勢と日本勢の4回転対決」になりそうです。
ロシア男子勢
ピョートル・グメンニク選手はミラノ五輪ではフリーにルッツ・フリップ・ループを含む5本の4回転を組み込み、総合6位。昨季と同程度の難易度で挑んでくる可能性はあります。(しかもSPが私の好きなPeter Gabrielの曲!)
エフゲニー・セメネンコ選手は4回転4本を継続して入れていて2026年Channel One Cupでは「4回転5本+2本のトリプルアクセル」構成を実際に成功させています。

そして、北京五輪代表として出場して団体戦で活躍したマルク・コンドラチュク選手も注目です。北京五輪後の国内成績はやや低迷していましたが、昨季はフリーに4回転4本を投入。ロシア選手権ではSP10位から巻き返して総合3位に入っています。
<9/3追記>
新たに代替出場が決まったウラジスラフ・ジキジ選手は、ロシア男子の中でも屈指のジャンパーです。2024-25シーズンにはロシア選手権で優勝。昨季のロシア選手権は7位と、試合によって成績に波はあるものの複数種類の4回転を武器にしています。
さらに2025年のロシア・ジャンプ選手権では、競技として採点される試技ではなかったものの、ウォームアップなどで4回転アクセルを実際に着氷したこともある選手です。ただし、本人はまずフリーで5本の4回転をまとめることを優先しており、現時点で4回転アクセルをプログラムに入れることは考えていなさそうです。
ジャンプを前面に出すタイプなので、私の好み路線のスケーターではないようには思いますが、どれほど凄いジャンパーなのか興味はあったので、今回ナマで演技を見られるのは貴重な機会だと受け止めています。
日本男子勢も全員が複数の4回転をプログラムに投入していますが、昨季の実戦ではロシア3選手の方が4回転の投入本数は多めでした。
ただ、4回転は投入本数を増やせばいいというものでもありません。そもそも今季ルールは高難度ジャンプで3連続コンビネーションを組める選手や、スピンやステップで着実にレベルを取れる選手が有利なイメージがあります。
佐藤駿選手は昨季シーズン序盤の怪我で4回転の本数を削減していましたが、上位で安定した成績を収めることができました。佐藤駿選手が今季どのような4回転ジャンプ構成で来るか、また、中田璃士選手がシニアの試合でどれだけ4回転の本数を増やしてくるのかは注目です。
三浦佳生選手は先日のサマーカップでものすごく痛そうな転倒をしていましたが、事前の練習ではジャンプは好調そうでした。イリヤ・マリニン選手らとの海外練習の成果が出ているかも気になります。

ロシアと日本勢以外にも、有力な若手選手が今季4回転を増やして来る可能性はありますし、コンビネーションジャンプの後半に4回転を組み込むなどの挑戦をしてくる選手も出るかもしれません。
男子シングルは、「4回転での殴り合い」が興味深い展開になりそうです。
シニアデビュー勢の評価がどうなるか?
中田璃士選手、ソ・ミンギュ選手(韓国)、ルシウス・カザネツキ選手(米国)は昨年の名古屋JGPファイナル出場者。ジェイコブ・サンチェス選手(米国)も2024年JGPファイナル王者で、昨季はシニアとジュニアの大会双方に出場しています。

シニアになるとショートプログラム(SP)から4回転を入れられますし、より「4回転ジャンプでの得点力」を問われます。
その一方、シニアスケーターの中に放り込まれることで、スケーティングやスピン・ステップの未熟さが露呈してしまうこともありえます。若手スケーター達がシニアの国際大会でジャッジからどういう評価を得られるのかは個人的に気になるポイントです。
ドノヴァン・カリーヨ選手が日本で見られる!
その他の選手にも注目選手は複数いますが、中でも世界的に人気のドノヴァン・カリーヨ選手(メキシコ)が出場選手一覧に入っていたのには大喜びでした!
彼の試合が日本で見られるのは、2016年のジュニアグランプリシリーズ(JGPS)横浜大会、2019年さいたまワールドに続いて3回目だと思います。

私は2024モントリオールワールド、2025ボストンワールドの会場で彼の演技を観ることができました
しかし2024年はチケットシステムトラブルでSPを見られず、2025年はまさかのSP落ちでフリーが見られず…
今回初めてSPフリー両方を現地で見ることができそうなのが嬉しいです!
彼の良さについては何度か語り倒しているので、そちらの記事をどうぞ。


女子シングルの注目ポイント
女子シングル出場予定選手一覧
女子シングルの現時点(8/31)での出場予定選手は下記の通りです。
女子シングルの出場選手名(国名)※敬称略
アンナ・フロロワ(AIN ※ロシア)
アレクサンドラ・イグナトワ(AIN ※ロシア)
カミラ・ネリウボワ(AIN ※ロシア)
ベロニカ・ジリナ(アゼルバイジャン)
青木祐奈(日本)
中井亜美(日本)
島田麻央(日本)
キム・ソヨン(韓国)
ユン・ソジン(韓国)
アンドレア・モンテシノスカントゥ(メキシコ)
アレクサ・ガスパロット(アメリカ)
当初発表の選手名には昨年出場してくれたソニア・ヒルマー選手(米国)の名前があって大喜びしていたのですが、欠場が決まってとても残念です。
ロシア女子VS日本女子の表彰台争い
4年ぶりのロシア女子複数名の国際試合復帰
「ロシア女子と日本女子の頂上決戦」は、北京五輪が終わってからは見られなくなりました。
ミラノ五輪にアデリア・ペトロシアン選手がAINとして出場していたものの、1名のみでした。AIN資格での出場とはいえ、ロシア女子が3名揃って国際大会に出場するのは4年ぶりとあって、感慨を覚えます。
(「北京五輪で再度問題となったドーピングの案件はどうなったんだ?このままなし崩しに進めるのか?」というモヤモヤした気持ちは正直ありますが、それについては今回は触れません)
「ロシア女子」3名の実力は?
女子も男子同様、ロシア勢と日本勢が表彰台を争う展開になりそうです。
ロシア勢で日本でも圧倒的に知名度が高いのは、北京五輪銀メダリストのアレクサンドラ・イグナトワ(旧姓トゥルソワ)選手。北京五輪のフリーでは5本の4回転に挑み、銀メダルで涙を流していた姿を記憶している人は多いかと思います。

2025年8月に21歳で第一子となる男児を出産し、今年1月には競技復帰を表明。エテリ・トゥトベリーゼコーチのもとで練習を再開しています。

残るロシア勢2人は、私自身これまでほとんど演技を追っていなかった選手です。
アンナ・フロロワ選手は、昨季のロシア選手権で4位。4回転やトリプルアクセルを武器にするタイプではありませんが、安定した演技でロシア国内の上位を争ってきました。
カミラ・ネリウボワ選手は、昨季ロシア選手権7位、ロシアGPファイナルでは3位。こちらはトリプルアクセルを跳ぶ選手で、実際に昨季の試合でもフリー冒頭にトリプルアクセルを入れています。
北京五輪前のロシア女子は「高難度ジャンプ」のイメージが強いですが、今回出場する3人はそれぞれタイプが違いそうです。
迎える日本女子、今季のルール改正の影響は?
対する日本勢は、千葉百音選手、中井亜美選手、青木祐奈選手、そして今季シニアに上がった島田麻央選手。
※千葉百音選手は欠場となったので出場者一覧からは削除しましたが、以下の文章はそのままにしておきます
中井亜美選手と島田麻央選手はトリプルアクセルを武器にできる選手です。千葉百音選手と青木祐奈選手はジャンプだけではなくスピンやステップ、PCSまで含めた総合力が強みです。
個人的には、今季のルールではスピンで高得点が取れる島田麻央選手や千葉百音選手には有利に働くのではと思っています。また、コンビネーションジャンプの後半にトリプルフリップやトリプルループをつけられる青木祐奈選手も、今季のルール改正を味方にできる選手だと考えています。
4年ぶりに同じ土俵に乗ることの興味深さ
ロシア国内大会とISU国際大会では採点環境も違うため、ロシア国内で出ていた得点と日本選手の国際大会スコアをそのまま比較はできません。
だからこそ、同じ大会・同じジャッジのもとで滑ったときにどういう順位になるのかは非常に興味深いところですね。
さらに島田麻央選手にとってはこれがシニア国際大会デビューです。

ジュニアの国際大会無敗記録を作った彼女が、ついにロシア勢も加わった国際大会に参加することになります!
産後1年余りで競技復帰することへの敬意
私はロシアの国内試合は敢えて追わずにいたので、この4年間のロシア選手の演技映像はほとんど見ていません。しかし、アレクサンドラ・イグナトワ(旧姓トゥルソワ)選手の産後の練習情報は、再開初期から動画が海外掲示板に度々流れてきていたので、その過程をある程度把握しています。
才能に恵まれた選手とはいえ、出産後に4回転ジャンプを取り戻すのは並大抵の努力ではなかったもようです。
下記のロシア語のインタビュー記事では、妊娠判明後はジャンプを跳んでいなかったこと、産後は本当に跳べなくなっていて、2回転ジャンプから徐々に練習し始めたと語っています。

ロシア選手の国際試合復帰自体については色々と思うところはありますが、私は出産後も競技を続ける女性アスリートを応援したい気持ちがあるので、彼女の復帰には関心を持っています。
ジャンプがかなり戻せているにせよスピンの技術やスタミナはどこまで戻っているのか、やや課題のあったスケーティングがどうなっているのかなど、現地で確認したいポイントはいくつもあります。
それでも産後1年余りで競技に戻って来るということ自体がとんでもないこと。「品定め」の目線ではなく「産後も競技を続ける女性アスリート」を長い目で応援する気持ちで演技を観ようと思っています。

母親アスリートは競技に赤ちゃん連れで参加する場合もありますが、彼女は一緒に来日するのでしょうか?
リンクサイドや関係者席で赤ちゃんと一緒の姿が見られたら、ちょっと嬉しいかも…(笑)
その他の海外選手たち
韓国からはキム・ソヨン選手、ユン・ソジン選手が出場。アメリカのアレクサ・ガスパロット選手は昨季全米13位です。メキシコのアンドレア・モンテシノスカントゥ選手については、CTESの記事で改めて取り上げます。

個人的にはベロニカ・ジリナ選手(アゼルバイジャン)にエフゲニー・プルシェンココーチが帯同してくるかどうかが、ちょっと気になっています
アイスダンスの注目ポイント
アイスダンスの出場予定選手一覧
こちらはアイスダンスの出場選手一覧です。
楽しみにしていた「ネセマル」ことリア・ネセット/アルテム・マルケロフ組(米国)の欠場が決まってしまったのが少々残念です。
アイスダンスの出場選手名(国名)※敬称略
エカテリーナ・アンドレエワ/ジミトリー・ブリノウ組(AIN ※ベラルーシ)
ワシリサ・カガノフスカヤ/マキシム・ネクラソフ組(AIN ※ロシア)
エカテリーナ・ミロノワ/エフゲニー・ウステンコ組(AIN ※ロシア)
エリザベータ・パセチニク/ダリオ・チリサノ組(AIN ※ロシア)
ナタリエ・タシュレロバ/フィリプ・タシュラー組(チェコ)
ダイアナ・デイビス/グレブ・スモルキン組(ジョージア)
ノエミマリア・タリ/ノア・ラフォルナラ組(イタリア)
紀平梨花/西山真瑚組(日本)
櫛田育良/島田高志郎組(日本)
山下珂歩/永田裕人組(日本)
吉田唄菜/森田真沙也組(日本)
カタリナ・ウォルフコスティン/ディミトリー・ツァレフスキー組(アメリカ)
日本勢4組出場は嬉しいが、去年3組いたカナダ勢はゼロに…
去年は「うたまさ」こと吉田唄菜/森田真沙也組しか出ていなかったことを思えば、日本のアイスダンスチームが4組も出場することは嬉しい限り。
ただ、カナダ勢がゼロなのは正直かなり寂しいです。

昨年カナダからは、男女シングルに1人ずつ、アイスダンス3組の計8人が出場していました(ペアは直前に欠場)
なのに、今年は全カテゴリでカナダ勢の出場がゼロです
カナダの連盟も日本と同様国際試合への派遣を渋らないといけない事情があるのでしょうか…?
中でもアイスダンスは出場8組中3組がカナダ勢で、優勝もカナダの「マリロマ」ことマリー=ジャード・ローリオ/ロマン・ルギャック組だっただけに、ちょっと寂しいものはあります。

超ハードな表彰台争い
今回、個人的に最も表彰台の予想がつかないのがアイスダンスです。
ロシア勢以外の表彰台候補
国際大会での実績から考えると、表彰台候補筆頭は「デビスモ」ことダイアナ・デイビス/グレブ・スモルキン組(ジョージア)。昨季は欧州選手権6位、世界選手権10位と、今回の出場メンバーでは国際大会で最も上位の実績を残しています。
ナタリエ・タシュレロバ/フィリプ・タシュラー組(チェコ)の兄妹カップルも、表彰台候補。昨季は欧州選手権10位、ミラノ五輪15位。NHK杯では4位に入った実績もある国際大会の常連です。
アメリカのアイスダンスチームは層が厚いので、昨季NHK杯5位のカタリナ・ウォルフコスティン/ディミトリー・ツァレフスキー組(アメリカ)も表彰台争いに加われる可能性はありそうです。
ロシア勢の実力は?
そこへ久々に国際大会へ戻ってくるロシア勢が加わります。
3組のうち頭一つ抜けているのは、「カガネク」ことワシリサ・カガノフスカヤ/マキシム・ネクラソフ組。昨季のロシア選手権ではステパノワ/ブキン組に次ぐ2位、ロシアGPファイナルでも2位に入っています。
さらにロシア選手権3位の「パセチリ」ことエリザベータ・パセチニク/ダリオ・チリサノ組、4位のエカテリーナ・ミロノワ/エフゲニー・ウステンコ組も出場します。
ロシア国内大会では「カガネク」が210点台、パセチニク/チリサノ組とミロノワ/ウステンコ組も200点前後を出していますが、国内大会の得点とISU国際大会の得点をそのまま比較はできません。
ミラノ五輪に出場したロシア人の選手は男女シングルのみでした。久々に国際大会へ出てくるロシア勢を国際ジャッジがどう評価するのか。
その答えを初めて確認できるのが、今回の木下グループ杯です。

アイスダンスはただでさえ、ライトファンには評価基準が理解しづらいカテゴリです
ロシア国内とISU国際大会という全く異なる物差しで評価されてきた組が急に同じ場で闘うとなると、私にはさっぱり表彰台の予想がつきません。
ロシア勢がいきなり上位を独占するのか、それとも国際大会で実績を積んできた「デビスモ」らが上回るのか?
今後の世界のアイスダンス勢力図を占う意味でも、かなり興味深い試合になりそうです。
ペアの注目ポイント
昨年の木下グループ杯のペアは、「りくりゅう」こと三浦璃来/木原龍一組と「ゆなすみ」こと長岡柚奈/森口澄士組がダブル表彰台となったのが、強く記憶に残っています。

この二組が国際大会で同じ表彰台にのっているのを現地で見られたのは、今思えば幸運でした。しかも銀メダルはミラノ五輪銀メダルの「メテベル」ことアナスタシア・メテルキナ/ルカ・ベルラワ組(ジョージア)と、豪華メンバーでしたからね!
ペアの出場予定選手一覧
しかし「りくりゅう」は引退、「ゆなすみ」は怪我で欠場。木下グループ杯のペアは、唯一日本人選手の出場がゼロのカテゴリとなってしまいました。
ペアの出場選手名(国名)※敬称略
アレクサンドラ・ボイコワ/ドミトリー・コズロフスキー組(AIN ※ロシア)
エカテリーナ・チクマレワ/マトベイ・イアンチェンコフ組(AIN ※ロシア)
アナスタシア・ムホルトワ/ドミトリー・エフゲニエフ組(AIN ※ロシア)
カミーユ・コヴァレフ/パベル・コヴァレフ組(フランス)
ニーム・デービソン/ダニエル・ボリソフ組(イギリス)
チェルシー・リュウ/ライアン・ベダール組(アメリカ)
レーガン・モス/ヤクブ・ガルバビー組(アメリカ)
バレンティナ・プラザス/マキシミリアーノ・フェルナンデス組(アメリカ)
ペアはロシア勢が表彰台独占?
アイスダンスは表彰台の顔ぶれすら予想が難しいのですが、ペアはロシア勢3組がかなり優位と見てよさそうです。
中でも実績が抜けているのが、「ボイコズ」ことアレクサンドラ・ボイコワ/ドミトリー・コズロフスキー組。ロシア勢が国際大会に出場できなくなる前には世界選手権3位、欧州選手権優勝などの実績があり、昨季のロシア選手権でも一番手の「ミーガリ」ことアナスタシア・ミーシナ/アレクサンドル・ガリャモフ組を抑えて優勝しています。

エカテリーナ・チクマレワ/マトベイ・イアンチェンコフ組も昨季ロシア選手権3位。優勝した「ボイコズ」とは8点ほどの差で、フリーでは145.93点と「ボイコズ」に1点弱まで迫っています。
そしてロシア選手権5位だったアナスタシア・ムホルトワ/ドミトリー・エフゲニエフ組まで、ロシアから3組のペアが出場します。
ロシア以外が表彰台に食い込むチャンスは?
対するロシア以外の出場組には、昨季のチャンピオンシップ大会でメダル争いに絡んだペアはいません。
国際大会での実績なら、昨季ミラノ五輪16位、世界選手権17位、欧州選手権10位のカミーユ・コヴァレフ/パベル・コヴァレフ組(フランス)が比較的上位です。
また、昨季結成ながらCS大会で168.27点を出しているチェルシー・リュウ/ライアン・ベダード組(アメリカ)なども、ロシア勢に痛いミスが出れば表彰台に食い込めるチャンスはあるかもしれません。
コヴァレフ夫妻は、私はてっきり「ミラノ五輪でおそらく引退だろう」と思って去年のNHK杯を見ていたのですが、SP中に肩を脱臼する事故があり、欠場になってしまったのは残念でした。


今年、予想外の現役続行となったことで、再び試合で演技を観られることを楽しみにしています
ロシアペアへのPCS採点傾向にも注目
個人的には、ロシアペアが国際大会に出場していなかったこの4年間で「ペアのPCSの評価傾向が若干変わって来た感」があります。
そのため、ロシアのペアが、現在の国際ジャッジからどの程度の評価を受けるのかはかなり気になるポイントです。
しかし、この大会のメンバーだと彼らが技術点で無双してしまいそうですね。「ゆなすみ」が出ていれば、彼らのPCSと興味深い比較ができたでしょうが…。

長岡柚奈選手には、まずはゆっくり怪我を治してほしいです
来年の四大陸選手権に間に合えば嬉しいですが、焦らず来季の復帰でもいいと思っています
五輪直後のシーズンでまだ幸いだった、と考えるしかありません
各カテゴリにいる「ミニマムスコア獲得がかかる選手」も大きな注目ポイントですが、この話題は別記事で改めて整理する予定です。
…ということで、木下グループ杯2026の見どころはひとまずここまでとします。
昨年の木下グループ杯観戦記はこちら



