7月22日、日本開催のチャレンジャーシリーズ(CS)大会・「木下グループ杯2026」の出場選手第1弾が発表されました。
男女シングルは特別強化選手10名中8名が名を連ね、「プレ全日本選手権」と呼びたくなるほど豪華な顔ぶれ。一方で、カップル競技の日本勢は現時点ではペアとアイスダンス各1組のみとなっています。
同日に日本スケート連盟が公表した2026-27シーズンの国際競技会派遣選手選考基準を読むと、男女シングルやアイスダンスには今後さらに日本選手が追加される可能性が高そうです。
ただ、今季の派遣予定には序盤の海外開催チャレンジャーシリーズ(CS)大会が一つも含まれていないことは気がかりです。
今回は木下グループ杯の今後の出場選手を予想するとともに、近年減少している海外大会への派遣と、国内CS大会に期待する役割について考えます。
木下グループ杯の第1弾エントリー発表
日本初のCS大会「木下グループ杯」とは
木下グループ杯は、昨年から始まった日本初のチャレンジャーシリーズ(CS)大会です。
日本開催CS大会がついに創設されるとわかったときは、「これで、実力がありながら国際派遣の機会を得にくい選手たちにも活躍できる機会が増えた!」と喜びました。

特別強化選手がほぼ勢揃い
今季の木下グループ杯は、9/4(金)~6(日)に東京・辰巳アイスアリーナにて開催されます。
出場選手の第1弾発表での顔触れには、正直驚きました。
男女シングルの特別強化指定選手10名のうち8名がエントリーしており、ほぼ「プレ全日本選手権」状態だったからです。
※エントリーしていない2名はどちらも昨季ジュニアだった選手

ペア・アイスダンスの日本勢は現時点では各1組
ちなみにカップル競技で発表された出場メンバーは、ペアの「ゆなすみ」こと長岡柚奈/森口澄士組と、アイスダンスの「うたまさ」こと吉田唄菜/森田真沙也組のみ。
昨季アイスダンスの国際大会(ジュニア含む)に出ている「いくこう」こと櫛田育良/島田高志郎組や「かほゆう」こと山下珂歩/永田裕人組の名前はありませんでした。

私はこの2組については最初から「うたまさ」と共にエントリー発表されるものと思っていたので、驚きました
特に「いくこう」は木下が拠点ですし…
※「りかしん」こと紀平梨花/西山真瑚組などは8月初旬のカナダのIC大会(俗にいうB級大会)に出場予定のため、木下グループ杯の出場可能性は薄いと予想していました
「第1弾で発表された日本勢が、『うたまさ』以外は全員特別強化選手」という状況に、私はかなり驚きました。
なぜ「プレ全日本」のような顔ぶれになったのか
今季序盤は海外CS大会への派遣予定なし
しかし、日本スケート連盟が6/24に公表していた2026-27シーズンの国際大会派遣予定を思えば、こうなるのは予想できたことでした。
シーズン序盤の国際大会派遣が例年より減っているのは、もうわかっていましたからね。発表当時には私も結構ショックを受けていました。
円安等で来季国際大会派遣は減ると覚悟していたけど、本当に減りますね
— けろわん (@kero_one1) June 24, 2026
JGPS、GPS、チャンピオンシップ大会以外は
8月アジアンオープン
9月木下杯
12月ゴールデンスピン
2月チャレンジカップ
1月ユニバーシティゲームズ
ロンバルディアもネーベルホルンもないなら友野くんのエキシはどうなるの~
昨季はシーズン序盤に、アジアンオープン、ロンバルディア杯、ネーベルホルン杯など複数の国際大会へ強化指定選手が派遣されていました。
一方、今季の派遣予定に記載された序盤の国際大会は、IC大会(通常の国際大会、俗にいうB級大会)のアジアンオープン(中国)と、国内開催のCS大会・木下グループ杯のみ。それ以外の序盤開催CS大会への派遣予定は現状ありません。
今季アジアンオープンへの派遣は、男子シングルは友野一希選手、女子シングルは渡辺倫果選手、住吉りをん選手(怪我で欠場を発表)と既に発表されていました。アジアンオープンに強化A選手を派遣する一方、特別強化選手にはシーズン序盤の国際大会出場機会を設けないという運用は考えにくいでしょう。
となると特別強化指定選手たちの大半が木下グループ杯に出場することはある程度予想できたのかもしれません。

私が「国内開催なら、強化B以下の選手もCS大会に出場できるかも?」という期待が大き過ぎて、この事態を想定できていなかっただけです
木下グループ杯の日本選手選考基準
実は木下グループ杯の出場選手の第1弾発表と同日に、日本スケート連盟の2026-27シーズンの国際大会派遣選手の選考基準資料も公開されました。
2026-2027シーズン フィギュアスケート国際競技会 派遣選手選考基準
世界選手権や四大陸選手権、木下グループ杯、その他の国際競技会の選考基準について全12項目が記されています。
今後追加されそうな日本選手は?
この文書の木下グループ杯の項目を読む限り、ほぼ確実に日本選手の出場追加はありそうです。
男女シングル、アイスダンスについては特別強化指定選手であることのほかに、下記のような選考項目が別に定められているからです。
チャレンジャーシリーズ 木下グループ杯 2026
1)男女シングル
以下の基準に基づいて、出場選手を選考
・2026-2027の強化指定に基づき、特別強化選手を選考
・NHK杯TBD枠選考会において選出された選手の中で、CTES を取得していない選手
・その他強化部が推薦する選手
(2)ペア
2026-2027の強化指定に基づき、特別強化選手を選考
(3)アイスダンス
・前年度世界フィギュアスケート選手権大会出場組を選考
・前年度競技会実績があるカップルから選考会対象選手を選出し、2026年8月開催の派遣選考会において、選考会課題・演技・国際競技力を総合的に考慮して選考
すでに発表された選手だけで確定するのなら、追加の選考項目が実際に使われる場面はありません。男女シングルとアイスダンスでは、追加選考が行われる可能性が高そうです。
一方、ペアについては特別強化選手である「ゆなすみ」一組でほぼ確定と見てよさそうです。
ちなみにアイスダンスで派遣選考対象になるのは「前年度競技会実績があるカップル」との記載があります。
この文言をそのまま読む限り、対象となるのは2025-26シーズンに現在のカップルとして競技会へ出場した組、「いくこう」「りかしん」「かほゆう」の3組だと考えられます。
※「かほゆう」は昨季の世界ジュニア14位
今年結成の「しょまりん」こと本田真凜/宇野昌磨組、「りかあつ」こと深瀬理香子/田村篤彦組、先日結成が発表されたばかりの矢島榛乃/北村凌大組は、少なくとも今回示された条件では、選考対象外になるものと思われます。

木下グループ杯では開催国に出場人数の制限はないので、「対象の3組とも追加してほしい!」という気持ちです
NHK杯のアイスダンスTBD枠も同じ選考会で決まる?
NHK杯のアイスダンスTBD(出場未定)枠についても、「いくこう」「りかしん」「かほゆう」が有力候補になりそうです。ただし、木下グループ杯と同じ派遣選考会の結果が使われるかどうかは明記されていません。
いずれにせよ派遣選考会は非公開、ファンは選考結果発表を待つのみです。
海外選手は十分に集まる? CS大会の成立条件を確認
日本選手の追加が期待できる一方、気になるのが海外選手のエントリーです。
現時点で木下グループ杯にこれほどのメンツが揃うとなると、下手するとGPS大会より上位争いが厳しいかもしれません。
ランキングポイントを稼ぐことを主目的とする選手にとっては、「参加するうまみの少ない大会」になりかねない状況です。

CS大会として成立するのに必要な参加人数と参加国数を満たせるだろうか?と、心配になってしまいます
CS大会として認定されるための条件
CS大会として認められるためには、まずは3種目以上が開催されたうえで、最低10の国・地域の参加が必要です。
そして、各カテゴリごとに下記の基準を満たす必要があります。
| 参加人数 | 参加国(地域)数 | |
|---|---|---|
| 男子シングル | 8 | 4 |
| 女子シングル | 8 | 4 |
| ペア | 5 | 3 |
| アイスダンス | 6 | 4 |
エントリー後の欠場などでこれらの基準を満たせなかった場合はCSとして認定されず、IC(通常の国際大会、俗にいうB級大会)として扱われる可能性があります。
その場合はCS大会の成績としては扱われず、適用されるWorld StandingポイントもIC大会のものになります。
日本開催ならではのハードル
CS大会のロンバルディア杯も近年は世界のトップ選手が多く出場し、上位進出のハードルが高い大会となっていました。
ただし、ロンバルディア杯はヨーロッパ開催のため、多くの国から選手を集めやすいという点では、日本開催の木下グループ杯とは条件が異なります。
海外選手にとっては円安で滞在費を抑えやすいことや、治安の良さなど、日本開催ならではの魅力が強みになればいいのですが…9月初旬とはいえ、東京では厳しい残暑となる可能性があるのも少し気になります。

みんな来ておくれ~!
海外派遣縮小の背景を考える
海外CSへの派遣先は以前より減少
前述の通り、今季序盤の派遣予定からはロンバルディア杯(イタリア)やネーベルホルン杯(ドイツ)がなくなりました。さらにさかのぼると、直近開催が2023年のオータムクラシック(カナダ)にも日本選手の参加があり、2019年まではネペラメモリアル(スロバキア)にも派遣されていました。
日本選手の活躍は続いているのに、派遣される海外国際大会は以前より少なくなってきています。
円安と渡航・滞在費の高騰
国際派遣の数が年々減っている大きな理由の一つは、進む円安と渡航滞在費の高騰だと私は見ています。
今夏のISU総会でも、名古屋GPFは大盛況だったのに円安の影響で期待通りの収益を得られなかったことについての発言がありました。

「シンクロ9」など新たな派遣大会の増加
今季は「国別対抗戦」も予定されているほか、今月に2030冬季五輪採用が決定した「シンクロ9」の新規大会への対応も必要になります。
(「シンクロ9」の世界選手権と世界ジュニア選手権が新設)

シンクロ競技は派遣人数が多く、選手以外のスタッフも含めれば、連盟の負担は小さくないはずです。
従来の16名制の「シンクロナイズドスケーティング」の世界選手権は今季も開催されます。しかし、16名制のシンクロナイズドスケーティングの世界選手権については選手派遣の有無すらまだ決定しておらず、日本チームの派遣が取りやめになる可能性もある状況です。
「シンクロ9」が五輪競技になる以上、日本スケート連盟にとって「シンクロ9」チームの養成は急務でしょう。限られた予算や人員をどう配分するのか、連盟にとっても難しい判断になりそうです。

これまで16名制のシンクロナイズドスケーティングに励んできた選手たちにとっては、世界選手権の出場可能性の有無すらわからない今の状況は、かなりつらいものだと思われます…
選手だけではない国際大会派遣の負担
国際試合派遣の減少には金銭的事情も大きく影響しているのではないかと思うだけに、「各カテゴリの選手たちをもっと国外の国際大会に派遣して!」とは気軽に要望しづらいですね。スポンサーやクラウドファンディングの活用などうまくいかないものでしょうか?
国際大会への参加には選手の渡航費だけでなく、役員やジャッジなど競技運営に関わるさまざまな負担も伴います。単に選手分の費用だけを確保すれば済む話ではなさそうなところが難しいです。
国内CS大会に期待したい役割
GPSに出られない実力者にも国際大会の機会を
日本の男女シングルのトップ選手が一堂に会する木下グループ杯は、きっと面白い大会になることでしょう。
しかし、そもそも私が日本開催のCS大会ができたことを喜んだのは、「『国際大会に縁が薄いが実力がある選手』の活躍を見られそうだから」です。プレ全日本選手権を観たかったわけではありません。
木下グループ杯は交通費宿泊費が日本選手には最小限で済みます。大島光翔選手や片伊勢武アミン選手、吉岡希選手、河辺愛菜選手など、国際大会出場機会にあまり恵まれてこなかった選手たちが今後何らかの形で出場機会を得られることを願っています。
トップ選手と次の層、双方の出場機会をどう確保する?
一方、日本の特別強化指定選手にも十分な国際大会出場機会が必要だという事情もよく理解できます。
貴重な日本開催CS大会が長く継続されるよう、トップ選手の国際大会出場機会を確保しながら次の層の選手にも国際経験を積む機会を広げられる、現実的なバランスが見つかるといいなと思います。

