10月に開催されたチャレンジャーシリーズ(CS)のトリアレティ杯、デニス・テン メモリアル、ブダペスト杯が終了しました。
いよいよグランプリシリーズ(GPS)開幕!ということで、今回はCS大会を経て決まったロシア勢の追加アサインや、ジキジ選手が記録した312.79点という驚きの高得点など、気になった話題を振り返ってみました。
採点への疑問だけでなく、エイモズ選手の新プログラムの感想や、ペア&アイスダンスの気になる動きなども紹介しています。

GPS開幕直前!追加アサインで顔ぶれはどう変わった?
6月に発表されたGPSアサインですが、開幕までにずいぶん顔ぶれが変わってきました。
2026-27シーズンGPSアサイン
男子シングル(10/15版)
女子シングル(10/15版)
ペア(10/6版)
アイスダンス(10/12版)
※いずれも英字表記のPDF一覧です
最新の全カテゴリアサイン一覧はこちら
発表当初は「出るんだ!」と驚き、楽しみにしていた選手たちもいたのですが…
マッテオ・リッツォ選手(イタリア)はGPSを欠場、アリサ・リウ選手(米国)は今季の競技休養を宣言。チャ・ジュンファン選手(韓国)は10月に今季の競技不参加を表明しました。
アイスダンスのアリソン・リード/サウリウス・アンブルレヴィチウス組(リトアニア)もGPS欠場です。
こうした欠場に加え、開催国枠の返上や怪我による欠場などもあり、出場選手に複数の変更が出ています。
GPSアサイン初報記事や下記の記事でも変更情報の一部を追記してきましたが、今回は特に気になる動きを紹介しておきます。

ジキジ選手は2大会出場決定、セメネンコ選手も中国杯へ
まず男子では、ロシアのウラジスラフ・ジキジ選手(中立アスリートのAIN2として出場)が、中国杯とNHK杯の2大会に出場決定。中国杯には、さらにエフゲニー・セメネンコ選手(AIN2)も追加されました。
ジキジ選手は2枠確保でグランプリファイナル(GPF)進出を狙える立場となりました。
セメネンコ選手は今のところ中国杯の1大会ですが、今後の欠場状況によっては追加出場の可能性があります。
イグナトワ(トゥルソワ)選手も中国杯へ!2大会目は?
女子では、アレクサンドラ・イグナトワ(トゥルソワ)選手(AIN2)の中国杯出場が決まりました。一方、キム・チェヨン選手(韓国)は中国杯欠場です。
木下グループ杯では2位で、GPS待機リスト入りできなかったイグナトワ選手。

その後デニス・テン メモリアルで優勝して待機リスト入りを果たし、GPS出場が実現しました。
しかも、イグナトワ選手は現在も待機リストの最上位。中国杯以降の大会で欠場者が出れば、2大会目の出場もありえます。
ただし、開催国選手の欠場時は開催国枠になる原則などもあり、単純に誰かが欠場すれば必ず追加されるというわけではありません。
ちなみにアンバー・グレン選手は現在、米国の人気ダンス番組「Dancing with the Stars」に出演し、見事勝ち残っています。


私は、フィギュアスケート専門記者のジャッキー・ウォン氏がX(Twitter)で彼女が勝ち抜くたびにダンス動画を投稿しているのを全部見ています
どれもこれもカッコイイです!
今季の試合出場意向は示していましたしGPSアサインには引き続き名前がありますが、ダンス番組への出演が続く中で彼女はGPSに出場できるのか、少々気になっています。
ペア&アイスダンスにも気になる動き
ミラノ五輪ペア4位の「パブスビ」、怪我でGPS欠場
ペアでは、マリア・パブロワ/アレクセイ・スヴィアチェンコ組(ハンガリー)がGPSを欠場することになりました。
スヴィアチェンコ選手の肩の負傷が思うように回復せず、手術が必要になったとのこと。フランス大会とフィンランド大会の両方を欠場することになりました。好きなペアなので残念ですが、順調に回復してほしいです。

ペアではそのほかにも追加アサインがあり、AINの「ボイコズ」ことボイコワ/コズロフスキー組はフランス大会とフィンランド大会、「チクヤン」ことチクマレワ/ヤンチェンコフ組はフィンランド大会への出場が決まっています。
ボイコズ&チクヤンのフィンランド入国ビザはどうなる?
ただ、両組について気になっているのが、フィンランドへの入国ビザです。
フィンランドの公共放送Yleは9月、外務省の担当者が「プロスポーツ選手の短期的な競技参加は原則としてビザ発給の対象となる」と説明したことを報じていました。
ところが、10月12日にはフィンランドのヴァルトネン外相が、ロシア選手へのビザ制限を含む提案をEUに行ったことが、フィンランド外務省から発表されています。

また、EUでもロシア・ベラルーシ選手の国際大会復帰を制限する方策が議論中です。
現時点で新たな規制が決定したわけではありませんが、オランダでは10月の体操世界選手権に中立選手(AIN)として出場予定だったロシア選手3人に、ビザが発給されませんでした。
10月20日時点でボイコズ、チクヤンの両組にフィンランドのビザが発給されたという情報は確認できていません。
11月のGPSフィンランド大会だけでなく、来年3月に同国タンペレで開催される世界選手権での対応がどうなるかが気になります。
ラジョワ/ベイカー組もGPS2大会出場が決定!
一方、アイスダンスでは、今季新たに結成された「ラジョベイ」ことマージョリー・ラジョワ/ジャン=リュック・ベイカー組(カナダ)のフィンランド大会の追加アサインが決まりました。
当初のNHK杯と合わせてGPS2大会に出場できることになり、新結成のカップルにもGPF進出への道が開けました。彼らの新しいプログラムをまだ見られていないだけに、こちらも楽しみです。

CS大会では相次ぐ高得点!採点への疑問も
GPS開幕を前に、10月のCS大会の主な動きを振り返っておきます。
トリアレティ杯では「ホームクッキング」への疑問
10月初めのトリアレティ杯。
地元ジョージア勢への高い評価について、海外のフィギュアスケートファンの一部に「ホームクッキング(地元優遇採点)」ではないかという声が散見されました。
ペアでは、地元ジョージアの「メテベル」ことアナスタシア・メテルキナ/ルカ・ベルラワ組が「ミーガリ」ことアナスタシア・ミーシナ/アレクサンドル・ガリャモフ組(AIN2)を抑えて優勝。
下記記事のまるっこい可愛い字はジョージア語です!関連記事を探す中で、初めてジョージアの文字を見ました!

アイスダンスでは、地元の「デビスモ」ことデイビス/スモルキン組が208.67点という高得点で優勝しています。
女子シングルは、ニーナ・ペトロキナ選手(エストニア)が優勝。ロシア勢はアデリア・ペトロシアン選手が2位、アンナ・フロロワ選手が3位に入りましたが、優勝には届かず。地元のアナスタシヤ・グバノワ選手は4位でした。
一方、男子シングルは地元ニカ・エガーゼ選手が優勝しています。

優勝者はいずれも良い演技で順位には納得はできましたが、点数を額面通りに受け止めてよいものかは、私も若干疑問が残りました
でも、このときのささやかな疑問は、翌週のデニス・テン メモリアルの採点への驚きで上書きされることになります。
デニス・テン杯でジキジ選手が312.79点!驚いたのは得点の内訳
デニス・テン メモリアルの男子シングルでは、ウラジスラフ・ジキジ選手(AIN2)が総合312.79点という驚異的な高得点を記録し、議論を呼びました。
ジキジ選手は私が現地観戦した9月の木下グループ杯にも出場しています。デニス・テン メモリアルでも無料配信で彼の演技を見ました。

確かにスピンなどの技術的な改善はありましたが、一気に47点以上も上がるほどの変化があったとは思えず、この点数には本当に驚きました。
両大会の公式採点表を比較してみましょう。
| 項目 | 木下グループ杯 | デニス・テン杯 | 増加 |
|---|---|---|---|
| 基礎点(SP+FS) | 133.31 | 141.06 | +7.75 |
| GOE(SP+FS) | 17.53 | 36.48 | +18.95 |
| PCS(SP+FS) | 114.84 | 135.25 | +20.41 |
| 総合得点 | 265.68 | 312.79 | +47.11 |
木下グループ杯では無得点だったスピンが今回はレベル4と認定され、ほかのスピンやステップでもレベルが上がるなど、技術面での改善は確かにあります。
その結果、SP・FS(フリー)を合わせた基礎点は7.75点上昇。
さらに驚くべきことに、GOEは18.95点、PCSは20.41点も上昇。
フリーの4回転フリップに前回ついていたエッジのアテンション(!)が今回はなくなったこともGOE上昇の一因でしょうが、この上昇幅には理解が追いつきません。
特にPCSでは、スケーティングスキルの平均評点がSPで7.25→8.65、フリーで7.75→8.90に。プレゼンテーションに至っては、フリーで7.75→9.25という急上昇でした。

GOEもPCSも演技の出来次第で上がるものですが…
「少し良くなった」という私の実感からすると、いくらなんでも極端すぎる急上昇です
これほど評価が上がるには、「たった1か月なのにとんでもなく良くなったよ、信じられない!ブラボー‼」と観客が総立ちで驚愕するほどの出来でないと、私は納得できないですね
高得点への反応と、選手本人への影響が気になる
海外のフィギュアスケートファンからも、この高得点に疑問を呈する反応が多数見られました。その声は、ロシア国内でも海外の反応として紹介されていたほどです。(リンクはロシアメディアChampionatの記事)
もうひとつ気になったのが、得点発表を聞いたジキジ選手の表情です。
SPでもフリーでも、キス&クライで喜んでいる様子はなく…私にはかなり困惑しているように見えました。SP後のインタビューでも、あれ程の高得点は予想していなかったと話しています。
何より今回の312.79点というスコアは、彼が今後簡単に更新できるような数字には思えません。

フィギュアスケート観戦では、徐々にシーズンベストやパーソナルベスト(PB)を更新していくのを見守るのが楽しみの一つなのに…
これでは今後何年もPBを更新できないかもしれません
本人にとって、あまりにも高いハードルを課せられたように感じます
他の国際大会とかけ離れた評価が一度だけ出てしまうことは、かえって選手自身を苦しめることにならないだろうか?と心配になってしまいました。
先日はロシア軍の攻撃により、ウクライナの首都キーウで、代表選手たちが練習していたアイスアリーナが大きな被害を受けています。

ロシア選手の国際大会復帰に対しては複雑な想いで見守っている人も少なくないでしょう。
そんな中、このような極端な採点によって、選手自身への反発まで強まることにならなければいいのですが…。
ブダペスト杯で気になった演技とCTES挑戦
ここからは、先週末のブダペスト杯の話題です。
この大会、私は試合結果よりもケヴィン・エイモズ選手の新プログラムを一番楽しみにしていました。
エイモズ選手の新プログラムが面白い!
SPは「パイレーツ・オブ・カリビアン」。
ジャンプが今ひとつで、後半に予定していたトリプルアクセルもダブルアクセルになってしまったのですが、その後に見せた独創的なステップから終盤にかけては、とてもよかったです。
エイモズ選手の下記のInstagram投稿、写真を次々とめくっていくと、ブダペスト杯SPとフリーのかけらが見られます!
酔っ払ったような、おちゃらけた動きを取り入れたステップは、ハビエル・フェルナンデス選手が2010年のバンクーバー五輪で披露した「パイレーツ・オブ・カリビアン」をちょっぴり懐かしく思い出しました。
フェルナンデス選手よりもエイモズ選手の方がお茶目成分多めな感じですかね?何ともかわいらしい海賊でした。
ちなみにこの曲については、アイスダンス「スマディク」のオリヴィア・スマート選手からも提案があったんだとか。
エイモズ選手自身も以前から考えていたそうですが、二人は今年6月のISU総会にも一緒に出席しており、そこで交流を深めたようです。

そして楽しみにしていたフリーでは、宇野昌磨さんがシングル現役最終シーズンに使用した「Spiegel im Spiegel(鏡の中の鏡)」と、カール・ヒューゴーさんらが関わった「Miroir」を使用しています。
宇野昌磨さんやジェイソン・ブラウン選手が演じたフリープログラムではクライマックスに近い部分で使われていたパートから曲が始まり、ちょっと驚きました。
しかし後半にかけてビートの効いた編曲バージョンに変わっていきます。そのアグレッシブな編曲が何ともエイモズ選手らしいアレンジでした。
ケヴィン・エイモズ選手のような所作が美しいスケーターがこのような静かな曲調で演じると、存在感が際立ちますね。間違えてSP用のスピンを実施してしまったため、そこが無得点になってしまったのは、まぁいいとしましょう(苦笑)。

ジャンプとかスピンの技術点とかもういいよ!
彼が2030アルプス五輪を目指すと言ってくれてるだけでありがたいんだから、私たちを魅了する演技をしてくれればそれでいいよ!
と思える演技でした
NHK杯ではさらに進化したプログラムを見せてくれるといいですね
村上遥奈選手とブラックウェル選手のCTES挑戦
ブダペスト杯でもう一つ注目していたのは、シニア国際大会に初出場した選手たちのミニマムスコア(CTES)挑戦です。
※ミニマムスコア:ISUの大規模国際大会に出場するために必要な最低技術点
今季からオーストラリア代表として国際大会に出場している村上遥奈選手は、四大陸選手権のCTES75点に挑戦しましたが、今回は70.66点。残念ながら4.34点届きませんでした。
一方、米国のパトリック・ブラックウェル選手は、世界選手権のCTES109点を突破。130.77点を獲得し、大会でも総合2位に入りました。
2人とも今季はジュニア国際大会にも出場しているのですが、シニア大会でのミニマム初挑戦では明暗が分かれる結果となりました。
いよいよGPS開幕!
10月のCS3大会。GPS待機リストの変動そのものは小さかったものの、実際のGPS出場者の顔ぶれは変化しました。
一方、今季序盤のCS大会の得点は、今後の試合での実力予想の参考値にはしづらいなとも思わされました。GPSのジャッジがどんな評価傾向になるのかは、気になるところです。
そして日本時間10月24日(土)には、いよいよフランス大会が開幕します!
フランスでは先週末の大規模デモが一部で暴徒化し、大会開催地のアンジェでも市庁舎などが被害を受けたと報じられています。少々心配していましたが、今のところ大会の日程変更などの発表はなく、予定どおり開催されそうです。

フランス大会の出場選手や見どころ、テレビ放送・配信情報については、改めて別の記事でまとめる予定です


